| 原子力ムラの責任追及し原発輸出に反対しよう |
三・一一は日本社会の根本的転換の必要性を明らかにした。東日本大震災・津波では東北を中心に二万人近くが死亡・行方不明となった(震災関連死を含めれば、死者・行方不明者は二万数千人に達するだろう)。原発震災=東京電力福島原発事故によって、福島県だけで一五万人以上が住みなれた土地を追われた。東日本から自主避難した人を含めると避難者は数十万人になるだろう。経済成長を支えるための電気を作る場を提供した見返りは「失郷」と被曝だった。福島第一原発事故によって、三・一一後の数日間で放出された放射能は七七万テラベクレルに達し、放射性物質は欧州に到達した。海洋には四七二〇テラベクレルの放射能が放出されたと推計されている。福島を中心とした被害者の避難・移住・休廃業・失業・健康被害・放射能汚染・精神的被害などの損害は数十兆円に達するだろう。エネルギー庁、保安院などの行政は電力会社とグルになってシンポなどでやらせを行い、原子力を推進してきた。原子力ムラが自らの利益のために「原子力安全神話」を作り上げ、原発震災を招いたのだ。政府・東電は三・一一直後、メルトダウンは起きていない、放射能はただちに健康に影響はないという発表を続けた。東電は地震で原発が壊れた事実を否定し、「想定外」と責任逃れをしている。
これほどの被曝者・被曝地を出した巨大な環境犯罪、そして放射能被曝という傷害、将来の傷害致死事件を引き起こしたのにも関わらず、誰も責任を取っていない。東電の経営陣は誰一人逮捕もされていない。東電社長西沢は「おわびと法的責任は別」(朝日、十二月七日)と事故責任を認めることを拒否している。原発を担当してきた経産省、資源エネルギー庁、原子力安全・保安院、原子力安全委員会で引責辞任したものは一人もいない。逆に東電役員たちは巨額の役員報酬・退職金を維持。被害補償の多くを切り捨て、負担を電力利用者・納税者に押し付けようとしている。この巨大なモラルハザードが「三・一一」が明らかにした日本の政治・社会・経済の現実だ。第二次世界大戦の敗戦で天皇ヒロヒトをはじめとする日本の支配層は戦争責任・植民地支配責任を取らなかった。支配層内部での敗戦責任すら明らかにしなかった。未だに清算されない植民地主義が戦後責任・靖国問題として表出している。戦後六六年、同じ構図が繰り返されている。
十二月一六日、野田は「冷温停止状態」を宣言した。だが、「冷温停止状態」とは政治的に作られた定義だ。東電は十一月三〇日、核燃料の損傷状況を発表。一号機では溶融した核燃料が圧力容器から格納容器に落下して、格納容器床をあと三十数センチで貫通するところまで侵食し、二、三号機でも核燃料の一部は圧力容器から格納容器に落ちていると発表。十一月二日には一〜三号機が再臨界した可能性があることを公表した。原子炉の状態が安全になったわけではない。野田の宣言はごまかしだ。
にもかかわらず、野田政権は原発再稼働、原発輸出を目指す方針を変えていない。日本は米国の核戦略を支え、国内では原発を推進してきた。反原発世論の高まりによって、上関などの新規原発計画は困難となった。だが、もんじゅ、大間原発建設などには依然として固執。「日本再生の戦略」でも「徹底した安全対策を行い、安全性を確認した原発は活用」と原発推進が打ち出そうとしている。十二月九日、民主・自民は原発輸出のためのヨルダン、ベトナム、韓国、ロシアとの原子力協定の国会承認を強行。十二月、東芝は米国の三四年ぶりの原発建設に対して機器輸出を行った。野田政権は、アリバイ的なストレステストとIAEAのお墨つきをテコに、定期検査後の原発の再稼働を画策。再生エネルギーの「調達価格等算定委員会」の委員が原発推進派で占められるなど、エネルギー政策でも脱原発に逆行する事態が続いている。
| 避難の権利と賠償を! |
未だ事故が収束しない状況で重要なのは避難の権利の確立だ。国・自治体は除染キャンペーンを行っているが、除染の有効性には疑問があり、子どもを避難させることが必要だ。ところが、行政はいかに住民を逃がさないかしか考えていない。十二月六日に出された原子力損害賠償紛争審査会の損害賠償指針は、一人わずか八万円(妊婦・子ども四十万円)にとどまり、避難費用の実費にも遠く及ばない。対象者も福島県民の四分の三に限定された。これでは避難を希望しても経済的理由でできない人はますます避難できない。
放射能汚染されたゴルフ場が東電に対して起こした裁判で裁判所は「放射能は無主物」と加害者である東電を免罪し、被害者に責任と負担を押し付ける判決を出した。公害・環境汚染では汚染者負担原則が国際ルールであり、とんでもない判決だ。被害者への賠償のためにも、東電を破綻処理して解体=発送電分離を行い、原発埋蔵金を活用した賠償完全実施が必要だ。
一九六〇年に五八%だった日本の一次エネルギーの自給率は、石油や原子力に依存することで現在四%まで低下した。核戦略とセットであるアメリカのエネルギー政策に付き従った結果だ。環境省の「再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査」(一〇年度)が試算しているように、日本は太陽光、地熱、風力、中小水力の合計で二〇億五八〇〇万キロワット(全原発の四十倍)の潜在的供給能力を持つ自然エネルギー大国だ。脱原発・脱成長社会への転換は、気候変動問題から見ても必要で必然だ。
一一年、三里塚の一坪共有地・団結小屋裁判では不当判決が相次いだ。三里塚は空港が象徴する巨大技術、経済成長のあり方を問い続けてきた。空港拡大・三〇万回発着に反対しよう!
| 公正な増税を!税・社会保障の一体改革に異議あり |
野田政権は税・社会保障の一体改革案決定、消費税増税へと動いている。「税制改正大綱」(一二月一〇日)は「新成長戦略の実現」をうたっている。十一月G サミットで野田は消費税一〇%への引き上げを国際公約した。年末、社会保障と税の一体改革素案のまとめを進めており、一二年に「一体改革大綱」を決定。消費税引き上げ法案を提出する予定だ。「税・社会保障一体改革成案」(一一年六月)によれば、年金は三年程度で二・五%削減。年金支給開始年齢の引上げ。年金受給資格期間の短縮。パート労働者の厚生年金加入拡大。医療では外来での定額負担上乗せ、七〇〜七四歳の自己負担を一割から二割へ。さらに介護給付の削減、生活保護制度の改悪などが検討されている。
成立した復興財源法は、個人や中小企業には八・八兆円の増税を行い、大企業には三年間付加税を行うだけで法人税減税を行う。民主党は政権交代前の大企業優遇の租税特別措置見直し公約を反故にした。これに先立ち、成立した税制改正法(一一月三〇日成立)は、政府案にあった高所得者の給与所得控除の上限設定、相続税の強化といったわずかな格差是正措置さえ自民党の要求に応じて削除し、法人税五%引き下げだけを定めた。野田政権の「税制改正」は、研究開発減税の上乗せ措置延長、自動車重量税一五〇〇億円減税(エコカー減税)などで、さらに三千億円規模のエコカー補助金新設。代表的な金持ち優遇税制である証券優遇税制(税率一〇%)を継続し、法人税の五%引き下げが決定している。一方、見直しが検討されていたはずの所得税の最高税率引き上げ、課税最低限の引き上げ、各種控除の見直し、相続税の税率引き上げと課税ベースの拡大など格差是正のための措置は先送りした。野田政権は財源がないと社会保障削減と消費税増税を計画しながら、企業優遇税制は継続、拡大しようとしているのだ。
消費税増税は、法人税引き下げ、不公正な税制度を維持したままであり、「公正な負担」に真っ向から反する。日本の社会保障制度は改革が必要であり、格差是正による「公正な高負担・高福祉社会」実現のためには、優遇されている富裕層、グローバル企業、銀行への増税が必要だ。税制改革としては、所得税の最高税率引上げ・累進性強化、法人税率の維持、租税特別措置の改廃、証券優遇税制の廃止、相続税の強化、資産課税の導入などの抜本的改革を要求していかなけなければらない。
そして、政府与党社会保障改革検討本部は「共通番号制度」導入に向けた「社会保障・税番号大綱」を決定(六月三〇日)。年金・医療・介護・生活保護・労働・保険・税務で共通番号とし現在の住基カードを「改良」して国民に配布する計画だ。通常国会に法案を提出。一四年六月には個人に番号をふり、一五年一月運用開始を目指している。実施されれば、個人情報を国家が一元管理する国民総背番号制度になる。
年金制度改革では、年金支給開始年齢引上げ・定年延長議論だけが先行している。最優先すべきは、最低保障年金導入による無年金・低年金問題の解決だ。年金一元化によって、現役時代の格差の継続・拡大を解消するべきだ。政権交代の主要政策だった子ども手当も一一年十月から多くの世帯で減額され、一二年度からは所得制限が導入される。社会保障制度改革は、子ども手当を復活・拡充して「若者年金」の実施、生活保護の捕捉率の改善。そして、ベーシック・インカムの導入に向かう必要がある。
現在、各国で法人税ダンピング競争が起きている。歴史を振り返れば恐慌期の関税競争を思い起こさせる。一定以下への法人税引き下げを禁止する国際条約、企業による国境を越えた税金逃れを規制する国際的な枠組み・取り決めが必要だ。世界信用危機を引き起こしている投機マネーを規制する国際的な金融取引税・通貨取引税を実現しなければならない。
| 生活保護改悪、骨抜き派遣法、TPPに反対を! |
東北の被災地で復興が進まない背景には、小泉「構造改革」による農漁業の衰退と広域合併による自治体の機能低下がある。ところが、野田政権の「日本再生の戦略」は「新成長戦略の実現」をかかげ、小泉「改革」と同じ手法をとろうとしている。復興は「被災者主権」でなければならず、企業・行政のための復興であってはならない。漁港の大規模集約化、農地の広域集約化とは「構造改革」路線の焼き直しだ。宮城県の「水産特区」構想は、沿岸漁業権を漁協だけでなく民間企業にも同等に与えようとしている。これらは被災地の地域社会の完全な崩壊をもたらすだろう。
日本の相対的貧困率は一六・〇%(〇九年)へ三年で〇・三%上昇した。年間三万人が自殺する状況は十三年間全く変わっていない。日本では、所得上位二割の人が全所得額の四五・五%を占めている。所得下位二〇%の人々の平均年収一六五・九万円(九三年)は一二二・五万円(〇八年)にまで減少した。年収二千万円以上の給与所得者は九三年から〇八年で一・四九倍に増加。同時期にワーキングプアは一・四五倍に増加。ワーキングプアは一〇四五万人で給与所得者の二二・九%を占めている。富裕層はますます豊かになり、貧しいものはますます貧しくなっているのが日本社会だ。
日本の生活保護受給者は八月に約二百六万人に達した。しかも、生活保護費以下で生活する低所得者で生活保護制度を利用している人は二割に過ぎない。十一月に行われた政策仕分けでは生活保護が取り上げられ、「(受給者は)自立した個人ではなく、支えられる人間」(佐藤主光・一橋大教授)と生活保護利用者バッシングがくり返され、生活保護受給者に対する最低賃金制度適用除外、医療の受診制限など生存権を否定する意見が議論された。「生活保護制度に関する国と地方の協議」では、医療扶助での一部自己負担導入、求職者支援の訓練中断への保護停廃止などが検討されている。行政やマスコミは〇・四%にも満たない「不正受給」を理由に不正受給が蔓延しているかのようなキャンペーンを行い、生活できない金額の年金や最低賃金の水準まで生活保護費を引き下げるべきだという転倒した主張が行われている。三兆円の生活保護費の半分は医療費だ。生活保護利用者には困窮や野宿生活で病気になった人が多い。医療扶助が受けられる医療券発行は医師の判断を受けて行政が決定する。受給者には決定権がない。過剰診療があるとすれば一部医療機関と行政の責任だ。自治体行政は、生活保護受給者を食い物にする「囲い屋」など「貧困ビジネス」を野放しにし、癒着している。必要なのは、貧困層拡大の原因である最低賃金と年金の引上げ、生活保護制度の改善だ。野田政権は「分厚い中間層を」と言っているが、推し進めている政策は小泉改革と同じ。税・社会保障による所得再配分で格差を是正するどころか、それに逆行する政策を採っている。
格差・貧困の拡大には非正規雇用の拡大があり、給与所得者の平均年収は減少を続けている。野田政権は政権交代の主要な公約の一つだった派遣法改正を骨抜きにする「修正」案で自公と合意。審議三時間で衆院厚生労働委員会で強行採決した(十二月七日)。民自公案は登録型派遣・製造業派遣の原則禁止を削除し、違法派遣があった場合の「みなし雇用」規定も三年先送りというる骨抜き法案だ。
野田は十一月APECホノルル会議でTPP(環太平洋経済連携協定)参加を表明した。これも「アジアの成長を取り込む」新成長戦略の一環らしい。USTRは「二〇一一年外国貿易障壁報告書」で米、牛肉、郵政、共済、医療などを挙げ、「過度な規制」によって「貿易障壁」を設けているとして日本に市場開放を要求した。WTO政府調達協定によって中央政府発注は物品購入一九〇〇万円以上、建設工事六億九千万円以上、自治体(都道府県・政令市)なら物品購入三千万円以上、建設工事二三億円以上が今でも全て英訳付で入札情報が公開されている。TPPに参加すれば基準がさらに引き下げられる。TPPは被災地復興を妨げるものにしかならない。TPPでもISD(投資家―国家間提訴権)条項が盛り込まれることが確実だ。ISDで外国企業は「差別的な扱い」に対して、世界銀行傘下の国際投資紛争解決センターなどに訴えることができる。既に発効しているアメリカが他国の結んだ自由貿易協定では遺伝子組み換え食品やタバコ広告、建設規制などの環境や健康に関する規制が貿易障壁だとして、投資企業が相手国政府に損害賠償を求める訴訟が相次いでいる。TPPは環境、農業、食品安全、医療、雇用などにマイナスしかもたらさない。
| 基地も軍事同盟もいらない |
没外交的に中国、北朝鮮を敵と公言する野田政権は、米国に付き従い中国と対抗するという菅政権の軍事・政治戦略を踏襲。「トモダチ作戦」での日米軍事一体化を弾みとして、日米軍事同盟を強化しようとしている。十一月二八日、田中・沖縄防衛局長は辺野古アセス評価書提出について問われて「犯す前に犯しますと言うか」と米軍基地建設が強姦であることを自認。沖縄民衆と女性を侮辱した。野田政権は田中を処分しただけで、辺野古のアセス評価書は提出すると、沖縄差別継続を宣言した。日米は十一月軍属の公務中犯罪の日本側の裁判権行使の要請について好意的配慮を払うと合意したが、地位協定は改定しない。辺野古への新基地建設、高江でのヘリパット建設、南西諸島への自衛隊配備が進められ、沖縄への米海兵隊オスプレイ配備の一二年配備が通告された。十二月、米議会が海兵隊グアム移転費用を削除して、移設実現の圧力をかけたが、米軍再編計画の破綻は明らかだ。
野田はソマリア沖、ハイチに続く南スーダンへの自衛隊部隊派兵を決定した。これはアフリカで米軍の活動の一部を肩代わりし、中国軍に対抗してアフリカの資源確保を狙うものだ。野田政権は武器輸出三原則を緩和し、PKO・「人道」目的の武器輸出を解禁しようとしている。
一一年、一二年度中学社会科教科書採択でつくる会系教科書採択率が〇九年〇・六%から四%へと大幅に増加した。自民党が安倍政権時の改悪教育基本法の理念・精神に合うつくる会系教科書を採択するように全国的に教育現場への介入を行い、野田と同じ松下政経塾の人脈が動いた結果だ。沖縄八重山地区では保守首長の肝いりで地区採択協議会の規約が改悪され、協議非公開、協議会委員の差し替えなどが採択方式の改悪が行われた。そして、教科書調査委員が推薦しておらず、日本の写真に沖縄が載っていない育鵬社版公民教科書の採択決定が強行された(八月二三日)。ごり押しに対する抗議を受けて、八重山地区の教育委員全員協議は育鵬社版不採択を決めた(九月八日)。だが、文科省は決定は無効として育鵬社版を採択するよう圧力をかけ、次には結果を変えない竹富町に、育鵬社に変えなければ教科書購入費用は町費で出せと圧力をかけている。八重山での教科書攻撃は与那国自衛隊配備と連動している。
| イラク戦争に敗北したアメリカ |
十二月一四日、オバマはイラク戦争「終結」を宣言。米軍部隊は撤退する。オバマは演説で米国がイラクに残した「多大な成果」を強調したが、「戦争勝利」を宣言することはできなかった。イラク侵略戦争は米国がでっち上げの「大量破壊兵器の存在」を口実に中東湾岸地域での権益確保を狙って開戦した間違った戦争だ。九年近い戦争で、イラクでは少なくとも十数万人が米軍・同盟軍によって殺され、米兵も四千五百人が死亡。その何倍もの人々が傷つき、今も被害が続いている。米国が八千億ドルもの戦費を注ぎ込んだ戦争によって、イスラム急進派の活動はむしろ活発になった。米軍の占領によってイラク国内の地域・宗派・民族間の対立は深刻になった。イラクでもアフガンでもオバマの戦争は失敗している。パレスチナ国連加盟をめぐる対応が示すような不公正な中東政策を米国が改めない限り、米国戦略の成功の可能性はない。
五月パキスタンの主権を無視した作戦で、口封じのようにビンラディンを殺害したオバマ政権は、六月二九日「対テロリズム戦略」を発表。今後はアフガン、パキスタンでのアルカイダ掃討作戦を続行しながら、ソマリア、イエメンでの「対策」を強めるとした。NATOを中心としたISAF(国際治安支援部隊)四八カ国は一四年末までにアフガン部隊に移譲する予定だ。一方、米軍はアフガン・パキスタンでの無人機攻撃を拡大。アフガン駐留NATO軍ヘリが越境してパキスタン軍を「誤爆」し、兵士二八人を殺害した(十一月二十六日)。この何倍もの民間人が無人機による「誤爆」の犠牲になっている。この事件を受けてパキスタンは対米協力計画の全面見直しを表明し、米軍は対テロ戦争に使用してきたパキスタン国内の空軍基地からの撤退を余儀なくされた。両戦争による米国の出費は、今後の見込みを含めて三兆三〇〇〇億ドルと推計される。莫大な軍事支出で財政赤字が膨れ上がることで、ドルがますます不安定となる状況に自らを追い込み、経済危機に結果した。米国債が初めて格下げとなった米国債危機の背景にはイラク・アフガン戦争による巨額の軍事費支出がある。
イラク・アフガンからの撤退を進めるオバマ政権は、一方で中国の台頭に対抗するために、日本と朝鮮半島にあわせて東南アジアでの軍事的プレゼンス強化を打ち出した。十一月一七日の豪州議会演説でオバマは米国を「アジア太平洋国家」として「(アジアは)世界で最も急速に成長しており、雇用を創出し、米国民にチャンスを作るという私の優先目標の達成に極めて重要だ」「国防予算の削減はアジア太平洋の支出に影響しない」とアジア重視政策を強調。二〇一六年までの米海兵隊二五〇〇人の豪州配備を打ち出した。
中国封じ込め政策の一方で、米中間の相互依存は強まっており、二国間貿易は三八五三億ドル(二〇一〇年)と大幅に増加。中国は〇八年九月以降、米国債の最大の保有国になっている。
| 民衆革命・占拠に連帯しマネー資本主義の変革へ |
二〇一一年、〇八年九月リーマンショックに始まる世界金融恐慌が収束していなかったことが明らかになった。リーマンショック後、G などの各国は財政出動と金融機関への資金注入、中国など新興国の経済成長によって、世界恐慌の危機を脱したと称してきた。欧州債務危機はギリシャから、イタリア、スペイン、ポルトガルなどに拡大。世界信用危機へ拡大している。共通通貨ユーロ崩壊の可能性が公然と語られている。内閣府『世界経済の潮流』(一二月三日)は世界経済回復を引っ張ってきた新興国が、先進国からの資金流入減少、輸出減少で「次第に鈍化の兆しを示している」と認めている。ギリシャはきっかけに過ぎず、世界金融危機以降の各国の財政出動による債務残高の増加が背景にある。拡大する債務危機は実体経済を蝕んでおり、欧州各国では失業と貸し渋りが拡大している。危機拡大後、G 、G7、ユーロ圏の首脳、閣僚会合などが何度も開かれている。G で合意された「カンヌ行動計画」は先進国には財政再建、新興国には内需拡大を求め、各国が財政再建目標を掲げた。結局は、当事国への緊縮政策押し付けとつなぎ融資で危機を繰り延べるのが精一杯の状況だ。
ユーロ圏のメルケルとサルコジやIMFなどがギリシャやイタリアなど危機国へ、財政政策などを指図、危機国の政権は全て交代した。年金制度、労働市場=雇用制度、企業活動規制緩和などグローバル化政策が強制される。八〇〜九〇年代に第三世界各国でIMF・世銀が行った新自由主義政策の押し付けと同じ構図だ。救済策で救済されるのは、危機国の労働者民衆ではなく、銀行だ。
EU圏首脳会議(十二月八、九日)は、イギリスを除いた二六カ国が財政規律強化の新条約で基本合意。だが、対策の切り札とされる「共通債」はドイツの反対で実現できないままだ。イタリア、スペインも十年物国債の利回りが再び危険水準の七%にまで上昇しようとしている。
米国でも、一一年八月、連邦債務が法律上限一四兆二九四〇億ドルを突破。史上初の米国債デフォルトの瀬戸際になり、オバマと共和党の間で激しい政争が展開された。
世界信用危機の原因はマネーの暴走を放置してきたマネー資本主義、新自由主義グローバル化にある。また、欧州債務危機は通貨を統合し、各国財政収支などを基準に収めようとしたユーロのシステム自体が危機に対応できなかった。その結果、不動産から各国の国家財政自体が投機対象となった。次は円など一部の通貨、エネルギー市場などにマネーが流れている。これは各国の財政金融政策の改善という対症療法では解決できない。投機マネーの暴走を生む市場原理主義からの転換、投機的な企業活動の国際的な規制、金融取引課税、各国間の法人税引き下げ競争の規制など国際的な規制が必要だ。ニクソンショックから四十年、ドルをだましだまし「基軸通貨」として使ってきた「米国債本位制」の寿命は尽きた。国際社会の多極化に対応し、ドル依存から脱却する国際通貨・経済システムへ転換していくことが不可欠だ。
一月一四日チュニジア革命を皮切りにアラブ民衆革命の波が中東・北アフリカを覆った。エジプトではムバラク独裁政権が打倒された(二月一一日)。民衆蜂起はリビア、イエメン、湾岸諸国などに拡大。パレスチナでは民衆の圧力で統一政府が発足した。その後、バーレーンではサウジアラビアなど親米諸国が軍事介入して民衆運動を武力弾圧。リビアにNATOが軍事介入し、カダフィ体制を武力で転覆。シリアではアサド政権の弾圧による死者が五千人を超えている。エジプトでは十一月、軍が特権を維持しようとしていることに抗議するデモが軍最高評議会によって弾圧され、多数が死亡した。直線的な民主化には行かない状況で、チュニジア、エジプトの選挙ではイスラム政党が躍進。エジプトではイスラム政党と市民国家を目指す青年たちとの対立が浮上しつつある。
スペインの五月一五日の運動を皮切りに占拠の闘いは世界に拡大。十月一五日には世界の千近い都市でデモが行われた。格差と失業が拡大する中、一%の強欲に抗議する九九%の運動の拡大は必然だった。「アラブの春」の背景には青年の四分の一が失業している社会状況がある。米国でも、貧困層は人口の一五・一%=四千六百十八万人に増加した。中国でも高速鉄道事故、頻発する住民暴動が示すように、格差に抗議する声が共産党体制を揺るがす可能性を示している。
| 再稼動阻止し脱原発・脱成長社会実現へ |
民主・自民の二大政党が破産をあらわにする中、二〇一一年に注目を集めたのは橋下、河村ら首長新党の動きだ。特に橋下の大阪維新の会は春の府議・市議選に続いて、十一月二七日大阪ダブル選挙で勝利。強行採決した「君が代条例」に続いて、大阪都構想、教育基本条例案、職員基本条例案などの「改革」を強行しようとしている。橋下らが成立を目指す教育基本条例案は、知事が府立学校の教育目標を決める、三年連続定員割れした学校の統廃合、学力テストの学校別結果発表、君が代不起立など命令に違反した教員の免職を明記し学校現場への政治介入を正当化しようとするものだ。教職員を五段階相対評価でランク付けし校長に服従させ、市場原理主義を導入しようとしている。橋下が知事時代に任命した委員からも「現場無視」と批判の声が上がっている。職員基本条例は成績主義で職員を押さえつけようとする内容だ。「強いリーダーによって政治を変える」という主張が多くの人々の支持を集めている。だが、それは朝鮮学校への攻撃や「日の丸・君が代」強制が示すようにマイノリティに対する攻撃として表れており、極めて危険だ。一方で「ハシズム現象」に「独裁」批判だけでは対抗しきれないことは明らかだ。運動の側が橋下とは違う地方自治・教育の改革像を打ち出していけるかが問われている。
一一年四月統一自治体選挙で市民派は困難に直面した。市民派が得意としてきた税金の無駄遣いのチェック、公共事業見直しなどを支持してきた新無党派層が首長新党やみんなの党支持に流れたからだ。市民派・みどり派にはエコロジー・公正・社会的連帯の立場からの明確な対案が必要だ。
二〇一二年は脱原発社会実現への正念場だ。再稼働を阻止できれば、五月には稼働原発がゼロになり、電力不足論の論拠は崩れる。三・一一による社会と人々の意識の変化は不可逆的だ。世論調査を見ても原発利用反対が五七%になる(将来の脱原発賛成は七七%。朝日新聞、十二月一三日)。
脱原発社会実現の道は「九九%」に犠牲を押し付ける資本主義の変革をめざす世界の民衆運動とつながる道である。脱原発社会の実現へ、公正な高負担・高福祉社会、脱成長のビジョンと緑の政治・政党をつくり出していこう。(十二月一六日)