「いきなり質問なんかして、悪かったな」
「…いえ、本当は自分のスペックくらい、はっきりと
説明できなくちゃいけないのに、わたし、そういうの
苦手で、なかなか覚えられなくて…」
人間ならともかく、ものを記憶するのに得意や苦手
があるなんて、ホント、マルチは変なロボットだな。
そういうことまで徹底して人間っぽく造られている
のかもな。
「…うろ覚えな説明ですみませんでした」
「でも、マルチの説明は解りやすかったぜ」
「本当ですか?」
「ホント、ホント。おかげで、オレもメイドロボット
のことが少し解った気がするぜ」
「でも、わたしは特別変わってますから、他のメイド
ロボットの方たちとは違うかもしれませんよ」
「そんなに違うのか?」
「はい。他のみなさんは、もっといろいろ、なんでも
そつなくこなせるのに、わたしはドジばっかりだし…」
「…うーん。そうだな、そう言われてみると、たしか
にマルチは変わってるよな」
「……」
「なんてったって、他のメイドロボットに比べると、
ダントツで親しみやすい」
「えっ?」
「やっぱり人間に近いんだよ。こうして喋ってると、
ついついマルチのこと、ロボットだって忘れちまう。
可愛い後輩の女のコって感じかな」
「…浩之さん」
マルチはポッと頬を赤らめた。
そんな仕種もじつに人間らしい。
「じゃ、オレ、もう帰っから」
「あ、はい」
「悪かったな、仕事の途中なのに話し掛けてさ。掃除
頑張れよ」
「はいっ。頑張りますっ」
にっこり笑うマルチに手を振って別れ、オレはその
場を後にした。
それにしてもマルチって、ホント、ロボットに見え
ないよな。
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