11月18日(火)その1

 ご無沙汰してます。何の申し開きもできません。単なる怠けです。(^^;;;

 先々週は、一週間の間に2本もオペラを見るという暴挙をやったのです。 で、先週の土曜日はというと、これ以上ないというほど豪華超盛り沢山の ガラ・コンサート。何をやってんだか、ねー。

 そもそも、私、今までオペラなんて、えーと2〜3本しか見てないし、 乱暴を承知でミュージカルを加えても、やっと片手が埋まる程度。 一緒に見に行った妹も似たようなもので、従って二人とも、 自分たちが見に行こうとしているものがどのようなものなのか、 よく分かってなかったという....。実にまったく無茶な話しですが、 演目は「トスカ」と「ドン・ジョバンニ」。入門編としては妥当な選択だったつもり。

 「トスカ」は11/2彩の国埼玉芸術劇場で、スロヴァキア国立歌劇場の公演です。 歌姫トスカ役は佐藤しのぶ。トスカの恋人で画家のカヴァラドッシにペーター・ドヴォルスキー、 稀代の悪役で警視総監のスカルピアにシェリル・ミルンズ。

 いやー、オペラって面白いものだったんですねえ。実はミミズはこの日は大遅刻を やらかしたので、実質、2幕から鑑賞したのですが、面白くて面白くて終幕まで あっという間でした。(幸い、ストーリーを知っていたので助かった。 しかし、これが3度目ですが、オペラの遅刻だけはできればしたくないですねえ。 音楽の切れ目がないせいか、絶対に中途入場させてくれないのだ。)
 あらすじだけ読んだら、こんな単純な話のどこが面白いんだ?てなもんです。 人物だってパターン化してるし。それを音楽で引き延ばして 上演時間3時間の大作にしてるようなもの。なのに、全然大味な感じがしないで、 むしろ説得力があると思ってしまうのは、一体どーゆーからくりがあるんだろう?

 で、とにかくスカルピア。徹底的に悪役のスカルピア。狡猾で傲慢で何でも自分のものに しないと気が済まない、しかも有能な(!)大悪人のスカルピア。この物語のキーは トスカではなくスカルピアです。この人がいなければ、 処刑されようとする恋人の為に苦悩するトスカも、 思いあまってスカルピアを刺殺し手に付いた血に悲鳴をあげるトスカもありえないし、 そんなに魅力的とは思えないカバラドッシが格好いい硬骨漢になる機会もありません。
 そのスカルピアが素晴らしかった。執務中の、もしくは 一人でグラス片手に我が世の春を歌うときの、それからトスカに迫るときの、 シチュエーションによってそれぞれの悪人ぶり。(あれだけの悪人だったら、 相手が後ろ手にナイフ持ってるかどうかくらい、気づくと思うんだよなー、普通。) 歌声の迫力だけでは、ああはいかない。オペラ歌手って、大変。
 音楽である以上、言葉数は少ないし台詞まわしのテンポが決まっているし、 普通にしゃべっている時にはあり得ない変な間(ま)がある。 それを声色や抑揚でさりげなく膨らまし、演技で補っていくわけでしょう。 俳優の演技力とはまた違った配慮が必要に違いない。

 大変なのはトスカ役もいっしょで。ああも色々なことを次から次へとやらかして、 しかも、すべての行動がほとばしるような情熱に裏付けられている、というんだから。 佐藤しのぶさん、本当に上手かったんですね。(失礼、だって、噂だけじゃ本当かどうか 分からないじゃない!)まさに、迫真の演技。ストーリーのチープさ (と敢えて言ってしまう)ゆえに、トスカの行動に矛盾があっても、 全然気にならなくなってしまうという。
 パンフレットに、プリマドンナの条件のひとつは、 プリマドンナは劇中何をやっても良いのだと観客に思わせるような存在感だ、 というような文章が寄せられています。納得。
 最後は、見事に背中から城壁の外に身を投げて果てました。ブラボー!

 まずいぞ、これは病みつきになるんじゃないか、と思いつつ帰宅しましたが 追い打ちが5日後にあるのだな。困った困った。


人に見せる日記 目次
ホームページ

製作者=水のなおみ
All Right Reserved by Naomi Mizuno.