−Tresure Hunters 〜夢という名の宝物〜−
「その噂・・・本当なんですか?」 ゼロスは半信半疑な目でこっちを見る。 「あたしの言う事が信じられないの・・・?」 あたしはゼロスの疑いの目を受け流そうと必死だった。 ・・・とある街の宿屋の食堂・・・ 女の子達が噂話をしていたのを耳にしたのは数日前のことだった・・・。 「なんでもね・・・想いを寄せる人とダンジョンの中にある一対の魔宝玉を手 にすると、その想いは成就するんだって。でもね・・・その宝玉って、2人で同時に 手にしないと意味が無いんだって。」 あたしは・・・3つ目のビーフランチセット口に運びながら聞いていたのだが、 気になったのでその女の子達を捕まえて詳しく話を聞いてみた。 そして・・・今、ゼロスと一緒に歩いてるというわけである。 ただし、ゼロスには「魔力を大きく増幅する宝玉の噂を聞いた」としか話してない。 つまりは・・・ゼロスは本当の噂話は知らないはずである。 「まぁ・・・なんにしても僕が付き合う理由ってあるんですか・・・?」 ゼロスは乗り気じゃないのか、そうこぼしていた。 「いいじゃない・・・ゼルとアメリアは二人で勝手に仕事受けちゃって出てるし、 ガウリイじゃ魔力増幅の意味無いもの・・・。まぁ・・・ゼロスも意味ないといえば ないのかもしれないけど・・・いいでしょ・・・少しくらい・・・それに・・・」 「・・・それに・・・?」 あたしは思わず口にしてしまった言葉をゼロスが聞き逃すわけも無くあわせるように 聞き返してきた。 「・・・それに・・・ゼロスなら・・・他のおたからがあった時・・・山分けしなく てすむじゃない!!」 あたしは、力一杯答えた・・・。 さすがに・・・本音がばれるのは嫌だったから・・・。 「そんな理由なんですか・・・?僕と組んだのって・・・」 少し抗議するような感じでゼロスはこっちに視線を送ってくる。 「・・・本当は・・・ゼロスじゃないと・・・ねっ・・・」 あたしは・・・聞こえないほどの小さな声でつぶやいた。 「・・・えっ?」 ゼロスもさすがに聞こえなかったようだ・・・。 「なんでもない、なんでもない。さぁ、サクサクといきましょ。 おたからがあたし達をまっている〜!!・・・ってね!」 あたしは笑ってゼロスに言った。 「ついたわよ。・・・ここでいいはず。」 あたしはダンジョンの入り口で指を差して気を吐いていた。 「あのぉ・・・ついたのはいいんですけど・・・それだけ元気なら僕の背中から降りて くださいよ・・・。」 ゼロスは疲れたような声で抗議してきた。 ・・・そう・・・ゼロスの背中にあたしはいるのである。 山道を歩いてる途中に・・・「疲れた」といったらゼロスが背負ってくれたのである。 「・・・今回だけですよ・・・。さっきみたいに「神滅剣で切る」なんていってももう やりませんからね。」 ・・・まぁ、なんにしても・・・ダンジョンに到着したのだった。 あたしが、しぶしぶゼロスの背中からおりると 「・・・ふむ・・・確かに・・・ちょっと異質な空気がダンジョンから出てますね。」 ゼロスは、真面目な顔をしている・・・。 ばれてたら・・・まずいよね・・・ あたしは・・・一人・・・心の中で安心していた。 ダンジョンの中は・・・あまり思ったより自由がきかなかった。 ・・・簡単に言えば・・・狭いのである。 あたしは少し余裕があるけれど、ゼロスではいっぱいいっぱい・・・ ・・・・・・本気でガウリイじゃ役立たずだったわね・・・ まぁ、あんなくらげ・・・どうでもいいけど・・・ そんな事を思いつつ前を行くゼロスの背中を見ながら歩いていると・・・ かさかさかさかさ・・・ 響いてきた音に驚き・・・ゼロスの背中に飛びついてしまった。 「どっ・・・どうしたんですか?」 ゼロスはいきなり飛びつかれたからか驚いたような声を上げて聞いてきた。 「あっ・・・いや・・・なっ・・・なんでもないわよ・・・」 少し・・・顔が赤くなってしまった気がした・・・ そのままいるとダンジョンの中を歩けないから・・・ゼロスの背中から降りた・・・ ・・・・・・もう少し・・・背中に抱きついていたかった。 そんなことを考えてしまった。 結局・・・さっきと同じくゼロスの後ろを歩いていった。 恥ずかしさのあまりうつむいていたけれど・・・ ただ・・・暗いところを歩いてるせいか・・・それともダンジョンの先のものが楽しみなのか・・・ 気がついたら、あたしはゼロスの手を握っていた・・・。 ・・・そして・・・ゼロスは・・・そのあたしの手を何も言わずに強く握り返してくれた。 前から・・・ゼロスと2人だけでゆっくりと話がしたい・・・自分の想いを伝えたい・・・ そんな気持ちで一杯だった・・・そして・・・ようやくチャンスが来た・・・。 今、ゼロスに自分の気持ちを伝えたい・・・。 ゼロスの手の暖かさを感じてそう思った。 けど・・・ゼロスが・・・受け入れてくれなかったら・・・ ・・・そう考えると・・・怖くなって何も言えない・・・ ただ・・・今はゼロスの手の暖かさがあたしの想いをつないでくれている・・・そんな気がした。 「リナさん・・・つきましたよ・・・ここが一番奥のようです・・・」 トラップやモンスターはそこそこあったものの到着した最深部・・・ あたしは、ゼロスの手を握ったままゼロスの横に立った。 「・・・こっち。」 あたしはゼロスの手を離すのも忘れて導かれる様に歩き出した・・・。 ゼロスも・・・あたしの手を離さずについてきた。 目標は・・・小さな玉座・・・ そこに・・・目標の・・・ 「・・・ないっ・・・ないわっ・・・なにもないじゃない・・・」 あたしは慌ててしまった・・・ 確かに・・・噂話をもとに来たのだから確実にあるわけじゃない・・・ しかし・・・可能性は・・・否定できない・・・ 「やだ・・・ないと・・・ゼロスに無理言って付き合ってもらった意味がないじゃない・・・」 あたしは必死になったあまり本音を口にしてしまった・・・。 ゼロスが聞き逃すはずも無く・・・ 「・・・僕ときた意味・・・?」 ゼロスは・・・あたりまえのごとく聞いてきた・・・ あたしは・・・観念するしかなかった・・・ ゼロスに街で聞いた噂話をすべて話した・・・ その後に・・・ 「・・・あたしね・・・ゼロスにいつのまにか心を盗まれてたみたいなの・・・ここしばらく ゼロスを見ると胸が苦しくなっちゃってね・・・一人でいるのがつらかったんだ・・・でもね、 何かする時に一緒に来て欲しいっていって断られるのが怖くって・・・結局一人で抱え込んで たんだ・・・で、あんな噂聞いたから・・・つい・・・でも、今考えて見ると・・・こういう のって自分の力で何とかしないといけないんだよね・・・。本当は・・・。」 涙で言葉にならなかった・・・ 「リナさん・・・ここに来た意味・・・あったじゃないですか・・・ 僕で良ければ・・・ずっとご一緒させていただきますよ・・・。」 ゼロスはあたしにそう言うとやさしく抱きとめてくれた。 あたしは・・・そのまま、ゼロスの胸に身を預けそのまま泣き崩れてしまった・・・ ただ、時が流れていくだけの空間で・・・ ・・・あたしも落ち着きを取り戻し、ようやくダンジョンの入り口に戻ってきた。 あたしとゼロスは・・・硬く手をつないだままで・・・ 「リナさん・・・僕の背中使います?」 ゼロスは微笑みながら言ってくれた。 「・・・ありがと・・・でも、今はいいわ。」 ゼロスの背中の温かさを感じたかったけど、2人で一緒に歩きたかったから・・・ 「ゼロス・・・」 あたしが呼ぶと・・・ 「リナさん・・・人間は・・・変なところでものに頼りたがります・・・でも、結局使う人間が その力を開封するんです。・・・自分の力で答えをつかめる様になりましょうね・・・。」 ゼロスは、こちらを向いて教えてくれた・・・ わかっているけど・・・苦しかったから・・・つい・・・ 「でも・・・リナさんは・・・いいんですよ・・・可愛いところ見せてくれましたしね・・・。」 そういうと、こちらを見ながら今まで以上に微笑んでくれた。 そんなゼロスに・・・ ・・・・・・・・・・・・ あたしは、軽くキスをした。 「・・・・・!!」 ゼロスが驚いているが・・・ 「・・・・・・来る時のお礼。」 あたしの顔は少し赤くなっていただろう・・・。 ゼロスは驚きの顔を隠して 「今のお礼は・・・帰りの分も含んでますね・・・」 そして・・・ 再び、ゼロスはあたしを背負ってくれた。 ゼロスの背中は・・・さっきと同じく温かかった・・・。

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