土曜日の放課後。
心なしか、まわりはみんな、ウキウキしている。
そりゃ、そうか。
明日が休みだと思うと、気も軽くなるよな。
オレは鞄を取って、席から立ち上がった。
さて、これからどうしようか?
2階を歩く。
よし、2階を歩くぞ。
廊下で声を掛けられた。
「浩之さーんっ」
「おっ」
振り返ると、にっこり笑ったマルチがいた。
「よぉ、マルチ」
「こんにちは! お帰りですか?」
「ああ」
見ると、掃除の途中なんだろう、廊下の傍らには、
ローラー付きのバケツにモップという、いつもの道具
一式が置かれていた。
相変わらず、マルチ以外の生徒はいない。
「なんだ、また掃除させられてんのか? …っとに、
しょうがねーなー」
オレが苦笑して言うと、
「いえ、わたしが進んでやらせてもらってるんです。
わたし、お掃除大好きですから」
マルチは、そう言って、いつもの屈託のない笑顔を
見せた。
「…それに、今日でこの学校ともお別れだと思うと、
どうしてもやっておきたくて…」
目を細め、思い出深そうに微笑んだ。
…そっか。
そういやマルチのヤツ、この学校に生徒として通う
のも、今日で最後なんだっけ。
一週間ちょっとの運用テスト。
あっという間だったよな。
最後ということで、オレは――。
A、掃除を手伝ってやる。
B、今日までご苦労さん、と言って別れる。