1 8 3 5 〜もう1つの1830〜


ドイツ軍人

はじめに:1835は、1830のドイツ版です。他にもこの仲間に、1829(イギリス版)、1853(インド版)があります(私は後者2つはプレイしたことがない)。

これらの作品は、基本システムは同一のものを使用しつつ、それぞれの国の鉄道が持った歴史的特徴をダイナミックに再現しています。アメリカ鉄道の歴史が、終始私企業同士の激しい競争であったのに対し、ドイツの場合は、始めは私有鉄道として設立されたのが、最終的には全て国有化されたという特徴があります。1835はこの歴史的特徴を、オリジナルのプレイ・アビリティを損なう事なく見事にゲームに盛り込んでいると言えます。

コンポーネント:パッケージを開けると、1830より多くのパーツが入っているのに興奮するでしょう。まず、現在の統一ドイツの全域が描かれた美しいマップ。ヘクスの数は、30のざっと1.5倍あります。当時ドイツ領であったオスト・プロイセンやオーバー・シレジェン、また1時期領有したエルザス・ロートリンゲンは番外扱いになっています。特に後者は、2の列車の時代は収益が0、普仏戦争により領有すると(3の列車の時代)50、ベルサイユ条約で不当に取り返されると(5の列車が出ると)また0になります。また、マップ上の全ての都市に名前が書いてあるのがとてもグッドです。
タイルの数も、マップが広いので約2倍となっています。タイルの大きさと番号は30と共通になっています。3つのトークンを置けるベルリン・タイルの美しいこと。また、ハンブルクでは、エルベ川を横断したときとそうでないときでは収益が異なるなど芸も細かい。タイルと置き換え表を見て気づくのは、30では、ドットを含むタイルは置き換えができませんでしたが、35ではこれが可能になっています。
次に列車ですが、2+2、3+3、4+4、5+5、6+6が新たに登場し、替わりにDがありません。この数字の意味は、例えば3+3の場合、都市3つに加え、さらにドット3つを連絡可能なことを意味しています。田舎町の多いこのゲームでは、このタイプの列車は結構重宝されます。そして、プライオリティ・ディールを表す木製のミニチュアの機関車。私はこれが大好きです。
最後に会社のシート。嬉しいことに、大きいのが8枚、小さいのが6枚、計14枚もあります。大きいカードは、ドイツを構成する中小国の株式会社を表し、小さいものは、やがてはプロイセン鉄道に統合される中小鉄道会社(マイナー会社)を表しています。そして当然ながら会社名は全てドイツ語で書かれているのですが、その美しく格調高い響きといったらありません。例えばバイエルン鉄道会社は、バイエリッシェ・アイゼンバーンと発音します。その他、プライベイト・カンパニーは、同数の6社です。30に比べると、株式会社とプライベート・カンパニーとの間にマイナー会社がある3段階になっています。

ゲームの特徴:最初にマイナー会社ですが、これは個人所有の株式会社みたいなもので、列車を所有し線路を引きます。そして収益は所有者と会社で折半します。
次にこのゲームの株式会社は30とは異なり、50%で会社設立です。そして、購入された比率に応じて資金を受け取ります。後のストックラウンドで残りの株式が売れると、その分の資金が追加され、最終的には100%になる訳です。そして、株式会社は、その売り出される順番と株価が最初から決定されているのです。そして極め付けは、プロイセン鉄道です。
プロイシッシェ・アイゼンバーン(プロイセン国有鉄道)は全く特別な鉄道会社です。ゲームの途中である状況を満たすと、マイナー会社の1つベルリン・ポツダムを持つプレーヤーが設立を宣言できます。プロイセンの株式の内40%は設立より少し前から販売されます。そして残る60%は、6つのマイナー会社と2つのプライベート会社がそれぞれ5%か10%の株式と交換されるのです。交換されると、プライベート・バーンは閉鎖され、マイナー会社はその列車と資金を全てプロイセン鉄道に取られてしまい、プロイセンは自社に都合の良い列車を制限内で残して他は破棄します。以上の手順は、4+4の列車が出ると強制されます。プロイセンは列車の保有制限が通常より1多いことと、設立時から交通の要となる都市にトークンがあるので誠に強力です。ドイツの全ての鉄道は、第2帝国がそうでした様に、今後プロイセンの意のままに進んでいくことになります。
それから国有化です。ある1社の株式を50%以上掌握すると、国有化を宣言できます。
相場の50%増しの札束で、他人が所有している自社株を奪って来れるのです。そして比率を80%以上にすると、持ち株制限が1枚増えます。ゲーム後半になると、あちらこちらで札束の応酬が展開されます。 その他にも、例えば誰か1人が破産してもゲームが終わらない(破産は不可能でしょう)
とかさまざまな特徴があります。

ゲームの感想:このゲームを何度かプレイして感じたのは、このゲームの意図するところは、プレイヤーが協力してドイツ全土に鉄道を通すことにあるのではないかと思えるのです。ゲームを構成する全てのファクターがその為に念入りに調整されていると思えるのです。実際のドイツ国有鉄道が国中に効率良く展開されたのと同様、ゲームでもそうした方が収益が上がると思います。このゲームには1830ほどの展開の派手さはありませんが、より落ち着いた、上品なゲームに仕上がっています。建設的なことが好きな方にはこのゲームは向いていると思います。1部に1835を毛嫌いしている30盲信者がいますが、この手の人には、他人を陥れるのが好きな人が多いのかも知れません。わたしはどちらのゲームも同様に好きです。

最後に本ゲームは、都内の有名ゲーム・ショップで販売されています。ルールは英文で価格は¥12000前後(1994年頃)です。


注:本文にもある通り1994年頃書かれたものであり、現在は発売元のメイフェア社がなくなったため、入手困難かもしれません。

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