2月27日(日)

お元気ですか?ミミズは寒さに凍えております。春よ来〜い!
さて、お久しぶりのライブ・レビューです。

●2000年1/9 ニューイヤー・コンサート  山下洋輔の「もう一つの夜明け」
   at 東京オペラシティ コンサートホール:タケミツ メモリアル

 山下洋輔(p)、金聖響(cond)、植村昌弘(締太鼓)、東京フィルハーモニー交響楽団

初めて山下さんの口からこの計画について明かされたのは...あれは一昨年? それとも一昨々年?のカザルス・ホールだったと思いますが、ついに現実となりました。

プログラムに添えられた「出演者変更」のチラシ、思わず目を疑ったことには 指揮者変更でした。予定の佐渡裕氏が急病で、急遽、若手指揮者金氏にバトンタッチ。 佐渡さんの推薦文入りのお知らせの紙でした。うーむこれは楽屋裏の緊張やいかに。

1部はソロ・ピアノです。オケ用の椅子が積み上げられ譜面台が林立する前に ピアノがポツネンと。ちょっとシュールなそのステージ上に、山下さん、 にこやかに登場しました。曲はAnotherDawn。NYトリオの演奏でCD WAYS OF TIME に収められている懐かしい曲です。最後の余韻の音を長々と響かせて、静かに美しく 弾き切りました。それからこのコンサートの為の新曲。 舞曲を連ねた組曲形式の曲でしたが、当然クラシック音楽な訳はなく、 それぞれ諧謔的メヌエット、観念的ワルツ、疾風怒濤型ジグ、ってな様相を呈しました。 緩急自在、情緒もエネルギーもふんだんに盛り込まれて、面白かったです。

そしていよいよ2部。まずはオーケストラとピアノの為の<仙波山>が演奏されます。 土壇場ピンチヒッターの金氏、大きな笑顔で「頑張るぞ」とアピールしながら壇上へ。 痩身、きびきびとした動き、すごく元気の良い指揮者、という印象です。 曲は、そうだなあ、「あんたがたどこさ」をジャズにしてしまったあの意外性を 上手にオケで表現しているというか、原曲のワクワク感がそのまんまオケに乗っている というか、好感の持てるアレンジだったと思います。響きわたる不協和音の中から ピアノの音が段々と立ち上ってくるエンディング、好きでした。

さあそして!問題のコンチェルトです。正式名称を
ピアノコンチェルト第1番 − 即興演奏家の為の<Encounter>と言います。
encounterかあ。出会い頭の一発、というイメージがありますね(笑)。

第1楽章:現代曲なんですが、ん?どこからともなくジャズの匂いが...という感じ。 銅鑼が鳴り響きトランペットが高らかに鳴り渡る場面もあれば、オーケストラが全員 フリーで弾きまくる凄まじい場面もあり、早くも盛り沢山です。
第2楽章:映画「カンゾー先生」の中で不安感を煽っていたBGM。 あの雰囲気を思わせる曲。コンサートマスターがハーモニクスでヒィ〜〜 という音色を奏でる中間部、背筋が何やら寒くなりました。
第3楽章:NYトリオの最新作 Fragments1999 のタイトルチューンFragments がもとになっています。原曲には聴く者を幻惑する細かく複雑な音のテーマが現れますが、 それをそっくり弦にやらせてました。うひゃーっ忙しい!面白い〜っ! その上でしっかりクラシック風のアレンジをして、なかなか凄まじくも派手な世界を現出。 山下さんが「気に入っている」というエンディングは、 段々と全体の音数が減っていき最後にふっと空白が訪れる、というもの。 4楽章で一挙に様相が変わるための準備、なのかな?
第4楽章:ここで締太鼓登場。植村さん「行くぜ!」という感じでオケにガッツポーズ、 始まりました。軽快な太鼓の音に3楽章までには無かった安心感があります。 この楽章も上がったり下がったり走ったり踊ってみたり、とにかく盛り沢山な印象の 曲でしたが、終始太鼓が曲を締めてくれてる感じで、太鼓を入れたのは大正解でしょう。 (山下さんは「掟破り」とコメントしてますが。) 山下さんがぐっと植村さんの方を振り向いて「せーのっ」で始まった2人の 競演の場面はとにかく迫力満点で手に汗握る名場面。 最終楽章にふさわしく、オケもソリストも思いっきり盛り上がってました。

演奏が終わると同時にわき起こる激しい拍手の波。当然ですね。 山下さんは満面の笑顔、植村さんはオケに向かって「やったぜ!」のガッツポーズ (またしても)でオーケストラの人たちと満足感を分かち合っている感じでした。 指揮の金氏は心なしかほっとした表情、そりゃあそうだよなー。ご苦労様。

曲目解説の最後の方で山下さんは「何度も再演したいし、他の人にも弾いてもらいたい」 と書いています。曲は変わる物ですから、このコンチェルトも再演を重ねる内に どんどんこなれて熟成されて変わって行くでしょうね。何しろこちとら、 初演に立ち合ったのですから、その変化を存分に楽しめるはず。コンチェルト第1番が 数え切れないほど再演されるよう、祈っています。


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