それでは,先生の研究によって明らかにされた,もう一つの「あ」に移ることにし
ましょう。それは,「安堵のあ」と呼ばれるものです。先生のこの研究は,ノーベル
言語学賞にノミネートされたこともあります。この「安堵のあ」をごく簡単に説明し
ますと,皆さんが3時間の残業をやって家に帰ったとします。そして,熱いお風呂に
入ります。・・・先生,どうぞ。
Zzz・・・
うーん,世話のやける先生だなあ。
(司会,阿山の肩をもむ)
(阿山:)あー。
はい,どうも有り難うございました。皆さん,解りましたか。今のが「安堵のあ」で
す。先生,もう一度お願いします。
(司会,阿山の肩をもむ)
(阿山:)あー。
それでは,練習に行きますよ。私たちが,「いち,に,さん」と言ったら,皆さ
ん,大きな声で「安堵のあ」を言って下さい。それでは,3時間の残業をやって家に
帰ってきた。熱いお風呂に入った。いち,に,さん!
(会場:)あー。
どうも有り難うございました。先生,いかがでしたか?
(阿山,司会に耳うち)
そうですか。もう少し感情を入れて言って欲しい,とのことです。
それでは,みなさん,もう一度行きますよ。
3時間の残業をやって家に
帰ってきた。熱いお風呂に入った。いち,に,さん!
(会場:)あー。
はい,どうもありがとうございました。
先生,今度のはいかがでしたか?
(阿山,司会に耳うち)
大変良かったとのことです。
それでは,3番目の「あ」に移りたいと思います。今度のは,「怪訝(けげん)と
納得のあ」と呼ばれるものです。今度は少し難しいですよ。まず,先生にお手本を見
せてもらいましょう。先生,先生。
Zzz・・・(眠っている)
(司会,阿山に耳うち)
(阿山:)あっああー。
どうも有り難うございました,先生。皆さん,解りましたか。今のが「怪訝と納得の
あ」です。ちょっと難しいでしょう。もう一度,先生にお手本をお願いしましょうか
ね。
(司会,阿山に耳うち)
(阿山:)あっああー。
有り難うございました。それでは,皆さん,練習に行きますよ。「いち,に,さん」
と言ってから,「怪訝と納得のあ」を大きな声で言って下さい。
いち,に,さん!
(会場:)あっああー。
どうも有り難うございました。先生,いかがでしたか。
(阿山:司会に耳うち)
そうですか。「なっとらん」とのことでした。
それでは,先生,もう一度お手本をやってみてくれないでしょうか。
(司会,阿山に耳うち)
(阿山:)あっああー。
ありがとうございました,先生。それでは,みなさん,もう一度行きますよ。
いち,に,さん!
(会場:)あっああー。
先生,今度はいかがでしたか。
(阿山:司会に耳うち)
これは,日本語の初級者にはちょっと難しかったかもしれない,とのことでした。
さて,今日は3種類の「あ」を勉強しましたが,これらは先生の理論のごく一部で
あります。たとえば,今日「驚きのあ」というのを勉強しましたね。実は,「驚きの
あ」には他にもあります。今日習ったのは,「洗濯物の驚きのあ」です。他に「宿題
の驚きのあ」というのがあります。先生,お手本をお願いします。算数の授業の初め
に先生が「きのうの宿題を出して下さい」と言いました。ところが,宿題をやってく
るのを忘れていました。先生,どうぞ。
(阿山:)あっ!
どうも有り難うございました。これが「宿題の驚きのあ」です。「洗濯物の驚きの
あ」との違いが解りますか。
(会場:)・・・・
それでは,先生,もう一度「洗濯物の驚きのあ」をお願いします。
(阿山:)あっ!
うーん。では,もう一度「宿題の驚きのあ」を。
(阿山:)あっ!
洗濯物。
(阿山:)あっ!
宿題。
(阿山:)あっ!
洗濯物。
(阿山:)あっ!
宿題。
(阿山:)あっ! あっ! あっ! あっ! あっ! (踊りだす)
おんなじなんだよ! (阿山をこづく)
(阿山,ずっこける)
どうも失礼しました。