10日おいて、今度は蜷川さんの「ロミ・ジュリ」であります。 そもそもこれが本命だったんです。
●1/27「ロミオとジュリエット」 @彩の国埼玉芸術劇場 大ホール
演出:蜷川幸雄
出演:大沢たかお(ロミオ)、佐藤藍子(ジュリエット)、片桐はいり(乳母)、渡辺哲(ロレンス神父) 他
何しろ彩芸、大見得切ってますからあの手この手の広報合戦、話題性十分、 スタッフも役者もばっちり。漏れ伝わってくる裏方の声からもまず大丈夫だろう、 とは思うものの、10日前におおはずれを見たばっかりでこちらは気が気じゃ ありません。これしくじったら、この先の13年間は目も当てられないことに なるかもしれないしね。応援団としては、その辺も心配だったりして。
文句無しに素晴らしかったです。奇をてらったことは何もしていません。 素直に作品を解釈して、見事に生身の世界に立ち上がらせています。 よく知っている物語だし、本当いうと、シェークスピアの中では嫌いな作品なのですが、 不覚にも感動してしまいました。ブラボー!
大沢たかお、良かった。あの舌を噛みそうなロミオの長台詞をよく自分のものに
したなーという感じ。もちろん恋の場面も良いのですが、友人たちと軽口を叩いている
シーンも好きでした。軽快で躍動的で、若々しさ溢れる好青年。
彼をとりまく友人たちも好感がもてました。いかにロミオという友達を
彼らが大切に思っているか、がじーんと伝わってくるのです。
佐藤藍子。初舞台だというのですがとてもそうは見えなかった。凄い度胸だと思います。
情熱的なジュリエットそのものでした。このジュリエットなら、物語の最後がああなって
しまうのも納得できます。
乳母がまた良かった。片桐はいりは当然のことながら乳母という年齢ではないですが、
下品でエネルギッシュなおばさんっぽさは実にお見事。
ロレンス神父、ぼくとつでおとぼけ・不良っぽい、という異色な感じの役作りを
してましたが、なかなかいい味出してました。
装置もシンプルでとてもよく工夫された凄いものだったし、格調高い素敵な衣装だったし。 それから音楽と光のコンビネーションが最高だった。 ここの劇場のスタッフは優秀な人揃いで評価が高いのだそうです。知らなかった。 とにかく、ちょっと見シンプルなくせに、小道具も美術もディテールまで凝りに凝ってます。
なぜか彩芸での上演を終わって1ヶ月もたってから、埼玉テレビでこの「ロミ・ジュリ」 のメイキングものの番組をやってました。蜷川さんの今回のねらいは「疾走感」 だったそうです。それを聞いて「あ、なーるほど」と思ったのですが、 ロミオとジュリエットが出会ってから死に至るまで、たった4日間なんですね。 その4日に凝縮されたドラマと生命の燃焼、ほとばしるエネルギー。確かに、そういうものに 圧倒されたのだと思います。実際、大沢たかおも佐藤藍子も、輝いてたもんなあ。
これだけお芝居に勢いがあると、原作上の小さな矛盾や疑問点をあげつらって へんな辻褄合わせや細工を施す必要は全然なくなる。んでしょう、多分。
何はともあれ、最初の演目が大成功で、いや目出度い目出度い (^^) 。 13年間通うから、頑張って続けて下さいね、関係者ご一同様。