――ブロロロロロ…。
 ほどなくして、バスが来た。
 目の前で停まり、プシューッと戸が開く。
「…浩之さん」
「マルチ、元気でやれよ」
 オレが言うと、マルチは、
「はい」
 と、明るくうなずいた。
「浩之さんもお元気で。お体にお気をつけて」
「ああ」
 マルチは深々とおじぎすると、セリオとともにバス
に乗り込んだ。

 ブロロロロロ…。
 バスがゆっくり走り出す。
「マルチ…」
『浩之さん、さようなら、お元気でっ!』
 後部座席の窓にへばりつきながら、マルチは、ぽろ
ぽろと涙をこぼしながら、手を振り続けた。


 夕方

マルチのご奉仕