12月23日(水)

 どーもどーも、お久しぶりです。いやあ、忙しくってさあっ、ケラケラケラ。 殆どヤケ(^^;)

10/12 林英哲「万零」 at国際フォーラム
  林英哲(太鼓)、木下伸市(津軽三味線)、土井啓輔(尺八)

 メンバーはこの他に若手の太鼓が2人。パンフレットが行方不明で 名前が調べられない(^^;;;
 しかも曲名が今一判然としないのですわ。パンフに曲名があったものの、その順番通りに 演奏してなかったから。ま、いいやね。

 タイトルが万零というだけあって (これ、写真家のマン・レイから来ているそうです)、とても現代的なイメージの コンサートでした。舞台のライティングも、心なしかシャープ。
 で1曲目、冒頭3人の太鼓が打ち出すリズムと音の構成に、現代曲という言葉が 浮かびました。別に、日本のリズムを敢えて外している訳でもありませんが、 なんだろう、淡々と叩きながら色々な叩きものの音色の組み合わせを 聞かせるあたりが、時としてミニマル・ミュージックのように聞こえるというか。 1曲目は途中から三味線と尺八が入るので、かなり和っぽく勇壮な雰囲気になりましたが、 2曲目は木下さんが抜けて、更に淡々と音を重ねていく複雑なリズムが強調され 面白かったです。
 3曲目の曲は林・土井duoによる風の回廊 という土井さんの曲で、 英哲さんは木鐸と桶胴太鼓のセットを使用。 本当にこうなると単なる太鼓打ちじゃなくパーカッショニスト、ですわねえ。 まさに風を感じさせる尺八と相まって、空間や余韻を巧みに聞かせる太鼓がお見事。 次の木下さんの海流 は林・木下duoで、こっちは 威勢のいい大和魂溢れる曲ですけど、やっぱり色々な音色を叩き分ける英哲さんの 手並みはただ者じゃあありません!

 圧巻は新曲万零 でした。大太鼓のソロ曲です。ステージ中央の高い壇上に 英哲さんのあの巨大な大太鼓。その両脇の広い空間に、不思議な形のオブジェ (鉄板か何か?)や太い竹が数個ずつ天井から吊るされています。
 左手から英哲さん静かに登場。両手にバチを持ち、ゆっくりゆっくり、こちらが 思わず息を詰めるほどゆっくりゆっくり舞台上を進んでいきます。金属片にぶつかると それをコーン、カーン...次に竹筒にぶつかるとそれをカラコロ。左右すべての オブジェと竹を叩き終わるまで、バチを構えたままその歩みはあくまでも 静かにゆっくりと。まるでそれは、閉じた扇をかかげたまま スルリスルリと歩を運ぶ、お能の舞を見ているようです。 余程自分の振るまいに自信があって、体中の筋肉を思うようにコントロールできなければ、 こんなのできないよなあ。
 曲は激しい大太鼓のソロを挟んで、冒頭と同様、静かな歩みと音色でエンディング。 英哲さんが袖に消えたと同時に、オブジェたちが、まるで昇華されたようにするすると 天井に引き上げられ消えていきました。何とも幻想的な曲です。

 その後、再び木下さんとのduoで、SHI-BU-KI 。広い舞台ですから、二人の 位置は相当離れているのですが、しっかりと意志が通じ合っているのが傍目にも よく分かる、痛快な演奏でした。

 アンコールはソロでかいや節
「何の因果で貝殻舟漕ぎなろうた/色は黒うなるし身は細る/やれ漕げ、それ漕げ」
哀愁に満ちた唄の後、やれ漕げそれ漕げ、から強い曲調になってテンポの良い 太鼓ソロに移ります。声は良いし、太鼓は格好良いし。渾身の力で叩いているのに どこか涼やかな感じのする男前だし。追っかけのおばさまたちがキャーキャー言うのも 無理ないですねえ。

 メインの万零 でも分かるとおり、英哲さんはビジュアルにも 非常にこだわる人で、生演奏付インスタレーションを目指しているのではないかと 思ってしまったほど。でも英哲さんの芸というものを見せつけられると、 そこまでやって当然という気にさせられます。
 と同時に。今、節目というものを感じているという英哲さん。 凝りに凝ったステージ運びに、これからを模索する彼の姿をかいま見たような コンサートでもありました。


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