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お名前: 砂時計
利益処分で積み立てられる任意積立金というのは、
実際にどうやって積み立てられているのでしょうか?
利益処分で積立てが確定した時に、同額を現預金などで
積み立てるのではなく、帳簿上積立金として計上するだけ
で終りなのでしょうか?(だとするとどんな意味があるのでしょう?)
あと、社債を発行して、将来償還する時の為に
減債積立金を積み立てますが、BS借方に減債基金というのが
あります。減債基金とはなんなんでしょうか?
初歩的で申し訳ありませんが、よろしくお願いします。
[2001/07/10 09:49:08]
お名前: ぐれ
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こんにちは、砂時計さん
任意積立金は、資本の部にあることからもわかりますように、資本金や法定準備金とその
性格に類似する面があります。
それは、「その部分は配当しない」ということです。
資産と負債、そしてその差し引きである純資産は、資金をどうやって調達したか、そして
それをどうやって運用しているのか、という事実につながっています。これに対して、資
本は、事実としての純資産がこの額を下回らないようにするという「決意」のようなもの
だとお考えになるとよろしいかと存じます。一般に、「資本とは会社財産確保のための基
準となる一定の計算上の数額をいう」などというのはこうしたことを表現したものです。
プールの「水位線」みたいなもんです。そこから下回るのはよくないという線です。
さて、きわめておおざっぱに申しますと、資本のうち資本金と法定準備金以外の部分は、
株主が「配当して下さい」といえば配当します。そのぶん、現金などが株主の手に移って
いくわけです。株主総会で配当を決める前と配当を実際に支払った後は、下の図のように
貸借対照表が変わりますよね。
配 当 す る 前 配 当 し た 後
┌───────┬───────┐ ┌───────┐
│ │ │ ⇒現金が流出 │ │
│ │ │ ┌───────┤ │
│ │ 負 債 │ │ │ 負 債 │
│ 資 産 │ │ │ 資 産 │ │
│ ├───────┤ │ ├───────┤
│ │ 資 本 金 │ │ │ 資 本 金 │
│ ├───────┤ │ ├───────┤
│ │ 法定準備金 │ │ │ 法定準備金 │
│ ├───────┤ │ ├───────┘
│ │ 未処分利益 │ │ │⇒利益は処分
└───────┴───────┘ └───────┘
ところが、すでにむかしの株主総会で任意積立金を積んでいたとしましょう。簡単のため
に、上の図の未処分利益と同額の任意積立金だったとします。すると、株主総会では、特
に任意積立金を取り崩すと決めない限り、配当はなされません。
総 会 の 前 総 会 の 後
┌───────┬───────┐ ┌───────┬───────┐
│ │ │ │ │ │
│ │ │ │ │ │
│ │ 負 債 │ │ │ 負 債 │
│ 資 産 │ │ │ 資 産 │ │
│ ├───────┤ │ ├───────┤
│ │ 資 本 金 │ │ │ 資 本 金 │
│ ├───────┤ │ ├───────┤
│ │ 法定準備金 │ │ │ 法定準備金 │
│ ├───────┤ │ ├───────┤
│ │ 任意積立金 │ │ │ 任意積立金 │
└───────┴───────┘ └───────┴───────┘
さて、ここで任意積立金に相当する資産を、たとえば「任意積立金特別預金」などの預金
として固定したとします。
┌───────┬───────┐
│ │ │
│ │ │
│ │ 負 債 │
│ 資 産 │ │
│ ├───────┤
│ │ 資 本 金 │
│ ├───────┤
│ │ 法定準備金 │
├───────┼───────┤
│ 特別の預金 │ 任意積立金 │
└───────┴───────┘
資産サイドに変化がありました。その意味を考えてみましょう。本来、株主が任意積立金
分を配当しないことにしたのは、株主自身の手許にあるよりもより多くのもうけが期待で
きる(いずれはめでたく花開く)と考えたからでしょう。花開くためには、任意積立金分
の資産は、売掛金や棚卸資産の形になって活動し、利益を上げなくてはなりません。とこ
ろが、ここでは「特別の預金」の形に固定されてしまっています。固定されてしまえば、
大輪の花が開くことはないでしょう。
でも別の見方をしてみましょう。大量のキャッシュが必要になることが目に見えていると
します。任意積立金を積むかどうかとは関係なく、企業としてはキャッシュの手当をして
おくはずです。その良い例が、砂時計さんがあげておられる社債の償還です。まさか、現
金預金の代わりに棚卸資産をわたすわけにはいきませんから、キャッシュの手当をするは
ずですね。これを「特別の預金」の形で手当したとしましょう。任意積立金は積んでいな
いとします。
1. 配 当 す る 前 2. 配 当 し た 後
┌───────┬───────┐ ┌───────┐
│ 資 産 │ 負 債 │ ⇒現金が流出 │ 負 債 │
├───────┼───────┤ ┌───────┼───────┤
│ │ │ │ │ │
│ 特別の預金 │ 社 債 │ │ 特別の預金 │ 社 債 │
├───────┼───────┤ ├───────┼───────┤
│ │ 資 本 金 │ │ │ 資 本 金 │
│ ├───────┤ │ ├───────┤
│ 資 産 │ 法定準備金 │ │ 資 産 │ 法定準備金 │
│ ├───────┤ │ ├───────┘
│ │ 未処分利益 │ │ │⇒利益は処分
└───────┴───────┘ └───────┘
3.そして社債を償還した後
⇒特別の預金 ┌───────┐
で社債償還 │ 負 債 │
┌───────┼───────┤
│ │ 資 本 金 │
│ ├───────┤
│ 資 産 │ 法定準備金 │
│ ├───────┘
│ │
└───────┘
なんとも心許ない資産負債の状況になってしまいましたね。こうなると、満足に営業もで
きないかもしれません。こうなったのは、じゃんじゃん株主に配当してしまったのが原因
なわけです。株主としては、こうならないように、「配当しません」宣言をしておいた方
が良いと考えるかもしれません。会社としては、「配当しません」宣言をしておいてくれ
た方が、あとあとのことを考えると良いですよ、という提案をするでしょう。
任意積立金は配当をしない宣言であり、特別の預金はキャッシュの必要があるから積み立
てている「資産のとりのけ分」です。任意積立金を積んだから資産を取りのけるのではな
いんです。
ここまででなんとなくそうかな、と思われたかもしれませんが、減債積立金は、もうすぐ
社債を償還するので、その後の資産が心許なくなるから配当しないと決めた分(任意積立
金)であり、減債基金とはもうすぐ社債を償還するのでキャッシュが必要になるから、資
産から取りのけてある特別の預金など(どんな形を取っていても良いので、預金には限り
ません)を指します。
一般には、減債積立金と減債基金の両方を用いることがベストとされます。そして減債積
立金があって減債基金がなくてもOKとされます。減債積立金がなくて、減債基金だけと
いうのは、最終的には心許ないB/Sになってしまうので、やらないよりましという程度
だと考えられています。
[2001/07/11 09:45:35]
お名前: 砂時計
ぐれさん、いつもありがとうございます。
任意積立金は“配当しない”宣言をした部分で、資産としてどういう形で持っていても
良いという事でしょうか?
と言う事は、減債基金のうち80%は普通預金、残りの20%は株式で運用(実際に償還に当
てる資金を運用する事はないかもしれませんが)した場合、B/S表示はどうなるのでしょ
うか?普通預金残高、有価証券残高から将来の社債償還資金として減債基金分は差引いて
表示した後、減債基金分を区別して表示するのでしょうか?
でもそうしたら銀行の残高証明や有価証券の預かり証とB/Sの残高が食い違っちゃいます
よね?よろしくお願い致します。
[2001/07/11 11:53:23]
お名前: しょうご
砂時計さん
ぐれさんの詳細な解説がありますので、結果のみ示すと、
任意積立金…不特定資産として保有。
減債基金 …特定資産として保有。
と、なります。
で、減債基金として、現金や有価証券の形で保有する場合、
B/Sには「減債基金」(投資その他の資産)として、他の現金、有価証券
とは区別して表示されます。
[2001/07/11 14:33:14]
お名前: しょうご
↑補足
>で、減債基金として、現金や有価証券の形で保有する場合、
>B/Sには「減債基金」(投資その他の資産)として、他の現金、有価証券
>とは区別して表示されます。
例えば、現金2,000 有価証券1,000あるとして、
うち現金800、有価証券200を、社債を償還するための特定資金として
保有するとします。
その場合、B/Sには
B/S
-----------------------------
: |
現金 1,200 |
有価証券 800 |
: |
減債基金 1,000 |
|
と、表示されます。
[2001/07/11 14:45:03]
お名前: ぐれ
URL
こんにちは、しょうごさん、フォローありがとうございました。
こんにちは、砂時計さん
念のため。減債積立金は任意積立金ですが、減債基金は任意積立金では
ありません。ほかはしょうごさんの的を射た解説をご覧くださいね。
[2001/07/11 21:44:11]
お名前: 砂時計
ぐれさん、しょうごさん、ありがとうございました。
丁寧な解説のおかげでよくわかりました。
頭がさがります。m(__)m
またよろしくお願いしますね。
[2001/07/12 09:07:47]
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