「マルチ、スト〜ップ!」
オレは前から荷物を押さえて、マルチの進路をふさ
いだ。
「あわわわっ! 進めませ〜ん!」
オレが押さえていることに気がついていないのか、
慌てまくるマルチ。
「マルチ、ストップストップ!」
「すすすストップしたいのですが、進めませ〜ん
」
「進むなっての!」
「あれれ? その声は、浩之さんですか?」
「おう。…とにかく、荷物を降ろせ」
「はいっ」
荷物を降ろすと、ようやく顔が見えるようになった。
「…ったく、荷物を持ち過ぎなんだよ」
「あのぉ…、どういったご用件でしょうか?」
「お前な、危なかったんだぜ? このまま行けば、そ
この角で人とぶつかるところだったんだ」
「わたし、危なかったんですか?」
「ああ。よく見てみろ、今あそこから――」
オレが角を指差すと、ちょうどレミィが角を折れた
ところだった。
「あっわたし、あの人と衝突しそうだったんですね」
「そうだよ。…言ったろ、無理していっぺんに運ぼう
とするから、危険なんだ」
「どうもすみません…」
「オレが半分持ってやるよ」
「あ、でも…」
「人の好意を受けるのも、メイドロボの役目ってこと
にしよーや」
「…浩之さん、ありがとうございます」
結局、ジュースを買いに行くつもりが、そっちのけ
でマルチの手伝いで終わってしまった。
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