『グローカル』692号(2006/1/23)より

知っておきたい格差社会の基礎データ


ようやく『格差社会』をめぐる議論が政治の表舞台に登場してきた。きっかけは公明党の神崎代表らが小泉改革に伴う経済的な格差拡大に懸念を表明したことによる。対して小泉は「そうは思わない」とこれを否定。さらに内閣府が『統計データから経済格差は確認できない』とウソ八百を並べて小泉を「援護」。
 しかし、偽装耐震問題、ライブドア・ショックもからみ、ここに来て新自由主義的改革を見直そうという気運が一挙に高まりを見せている。それにしても小泉と内閣府の『統計データから経済格差は確認できない』はひどい。これを批判する基礎データを提供する。

(1)日本の貧困率はOECD二六ケ国で五番目に高い

  OECD諸国の貧困率  
1 メキシコ 20.3
2 アメリカ 17
3 トルコ 15.9
4 アイルランド 15.4
5 日本 15.3
6 ポルトガル 13.7
7 ギリシャ 13.5
8 イタリア 12
9 オーストラリア 11.9
10 スベイン 11.5
11 イギリス 11.4
12 ニュージーランド 10.4
13 カナダ 10.3
14 ドイツ 10
15 オーストリア 9.3
16 ポーランド 8.2
17 ハンガリー 8.1
18 ベルギー 7.8
19 フランス 7
20 スイス 6.7
21 フィンランド 6.4
22 ノルウェー 6.3
23 オランダ 6
24 スウェーデン 5.3
25 チェコ 4.4
26 デンマーク 4.3









 昨年二月に公表されたリポート「OECD諸国における所得分配と貧困」では、日本の貧困率はメキシコ(二〇・三%)、アメリカ(一七・一%)、トルコ(一五・九%)、アイルランド(一五・四%)に次いで五番目の一五・三%。最も貧困率の低い国はデンマークで、四・三%(表を参照)。
 貧困率とは、所得の中央値の半分以下の所得で生活している人の比率。日本の中央値は〇二年で四七六万円だから、二三八万円以下の所得の人が一五・三%いることになる。
 この貧困率は、税や社会保障などによる再分配後の所得だが、当初所得での貧困率では、フランス、ドイツ、ベルギー、デンマークのほうが高い。つまり、デンマークなどは、市場での所得は日本より格差があるが、再分配によって格差がかなり縮小しているわけである。政治の役割である所得再分配が、日本ではいかにその役割を果たしていないかが示されている。
 また、九四年の日本の貧困率が八・四%だから、一〇年で二倍近く増加したことになる。








(2)四割の世帯が三〇〇万円以下の所得!一五〇万円以下も三割近くに

 これは再分配以前の当初所得。正確には三〇〇万円以下の所得の世帯数は三九・六%、二〇〇万円以下の世帯が三一・六%、一五〇万円以下の世帯は二七・六%である(〇二年)。
 年金・医療・介護サービスなどの給付後の再分配所得でも、三〇〇万円以下の世帯は二八・二%、二〇〇万円以下が一五・五%、一五〇万円以下が九・九%(一割も!)もある(〇二年)。
 一〇年間で三〇〇万円以下は約三割から四割へ、一五〇万円以下はほぼ倍増している。

(3)最下層(二〇%)の所得は総所得のたった〇・三%、最上層(二〇%)が総所得の五〇%も

 世帯所得を五段階に分けて、各層が総所得のうちどの程度の所得を得ているか、を数値化したものである。九六年と比較すれば、最下層は一・四%から〇・三%へ低下し、最上層は四六・五%から五〇・四%に増加している。

(4)貯蓄ゼロの世帯が五年間で二三・八%へ倍増

 貯蓄ゼロの世帯は、二〇〇〇年で一二・四%であるが、〇五年には二三・八%へ倍増している(「家計の金融資産に関する世論調査」〇四年)。ちなみに九四年は八・八%である。
 また、貯蓄残高が減った世帯は、五割弱にのぼる。減った理由は、「定例的な収入が減ったので貯蓄を取り崩した」が五割を超えている。給料が減ったので貯金を下ろして補填しているわけである。

(5)生活保護受給者が八年で一・五倍に急増。しかし補足率は一〇%程度。

 生活保護受給者は一九九五年に六〇万世帯、八八万人、二〇〇三年に一〇〇万世帯、一三五万人に急増している。
 単身者の生活保護受給額は、東京の場合約一四万円、地方でも約一二万円、年収にして一四四万円から一六八万円。@で見たように、再分配後所得で年間一五〇万円以下の四八〇万世帯(九・九%)は、本来であれば生活保護を受けることの出来る世帯である。しかし実態は、一〇〇万世帯、実に貧困者の八割近くが、権利がありながら生活保護を受けられないでいる。

(6)非正規雇用が労働者の三〇%以上、若者の失業率は八・六%(全体四・五%の約二倍)

 厚生労働省の調査では、非正社員は三四・一%(〇三年)。総務省統計局「労働力調査」(〇四年)によれば、非正規労働者は三一・五%。正社員とパートの時給の差は、男性で正社員約二〇〇〇に対してパート約一〇〇〇円、女性で正社員約一四〇〇円にたいしてパート九〇〇円である。
 若者の失業率が高いことは知られているが、一五歳から二四歳の失業率(〇五年一〇月)は、男性九・四%、女性七・七%である。 
 ちなみに、有効求人数に占める非正社員の比率は五六・七%である。

(7)最低賃金は生活保護以下

 生活保護給付の東京の事例は、単身者で月一四万円弱、年収は一六八万円である。
 東京の最低賃金は時給七一四円、月収は七一四×八時間×二〇日=一一万四千二四〇円、年収は七一四×二〇〇〇時間として約一四二万円。最低賃金で生活保護なみの所得を得るためには、年間二三五〇時間。週休二日の休日を除く約二五〇日で割ると、一日平均一〇時間近くも働かなければならなくなる。
 最低賃金の引き上げが求められている。

(8)国民保険を使えない世帯が三〇万以上

 国民健康保険料が払えなくて滞納している人が増えている。政府は〇〇年から滞納者の受給権を失効させるよう義務づけている。受給権を失うと全額自己負担を強いられる。
 そのため〇四年度には、全国で三〇万六〇二〇世帯が保険医療を受けられなくなっている。〇五年度にはさらに五%増えているとされている。


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