九九年百四十五国会の再現を許すか否か。自公与党は、小泉政権の最後の国会で、九・一一総選挙での三分の二与党の数の力を使い、医療制度改悪や行革関連法案などと共に、共謀罪、教育基本法改悪などの悪法を制定しようとしている。今国会は、盗聴法などが一挙に強行された九九年百四十五国会との類似性が指摘されている。その後の数年で、日本の戦争国家化、監視国家化は一気に加速してきた。
今回、周辺事態法の流れが米軍再編法案、国旗国歌法が教育基本法改悪、盗聴法が共謀罪新設法案、憲法調査会設置が改憲国民投票法案、国民総背番号制=住民基本台帳法が入管法改悪案となって提出(もしくは今後予定)されている(改悪入管法は既に成立してしまった)。
巨大与党を実現した政府・与党は、「小泉政権有終の美」と称して悪法大量生産を目指している。だが、共謀罪法案の採決先送りに見られるように世論の批判とどの法案を優先するかをめぐる小泉サイドと省庁・族議員間の内部矛盾で、事態は国会開会時に与党が狙った通りには進んでいない。
共謀罪の制定をめざして与党・法務省は、五月十八日、与党再修正案を公表した。その内容は「組織的犯罪集団」の定義を「犯罪の実行が団体の結合関係の基礎になっているもの」などとした内容で、約六百もの罪で会話=思想を処罰対象とし、国境を越えた民衆の結びつきを犯罪化しようとする共謀罪の本質は何も変わらない。
五月十六日法務委員会で、保坂展人議員が共謀罪の共謀と共謀共同正犯の共謀は同じで、会話のないめくばせなどでも成立する場合があるという昨年の法務省答弁について質した。これに対して、法務省側はまばたき・目配せだけで共謀が成立するわけではないというとんでもない答弁を行った。つまり、まばたきでも成立する場合があるということだ。生理現象であるまばたきがなぜ共謀罪なのか。
法務省は越境犯罪条約批准を共謀罪の理由にしている。この点について、寺中誠・アムネスティ日本事務局長は院内集会での発言で「日本政府は越境犯罪条約批准を共謀罪制定の理由にしている。だが、共謀を処罰する条約には、権力者の共謀を処罰するジェノサイド条約がある。日本政府はこれを批准しようとしていない。
国際的な義務を云々するなら、なぜジェノサイド条約を批准しないのか。市民の『共謀』を処罰する越境犯罪条約ではなく、権力者の共謀を処罰するジェノサイド条約こそ批准するべきだ」とその欺瞞を批判している。
強行採決の動きが強まったのに対して、四月二十五日の治安維持法制定八十一年に当たっての共謀罪反対市民集会など集会、国会行動が取り組まれた。連休後も、五月十一日国会行動、五月十六日衆院議面集会、五百人が集まった五月十七日超党派国会議員と市民の緊急集会など連日の行動が続けられている。
多くの世論調査でも大多数が共謀罪強行に反対している。ペンクラブや日弁連、百九十以上のNGO・NPOの共同声明など多くの団体が共謀罪に反対を表明している。反対の声の強まりによって、与党は四月二十八日に計画していた連休前の衆院法務委員会採決を断念。五月十九日に計画していた委員会採決も行うことができなかった。共謀罪を廃案に追い込むことは不可能ではない。
五月二十八日には「共謀罪反対デー」として全国で非暴力アクションが行われる。各地で多種多様な行動で共謀罪反対の声を広げ、「現代の治安維持法」=共謀罪廃案へ!
四月二十八日、小泉政権は教育基本法改悪案の閣議決定を強行した。憲法改悪へ向けて教基法改悪を「悲願」とする自民党は、歴代文相を委員として入れた特別委員会を衆院に設置。今国会での教育基本法改悪をめざしている。
教基法改悪は、文科省が進める国家主義教育、新自由主義的な国策教育に法的な根拠を与え、子ども・教育労働者の自立的な運動・取り組みを根絶やしにしようとするものだ。
改悪法案は「わが国と郷土を愛する態度を養う」という表現で、個人の尊重よりも国家を優先する愛国心教育を盛り込んだ。
現行法の「教育は、不当な支配に服することなく」という文言は残ったが、その後の「国民全体に対し直接に責任を負つて行われるべきものである」が削除され、国・地方自治体による施策の策定・実施、政府が定める教育振興基本計画が明記された。地方が従属する中央集権的支配への転換を定める規定だ。
教育の機会均等は後退し、新自由主義的選別教育、格差社会化による教育・学習の権利侵害が正当化された。
「学習指導要領」に盛り込まれている内容を「教育の目的」「目標」と法案に盛り込み、文科省による国策教育の法的根拠にしようとしている。この「教育の目的」は学校教育だけでなく社会教育、家庭教育、児童教育など全ての教育に適用される。文科省が進める愛国心教育に、全ての家庭・地域・NPOなどが協力することを義務付けられる。教育の自主性・自立性などを完全に否定する法案だ。
民主党も「日本国教育基本法案」を提出するが、「日本を愛する心」「宗教的感性の涵養」などが盛り込まれた政府案より右よりの内容だ。
三年前から全国で反対運動を続けている教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会は、四月二十八日と五月十一日に緊急国会前集会を行い、閣議決定、審議開始に抗議した。教育労働者・市民の国会座り込みも連日行われている。
十一日の国会前集会で発言した全国連絡会呼びかけ人の小森陽一さんは「地方紙の社説を見ても大部分が、『教基法改正』は必要ないと主張している。教基法改悪は党利党略であり、道理・世論は私たちの側にある」と運動強化を呼びかけた。
六月二日には、全国連絡会主催で改悪反対全国集会が日比谷野音で行われる。教育基本法改悪案制定に反対しよう!
(五月二十三日)