−Naming Doubt! 〜夢の中のはかなき思い〜−
ゼロスとダンジョンに行ってからすでに2週間が過ぎた・・・ あれから・・・あたしは、懐具合があまり良くなかったこともあり、いくつかの仕事をこなしていた・・・ そのため時間がなく、結局ゼロスとはあっていない・・・。 「このところ・・・会えてないなぁ・・・」 寂しさに胸を締め付けられていた・・・。 ここしばらくゼロスに会いたい気持ちで一杯になっていた。 切なさが日を追うごとに強くなっていた。 ふと、姿見の前に置いた小さな包みに目が行った・・・。 アメリアと買い物に行った時に買ったゼロスへのプレゼント・・・ ・・・通称「ラッキーアミュレット」という名の護符である。 店で店員に効力を聞いた限りでは、想いを寄せ合う者同士が身につけると、意思の疎通が出来るとのことである。 効果はともかくとして、薄いピンクと淡いブルーの一対になったアミュレットで形なども同じである。 「・・・・おそろいの・・・アミュレットか・・・。ゼロス・・・喜んでくれるかな・・・」 あたしは、小さな声でつぶやいていた・・・ そのまま・・・暖かな日差しに包まれてあたしは横になった・・・ ふと、窓から外を見てみると何やら見覚えのあるたたずまいの家があった・・・。 「ちょ・・・ちょっと・・・そっちにいっちゃだめですよ・・・」 小さな子供が笑いながら歩いていくのを必死で追かけている父親らしき人物がいた・・・ 「・・・・えっ?」 あたしは・・・目の前の事実に結論を見出せなかった・・・ 「・・・ゼロス!」 思わず・・・口にしていた・・・ しかし・・・その父親には聞こえていないかのようで、あいかわらず子供とおいかけっこをしていた。 そして・・・ 「あなた・・・そろそろご飯にしましょ。」 建物の中から出てきたのは・・・ 純白のフリルのついたエプロンをした・・・あたしだった・・・ そう・・・多少歳をとっているものの、どう見てもそこにいるのはあたしだった・・・ ・・・夢幻覚(イリュージョン)・・・? 一瞬そう思った・・・しかし、この質感・・・違う様だ・・・ でも・・・なぜ、もう一人の自分が・・・? あたしは、正直迷った・・・ 見るのをやめるか・・・このまま見るか・・・ 答えは簡単だった・・・最近会えなかった自分の好きな人がいるのである。 それに、あたしもいるし・・・ 深い意味があるわけでもない自分の行動を正当化する様に理由をつけてしまったが、このまま見ることにした。 ゼロスともうひとりのあたしは食卓を囲んで楽しげに話しをしていた。 その話が聞こえたわけではなかったが、子供の話をしているみたいでしきりにその子供を見ている。 子供を見てみると・・・どことなくあたしに似ているし、どことなくゼロスに似ている・・・ ・・・あの二人の子供だ・・・ あたしはそう答えを導き出した。 食事が終わるとゼロスは再び子供と庭で遊び始めた。 そして、もう一人のあたしはただ幸せそうに二人を眺めていた・・・。 あたしは自分の為の忙しさをいいわけにしてゼロスに会えなかった・・・ あそこにいるもう一人のあたしと同じようにゼロスと幸せにしていられるのだろうか・・・ あたしは・・・不安になって、どこか寂しいような気持ちを胸に再びベッドに横になった。 「・・・ナさん・・・・リナさん・・・」 ふと、ゼロスの声に我にかえる・・・ 見ると、いつもと変わらないゼロスが宿屋のあたしの部屋にいた・・・。 「・・・あっ・・・あたし・・・?」 いまいち状況がつかめなかったあたしは訳もわからずゼロスに聞いていた。 「・・・なんか、気持ちよさそうに寝てたんで声をかけるのためらったんですが・・・いきなりうなされはじめたんで・・・」 ゼロスは全く変わらない顔でそう答えた。 ふと、外を見る・・・さっきの家も無く当然ゼロスやあたしの姿もなかった。 「・・・・寝ちゃったんだ・・・じゃあ・・・夢・・・だったんだ・・・さっきの・・・」 あたしは、少し安心してつぶやいた。 「・・・どんな、夢だったんですか?」 ゼロスは、なんの引け目も無しに聞いてきた。 「・・・えっ・・・・」 あたしは、聞かれたことにびっくりしてか答えることが出来なかった。 「・・・あっ、別に無理して答える必要は無いんですよ。」 ゼロスはあたしの反応を見てか手をふってそういった。 「・・・・あたしと・・・ゼロスの子供・・・」 あたしは、顔をすこし赤くして答えた。 「・・・・子供・・・ですか。」 「あたしたちが庭のある家で、子供と一緒に暮らしてる・・・そんな夢だったわ。」 あたしは、夢の内容を答えていた。 「・・・・そうですか。・・・で、その子供は・・・どんな名前なんでしょうね?」 ゼロスは・・・ベッドに座ってそう聞いてきた。 「・・・そこまでは、わからないわ。」 あたしは、ゼロスの背中にもたれかかりながらそう答えた。 「そうですか・・・でも、かわいい名前だと・・・いいですね。」 「・・・そうね・・・強く、かわいい名前・・・そういうのがいいわね。 ・・・ねぇ、ゼロスだったら・・・どんな名前にする?」 あたしは、ゼロスにそう聞いてみた。 「・・・・そうですねぇ・・・名前って・・・一生使うものですよね・・・ましてや・・・自分の子供じゃ・・・しっかり考えないと・・・」 そういって、ゼロスは真剣に考え始めた・・・。 「あっ・・・ゼロス・・・やっぱいいわ。すぐに必要になるわけじゃないし・・・ それに、子供が出来たら・・・ゼロスのあたしへの愛情が半分になっちゃいそうだから・・・」 あたしは、ゼロスの背中から手を回して抱きついた。 「何言ってるんですか・・・リナさんは、リナさんですよ。僕にとってはリナさんが一番ですから。」 そういって、ゼロスはあたしの手に自分の手を重ねた。 その言葉が・・・ゼロスの手の暖かさとともにあたしを包んでいった・・・。 おそらくは・・・さっき夢で見た幸せそうなあたしと同じ顔をしているのだろう。 なんとなくではあるが自分でわかった。 しばらく、その余韻に浸っていた・・・ それは、会えなかった時間を取り戻したかったから・・・ 今、ゼロスと一緒に時を刻んでいるのを感じたかったから・・・ そして・・・なにより、今のあたしは幸せだったから・・・ 「ゼロス・・・これ・・・よかったら、つけてくれない?」 あたしは、包みから淡いブルーのアミュレットを取りだしゼロスへ渡した。 「おや・・・これは・・・?」 ゼロスは興味ありげに聞いてきた。 「・・・あたしと・・・おそろい・・・」 あたしは、顔を赤くして答えた・・・。 「リナさんとおそろいですか。それでは、大切にしないといけませんね。」 ゼロスはアミュレットを静かに腕につけた。 あたしもゼロスと一緒に腕につけて、ゼロスの腕の横にあたしの腕を並べた。 「・・・ねっ、いい感じでしょ?・・・寂しい時にアミュレットを見てゼロスを思い出すから・・・絶対に外しちゃダメだからね!」 あたしは、少し強気に出てみた。 「・・・はい。僕も大切にしますよ。これがリナさんだと思ってね・・・。リナさんの愛情がたっぷりつまってますから。」 ゼロスは、微笑を今まで以上に輝かせて答えてくれた。 「アミュレットのお返しじゃないですけど・・・リナさん・・・この手紙・・・僕が帰ってから読んでくださいね。大切なことがあいてありますから。」 そういって、ゼロスはあたしに手紙を差し出す。 「・・・なに?ここには、あたし達しかいないから直接でもいいじゃない・・・」 あたしは、寂しげにつぶやく。 「色々と書いてあるんですよ。それに、中身を見たら手紙で良かったって思ってもらえるはずです。」 ゼロスはそういうと、いつもと同じ笑顔であたしを優しく抱きしめてくれた。 あたしは、そのままゼロスに身を預けた。 時はそのまま緩やかに流れつづけていった。 二人が共通で愛情を注ぐ子供・・・その子供の名前は・・・・・・

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