貸借対照表能力は資産や負債をどのように定義するか、動態論によるのか、静態論によるのか
によっても変わってきますし、資産負債アプローチによるのかでも変わってきますね。
最近では、日本の会計は無断で(いわゆる概念フレームワークなしに)資産負債アプローチの
考え方を「会計基準の国際的調和化」との名のもとに導入しているため、混乱してしまうことも
しばしばです。
資産負債アプローチでは、資産はキャッシュフロー獲得能力が存するものを言います。この点
で、暖簾はその企業のキャッシュインフロー獲得能力を体現するものとして、無形固定資産計上
されます。連結調整勘定は、資産負債を時価評価した場合には、超過収益力(キャッシュフロー
獲得能力)を意味しますので、貸借対照表能力があることになります。
一方、貸方の連結調整勘定は負の暖簾として、将来の過少収益の保障として貸借対照表能力を
もつといわれていますが、資産負債アプローチでは負債は「経済的便益(キャッシュやそれ以外
の経済財)の流出が予想される企業の債務」をいうので、最近の国際的な動向によると負の暖簾は
認めない方向になりつつあります。
一方為替換算調整勘定は資本の部に属するという、国際会計基準の考え方が採用されました。
これは、為替換算調整勘定は資産、負債の概念に該当しないため、差額概念である資本の部に属
するものとされたのです。
資産負債アプローチによると、資本は出資者の残余請求権と解され,為替換算調整勘定は出資
者の持分を増減させるものなので(海外子会社株式を売却した場合に実現する損益と考えられ
る)、資本の部に記載されるのです。この意味で、貸借対照表能力があるともいえます。
もっとも、為替換算調整勘定は貸借対照表能力の検討の文脈で論じられることはないので、あ
まり突っ込まないほうがよいかと思います。
[2002/01/18 20:22:33]