大庭のエッセイ


「習い事に共通するもの」


 書道、茶道、華道など日本には道と名のつく習い事がたくさんある。私も道は違えど、剣道との出会いがあり、既に四十三年、未熟ながら稽古を続けさせてもらっている。そんな剣道の師から学んだいくつかの教えを紹介し、この中の「剣道」を「書道」に読み替えていただき、書の道を究めようとされている皆様の参考にしていただければ幸いに思う。
 まず一点目は、「剣道は心から学びなさい。」である。幕末の剣豪、島田虎之助先生は「剣は心なり 心正しからざれば剣正しからず 剣を学ばんと欲するものはまず心より学ぶべし」このように言っている。究極のところ技術は心に始まると言うことだと思う。
 二点目は、「剣道は長く続けなさい。」である。千日の稽古を「鍛」万日の稽古を「錬」と宮本武蔵は教えたが、継続は力、同じ道を長く続け、また、齢を重ねることで見えてくる境地がたくさんある。
 三点目は、「見る。聴く。真似る。」である。よく聴く耳を持ち、師の教えを聴き、よく見て真似ること、基本を学ぶことは「守破離」の始まりといえる。
 四点目は、「上に習い下に学びなさい。」である。ただ師から習うだけでなく、下からも学ぶことも多く重要と言うことである。禅の名著「碧巌録」に卒啄同時の重要性が説かれているが、教える側と学ぶ側の呼吸、間、これはいつも大切にしたいと思う。
 五点目は、「良師を選びなさい。」である。師の影響は大きく、良師との縁はその人の人生にも影響する。良き出会いをしたいと思う。
 最後に、「反省、研究、努力をしなさい。」である。柳生流の教えに三磨の位という、三つの磨く位と言う教え「習う。工夫する。錬る。」があり、日々新たに反省し、研究、精進することこそが大切と教えている。
 以上、私が剣道の師から学んだ事だが、これら六つの教えは、いずれの習い事にも共通することのように思える。この教えの中に、日本人が求めてきた日本の伝統文化、その伝承の本質を見させて貰うような気がする。 
心龍書道巻頭言より



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