「おい、おい、こんな程度で泣くなよ」
 オレは、マルチの頭を撫でて言った。
 マルチは背が低く、ちょうど撫でやすい高さに頭が
ある。
「…す、すびばせん。…いくら捜しても、浩之さんが
見つからないので、なんだか無性に悲しくなって…」
 じわ〜と、涙がにじむ。
「ほらほら…」
 オレは苦笑しながら、ティッシュでマルチの目もと
を拭った。
「…すびばせん」
 マルチはもう一度、チ〜ンっと鼻をかんだ。


 

続き