7月14日(月)−その1


 ためていた3本のコンサートのうち、2本を一挙公開!?
 7月3日・4日、ピアソラ流行に便乗してこんなのに行ってきました。 シアター・コクーンで4日間開催の「オールタナティブ・ピアソラ」 3日目・4日目です。
 始める前に、ピアソラって最近よく聞くけど何なの? という方へ。 アストール・ピアソラさんは、バンドネオン奏者であり、アルゼンチン タンゴの作曲家です。今年は没後5年にあたりその数字のキリの良さも 手伝って突然のブームになっています。わりと、クラシック愛好家から タンゴに流れてピアソラにはまっている人が多いようです。
 「タンゴの破壊者」なんて陰口を叩かれた時期もあったくらいで、重厚で 破滅的で形式にとらわれない曲調が特徴になっている、のだと思うけど、 タンゴそのものに詳しくないと、この辺自分の言葉で説明できないな。 勉強不足でごめんなさい。
 では、始まり始まり。


●7月3日 オールタナティブ・ピアソラ3日目 at シアター・コクーン
 
 第1部 セルジオ・アサド(g)
     オダイル・アサド(g)
     フェルナンド・スアレス・パス(vl)
 第2部 エリザベート・ホイナツカ(チェンバロ)
     パル・アルネ・グローヴィゲン(バンドネオン)

 1曲目の途中で開場到着(ぜーぜー、はーはー)。 アサド兄弟のデュオ演奏で始まっていた模様。動悸と汗と気分が落ち着いて みると、いや凄いは、この人たち。
 そりゃあ兄弟ですけど、あの呼吸の合い方はとても別個の2人の人間が 出している音とは思えない。早弾きのユニゾンなんてもう! この人たち 一緒にギター持って、いっせいのせ、でお母さんのお腹から出てきたのじゃ ないかしら、てなもんです。(双子じゃないと思うけどね。)

 個人的にひとつ発見。こうして聞いてみると、ギターの音ってストレート ですね。というのは、ギターだけでピアソラ特有の変態和音(ただの不協和音 よりもっと複雑怪奇な音だ、ということ)を奏でるとそのまんま変態和音 なんです。これをバンドネオン、もしくは複数の楽器で出すともっと雑音を含んで、 ジュワーッとかジョワラーッ的、えも言われぬ味をかもしだすのではないかと思うんですが。
 言葉で説明するのは難しいけど、うーん、お寺でお経を唱えてからチーンと 鳴らす鐘があるでしょう? あれと除夜の鐘のゴーンといういんいんとした音。 そういう音色の違いが感じられたのです。ずいぶん、ニュアンスの違う ピアソラになってると思う。

 途中バイオリンが加わって3曲演奏。バイオリンのピアソラというと、 つい、話題のギドン・クレーメル Gidon Kremer ( Hommage a Piazzolla (Nonesuch 79407-2)というCDで、最近のピアソラブームの先駆となった人です。) と較べてしまうんですが、こちらの方が場末のにおいがするというか、 人間くさい感じがしました。


 2部、セッティングが凝ってました。ステージ上に椰子の木を2本立てて その間にチェンバロを配置。背後には真っ赤な光線をサーチライト状に投影。 どういうシチュエーションなんだろう?

 そこへ、金髪アフロヘアー(もじゃもじゃのペーター、て知ってます?) 黒のシースルーのTシャツに黒のぴったりしたベスト、黒のスパッツ、 黒のピンヒールのパンプスという出で立ちで、何やら女性のアカペラを BGMに、ホイナツカが登場。
 この格好と演奏が見事にマッチしていることが、程なくわかりました。 チェンバロであんなに挑発的な演奏ができるんですねえ....。圧倒されました。 従来の上品なチェンバロの奏法でタンゴをやったとしても、とても物足り なくて聞いてられなかったと思われますが。ましてピアソラなんて。
 対するグローヴィゲンは、とても気さくそうな風貌の人で、出てくる音も 威圧的な感じはないです。でも二人の合奏には違和感が無い。重厚な響きが 倒錯的に気持ちいいです。(危ないなあ (^^;) )
 Buenos Aires hora cero もやりました。前述の Hommage a Piazzolla の 収録曲のなかでも一際凄みのあるあのテイクは、このホイナツカとグロービゲンの 参加によるものなのですね。(絶対おすすめのCDだから、是非手にいれて 下さい! 探すならクラシック・コーナーね。)CDで時折聞こえる、何かを打ち 鳴らす音は、コイナツカがチェンバロの側面を叩いていたのでした。 CDではクインテットの演奏なのですが、二人だけでも迫力十分! 
 音楽は生演奏に限ります。

 次に続く。(飽きた? まあ、そう言わんと。)


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