プロジェクトR

子供の頃、プラモデルをたくさん作りました。でも、当時、せっかく買ってもらったのに完成させられずくやしい思いをしたことがたくさんありました。理由は、製作技能が未熟だったとか、その製品自体に何か問題があったとか、いろいろ考えられると思います。また、すごく欲しかったのですが、自分のお小遣いでは買えず、また、高価すぎて買ってももらえなかったりと今でも機会があれば作ってみたいプラモデルはたくさんあります。ここでは、今でも燻り続けているこれらの思いを満たすべく活動した記録をみなさんにご紹介します。

タイトルのプロジェクトRはNHKの番組プロジェクトXをもじったものですが、RはRevengeです。日本語で言うと、復讐になってしまうのですが、それほど恨みはありません。どちらかというと自分への反省と、もし今やり直すなら、どれだけ問題をクリアできるのかという程度のものです。さらに、今ではとても入手が困難とか、入手できても金額的に困難な場合には、今入手できる素材と当時の資料、記憶から再現してみる活動も含まれます。

 

1.コグレの透明彗星

私が子供の頃、一時期、透明で中が透けて見える模型が流行したことがありました。ある模型関係のメーリングリストでメールのやりとりをしているとき、ずっと忘れていたこの「透明彗星」のことを思い出しました。話題はやはり当時の透明ものでしたが、出されていたのは田宮の「彩雲」やコグレの「透明零戦」でした。私は飛行機を数える程しか作ったことがないので、この話題が出された時に思ったのは子供の頃の微かな記憶で「透明彗星?」というのがあったよな、程度でした。何気なくこのことをメーリングリストに書き込むと、「透明彗星もありましたよ!」という答えが返ってきました。しかも、その後、箱絵の画像まで送ってもらって見たら、当時の記憶がどんどん蘇ってきました。封印されていた記憶が蘇ってみると、なぜか無性に作ってみたくなりました。なぜって、当時、完成させられなかったからです。「なぜ、完成させられなかったのだろうか?」という思いがどんどん強くなりました。

そんな時、たまたま、あの「西の魔物」と呼ばれているコレクターの「あうとばぁんさん」を訪問する機会があり、その透明彗星のキットを見ることができました。「ああ、何と懐かしい模型だろう。ぜひ、ぜひ作りたい!」 私はあつかましくも、「これ作らせて!」と懇願しました。しかし、このような、なかなか手に入らない古代のプラモデル、オークションで入手するにしてもとても高価です。やはり、答えはだめでした。ところが、同じキットが透明ではないものでも出されていたと言うではありませんか!? 「ええっ? 不透明彗星があったの?」しかも、こちらは「作っていいよ」ということでした。そんなわけで、今回、透明ではありませんが、まったく同じスケールと内容のキットを組み立てることになりました。

いよいよ、組み立て開始。

第1ステップは主翼にメインギア(引き込み脚)取り付けます。

☆組み立て説明図を見て、まず気付くのは、左右の脚がどの部品かということです。部品がランナーのどこについているのかは、このキットでは、説明書に付いている番号別の表ランナーの図です。これは、とてもわかりにくいです。最近のキットでは、ランナー毎にA部品、B部品と別れていて、しかも、各部品のそばに小さな数字が刻印してあります。同じコグレのデューセンバーグのキットでは、当時でも、各部品のそばに小さな数字が刻印してありました。このへんは、子供の頃、分かりにくかったと思いますが、覚えていません。とにかく、左右対称ですし、とてもわかりにくく、失敗の原因その1です。

当時の飛行機模型では、飛ばすことはできないまでも、いろいろなところが、可動式になっていました。この彗星でも、引き込み脚が左右連動して折り畳みできました。(手動ですが)また、ラダー、エルロン、フラップなども動きます。(これももちろん手動です)さらに、プロペラはモーターで回転します。御多分にもれず、この彗星でもエルロンとフラップが稼動し、プロペラはモーターで回転します。これら各舵には、ヒンジがあるのですが、この部分は接着を相当慎重に進めないと、接着剤がヒンジ部分に入り込みくっついてしまいます。このキットでも、引き込み脚やフラップのヒンジの組み立ては子供にはかなりむずかしい組み立てです。今の私でも苦労しました。ピンセットを使用し、液体接着剤を少しつけて慎重に進めました。当時はキット付属のチューブ入りの接着剤を使いましたから、うまくできたのかどうか覚えていません。エルロンは主翼の上下で挟み込む構造になっていますが、簡単にはずれてしまいます。簡単にはずれるのですが、簡単に復帰できるので問題はありません。エンジンの中にはマブチの13モーターを組み込むようになっています。ところが、今では13モーターは売っていませんので同サイズのFA130モーターを使用しなければなりません。しかし、シャフトが出ている方向が13モーターとFA130モーターでは逆なのです。エンジンケースには13モーターの外形にあわせた押えなどがあり、仕方がないので、FA130モーターを分解して、シャフトを逆に出るように工作しました。

☆ここで、子供の頃に失敗した記憶が鮮明に蘇ってきました。それは、スイッチの取り付けです。説明図はまったく誤解を与えやすいものです。思い出したのは、このスイッチの向きを間違えて取り付けてしまったことです。当時の模型では標準的でしたが、ファイバー製のスイッチをダボを焼きつぶして取り付けます。向きを間違えたらやり直しはきかないのです。説明図のステップ8はどう見てもレバーが手前に来るように取り付けることになっています。しかし、ステップ13の図を見ると、レバーは機体側面に出るように左向きに取り付けなければならないのです。子供の頃、このへんで挫折したような記憶があります。とても残念です。今なら、何とかできるので、捨てずにおけばよかったとくやまれます。

☆コックピットの部品の取り付けでは、説明文が曖昧で、各部品の位置関係がよくわからないところが多々あります。7.7m機銃は操縦士の前に取り付けるのですが、まず、操縦士の位置がどのへんなのか、床にマークもなく迷います。機銃の接着面積は非常に小さく接着剤がかわくまでぐらぐらしてしまいます。さらに、「計器板を操縦士の前に取り付ける」と書いてあるのですが、操縦士の足と機銃の尻が適当でないと、うまく納まりません。ちゃんと部品の前後関係を図で示すとか、床にマークをつけてそこに取り付けるような指針がないと、1回で取り付け位置を把握できません。これでは、失敗します。何度も接着をやり直すと汚くなりますしね。後部座席の射撃手が持つ機銃の先が、どう見ても風防を打ち抜く位置を向いてしまうのですが、このへんは部品のサイズ自体、かなりいい加減のようです。

☆ステップ15では、風防の取り付けなどをするのですが、ここで説明不足なのが、部品番号55の可動式風防の取り付け方法です。せっかく、スライドして開け閉めできる構造になっているのに、まったく説明してありません。普通に組み立てると、接着してしまいそうです。私は、当時の模型はほとんど可動式だったことを知っているので、接着しませんでしたが、これも失敗をまねく原因になりますね。

☆今回、最後に手こずったのが、電池ケースです。電池は単3を補助燃料タンクの片側に内蔵するようになっています。ところが、当時の電池と現在の電池では太さが少し異なっていたようで、リード線が通るだけの隙間ができないのです。キット付属のリード線は細いのでそれにつけかえましたが、それでもだめです。電動リューターで少し削ってぎりぎり電池は入るようになったのですが、入れたら最後、きつくて取り外せません。しかし、これはどうしようもありません。とうとうあきらめました。単五電池に変える等が必要です。

☆結局、今回提供していただきましたキットでは、部品が3点不足しておりました。まず、爆弾扉受けの部品41ですが、これがくせもの。プラ板を加工して自作しましたが、前後2枚必要です。部品図では同じ番号なのですが、前後で形状が異なります。なぜ、同じ番号なのでしょうかね。(どうせ、不足していたから、関係ありませんが)爆弾扉の軸受け位置が結構むずかしく、製作に何時間も費やしました。また、プラス極の電池金具も不足していて、リン青銅板で作成しました。これも、サイズが決まらず苦労しました。当時のキットでは、部品が不足していることがけっこうあり、途中で製作をあきらめたこともありました。今回は不足部品をメーカに請求することもできず自作しましたが、当時、部品を自作していれば、何とかなったと思い出されるものもいくつかあり、残念に思います。

☆とりあえず、素組みで完成しました。

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