きいき
2006.6. 1
随録(クマ&ハチ)

あちこちの里山に水車が・・・
ご隠居「おおー、これはこれは、熊さんに八っつあん。よく来たね。さぁ、どうぞお上がり」

熊五郎「へー、ちょいとそこまで、来ゃしたもんで・・・ご隠居さん、お元気かと思いゃして」

ご隠居「ありがとう。今日はなんぞ、用でもあるのかね」

八五郎「へい、熊のやつ、最近の世の中おかしい、と言うもんで、そんなこたぁねぇっいうと」

熊五郎「それじゃご隠居にうかがってみよう、ってわけで」

ご隠居「ほうほう、熊さんは、世の中のなにがおかしいと・・・」

熊五郎「あっしも一応新聞取ってますがね、最も眺めるって方でして・・・」

ご隠居「いやいや、それは奇特なことですよ」

八五郎「いや、こいつが眺めるのは、切った張ったのとこばかしで」

熊五郎「むかしゃー、切った張ったはその道のご仁が多かったが・・・」

八五郎「今は、セン公、ガキ、おまけにおまわりまでやってるってんですよ」

ご隠居「うむうむ」

熊五郎「おまわりのエライお方が、万引きやってる・・・。ご隠居何かおかしくありません?」

ご隠居「まあ、そうカリカリしなさんな、お~い、ばあさんやあれを持っておいで」

ご隠居「ちかごろ、ばあさんも耳が遠くなってナー」

熊五郎「どうぞおかまいなく」

八五郎「ホントに」

ご隠居「そうじゃない、お茶だけですよ」

熊五郎「お茶ケ、ですかい」

ご隠居「この写真をみてごらんよ。これは先日公園で私が撮ったものですよ」

八五郎「へー、ご隠居さんがネぇー、写真をネぇ、」

熊五郎「やあ、ごりっぱ。ハチ、てめぇーなんざぁ。撮れッこねえ」

ご隠居「いまのご時世、私のようなものでもこのように写真が撮れるんですよ。八五郎さんでも撮れます」

八五郎「へー、あっしでも撮れるんですかい」

ご隠居「ご時世はどんどん変わっているんですよ。これが進歩というものなんです」

熊五郎「へー、進歩ねぇ」

ご隠居「写真を見てごらんなさい」

八五郎「ただの水車小屋で・・・」

ご隠居「むかしは、田舎の方に行くとよく見かけたものですよ」

熊五郎「ハチ、てめぇーなんざぁ。ここの町内から出たこたぁねぇだろー」

ご隠居「まあまあ、変わらないと思っていたものもこうやって公園に飾られているご時世なんですよ」

熊五郎「へー、そんなもんすか」

ご隠居「しかし、よくみてごらん。水車小屋に池、池のそばに菖蒲の花。いいもんじゃありませんか」

熊五郎「・・・・」

ご隠居「どうです、気持ちがゆったりとしてきましたかな」

八五郎「うん」

ご隠居「どうじゃ、今日はお仕事はもう終りかな」

熊五郎「へ、それでさっきの世の中のはなし・・・」

八五郎「熊、世の中、どんどん変わるってことよ。進歩ってやつは、悪いやつもドンドン増えるってことよ。ネぇ ご隠居さん」

ご隠居「進歩して悪いご仁が増えるのも困ったものだが」

熊五郎「へー」

ご隠居「私はね、熊さんに八っつあんがマジメに働いてくれりゃ、それでいいのですよ」

熊五郎「へい、かしこまりました」

八五郎「はい、ありがとうございゃした」

八五郎「そいじゃ、ごめんなすって」

熊五郎「ごめんなすって」

熊五郎「なあ、ハチよ、悪くなるのも進歩というやつかよ」

八五郎「世の中、そんなモンだろうよ」


おあとがよろしいようで、・・・・。


随録