Time Princess 〜プロローグ〜 −ミーナ編−

「そこまでよ。かくごしなさい!」
少女というには、やや大人びた声が響いた。
「ふっ。あんたに俺は打てねぇ。打てるもんなら打ってみな!」
男の声は明らかに挑発をしていた。
「・・・・・・。」
少女は静かに銃口を男に向けた。
「どうした・・・できるものな・・・」
男の言葉が終わらないうちに・・・

ばすん!

少女の銃が火をふいた。少女のねらいは・・・男の左肩・・・。
しかし、男がとっさに動いた為ねらいとは少し違った場所に着弾した。
その場所は・・・男の心臓の位置。
男は、左胸から赤い液体を流しながらその場に倒れた。

「Mission Compleat!!」

少女は、片腕を高々と上げ声を上げていた。


「ミーナ・・・さっきの訓練、まぁまぁだったな・・・。」
さっき、ミーナの銃で心臓を撃たれた男、マクレオンが左胸に手を当てながら言った。
なぜ、男がこうしていられるかというと・・・
訓練の為防弾チョッキを着用して、かつミーナが撃った弾丸もプラスチック製のペイント弾だったりするわけで。
しかし、それでも殺害が可能な速さで鉛を飛ばす機械である。
ショックが無い訳ではない。

「あら、そういってくれると嬉しいわ。でも、減点が結構あったのよねぇ・・・」
後半、悩むかのようにミーナはマクレオンに対して答えた。
「そうあせるな。おまえはまだ先がある。18歳のギャラクシーセイバーなんてそう探してもいないんだ。いまは、昇進よりも実績を積む時・・・だろ。」
なぐさめるかのように、マクレオンはミーナに向かっていった。
「わかってるんだけどね・・・。わかってるんだけど・・・まわりからの期待が痛くて・・・。」
ミーナは、それ以上何も言いたくないかのような口調で言葉を閉ざした。
その空気を察してマクレオンも何も言わなくなった。
ただ、重い空気が流れる・・・
しかし、意外にもその空気をやぶったのはミーナの一言だった。
「あしたは・・・オフか・・・。地球にいってこよう。あれを受けとってこないと・・・。」
マクレオンは、内心ほっとしていた。
「今の一言はミーナの中で何かふっきれた」
そんな感じを受け取った為である。

・・・・・・翌日

地球行のシャトルを降りるミーナの姿があった。
空気が心なしか心地よい
しかし、今回のステイはどう長く考えても2日しかない。
ゆっくりしてはいられないのである。
ミーナは急いで目的地へと向かった。
ギャラクシーセイバーズのお抱え研究員にして、ミーナの大切なアドバイザーの神代のもとへ・・・

「しっかし、相変わらずへんぴなところねぇ・・・」
そういいながらも、顔にはオフを楽しんでいる自分が出ていることにミーナは気がついていなかった。

ぴんぽ〜〜〜〜〜〜〜〜ん。

ミーナはドアの脇にある呼び鈴を押す。
「・・・こんなもの、今時使ってるのここぐらいなんだろうな・・・」
そんな事を思っていると中から声が聞こえてくる。
「はぁい。どちら様ですかぁ?」
(たしか・・・この研究で手伝いをしている・・・ミランジャとか言うこの声ね・・・)
自分の記憶を確かてから、
「ギャラクシーセイバーズ、ミーナ=ランドロバーズです。」
「ぎゃらくしーせーばーずのみーならんどろばーずさんですか?」
あきらかに、慣れていない口調で返ってきた。
(神代さん、あまりこういうことはやらせてないのね・・・)
ミーナはそれを実感して仕事時以上に丁寧にやり取りを開始した。
「実は、個人的にDr.神代にお願いしたものがあったのですが・・・」
「あ。はい。少々お待ちください。」
中で、とてとてと走っていく音が聞こえた。

・・・少しの時間が流れて。
「・・・鍵、あいてるじゃない。いつもながら不用心よねぇ・・・。まぁ、どうせ入れるんだし、いいわよね。」
誰も聞いていないのを知ってか独り言をいうと中に入って行った。

「えっと・・・研究所は・・・」
廊下を歩いていると、奥の部屋から声が聞こえる。
「ああ、ミーナ君か。ここまで通してくれてかまわないよ。」
神代の声である。
「あそこね」
確信をして、部屋の戸口に立つ。
「いえ、もうお邪魔してますよ。」
ミーナは、神代に向かってそう答えた・・・。
「ミーナ君・・・久しぶりなのはいいが、かってに人のうちに上がらないでくれないか。」
神代は明らかに不機嫌そうにそういった。
しかし、ミーナは待たされるのが嫌いなこともありあがってきてしまった。
理由付けが必要と察知したのか、ミランジャを指差しながら
「そうでしたね。でも、あの子に行っても分からなかったみたいだし・・・。」
と答えた。
しかし、それがまずかった・・・
「それと、人を指差すな・・・。」
神代は、注意を追加していた。

「ご主人様、お茶が入りました。どうぞです。」
ミランジャがそう言いながらミーナにお茶を出した。
「ありがと。」
ごく普通にお礼をした。・・・すくなくとも、ミーナはそう思っていた。
しかし、ミランジャはそのお礼を聞くとすごい笑顔になっていた。
ミーナは、徐々にミランジャのペースにはまっていることに気がついていなかった。
そんな状況を感じてか、神代はミーナに対して
「えぇと・・・確か、依頼の品は小型のスタンガンだよね。」
と聞いてきた。ちょうどその横にミランジャがちょんと座っている。
「ええ。逮捕の際に相手を無力化するのに使うので・・・」
事実であった。ミーナは18歳の少女ということもあり力で勝負すると犯罪者に負けることが多かった。
そのため、訓練を日々受ける傍ら、このようなスタンガンを頼んでいたのである。
「そんな事だろうとおもったよ。まぁ、その腕の傷を見れば訓練も毎日のようにやってるようだしね。」
「ええ、こんな世界にいると傷も絶えないんですよ。」
ふとみると、ミランジャが何か聞きたそうな顔でミーナを見ている。
「どうしたの?」
言葉が出がかったが、その言葉を飲み込んだ。
「スタンガンならもう出来てるから帰りにでも渡すよ。どうせいつもみたいに少しゆっくりして行くんだろ。」
「ありがとうございます。それよりドクター、今何研究されてるんです?」
「いや・・・時空位相変換装置の小型化をね・・・。」
ミーナは直感で聞いてはいけないことだと感じ取った。
「そうですか・・・。へぇ、こんな風に小さく出来そうなんですか。」
ミーナは装置の元へと近づいて行った。
「ああ。実用化できれば、君にも使う時がくるさ。」
神代の答えよりもいまは、装置に気がいっていた。
気になった部分をさすりながら話を続けた。

ちょうどその時、ミランジャがミーナの元へ近づいて来た。
「ちょっと、いいですか?その手はどけてくださ・・・・・・」
「えっ・・・?」
ミランジャの声が聞こえた瞬間。ミーナとミランジャの姿は神代の研究所から消えてしまった。