工作教室

PICマイコン2CH戦車用ミキシング回路

オリジナルDMD(M−01、M−02)は、個別ICを組み合わせた、古典的設計の純ハードの回路でした。一方、最近のエレクトロニクスの関連ページを見ていると、PICマイコンがHOTに取り上げられています。マイクロコンピュータといえば、今ではその名称ぐらいはだれでも聞いたことがあると思いますが、PICマイコンは初耳の人が多いと思います。ご存知のように、マイクロコンピュータは現在では、2極分化しています。ひとつは、パソコンに代表される、いわゆるコンピュータとしての応用です。そして、もう一つが組み込み型です。家電製品を始め、今ではほとんどのものに利用されていて、一般的には、「えっ?そうなの?」位にさりげなく組み込まれています。これは、多品種少量生産のためには、個別の回路をいちいち設計していたのでは、大変なので、ソフトウェアだけ替えればいろいろなものに、共通に利用できるのではないかとのコンセプトではじめられたことです。しかし、現実にはこのプログラム開発は結構たいへんなので、何でもかんでもマイコン化するのは、まちがいです。組み込みマイコンは小型であることが、最も重要なことで、当然そのコンピュータとしての性能はパソコンに使われているもののようにはよくありません。しかし、基本的にはCPU、メモリ、I/Oと必要な機能を持ち、しかも、1チップに集積されています。今回、私もできるだけ流行に乗り遅れないように、PICマイコンを使って、DMDと同様の機能を実現する回路を製作しましたので、ご紹介します。

PICマイコンはマイクロチップ社のRISC型マイクロプロセッサの呼び名で、今回使用したPIC16F84はEEPROMのプログラムメモリを内蔵しているため、プログラムを何回も書き換えることができ、私たちアマチュアが利用するには非常に使いやすいマイコンです。RISC型のため、基本的に1命令を0.4μsで実行できます。単純な処理であれば非常に高速な処理が可能です。しかし、今回のプログラムでは、このマイコンの命令では最も苦手とするかけ算、わり算、条件判定を多用しなければならなかったので、RISC本来のスピードは生かせませんでした。(かけ算、わり算、条件判定の機械語を持っていないので、その他の命令を組み合わせてこれらの演算処理などを実行させなければなりません。)

左の図が今回製作した2CH戦車用ミキシング回路の基本原理です。仮に有線式のリモコンで戦車を操縦する時を思い出して下さい。左右のレバーを同時に前に倒せば前進し、後ろに倒せば後退します。前進中に右のレバーを中間位置にもどせば、右に、左を中間位置にもどせば、左に曲がります。もし、プロポの左右のスティックでこの有線リモコンと同じことができれば、リモコンについているスイッチをサーボで動かすだけでも簡単に戦車をラジコンにできます。しかし、市販されている2CHプロポ送信機の左スティックは前後に動き、右スティックは左右に動くように固定されています。そこで、この一般的な2スティック操作をしても、前後のチャンネルの信号と左右のチャンネルの信号から、あたかも、2スティックとも前後に動かしたときのような信号を作り出せないかと考えました。そして、これをマイコンのプログラムで実現したのが今回のミキシング回路です。せっかくマイコンを使うので、左右レバーを最大に操作したときに、左右のモーターを逆転するような信号も作り出しています。この回路の出力信号を2つのアンプにつなげば、DMDと同じ動作をさせることが出来ます。アンプはモーターにあわせて市販品を利用できますから、ハードウェア製作の範囲が少なくてすみます。このマイコンの性能からすればもう少しプログラムを工夫することにより、アンプに必要な信号も作り出せそうなのですが、今後の課題とします。今回は無理をせず、シーケンシャル処理で2CHの信号入力を単に2CHの信号出力に変換するのみの機能としました。

 プログラムフローチャート(PDFファイル)

左の写真は今回製作した回路基板です。まだ、実験段階なので、秋月電子のキットを利用しました。この基板はISP機能(回路にマイコンを装着したままプログラムを書き込むことが出来る機能)がついているので、実験には非常に便利です。キットの値段は1500円です。

 

 

左の写真はマイコンにプログラムを書き込むプログラマ基板です。これも、秋月電子のキットを使いました。このキットには、書き込みプログラム以外にアセンブラ、シミュレータまでついていて5700円ですから、随分安いと思います。後は、MS−DOS系のパソコンとRS232Cケーブルがあれば、プログラム開発と書き込み可能です。なお、プログラムを記述するためにエディタが必要です。

 

 

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