講談社現代新書

グリム童話
メルヘンの深層

鈴木晶


★★★★★★
 最近本屋に行くと、大人向けの童話の本が多く置いてあるのが目に付きます。昔から伝わる昔話や童話の中にあった残酷性や性的な内容は、それをまとめた人の手によって、故意にその当時の感覚に従って表現を変えられたり、誇張されたりしているようです。特にグリム童話はその当時の社会的要請(子供向けに相応しい表現)から、版を重ねる毎に性的表現は嫌われ、残酷性は強調されていきます。今書店に並んでいるこういった本には、原典に即したありのままの内容が描かれており、我々が子供の頃読んだり聞いたりした物語と比べ、そのギャップを楽しむところにこのブームの面白さがあります。
 この本は、初版が1991年の1月ですので、ブーム以前の出版になっていると思われます。私もこの手の本は初めて読んだので、他と比べようがありませんが、グリム童話研究の導入書としてはとても良くできていると思います。グリム童話の生い立ち、童話学入門、書き換え部分の面白さを簡単にわかりやすく説明してくれて、私が興味を持つには十分な内容でした。特にグリム童話の持つ残虐的な側面は、今の時代を生きる我々にはとても壮絶でグロテスクな表現です。このグリムの感覚は、童話集をまとめた当時の感覚としては、一般的な感覚であるという事実には驚きました。
 とにかく、これを読んで、グリム童話の原典を読んでみたくなったのは間違いありません。昨日早速グリム童話の初版翻訳本を購入しましたので、少しづつでも読んでいってみたいと思います。

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1999/08/16更新

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