1.Encounter'86 (Y.Yamashita) 2.Thought of Beatrice (Corsican Folksong, Arr. by Y.Yamashita) 3.Brunetta (Corsican Folksong, Arr. by Y.Yamashita) 4.Splashes on Palette (Y.Yamashita) 5.Divertimento in F Minor (Y.Yamashita, from Corsican Folksong) 6.Echo of Gray (Y.Yamashita) 7.Scherzo in G Major (Y.Yamashita, from Corsican Folksong) 8.After Blue (Y.Yamashit) 9.Sunset Song (Y.Yamashita, from Corsican Folksong) 10.Into Green (Y.Yamashita) 11.Dancing in Yellow (Y.Yamashita, from Corsican Folksong) 12.Chant on D (Corsican Folksong, Arr. by Y.Yamashita) 13.Behind Red (Y.Yamashita) 14.Lullaby in Bastia (Corsican Folksong, Arr. by Y.Yamashita)
これを書いている時点では最新作しかも10年ぶりのソロ作品ということで、 昨年11月に発売されて以来半年間、このCDにちなんだソロコンサートが数多く 開催されてきました。
山下さんの30年来の友人である松井守男画伯を讃えるアルバム。松井画伯が パリからコルシカに居を移す決心をしたタイミングと合っていたこともあり、 レコーディングはコルシカ島で行われました。曲目に色にちなんだタイトル及び コルシカ民謡が多いのはそういう訳です。
Y.Yamashitaと書かれているのは山下さんの完全なオリジナル。 Corsican Folksong, Arr. by Y.Yamashita は元のコルシカ民謡のフレーズが はっきりとわかるもの。from Corsican Folksong はコルシカ民謡をモチーフ としているが原型をほとんど止めないもの。だそうです。(コンサート時の 山下さんのコメントより。)
このCDを聞いていると、ああ山下さんはまたしても1つのターニングポイントを 越えたのだ、という感慨が湧いてきます。新境地という言葉はこのCDのために あるんじゃないでしょうか。
その新境地を象徴する曲が Echo of Gray だと、ミミズは勝手に思いこんでいる のですが、勝手すぎますかね。でも、今まで山下さんのオリジナルには こういう曲は無かったんですよ。何が新しいかというと、バッハ・イディオム の曲なんです。バッハの曲そのものは時々取り上げていた山下さんですが、 自分で作ったのは初めてのはずです。C.Jobim の Meu Amigo Radames あたりに 触発されたところもあったのじゃないか、とも愚考いたしますが、 ご本人に聞いた訳じゃないので、話半分で読んどいて下さいね。
今まで同様山下節のエッセンスが詰まったアルバムですが、音のエネルギーが 荒々しさ・轟音という形ではなく、静謐・端麗という方向に向かっている 類い希な作品。山下洋輔はフリーだからちょっと...、という喰わず 嫌いなあなたにも是非聞いて欲しい1枚です。
(1997年5月6日)