『グローカル』766号(2012/01/01)より

震災を利用した雇用規制緩和に抗し女性が多い職場に運動を広げたい

伊藤みどり(働く女性の全国センター)


 一一年は地道にボトムアップの運動で始めていこうと考えていたら、震災だった。
 全国センターでは五月に震災と雇用ホットラインを行った。まだ被災地からの相談は少なく都内で節電で賃金カットされたり便乗解雇された派遣の人たちが電話をかけてきた。被災地では女性の場合、非正規、派遣などは最初に解雇された。保育園で非正規で働いていた人は震災で自宅待機となり、避難中に正職員だけ呼び戻され、雇い止めになった。
 被災地の会員自身が会員の調査を行ったが、家を失った人、仮設暮らしも多い。仙台の女性ユニオンぷらすという組合は組合自身が被災して労働相談を受けられない現状だということだった。労働問題以前の複旧すらできていない現状だ。震災前からセンターは、五と〇のつく日に三時間の相談ホットラインを輪番でやっていた。一回八本くらいしか相談を受けられないが。去年は三四〇件、今年は十月の時点でそれ以上。相談員は限られているので、それ以上フォローできない状況だ。
 福島の人は日々放射能の危険と向き合い反原発運動で精一杯だ。三・一一のあと、気持ちが一歩も前に動けない。東京に出てきたときに温度差が言葉に出来ないほどつらかったと。一度逃げたが戻った人も多い。
 震災の後、財界は、若者、女性と被災地の新たな雇用確保のためには、派遣契約・有期契約、パート労働が望まれていると言っている。被災地に皆が集中し後方部隊が手薄になっている時を利用して規制強化の方向へ一旦は舵を切ろうとした政府は再び震災前より一層規制緩和の方向に向かっている。
 九月に出された経団連の要望書は派遣の専門二六業種に、コピー取りやお茶汲みをやらせろと要求。派遣法の規制緩和と事務職の労働時間の規制緩和がセットの要望書を厚生労働省労働政策審議会宛に出した。
 前にホワイトカラーエグゼプションが出た時は、残業代不払い法案だと皆が反対に動いた。ところが、女性の問題が前面に出ると「そんなの女の問題でしょ」と全く反応がない。
 労働運動の分裂状況を見計らって、日雇い派遣・登録型派遣の禁止を骨抜きにする派遣法大幅修正案が出てきて、臨時国会で民自公が衆議院厚生労働委員会で僅かな審議で強行採決される異常事態になった。
 いま、パート労働法と有期労働契約法の審議会も並行して行われ、震災を理由にして一気に労働の規制緩和をやってしまおうとしている。震災前よりもひどい状況になっている。
 学者などはEUにならって労働契約は労使委員会で決めればいいという論調だ。だが、フランスでは組合がきちんとしているから組織率八%の労組が九割の労働者の労使協定を締結して労働条件の規制をかけている。日本の職場状況で女性や有期雇用の人が労働者代表に選ばれる可能性は低い。女性や非正規の雇用はますますひどくなる。
 経団連は震災を利用して、誰も彼も有期雇用にしようとしている。経団連など法案を作っている人たちはモラルハザードを起こしている。
 組合でも、経済格差が意識格差になっていて、ナショナルセンター主流派の人たちにはこのことが伝わっていない。このままでは、派遣法「修正案」が通るかもしれない。この間、力関係では政府が出してくる法案に反対運動をやって負け続けてしまう状況だ。
 働く者でも、パート、派遣、正社員事務職はほとんど女性。センターの会員で一番多いのは事務職、次はサービス販売職、医療福祉関係。事務職は雑用・お茶くみ、補助職の扱いを受けてきた。
 事務職労働の価値を高めたい。派遣でもパートでも正社員でも事務職は「女がやれば雑用」の状態を変えたい。雇用形態の分断を乗り越えて「もっと価値をあげろ」という共同のキャンペーンをしていきたいと考えている。法律を決める側はモラルハザードを起こしているが、私たちは中期的な展望を立てて、正社員・派遣・パートを超えた事務職、誰も手をつけないインフォーマルな訪問介護労働者など女性の多い職種にところに、広げていきたいと話し合っているところです。  (談)


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