ミニ4駆を分析する(その1)

日本のプラモデルの歴史はまだ35〜36年そこそこでしかありません。その間、各種のモーターライズ模型が発売されました。そんな歴史の中で、いくつかの技術が取り入れられ、あるいは開発され現在に受け継がれています。その中から、私は次のような技術を重要なものとして取り上げたいと思います。

(1)スロット・レーシング・カー時代に登場したクリア・ボディー

材質はポリカーボネイトだったかどうかわかりませんが、透明で軽量、自分で塗装するなど、コンセプトは現在のラジコンカーのものと同じです。

(2)プラスチックギア

ジュラコン(ポリアセタール?)とよばれる材質のギアは、樹脂でありながら硬く、また軽量です。金属の場合、特殊な形状のギアは削りだしでなければ製作できず高価ですが、樹脂製ですと、金型成形による大量生産ができるので比較的安価です。

(3)エンジニアリング・プラスチックのシャーシ

電動ラジコンで培われた技術で、さすがに経験から得たノウハウが豊富で、強度を持たせつつ軽量化するシャーシの形状は、プラスチックの成形品でなければ、作れないと思われます。

(4)モーターの高性能化

プラモデルの初期には、サハラモーターの名称のモーターが、モーター付きのキットに採用されていたこともありましたが、今ではマブチモーター以外は、使われないのではないでしょうか。長い間あまり価格アップはなく、同じ大きさで比較すると、パワーはアップしています。

(5)充電式電池の高性能化

発売された当初は、カドニカの商品名で一般的に呼ばれていました。現在ではニッカドとよばれ、急速充電ができ、同じ大きさでより容量の大きいものができています。

(6)小型ベアリングなどの交換部品

スロット・レーシング・カー時代から、キットのベーシックな仕様の一部を交換することによって、より高性能化する部品がいくつかありました。小型ベアリングやギア比の異なるギア、そして、高回転モーター、高トルクモーターなど性能が異なるモーター、径や材質の異なるタイアなどです。

その他まだあるかもしれませんが、この程度にして本題に入ります。

ミニ4駆もモーターライズ模型の仲間

私は、ミニ4駆もモーターライズ模型の一種としてとらえ、けして馬鹿にできないものだと、考えています。ミニ4駆以前のモーターライズ模型の技術の蓄積があったからこそ、ミニ4駆が製品化できたとも言えるのではないでしょうか。私は、一度もレースに参加したことはなく、しようとも思いませんが、組み立てたことはあります。もし、モーターライズ模型は好きだけれどもミニ4駆はあまり好きでない方がいらしたら、今度ぜひ、上記の(1)から(6)の技術に着目して、箱の中を覗いてみてください。私は、けしてミニ4駆を啓蒙するのではありませんから、作ってみろとは言いませんが、さすがに流行に乗って開発資金が投入されたものは、良くできていることを、知っておいて欲しいのです。ベーシックなキットですと、モーター別で定価700円(以前のものですと、モーター付き600円のものもあります。)と子どもでも買える値段です。田宮模型は、私が少年だったころ、戦車模型でモーターライズ模型の楽しさをその時代の少年たちに伝え、今の少年たちには、ミニ4駆で同じ楽しさを伝えようとしているようです。

ミニ4駆のメカニズム概観

ミニ4駆は、4輪を駆動して走る模型です。モーターには歯数8枚のピニオンギア、これとかみ合う歯数24枚のスパーギア(カウンターギア)このギアには20枚のスパーギアが抱き合わせになっていて、後輪駆動軸のスパーギアとかみ合って後輪を駆動します。(歯数28枚または30枚から選択することができる。スパーギアに30枚を選択する場合には、カウンターギアも18枚のスパーギアが抱き合わせになったものを選択する)後輪駆動軸には、歯数20枚のクラウンギアが取り付けられていて、前輪のやはり歯数20枚のクラウンギアとの間を、歯数8枚のピニオンギアのついたシャフトで連結され、4輪が同時に回転します。(最近のものは、クラウンギアがヘリカルギアになっていて、前輪と後輪を連結するプロペラシャフト(?)の軸中心を低く設計してある)後輪も前輪も駆動シャフトは六角形の断面をしていて、ギアの中心の軸穴も六角形になっています。このお陰で、ギアはシャフトにロックピンなどのお世話にならずに固定できます。また、ホイール軸にも、打ち込めば六角穴があき、しっかり固定されます。グッドアイディアです。昔の戦車のプラモデルで、4角のシャフトが使われていたものが存在しましたが、6角はありませんでした。また、ホイールの材質がミニ4駆はABS樹脂でスチロール樹脂だった戦車模型より丈夫にできています。戦車模型は丁寧にたたき込まないと、ホイール軸穴部分が割れてしまうことが多々ありました。ただ、六角のシャフトを回転軸に使用するなんて、実物の車のシャフトだったらできないでしょうね。ところで、ここで紹介したミニ4駆は、レーサーミニ4駆でミニ4駆にはウォームギアを使用した別のメカニズムをもった製品も発売されています。これについては、別の機会に紹介します。

ミニ4駆は教材としても十分

これだけの仕組みをミニ4駆を作ると学ぶことができます。ギア比を変更すると、トルク重視と、スピード重視を選択でき、どういうギア比のときにトルクが大きくなるのか、体験できます。ギアはバラバラのギアにシャフトを通して、シャーシの軸受けに取り付けます。軸受けには真鍮製のはとめを使用しています。この辺は昔と変わりません。ギアのかみ合わせは、軸間距離が正確でなければ、うまく行きませんが、モールドが正確なため、単に組み立てるだけで、ベストのかみ合わせになります。これにグリスをつければメカニズムはできあがりです。本当はここで、モジュール0.5の歯数いくつといくつのギアがかみ合うために、軸間距離をどうしたらよいか計算したり、歯形がインボリュート歯形であるなど、実物の世界で役に立ちそうな技術を学べるのですが、小学生にそこまで期待しても仕方ありませんね。彼らのわずかでも良いから、記憶の片隅にギアのかみ合わせの感触を忘れずにいて欲しいと望みます。モーターと電池そしてスイッチの配線は不要で、電極の金具が配線を果たすようにうまく設計されています。単3を直列に2本で3Vになっているのですが、小学生は理解しているのでしょうか。配線が簡単な分、無意識にできてしまうのです。

 

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