渋谷区の税理士 中川尚税理士事務所

 

 

税理士業界に25年身を置いてみて


 

 


<税理士業界のテーマ>

筆者は21年前29才で独立開業して現在50才である。

 

 21年前からそうであったが税理士業界の最大のテーマは、いつの時代も「顧問先の拡大」である。

税理士の人数が増加する割には法人企業数が増えていかない(いや、事業開業者数は90年代以降、

むしろ減少している)。

過去40年間で税理士数は16倍、法人企業数は6倍、税務官吏数は8%減というデータを見たこともあ

る。

 ここ数年税理士業界は儲かっているように思われていたが、実は顧問先が減る一方で本当は困ってい

るという情報が広まり、営業やマーケティングの会社がやたらと各会計事務所へ接触してくるようになっ

た。

顧問先の紹介会社が非常に増えている様であるがその紹介会社自身があまりに多くの会計事務所が顧

問先を紹介されたがっていると事実を知って、驚いているということである。



<会計事務所と経営指導>

また、「顧問先の拡大」の一方で、顧問先の会計事務所に対するニーズを考えると、税務や会計のみな

らず経営指導まで踏み込まなければならないという主張もこれまた延々と言われ続けている。

ここで不思議でならないのが、500社や1000社も顧問先を持っていて、本当に経営指導ができるのだろ

うかという点である。

つまり、経営指導までやるということは顧問先数を絞ったり、顧問先対象企業を絞ったり(例えば、年商

10億円から100億円までの企業しか顧問にならないとか)することを意味しないのかということである。

実際のところは経営指導までやるのではなく、できるだけ安い顧問料を設定して、顧問先の維持に努め

ているのである。

それは、経営者が10人いればそのうち9人の社長は顧問料の安い税理士を求めてくるからである。

 そのことから、一律3万円の顧問料と決めている会計事務所もある。

こうしておけば所長税理士自身が対応しなくても、顧問先は逃げないであろうという考えである。


<何故、顧問先を拡大する必要があるのか?>

つまり、「顧問先の拡大」というテーマは顧問料を高く設定できないことから出てくるのである。

顧問料が高く設定できれば、人にもよるが経営指導までやるだろうし、無理してまで顧問先数をふやす必

要はないのである。

無理して顧問先数を増やすと、どうしても税務や会計の業務水準が下がっていく。

業務水準が低いのだから顧問料は安くても当たり前という悪循環構造ができあがってしまう。

 税理士が新規で顧問先の契約を結ぶ場合、前の税理士が月額5万円だったとすると、当分の間は、自

分の事務所も同額でと言ってしまうのが通例であろう。

前の税理士が経営指導までやっていなくて、もし、自分の事務所が経営指導までやっているのであれ

ば、5万円ではなく10万円や15万円の顧問料を設定するという税理士がもっと出て来てもよいと思うの

だが・・・


<税務調査に関する2つの疑問点>

筆者が25年前に、この業界に入って最初に「あれっ」と思ったことがある。それは、何故、税務調査で否

認事項が当たり前の様に出てくるのかということである。

会計事務所の顧問先は東京の場合、年商1億円クラスが平均であろう。

その場合、税務調査は丸2日間(3年ごとに1回)が一般的である。

税理士が顧問としてずっと見ているのに何故たった2日間で否認が出てくるのかである。

さらにもっと「あれっ」と思ったのは、顧問先も税理士も否認事項が出てくることを当然のことと考えている

ことである。

税理士に顧問料を払っているから、否認事項が出たら経営者はもっと怒ってもよいのにと思ったもので

ある。


<税務調査を乗り切るためには>

それでは、何故否認事項が出るのか。

よくよく考えてみると答えは実は簡単である。

経理システムでは証憑書類を基に帳簿組織を作成する。

もっと有体に言えば領収書を基に会計伝票を作るのである。

つまり、その経理が正しくできているかどうかは、領収書等と会計伝票等を照合しなければわからないの

である。

 ところが、一般的な多くの会計事務所は照合はしないで帳簿組織の整合性だけをチェックしているので

ある。

つまり、その会社の取引実態を把握しないで、経理処理をしていることになる。

ところが、税務調査ではサンプリングではあるが必ず領収書等と会計伝票等との突き合わせを行う。

であるが由に、言わば当然の様に否認事項が出てくるのである。

逆に言えば、月次ベースで小会社があればすべての仕訳を領収書等と照合、つまり、税務会計監査を

行っていれば否認事項は出て来なくなるのである。

 税理士業界に入る前は、税務調査とは重箱の隅を突付くような調査が多いとか、またいわゆるお土産と

いって、若干でも否認事項が出て来ないと、調査を終了させないということを聞いていたが実際はかな

り、違っていた。

一般的な調査は、経理システムの流れをチェックして、余程、間違った経理処理をしていない限りは否認

はして来ないものである。


  
<独立後に心がけたこと>

21年前、独立してすぐではなく数年は経っていたが次の2つのことを目標とするようにした。

(a)   中川会計事務所が作り上げた申告書が税務調査に100%対応できるものであるかどうか。

(b)    もうひとつは、中川会計事務所が作り上げた数字が経営者の意思決定に有効なものであるかどう

か。

税理士が経営指導までやるかどうかについては、いろいろと議論のあるところではあるが、経営の中に

税務や会計があるという切り口で入っていった方が脱税や、粉飾に巻き込まれやすいのではないのかと

思っている。
  

  
<私が考える経理業務とは>

また顧問先に経理処理、つまり、仕訳を起こしたり、帳簿を作るという仕事を経理の仕事のメインと思わ

せないことも重要なことだと思っている。

経理の仕事には次の5つの仕事がある。

 

(1)収入チェック・・・正しく請求して決まった時にちゃんと入金されているかどうかをチェックする。

(2)支払チェック・・・請求されたものが正しいかどうかをチェックして、決まった時に決められた金額を

支払う。

(3)資金不足管理・・・いついくらくらいのお金が足りなくなるのかをチェックして、経営者に報告する。

実際の資金調達は経営者自身が行うことが多い。

(4)経理処理・・・それをメインと考えている人も多いが筆者は4つ目にあげたい。

(5)決算・申告

 

上記のうち1〜4は実は資金繰り表にその内容が盛り込まれているのである

(4の経理処理にしても、お金の動きの経理処理がほとんどだから)。

つまり、経理の仕事は資金繰り表を中心に考えるべきなのである。

過去の経理処理が中心ではなく、未来の資金繰りを中心に考えるべきである。

そうすると経理担当者は過去のちまちました処理だけでなく未来のダイナミックな動きを中心に考え

るようになってくる。   

 

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