Time Princess 〜第1話・時空を超えた少女〜
一瞬の出来事だった・・・
ミランジャとミーナの目の前から神代の研究所がなくなったのは・・・
代わりに現れたのは・・・見慣れない光景。

「ど・・・どうしよ〜・・・タイムワープしてるみたい・・・この状況って自力じゃ戻れないんじゃ・・・」
意外にも弱気な声を上げていたのはミーナのほうだった。
まぁ、確かに機械その物が無い以上自力で戻ることは不可能ではあるが・・・
「ミーナさん、今はボク達に何かが出来るわけじゃないんだし・・・ご主人様が何とかしてくれるまで待と・・・ねっ!」
「何を根拠に・・・」
ただの空元気と思ってかミーナはミランジャにあきらめ気味に返した。
しかしミランジャは思い出していた。今の神代の研究を・・・
もっとも、時空を超えたこの状況下で「今」というのは正しくないのかもしれないが・・・
(そうだよ・・・ご主人様、時空を越えた人を追いかけることの出来る装置作ってた。あれがあれば、迎えにきてくれる・・・)
ミランジャは、確信していた。それこそ確実味を持っていない確信ではあったが・・・
「ところで、ここはどこかしら・・・」
ミーナは今更になって一番大切なことを切り出していた。
しかし、すぐ隣にいるはずのミランジャはもうその場にはいなかった。
ミーナはあたりを見回すと、一人さくさく歩いていくミランジャを確認した。
「ちょ・・・ちょっと、待ってよ・・・。」
ミーナは走り出した。
「・・・どこいくのよ・・・。一体・・・」
「・・・・・・笑わないで聞いてくれますか?」
いつになくはっきりした口調でミランジャが口を開いた。
「・・・・・・何かしってるの?」
「・・・・・・あそこに見えるお城・・・ボクのご先祖様のなの・・・つまり、ご先祖様がボクの力を必要としてるんじゃないかなって・・・」
「あなたの力・・・?それってなんなの?」
「ボクにもわからない。でも、ここにボクが呼ばれたのは偶然じゃないような気がするんだ・・・。だから・・・あそこに行かないと・・・」
「・・・・・・偶然じゃない?・・・そんな・・・あたしまでまきこまれてるのよっ!よくそんなことが・・・」
突然ミーナが言葉を止めた。
ミランジャもまた、ミーナと同じ方向を見ていた。
「・・・どうおもいます?」
とミランジャ・・・。
「出てらっしゃい。何のつもりであたしを監視してるのかしら?」
「・・・・いや・・・あの、ボクもいるんだけど・・・」
ミランジャは、なぜか忘れ去られてるような気がしてとっさに自分の存在をアピールしていた。
瞬間・・・
ミランジャに向けて一人の少女が飛び出してきた。
ミランジャはたたらを踏みながらもよけようとするが・・・
その少女はミランジャの前ですっとひざまづくと・・・
「ミリエール様っ!!」
「・・・・・・・・・・」
ミランジャはとっさのことに何が起こったのかわからなかった。
「何が目的?一体・・・こんなところに連れ出したりして・・・」
ミーナは完全にいつもの仕事口調にもどっていた。
「・・・ミリエール様・・・おかえりになられるのを心待ちにしておりました・・・」
少女は目に涙を浮かべながら、感動の再会を演じていた。
「あ・・・あのぉ・・・・わるいけど・・・あなた誰?」
ミランジャは精一杯の気持ちを振り絞って少女に問いかけた。
「・・・そっ・・・そうですよね・・・あれから4年ですものね・・・私、ミリィといいます。
お城に仕えさせていただいたのですが、ミリエール様が急にお城を出られてから、私もお城を
出ました。先ほどミリエール様の走る姿を見かけて・・・・うれしさのあまりついてきてしまいました。」
ミリィと名乗った少女はその顔に笑みを取り戻していた。
「ふぅん・・・17世紀・・・あたりといったところね・・・」
ミーナは静かにつぶやいた。
おそらく、ミリィの服装からそう判断したのだろう。
ミランジャはというと・・・
はっきりと動揺の色を顔に出していた。
自分の先祖に間違えられている。
これほど混乱を呼ぶものはないだろう・・・
考えて欲しい・・・
あなたが自分の先祖と間違えられ、しかも自分に仕えていた者がいきなり目の前に現れ、
淡々とその先祖の話を聞かされたらどうなるかを・・・
「あのぉ・・・ボクはあなたのいうミリエールじゃ・・・」
ミランジャがミリィの言葉を否定しようとしたまさにその瞬間、とっさにミーナが脇から入ってきた。
「そうですか、わたしはミリエールと旅先でであって、そのまま一緒させていただいたんですよ。
おかげで楽しい旅になりました。」
ミーナは小声で
「今は話を話しておいたほうがいい。とりあえずはそのままにしましょ」
と、ミランジャにささやいた。
ミランジャはわからないほど小さくうなずくと、
「待たせてしまったわね。でももう大丈夫です。とりあえず、ミリィさん。現状を聞かせてください。」
「そうですね、とりあえずどこかゆっくり出来るところへいきましょう。そこでお話いたします。」
ミリィはそう言うと二人を促すようにして歩みを進めた。
ミランジャとミーナは一瞬顔を合わせるもそのままミリィに合わせて歩き始めた。

「まずいぞ・・・このままでは・・・」
神代は不安になっていた。
間違いなく二人はタイムワープをしている。
二人を追いかける手立ては一つだけ。
「時空位相変換装置」
それしかなかった。
「大急ぎで作り上げないと・・・確実に追いつける可能性はゼロに近づいていく・・・」
神代は急いで装置に手をつけ始めていた。

「つまり、クーデターがもとで分裂したエスパオール家の一族が断罪されかけてるってわけね。」
「そうなんですぅ。あまり状況としては良くないんです。」
ミリィの説明にミーナは肩をすくませていた。
ミランジャにいたってはもはやなにもできないというほどにおびえてしまっている。
「・・・仕方・・・ないか・・・」
ミーナはとりあえず、ミランジャをそのままにして話を続けた。
「じゃあ・・・ミラ・・・ミリエールがこの格好をしてたんじゃ、まずいのかしら?」
「そうですね・・・一応服といわれると私の持っているメイド服しかないのですが・・・」
「狙われるよりはましでしょう。とりあえず、着替えさせましょう。いいわね、ミリエール。」
ミランジャは、何が起こったのかわからなかったがうなづいていた。
かくして期せずして、ミランジャのメイド服姿が見られることとなったのであった。