記事タイトル:時価概念について 


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お名前: 星 ひゅうま   
 時価概念に正味実現可能価額と再調達原価があるそうですが、それぞれどのような
 概念なのか理解できません。

 また、それに付随した疑問になりますが、財務的な保守主義の観点からとらえた場
 合の時価概念としては、正味実現可能価額が妥当で、原価主義の観点においては再
 調達原価が妥当ということですがこれもよく理解できません。

 どなたか平易に説明して下さい。宜しくお願いします。
[2001/06/03 20:55:28]

お名前: ぐれ   
こんにちは、「星 ひゅうま」さん

平易にご説明できる能力はありませんが。

「再調達原価」
 =「決算時における購入または取得予想価額」
「正味実現可能価額」
 =「決算時の売価からアフターコストを差し引いた価額」

棚卸資産をイメージいただけると良いと思うのですが、資産は、これを買って
くる市場とこれを売り払う市場があると考えます。商品売買だと、問屋さんか
ら買ってくる部分が購入市場で、消費者に売るのが販売市場というイメージで
す。おおざっぱですが。

再調達原価はその定義のとおり、購入市場でいま購入したらいくらになるか、
という評価額です。正味実現可能価額は、逆に、販売市場においていま売却し
たらいくらになるかという評価額になります。ただし、売却するにはコストが
かかりますから、それを差し引きます。委託販売で、受託者売上価額から、販
売諸掛を差し引いた当店手取額みたいなものです。

いずれも「現時点で」の評価と言う意味で時価であり、どちらの市場を念頭に
置くかで異なったものとなります。


難しいのは「××主義との関係」です。正確にご説明しようと努力すると、と
ても長くなりそうなので、はしょってのご説明になることをお許し下さい。


まず、一般的な意味では、保守主義と正味実現可能価額は結びつきません。現
時点において、たまたま手持ちの商品の値段が上がっていて、これを正味実現
可能原価で評価してしまえば、実現してもいない「評価益」が生じることを考
えただけで、ご理解いただけるものと思います。この議論は、時価が下がって
いるとき、すなわち、低価基準を適用する場合に、いかなる時価と比較すべき
か、という理念の問題として語られる問題だと思います。

「低価基準は本来、期間損益計算の見地からは合理的ではないが、保守主義の
見地からのみ認められる」と考える考え方からしますと、「予想の損失は計上
すべし」というのが保守主義の考え方ですから、期末棚卸資産を将来において
実際に売るときにいくらで売れるのか、が大切になります。だから、それに近
い時価であるところの正味実現可能価額が、保守主義から低価基準を基礎づけ
る考え方と親和性を持つわけです。なお、制度上はこの考え方を採りますが、
再調達原価に拠ることも認められます。

「原価基準とはそもそも、その資産の有用性を貨幣評価したものであり、決算
時点における有用性が取得原価を下回れば、当然、残っている有用性の額で評
価するべきなのだ(だから低価基準は原価基準から当然導かれるのだ」と考え
るヒトもいます(有効原価説などと呼びます)。「残留している有用性」を測
定するのは難しいわけですが、いま購入したらいくらになるか、というのは、
ひとつのメルクマールになります。ですから、有効原価説に立つ場合、原価基
準と再調達原価が親和性を持つことになります。

しかし、制度会計上は、原価基準は原価基準であって、取得原価主義としか結
びつかないので、特定の立場に立った考え方であることにご注意下さい。

さらに申し上げれば、「取得価額とはそもそも企業資本の投下額であり、回収
可能額が大事だと考えるのが原価基準なのだ」と考えるヒトもいます(回収可
能原価説などと呼びます)。この考え方に立っても、低価基準は原価基準から
当然導かれるものとなるわけですが、回収可能額は正味実現可能価額が適切で
すから、原価基準と正味実現可能価額が親和性を持ちます。

制度会計上の考え方については、連続意見書第四をごらんいただくのが一番だ
と思います。その他の考え方については、財務諸表論の本をごらんいただけれ
ば、ずっとまっとうな説明が必ず書いてありますので、そうしたものをご参照
頂いた方が正確であると思います。

ご参考まで。
[2001/06/03 22:42:11]

お名前: 星 ひゅうま   
 「ぐれ」さん、詳しい解説をありがとうございました。

 解説を読んでみてその知識の深さに驚きました。私は独学なのではっきりしたことは
 知りませんが、一般的な1級受験生はここまでは理解しきれていないのではないでしょ
 うか?多分、財務諸表論を受験する際に勉強することになるのでしょう。

 正味実現可能価額と再調達原価の意味は把握できましたが、その次の質問に対する解
 説は残念ながら十分には理解できませんでした。ご紹介いただいた本を読んでもう一度
 勉強してみます。
[2001/06/04 11:46:47]

お名前: ぐれ   
こんにちは、「星 ひゅうま」さん

もう見ておられないかもしれませんが。
いまいちわかり難い説明になってしまったみたいでごめんなさい。

日商1級ですとこうした問題は「正誤」問題の形を取るような気が
するわけですが、「原価主義」をどう捉えるかによって正誤が違う
ことになるため、問題になりにくいと思いました。複数の選択肢が
与えられていれば、「この問題では原価主義を××のように考えて
いるらしいから、それなら..」みたいな判定もできますし、ある
いは、文章で説明するなら、それぞれの考え方を述べれば良いので
すが、正誤では答えがひとつにならないのではないかと思うわけで
す。

なので、純粋な理屈の問題と考えてご説明してしまいました。


あくまで時価が取得原価より下がっている場合を念頭において、な
のですが、保守主義からは「いずれ売ったら損が出るなあ。それな
ら損は早めに認識しておこう」という考え方になるわけです。

「いずれ売ったら」なので、売却市場の時価、つまり、正味実現可
能価額を念頭におくのが素直です。もっと厳密に言えば、売ろうと
思っている時点において「売ったらどうなるか」を現在価値にひき
もどしても良いわけですが、そう言われてもそんな予想は確実じゃ
ないので、近似値としてOKでしょう、という感じです。


で、「原価主義」なんですが。

企業会計原則は「原価主義」と言うコトバは使っていないのです。
「貸借対照表に記載する資産の価額は、原則として、当該資産の取
得原価を基礎として計上しなければならない」と言っているだけで
す。連続意見書では「企業会計原則は、原価主義を資産評価の一般
原則とし...ている」と言っていますので、企業会計原則のこの
部分が「原価主義」と呼ばれているのだなあ、ということくらいし
かわかりません。

そして、企業会計原則はこうした「考え方」を述べた上で、各資産
について具体的な取得原価の算定方法を規定して、B/Sはこれで
書いてね、と言っています。この具体的な方法が「取得原価基準」
ということになります。

ところが、企業会計原則は、棚卸資産については、時価が下がって
いるときは時価でも良い、とも言っています。これが通称「低価基
準」というB/S価額算定の方法です。

以上のような構造を前提とすると、頭の整理として以下の2つの考
え方がなりたちます。

A原価主義なら取得原価基準による。原価主義の例外として低価基準
B原価主義なら取得原価基準&低価基準(適用は場合による)

つまり、低価基準が、原価主義という「考え方」に反する例外なの
か、それとも原価主義という「考え方」に含まれているのか、です。

Bの考え方に立って、取得原価基準と低価基準をむりなく説明しよ
うとしたのが、有効原価説とか回収可能原価説だったりします。理
屈の世界なので、なかなかイメージしづらいです。しかも、それぞ
れの説は、「時価が上がっているときは取得原価基準を使い、時価
が下がっているときだけ低価基準を使う」ことも一緒に説明してし
まうので、よけいごちゃごちゃします。

財務諸表の本を読むときに、こういうわくぐみをちょっと頭に置い
ておくと、なるほどなるほど、と思えるかもしれません。

そして、きわめておおざっぱに言えば、「そのブツはそのものとし
てどのくらいの価値があるのだろう」ということに注目するのが、
有効原価説で、「そのブツを使っていくらの資本を回収できるのだ
ろう」というのが回収可能原価説なんです。だから、時価として、
どっちの市場を向いて考えるのか、ということと密接に結びつくん
ですね。

と、いうわけで、「原価主義の観点に立てば再調達原価」という風
に考えるのは、Bの考え方に立った上で、有効原価説を採るヒトな
のだ、ということになってしまうのです。

やっぱりダメでしょうか...
[2001/06/05 10:17:58]

お名前: 星 ひゅうま   
 2回にわたって長文の解説をしていただいてありがとうございます。完璧までは
 いかないまでも、かなり理解を深めることができました。何かありましたらまた
 教えて下さい。
[2001/06/06 16:27:57]

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