6.製品戦略

(2)他社との差別化

日本ホビーKKがこだわっていたもう一つの製品戦略は、パテントです。日本ホビーKKの模型キットの箱をご存知の方は、多分お気づきのかたもいらっしゃると思いますが、「特許出願中」「実用新案****」などと、大きく書かれていることがよくありました。これは、日本ホビーKKがその当時、他社との差別化に随分努力していたことをうかがわせる証拠です。パテントをとれば、他のメーカーはまねすることはできませんので、独占的に販売することが出来ます。それが、ヒット商品ならば、莫大な利益をあげることができます。他社に先駆けて多くのパテントを獲得できれば、非常に有利です。おそらく、おもちゃメーカーは世界的にもパテント管理を相当しっかりしていたと思われます。日本ホビーKKはプラモデルメーカーとしても、同じようにパテント管理を行っていたのかも知れません。私が知っている日本ホビーKKの工業所有権(特許か実用新案か正確にわかりませんので、こういう表現にさせていただきます)のいくつかをご紹介します。

1.連結式キャタピラ(昭和38年)

1枚、1枚ばらばらのキャタピラの部品をピンで接続して、一本の帯状のキャタピラにするという、実物通りの構造をプラモデルではじめて実現したのが日本ホビーです。このキャタピラはそれにプラス、実物と同じように、ゴムパッドまでつけるという徹底ぶりでした。そのころ、はじめて、セメダインコンタクトという、ゴム専用接着剤が発売され、ポリという接着剤が付きにくいキャタピラ部品にこのパッドを張り付けました。当然、タミヤがパンサーで連結キャタピラを採用する以前のことですし、もちろん、チーフテンなど無いころすでに、連結式キャタピラを採用していました。私が購入したオートマチックシリーズの61式にはこのキャタピラが付属していました。しかし、その当時は早く完成させて遊びたいという気持ちを押さえきれず、1個、1個鉄線で連結するというキャタピラは、苦痛そのものでした。(特許キャタピラのチラシを見る

2.砲塔旋回、弾丸発射切換装置  

オートマチックシリーズに採用された、一つの砲塔旋回装置で、砲塔旋回と、弾丸発射を両立させる機構です。通常、旋回装置の回転方向が、右回転で砲塔旋回、左回転で弾丸発射がされます。しかし、それでは、砲塔が一方向にしか、旋回できませんから、一工夫があります。弾丸発射装置が働き始める直前、回転方向を逆転すると、ギアがバックに入るように、切換機構が働き今度は砲塔が通常と逆に回転します。この仕組みのおかげで、一つのモーターで砲塔左右回転と、弾丸発射ができます。ところが、この機構の組立はかなりむずかしく、多分だれでもが完成させられるしろものではなかったと思います。それは、後期の製品では、この左右回転切換装置は廃止されてしまったことから、想像できます。多分、相当クレームがよせられたのではないかと思います。特許1件と実用新案3件と書かれています。

3.ロータリースイッチ      

日本ホビーが統一スケール1/32でレーシングカーを製品化していましたが、そのシリーズに採用されていたのが、このロータリースイッチです。ドライブシャフトに取り付けられた楕円形の金属がシャフトと共に回転します。回転する金属はブラシと接触したり、離れたりします。モーターリードの片側がブラシに、電池の片側がギアケースに接続されています。したがって、軽く車輪を回転させてはずみをつけてやると、モーターが回転します。ブラシと回転子はときどきOFFになりますが、モーターの慣性力が働いている間はON−OFFをくりかえしながら、走り続けます。しかし、壁などに行き当たると慣性力がなくなり、回転子とブラシの接触が切れたところで、モーターの回転が止まり、スイッチが切れます。(PAT.92264)

4.沈没しない軍艦模型

日本ホビーの1/400巡洋艦の模型には(第36576号および第75389号の実用新案機構)が組み込まれています。これは上部甲板が気密室になっていて、沈没した場合、浮きの働きをするというものです。さらにモーターと電池にはカバーがあり、万一浸水してもモーターと電池に水が入らないというわけです。これらのカバーの隙間にはグリスをつけて装着します。