こんにちは、マハロさん
「取得原価とは××だからそこに含まれるのはこれこれである」という理論から演繹的に
導かれるものではないという意味で、正当なご疑問だと思います。
1.圧縮記帳
圧縮記帳をした場合、取得した期に、貸方に立つ「保険差益」などの収益を、借方に立て
る「固定資産圧縮損」でちゃらにします。その後の会計期間においては、マハロさんが書
いておられるように減価償却費が少なくなります。
法人税は利益にかかる税金なので、取得した期の法人税は少なくなり、その後の法人税は
多くなります。従って、課税の繰延効果があります。
課税の繰延効果は、本来副次的な効果であるわけですが、圧縮記帳においては、これこそ
が目的なのです。圧縮記帳は、税法が作り出した課税繰延のためのひとつの技術です。
会計理論的には、保険差益の扱いも圧縮記帳という方法も納得がいかないのですが、現実
を無視してつっぱしるわけにもいきません。そこで制度としての会計においては、こうい
う方法も認めたわけです。それで圧縮記帳はあくまで容認規定になっているのです。
2.自家建設の場合の借入利子
本来、借入金の利子は財務費用であって原価とはしないはずです。しかし、通常利子が多
額に上ることもあって、社会的な要請が強かったため、制度としての会計においては、こ
れを取得原価に算入することを容認しました。
取得原価に算入するということの会計理論的な機能としては、対応する収益が生じた期に
費用化するため、それまでは資産として繰り延べていくというものがあります。利子の原
価算入は、この機能を「使っている」のです。
会計上の技術を使っているため、一応、「収益と対応させるため」という理由が成立しま
すが、「どういうものは収益と対応させ、どういうものは収益と対応させないのか」とい
うあたりの区別があいまいになっています。それで利子の原価算入には限定的な要件があ
り、また容認規定になっているのです。
いずれにしても、制度としての会計は、企業会計原則が会計実務のなかかから一般に公正
妥当と認められるものを機能要約したものであることに代表されますように、理論どおり
ではなく、また、理論どおりであることが絶対的な正義というわけでもないのです。
[2001/08/04 17:57:44]