雑味館抄 <あいさつ> 2005. 1. 10
私のホームページ(ぞうみかんという)は定年後「毎日が日曜日」の生活の中で、大部分を占める「母の介護」と、介護の合間を縫っての 息抜きである「美術鑑賞」、「映画鑑賞」、「ウオーキング」、「たび」などで感じたことを「藝」、「楽」、「生」のテーマ別に記す。 いわば定年後の自分史になるものと思っている。
パソコンに接し、文章を作ることで自分に刺激を与え「ボケ防止」になることも期待している。
家を出た娘たちへ私の状況を知らせるメッセージでもある。
窓のむこうに・・・
格子のついた窓ガラスの向うに冬枯れの景色が見える。窓からニ、三百メートルくらいのところに丘がある。丘の上に数本のすっかり葉を落としてしまったケヤキとヤマモモだろう緑の濃い常緑樹がニ、三本立っているのが見える。丘は公園になっていて少し急な道であるが車イスでも登ることが出来る。
母を連れて登ったことがある。
丘の上には稜線に遊歩道ができている。その道はコナラ、ケヤキなどの間を抜けて池に通じている。道の途中から右手の坂を下ると小さな川がある。
部屋では母が少し荒い息遣いをしながら準備している。
娘たちには「無理して見送りに来なくていい」という趣旨のメールを送った。
川のそばまで車イスに乗せて私ひとりでついていけばいいと思った。
丘へ登る坂道は大きな車イスを押す私にとって重荷だ。何度か途中で休みながらゆっくりゆっくり登りはじめた。丘の上に来るまでどの位時間がかかっただろうか。ときどき母に声をかけるとうなずいている。のぼりやくだり坂の遊歩道をゆっくりと進むと、川に降りていく道が見えてきた。この道は急なのでもう少し先にあるなだらかな道を通ることにした。坂を下りたところで私はベンチに腰をおろし一休みする。
うつらうつらしていてまどろみの中で目覚めると母が急き立てていた。また歩を進め川のそばに出た。小さな木製の船が浮かんでいた。
母は乗ってみたいと言いはじめた。言い出したらきかない母のことだからやむを得ず車イスから立ち上がる手伝いをする。ビックリするような力でたちあがり小船に乗り移った。
腕時計に目をやると3時22分だった。
弱い風が波の上を走りキラキラと夕日に映えてまぶしい。
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