「ああ〜っ、オレの100円どこ行ったんだ〜!」
 休み時間、自販機でジュースを買おうとしたオレは、
うっかり100円玉を落っことしてしまったんだ。
 探せど探せど、オレの100円玉は出てこない。
 …食費と小遣いを兼ねているオレにとって、100
円は割と重要なポジションにある。
 無駄に使ってしまうこともあるが、タダでくれてや
るような100円なんて、これっぽっちもない。

 くっそ〜っ、どこ行ったんだぁ。
 さっきから、まわりはしらみつぶしに探した。
 自販機の下は何度も覗いてるし…。
「あのっ、何かお探しでしょうか?」
 そんな声が聞こえ、オレは顔を上げた。

 見ると、マルチと来栖川先輩のふたりが立っていた。
「よお、マルチに先輩」
「こんにちは、浩之さん」
「……」
「なんか珍しいツーショットだなぁ…」

「あの、浩之さんは、なにかお探しですか?」
「オレ? いや、大したもんじゃねえんだけど、10
0円落っことしてな」
「それは大変です。わたしがお探ししますっ」
「……」
 えっ、マルチはともかくとして、先輩も探すって?
 こくん。
「わざわざ、ふたりで探さなくてもなぁ…」

「わたし、探し物は得意なんです」
「……」
 先輩は『魔法で探し出せます』って、言っている。
 …う〜ん。

 せっかくの好意だ。
 この際、手伝ってもらうか。
 …とりあえず、ふたり同時にってのはなんだから、
どちらかに手伝ってもらおう。
 これは、科学対魔法ってやつかも…。

 A、科学に頼る。
 B、魔法に頼る。