6月13日(日)その2

 せっかく再開するに当たって、半年以上前のライブのレポートするのも何ですから、 最近行ったコンサートのなかでもとりわけ面白かったこれを。

4/18 佐藤允彦チェンバロ・ソロ at所沢 松明堂ホール
     〜チェンバロで聴くスタンダード・ジャズ〜

 んー、今となってはそんなに新しいネタでもなかったか(^^;)

 こじんまりした、響きの良い、チェンバロを聞くためにあるようなホールです。 木のベンチが整然と並んでまして、アバウトで席数80位。 余計な装飾のない白壁が地下教会という感じで、落ち着きます。 (松明堂のホームページ)
 小ぶりなステージの真ん中に、洒落たモダンなデザインのチェンバロが 置かれ、折しもチューニングの最中。その調律師さんが格好良くて、いきなり 目釘付けです。薄グレーの背広に細淵目がねというインテリっぽい格好に、 腰まである長髪を一つにまとめて細ーく背中に垂らした、正真正銘の美青年! キャー!目の保養したわ!(すみません、突然「おばさん」しました。)

 さて、ジャズライフ誌の連載記事で、水玉蛍之丞さん描く似顔絵そっくりの 佐藤允彦さんが、ひょうひょうとした様子で現れました。
 「音楽を聴く仲間の会」というグループの主催するコンサートです。 チェンバロを使って、というのはこの会の提案で、佐藤さん、 人前で弾くのは初めてだったそうです。で、佐藤さん曰く 「今日のお客さんは、わざわざお金を払って実験に 付き合ってくれるありがたいお客さんです。」
 ...何をおっしゃいますことやら。いやあ良いもの聞かせていただいてラッキーでした。 是非、この企画で1枚CD作って欲しい!

 チェンバロでしょ?スタンダードでしょ?下手すりゃ、すごーく 堅っ苦しいものになりそうな気がするでしょ?バッハとかヘンデルとか、 あーゆー世界に走りそうじゃありませんか。

 あの楽器はピアノ以上に、指のタッチが安定してないと きちんとした音が出ないのではないかと想像しますが、佐藤さんの手は 滑らかでそういう危なげなさが感じられない。どころか、のっけから どんどんスイングしてるんで、意外というか衝撃的というか、目から鱗。
 チェンバロって、音がすごくジューシー。ピアノと違って、ストレートに 音が響くのではなく、一音一音がたっぷりと倍音を含んでジョワーッと 鳴るでしょ。強いて言えば何だろな、ラグダイムの音の歪んだピアノか はたまたオルガンか?その分音の組み合わせはシンプルになるけど、 あの雑味のある音がとても良いんです。
 音量が小さい分、かえって軽快。右手が時々、スイングしながら 軽く装飾音付けたりトリルしたりする。ううーん、と唸っちゃうくらい効果的。 んでもって結構、低音が渋く良く響くんですね。しびれる!

 結論。チェンバロはジャズのえー加減な雰囲気を ちゃんと受け止めることのできる楽器である。

 数々のエリントン・ナンバーやモンクの曲。後半になると「段々、 色んなことができると分かってきました」とか言いながら、ボサノバとか 農夫と狐 という北欧民謡まで飛び出しました。
 この方に固定概念というものは無いんでしょうか(笑)。もう、格調高く なんて意識全然なし。わたくし、笑いが止まりませんでした。 特にEpistrophy。これは何?中国風モンク?現代音楽モンク? 切羽詰まったモンク?ほとんどキチガイ沙汰としか言い様のない面白さ!

 アンコールなんて、ビートルズですぜ、あーた。 途中、チェンバロなりにかなりフリーな雰囲気になっちゃって、 実に怪しげで良かったですね。

 あの時の演奏を思い出すにつけ、何となく興奮してきて、 「世の中、面白いものがいっぱいあって嬉しいぜ!」と内心叫んでいる ミミズだったりします。
 あの楽しさを、あの場にいた聴衆だけが独占するのは余りに勿体ない! 是非、CD化をお願いしたい次第でございます。


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