楽しい日本語講座

さあ,みなさん,ここで日本語の勉強をしましょう。題して,「楽しい日本語講座」でーす。 今日は,日本語の研究で有名な阿山亜太郎先生をお招きしております。阿山先生の研究 業績はここで申すまでもありませんが,先生は,日本語の「あ」という言葉について 長い間研究しております。「あ」という言葉は簡単に思えるかもしれませんが,実は 800個の意味があることを,先生はつきとめました。今日は,短い時間ではあります が,先生の理論の一端でも皆さんにご披露したいと思います。では,早速,先生をご 紹介しましょう。阿山亜太郎先生,どうぞ。
(出てくる。ボケギャグ1分間)
・・・・
まあ,大変愉快な先生ですこと。先生,こんにちは。今日は宜しくお願いします。早 速ですが,先生。先生は「あ」という言葉を深く研究されて,800個の意味と用法を 明らかにしたそうですね。(阿山を見る)
(阿山,眠っている)
ウウン,・・・それで,それぞれの意味に名前を付けましたね。まず最初に,「驚きのあ」 なんですが,先生。こちらの方から説明をお願いしたいんですけど,,,。
(阿山,眠っている)
先生,先生。
(阿山,司会に耳打ち)
先生は今日は大変眠たいそうで,,え,いや,その,,,つまり,,,大変上がっている ようでして,,
(阿山,司会に耳打ち)
あ,そうですか。困ったなあ。それでは,私が先生に代わって先生の理論を一部紹介 します。先生は丸の内大学に「驚きの『あ』と日本人の感情表現の特徴」という博士 論文を提出し,一躍学会で有名になりました。「驚きのあ」を簡単に説明するとです ね,たとえば,皆さんが道を歩いているとします。すると,雨が降ってきました。家 に洗濯物を出し放(ぱな)しにしてきたことを思い出しました。先生,どうぞ。
Zzz・・・(眠っている)
先生,先生。
先生っ!(阿山の背中を叩く)
(阿山:)あっ!
どうも有り難うございました,先生。皆さん,解りましたか。今のが「驚きのあ」と いわれるものです。もう一回先生にお手本をやってもらいましょうか。
Zzz・・・(眠っている)
先生,先生。
先生っ!(阿山の背中を叩く)
(阿山:)あっ!
みなさん,分かりましたね。それでは,練習に移りたいと思います。私たちが「いち,に,さ ん」と言ったら,皆さん大きな声で,「驚きのあ」を言って下さい。いいですか。は い,皆さんは道を歩いています。雨が降ってきた。洗濯物を出し放しにしてきてし まった。いち,に,さん!
(会場:)あっ!
どうも有り難うございました。先生,どうでしたか,今の「驚きのあ」は?
(阿山,司会に耳うち)
声が小さい,とのことです。それでは,もっと大きな声でもう一度行きましょう。 皆さんは道を歩いています。雨が降ってきた。洗濯物を出し放しにしてきてし まった。いち,に,さん!
(会場:)あっ!
今度はどうでだったでしょうか,先生。
(阿山,司会に耳うち)
大変良かったとのことです。今日の生徒は大変飲み込みが速いとも言ってましたよ。

 それでは,先生の研究によって明らかにされた,もう一つの「あ」に移ることにし ましょう。それは,「安堵のあ」と呼ばれるものです。先生のこの研究は,ノーベル 言語学賞にノミネートされたこともあります。この「安堵のあ」をごく簡単に説明し ますと,皆さんが3時間の残業をやって家に帰ったとします。そして,熱いお風呂に 入ります。・・・先生,どうぞ。
Zzz・・・
うーん,世話のやける先生だなあ。
(司会,阿山の肩をもむ)
(阿山:)あー。
はい,どうも有り難うございました。皆さん,解りましたか。今のが「安堵のあ」で す。先生,もう一度お願いします。
(司会,阿山の肩をもむ)
(阿山:)あー。
それでは,練習に行きますよ。私たちが,「いち,に,さん」と言ったら,皆さ ん,大きな声で「安堵のあ」を言って下さい。それでは,3時間の残業をやって家に 帰ってきた。熱いお風呂に入った。いち,に,さん!
(会場:)あー。
どうも有り難うございました。先生,いかがでしたか?
(阿山,司会に耳うち)
そうですか。もう少し感情を入れて言って欲しい,とのことです。 それでは,みなさん,もう一度行きますよ。 3時間の残業をやって家に 帰ってきた。熱いお風呂に入った。いち,に,さん!
(会場:)あー。
はい,どうもありがとうございました。 先生,今度のはいかがでしたか?
(阿山,司会に耳うち)
大変良かったとのことです。

 それでは,3番目の「あ」に移りたいと思います。今度のは,「怪訝(けげん)と 納得のあ」と呼ばれるものです。今度は少し難しいですよ。まず,先生にお手本を見 せてもらいましょう。先生,先生。
Zzz・・・(眠っている)
(司会,阿山に耳うち)
(阿山:)あっああー。
どうも有り難うございました,先生。皆さん,解りましたか。今のが「怪訝と納得の あ」です。ちょっと難しいでしょう。もう一度,先生にお手本をお願いしましょうか ね。
(司会,阿山に耳うち)
(阿山:)あっああー。
有り難うございました。それでは,皆さん,練習に行きますよ。「いち,に,さん」 と言ってから,「怪訝と納得のあ」を大きな声で言って下さい。
いち,に,さん!
(会場:)あっああー。
どうも有り難うございました。先生,いかがでしたか。
(阿山:司会に耳うち)
そうですか。「なっとらん」とのことでした。
それでは,先生,もう一度お手本をやってみてくれないでしょうか。
(司会,阿山に耳うち)
(阿山:)あっああー。
ありがとうございました,先生。それでは,みなさん,もう一度行きますよ。 いち,に,さん!
(会場:)あっああー。
先生,今度はいかがでしたか。
(阿山:司会に耳うち)
これは,日本語の初級者にはちょっと難しかったかもしれない,とのことでした。

 さて,今日は3種類の「あ」を勉強しましたが,これらは先生の理論のごく一部で あります。たとえば,今日「驚きのあ」というのを勉強しましたね。実は,「驚きの あ」には他にもあります。今日習ったのは,「洗濯物の驚きのあ」です。他に「宿題 の驚きのあ」というのがあります。先生,お手本をお願いします。算数の授業の初め に先生が「きのうの宿題を出して下さい」と言いました。ところが,宿題をやってく るのを忘れていました。先生,どうぞ。
(阿山:)あっ!
どうも有り難うございました。これが「宿題の驚きのあ」です。「洗濯物の驚きの あ」との違いが解りますか。
(会場:)・・・・
それでは,先生,もう一度「洗濯物の驚きのあ」をお願いします。
(阿山:)あっ!
うーん。では,もう一度「宿題の驚きのあ」を。
(阿山:)あっ!
洗濯物。
(阿山:)あっ!
宿題。
(阿山:)あっ!
洗濯物。
(阿山:)あっ!
宿題。
(阿山:)あっ! あっ! あっ! あっ! あっ! (踊りだす)
おんなじなんだよ! (阿山をこづく)
(阿山,ずっこける)

どうも失礼しました。


国際交流などのパーティーなどがありましたら,呼んで下さい。 ギャラなしで,このダシモノを上演いたします。
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