7月21日(月)

 よし、梅雨が明けた! 夏だ、ジャズだ、コンサートだあっ!! (海だ山だとは決して言わない。不健康だねえ。)

 こってりしたのを2本聞いてきました。まずはこれ。 鼓童ギャザリング公演(7/18〜20)の初日です。

●鼓童 ギャザリング  at Bunkamura オーチャードホール
   Rock'n Kodo − ありときりぎりす
        Produced by Kiyohiko Senba

   出演:鼓童(和太鼓、笛、鳴物、踊り、唄ほか)
      仙波清彦(ドラムス、パーカッションほか)
      三橋美香子(ボーカル)
      ブラボー小松(ギター)
      浦山秀彦(ギター)

 太鼓好きの方なら、鼓童(こどう)の名は勿論ご存じですね? 佐渡島を本拠地に、 革新的な太鼓演奏に取り組んでいる和太鼓集団です。 和太鼓グループが各地に続々と誕生しているらしいですが、 その中ではもはや鼓童は老舗でしょう。拠点を佐渡島においていながら、 メンバーに佐渡出身者がいない。どこかの伝統芸能に偏ることなしに、 日本の今と昔をつなぎ合わせて独自の音を作り出し、結果、非常に日本を感じさせる 太鼓を聞かせてくれるグループです。

 さて、ギャザリングと銘打った毎年恒例の実験コンサート、 今回で7回目になるそうです。 ギャザリングには山下洋輔さんも参加したことがあって、CDになってます。 (鼓童 ギャザリング (SONY RECORDS / SRCL2174) もう1枚 ボレロ〜鼓童vs山下洋輔ライヴ〜 (日本コロンビア DENON / CF-3508) という共演作もあります。)

 さて、その7回目のギャザリングをプロデュースすることになった、 仙波清彦。仙波さんは、「師匠!」と呼ばれることの多い人ですがそれは何故か? 歌舞伎の囃子方家元、仙波流のご長男だからですね。10歳の頃から 囃子方として出演しているそうで、バリバリの邦楽演奏家。一方で日本でも有数の パーカッショニストであり、ポップス界にも顔がきき、打楽器を始め数十人の 演奏家を寄せ集めたはにわという怪しげなグループの主催者。 最新CD ジャスミン・トーク はとにかく素晴らしい作品です。非ジャズの おすすめコメントを書くとしたら、真っ先にとりあげたい! (いつのことやら)

 前段が長くてすみません。

 今回のコンサート、チラシや案内状ことごとに、PAをフルに使った演奏だから 席の選び方に注意しろ、と書いてあって....。選ぶもなにも、私がチケットとった 時にはもう2階席・3階席しか空いてなかったんだけどさ。

 オープニングで謎がとけました。のっけから強烈なヘビメタ・サウンド。 目一杯ボリュームを上げた2本のギターがギヨエーン・グエ〜〜・クェケケケ・ヒーー (キーンを通り越してヒーンという感じ)と絶叫し続け、そこに三橋美香子の ツヤツヤのよくのびる歌声、仙波さんのドラム、15人の太鼓打ちの体を張った激奏。 久々にミミズ、耳が痛くなりました (^^;) 。
 全編これだったらちょっともたないなあ、と珍しく気弱になっていると、 最初の2曲が終わったところで仙波さんがマイクをとり、 「えー私が、全ての責任をとる、と言った仙波清彦です。−−皆さんの鼓童を、こんな 不良にしちゃってご免なさい。」と苦笑混じりにご挨拶。この後のメニューを ざっと説明してくれて、どうやらバラエティに富んだ出し物が続きそうなので一安心。

 まさにめくるめく仙波ワールドでありまして、 江戸囃子にガムランのスパイスを効かせた曲。ロックサウンドに篠笛を絡ませ、 深海のクラゲのような衣装の舞い手を登場させたオドロオドロしい曲。鼓童の太鼓に 仙波さんのパーカスを重ねた、リズムと音色だけのシンプルな曲。etc.,etc.。
 鼓童少年少女竹筒合奏団という出し物があって、6音からなるメロディを、 短音しか出ない竹の楽器(前に名前を聞いたんだけど、何てったっけなあ?)で 演奏するというもの。音域を変えて3オクターブにわたってやるから18人必要。 (ハンドベルってわかりますか? あの要領です。)しかもこれどんどん加速する。 最終的に(わたしの記憶が確かなら!)四分音符=156くらいの早さのところに 瞬間的に16分音符が入ったり3連符の連続技が出たりで、もの凄くエキサイティング!

 賑やかに唄って踊っての民謡コーナーもあったりで、次から次へと息もつかせない 満艦飾のステージでしたが、何と言っても圧巻は、2ndステージ終盤の 2台の大太鼓対決でした。

 2台と言ってもひとつは櫓の上にドーンとそびえる六尺太鼓、褌一丁ねじりはちまき姿、 腰を落とし直径4センチくらいの太いばちを真っ向から振り下ろす正面打ち。 対する仙波清彦はごく普通サイズの大太鼓ながら、この時だけは羽織袴に着替え、 歌舞伎の大太鼓特有の細く長いばち(何しろ長い。太鼓の直径よりも長い)を手に、横構え。
 音量が釣り合わないと思うでしょう? まったく遜色なし。どころか 六尺太鼓の重く激しい音と歌舞伎の太鼓の細かく鋭い音が重なって、いやが上にも 凄みが増し、まるで、それこそ歌舞伎の大立ち回りを見るような、 手に汗握る大競演となったのでした。特に、仙波さんのばちさばきはひらりひらりと 優雅この上もなく、その上腕がどんなに大きな振りをしても腰から下が 微動だにしないという....。見事です。目が離せませんでした。

 不思議なもので、コンサートが終わる頃にはすっかり耳が慣れており、 ロックになろうが民謡になろうが、自然に音に身を任せて楽しんでいました。 (3日目を聞きに行ったうちの母も、最後には太鼓とロックはよく合うんだ、 と納得したそうです。)奇才仙波清彦の面目躍如。いや参った参った。


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