記事タイトル:少数株主持分の資産・負債 


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お名前: でび   
たとえば、親会社がAという子会社の株式を80%取得して連結する場合は子会社の資産・負債
を100%引き継ぐそうですが、持分の80%にならないのはなぜですか.
基礎的な質問で申し訳ありません.
[2001/07/24 16:02:10]

お名前: ぐれ    URL
こんにちは、でびさん

連結財務諸表というのは、支配する会社(親会社)と支配される会社(子会社)から構成
される企業集団をひとつのカタマリとみなして、このカタマリである企業集団の状況を総
合的に報告するために作るものです。

親会社が「引き継ぐ」と考えると迷いますが、連結財務諸表が企業集団全体の状況を示す
のだ、ということを考えると、持分80%だけを取り出さないというのもなんとなく納得
なさるのではないでしょうか。

では、なんのために「企業集団全体」の財務諸表を作るのか?ということについては、お
おきくわけてふたつの考え方があります。

ひとつはこの「企業集団」なるものが、これを支配している「親会社のモノ」だ、と考え
る考え方です(親会社説)。親会社のモノであるということは、より厳密には親会社の株
主のモノであるということですね。ここから考えますと、親会社の株主にとっては、「持
分」だけをばらして財務諸表を作ってもらうよりも、全体を示してもらった方がわかりや
すいから全体を連結してもらうのだ、ということになるでしょう。

ちなみに、現行制度では「支配」というのが持株比率だけでは決まらないので、企業集団
の何パーセントを親会社の「モノ」とするか、ということを考えなくてよくなるというメ
リットもあります。

もうひとつの考え方は、法律的な「会社」という枠組みを離れて、「企業集団」というの
が現実に存在していて、この企業集団の財務諸表というのが必要だ、と考える考え方です
(経済的単一体説)。この考え方からすると、確かに財務諸表を作る義務があるのは親会
社ですが、作っているのは企業集団全体の財務諸表ですから、そもそも持分というのは意
味を持たないことになります。

なお、従来から日本では企業集団を親会社のモノだという考え方を基本に制度が作られて
きています。
[2001/07/25 11:04:00]

お名前: でび   
ぐれさん 詳しいご回答ありがとうございます.

ひねくって考えてみると、連結の仕組みを使って財務上の操作みたいなことができないでしょうか.つまり、状況をみて連結はずしをしたりとかまたは連結に組み入れたりすることです.

たとえば、企業集団の業績をよくみせるため、不良子会社を連結からはずしたり、反対に業績のいい子会社の株を増やして、連結に組み入れたりすることです.
[2001/07/27 11:09:44]

お名前: でび   
ぐれさん 詳しいご回答ありがとうございます.

ひねくって考えてみると、連結の仕組みを使って財務上の操作みたいなことができないでしょうか.つまり、状況をみて連結はずしをしたりとかまたは連結に組み入れたりすることです.

たとえば、企業集団の業績をよくみせるため、不良子会社を連結からはずしたり、反対に業績のいい子会社の株を増やして、連結に組み入れたりすることです.
[2001/07/27 11:09:56]

お名前: ぐれ    URL
こんにちは、でびさん

まず大原則として、親会社はすべての子会社を連結の範囲に含めなくてはなりません。例
外もありますが、まさに例外的なケースです。

そして既に申し上げましたように、「なにが子会社なのか」について、平成9年の連結財
務諸表原則の改訂により、持株比率によって区切るのではなく、支配力基準によって区切
ることになりました。

簿記の問題では、連結の範囲について問われることはほとんどなく、問題ではたいてい、
50%超の株式を取得しています。しかし、基準による実際の処理においては、たとえ1
株も持っていなくとも「支配している」と客観的に認められれば「子会社」であり、原則
どおり連結の範囲に含めなければなりません。

さらに、支配しているかどうかについても、細かく例示がなされている上に、限定列挙で
はないので、「支配しているかどうか」という実質に従って処理されます。

以上を念頭に、でびさんがおっしゃった「企業集団の業績をよくみせるために不良子会社
を連結からはずしたり」するためには、不良子会社の株を売るだけでなく、役員を引き上
げるなど、一切の支配関係を断ち切らなくてはなりません。そして、支配関係が一切なく
なった会社というのは、現実の問題として旧親会社のことなんか全然考えません。好き勝
手に生きていくことになります。もしかすると倒産してしまうかもしれません。

他方、業績の良い会社の株を買い増して連結の範囲に含めれば、これは文句なく連結の範
囲に入ってきます。


いずれにしても、実質的に支配関係を断ち切ったり、支配関係を新たに築くことによって
連結の範囲、すなわち、企業集団の範囲を変更できることは、でびさんがおっしゃるとお
りです。さて、これは利益操作なのでしょうか?

ある子会社が連結の範囲に入ってきたり、出ていったりするということは、企業集団から
すると、その子会社のやっている営業が、企業集団の営業になったり、企業集団の営業で
なくなったりするということです。これは、企業集団を親会社のモノと考えるか、それ自
体が実在の存在であると考えるかに関係なく、そのように考えられます。連結の範囲を実
質的に判断することにしたことにより、こうした実際のあり方がそのまま反映されること
になったわけです。

これを個別企業の場合で考えてみますと、ある会社が「どうももうからないし、当社には
競争力がないからこの業務はもう止めよう」とか、「新たにこの業務に参入しよう」とい
うことは当然にあります。そして実際にその業務を止めたり、新しい業務に参入すれば、
それは現実に利益が変わるのであって、利益操作ではありません。

企業集団が、従来の子会社を捨て去ったり、新たな子会社を取り込んだりするのは、ちょ
うど、個別企業のこうした行動と同じ行動であると考えることができます。ですから、こ
れを利益操作であると考えるのは当たらないわけです。

というわけで、連結の範囲を持株基準から支配力基準に変更したことによって、企業集団
の実際の姿をより正確に反映できるようになったのです。
[2001/07/28 12:13:16]

お名前: でび   
ぐれさん詳細な返答ありがとうございます.

ちょっとわたしが考えすぎた感じですね.
[2001/07/30 14:21:07]

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