チョコ☆っとLOVE
「みずっち〜、はいこれ 義理チョコ あげる」
どう考えても夢や希望の欠片も持ちようのない言い方でチョコをくれたミキちゃん。
職場の女の子である。 なぜにチョコ?って、2月14日は St .Valentine's Day 。
世間ではこの日男性にチョコを贈り、女性から愛を告白しても良いとされるが、
むしろ多くの男性女性にとって ありがためいわく? な日なのではなかろうか。
もちろん貰えるのは嬉しいのだが、貰えると思っていた相手から貰えなかったり、
なのに なんでアイツにはあげてるの? なんて事があったり。
St .Valentine's Day って漢(オトコ)の友情にヒビ入れる為に作ったのですか?
なんて、しくしく 感たっぷりに帰路に着いた貴兄も多かった事だろうと思う。
モテてる奴が 「そんなモテない同盟みたいな友情なんてプッ」 と考えている
であろう事は疑い様もなく、それがよりいっそう魂に火を付けるのである。
「みずっち、ちゃんとお返しちょうだいね。こ〜ゆ〜のは倍返しだからね?」
『はっはっは、僕の場合は倍どころじゃないよ。もぉ最大公倍数って感じ?』
「何、その自信たっぷりな感じは・・・。 どんなお返しなの?」
『そうだね〜、まず新居は庭付きの一戸建て。それで白い犬を飼おう!
あと子供は二人がいいかな〜と思ってるんだけど、どう?』
「義理チョコのお返しでそんなものがあるかッ!!」
『じゃあ新居は月の裏側のコロニー。赤いモビルスーツ
を造って、子供の名前はシャアとセイラでどう?』
「ってゆーか、アンタは何者だッ!!」
さて、今ひとつ頭を悩ませるのは、ホワイトデーのお返し問題である。
14日が休日に当たるとチョコレートの売り上げが激減する、なんてデータが
示すように、バレンタインで配られるチョコの多くは義理チョコなのだ。
基本的に本命は1個で、義理は何個でもありえるのだから当然と云えば当然か。
この習慣を考え付いた菓子メーカーでは、毎年ほくそ笑んでいるに違いなく、
義理チョコ禁止なんて職場もあると聞くが、案外賢いやり方かもしれない。
義理や見栄でお金を遣ってしまうなんて、あまり利口とは思えないのである。
私だって本当は、自分からそういう悪習に立ち向かう姿勢を示したいのだ。
『じゃあ僕はそろそろ仕事に戻ろうかな・・・。』
「とかなんとか言って、他の部屋にチョコ貰いに行く気なんじゃないの〜?」
立ち向かう姿勢より先に、生活態度を改めた方が良いのかもしれない。
これではまるで率先して躍らされていると言わんばかりなのだ。
「冗談じゃない!」と言いたい所だが、本当に冗談じゃないのが悲しい所である。
ともかく戦果を10個の大台にのせ、例年以上の戦果に“ やっぱ俺だな ”
といささか己惚れつつ、あとは5時で帰ってデートの準備・・・なんて
気楽に考えていた所へ課長がやってきて一言。
「この仕事、今日中ね。バレンタインデーだからって
浮かれていないでしっかり頼むよ、ホント」
待ち合わせには間に合わず、待たせたお詫びで全部奢るハメになり、
残業代などパー。 バレンタインデーとは、まったく罪つくりな日である。
もしかすると、私ほど躍らされているほうがむしろ珍しいのかも知れないが。
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