今年もこの季節がやってきました。春ですね〜。
●4/2山下洋輔ソロ・コンサート〜リラキシン・ウィズ・スタンダード at カザルス・ホール
1部:Waltz for Debby/Blue Monk/All the Things You Are/My Funny Valentine/A Night in Tunisia
2部:Donna Lee/Parisian Thoroughfare/Cleopatra's Dream/無伴奏チェロ組曲第1番/Clay
アンコール:鳥の歌
そうなんですよ、ほとんど全部スタンダード!コンサートに1曲、2曲
織り交ぜることはよくあるんですが、まとめてスタンダードなんて滅多にな!。
人前初挑戦ものも多い、素敵なコンサートでした。
それにしても響きの気持ち良いホールです。さしもの山下さんの太い音も、
音が羽衣付けて踊りながらこっちに向かってくる気配がします。
丁寧に音を鳴らすところから始めて、どんどんスイング感が高まり、
しまいには肩に両手をかけてゆさぶるような状態になって(笑)、
でも最後はちゃーんとテーマに戻ってきたWaltz for Debby。
今日は聞き応えありそーだぞー、と期待を抱かせるオープニング。
Blue Monkは山下さんもよく取り上げる曲ですが、今回「あっ」と思ったのは、
そうか、この曲って名前通りブルースだったのね、という当たり前の事実。
うーん、モンク自身のオリジナルを聞いても、ブルースのイメージなかったんです。
皆さんはいかがですか?
枯葉はあまりにお馴染みだから、と言ってMy Funny Valentine 。
(山下さんのMy Funny 〜もわしゃ大好き。嬉しい。)
しみじみと噛みしめるように余韻を響かせたあと、
1部のしめくくりがこれまた大好きなチュニジア!
通奏低音リズムとでも言えるような、ドスの効いた音群がとにかく快感。
(この辺これまた今回敢えてはずしたと思しい、ボレロ に通じるものが...。)
エンディングでは、ピアノごとドーンと客席に投げ入れたような轟音が
ホールじゅうにとどろきき渡って、最後の音塊を弾き終わるや、
客席、割れるような拍手。気持ち良い〜っ!
2部のオープニングは、思わず笑いました。こ、こんなのやるかぁ?
難曲中の難曲Donna Lee です。
譜面を見ると臨時記号の多さに頭がくらくらするやつ(苦笑)。
ピアノ・ソロでやること自体珍しいような気がしますが、いとも軽々と、さすが。
こんな軽妙洒脱なドナ・リーは初めて聞きました。
でも、「やはり...難しいです」とはご本人の弁。コードが少ないので処理に苦しむ、
などとおっしゃってました。そんなもんですかね。
で、早くて洒落てる路線でParisian〜、Cleopatra〜と続き、
山下さんの指、転がる転がる。もう、手に汗握るという域をとうに越え、
嬉しくて楽しくて意識が宙に浮いて駆けずり回りそうです。
よく山下さんは、自分の奏法は自己流である、というようなことをおっしゃるんですが、
自己流であんなに指が動くものなのか?目を凝らして手元を注視するのですが、
どうなってるのかよく分からなかったです。
最後の2曲は、これから大阪方面でやる(オーボエの茂木大輔氏出演とのこと)
「ラウンド・アバウト・バッハ」(!?)という題のコンサートの予告編。
無伴奏チェロ組曲はCD Rhapsody in Blue 収録曲ですが、
これカザルスで聞くと格別。何しろあの響き。アルペジオの美しさったらない訳で。
思わず、恍惚。
多分、山下さんの足は無闇にバタバタしているのではなく、
実はペダリングが絶妙なんだと思う。
音の響かせどころをよく知ってるというか。
1曲だけオリジナルをやらせて下さい、と選んだ最終曲も、数ある山下さんの曲の中では
かなり古典のClay でした。のっけから音の塊だらけの曲で、最後の1音まで
脳味噌を思いっきり揺さぶられ続け。またしても最後の1音弾き終わった瞬間の熱い握手。
聴衆同士が、爽やかな一体感を味わう瞬間でもあります。
アンコールはこれだけは毎年恒例のカザルスに捧げた鳥の歌 でした。 あれだけの白熱大興奮の演奏と熱狂的な拍手のあと、 しっかりと心を落ち着けるような味のある演奏でした。 演奏者自身といっしょに、すうっと音楽の芯に吸い込まれていくような。 これまた別の種類の快感です。
今年は秋にソロ・アルバムを予定しているという山下さん。NYトリオの日本公演は、
逆に編成を大きくして、更に来年のNYスイート・ベイジルのギグにつなげる予定とか。
多分、「スタンダードばっかりだ?山下洋輔もすっかり大人しくなりやがって...」
などと苦々しく舌打ちする人、いたと思いますが。
山下さんは確実に変化し続けている、次のステップに移動している、
というのが今日このコンサートの現場に居合わせたミミズの感想です。
やっぱり、今年の山下さんは目が離せません!