アイドルを晒せ!



このテキストは2003年 8/28から ☆ひとこと☆において、アイドルについてダラダラ書いたものです
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Vol.1 80年代アイドルの夜明け
03/8/28
好きです。言えないけど・・・

実は最近、河合奈保子さんのベストを聴いてまして。とても好きなお姉さんだったんですよ、それは夢に見る程に。で、当時歌の数々も聴いていて好きだったんですが 何しろ恋愛を歌われても理解出来ないお子様の事です。好みの曲、好きの深度は様々で、その尺引きはどこにあるのか気になったんですね。 自分のアンテナがどのように反応したのか、何故反応したのか書き留めておこうと思い立ち、どうせなら演歌の畦道 で書いたように時代背景も織り交ぜて記していこうと思ったのです。

そんなわけで始めに答えありきで書き始めますが、奈保子さんのデビューは丁度第2期だとか第3期だとか言われるアイドル黄金時代の幕開け 1980年ですから、そこから振り返っていきたいと思います。心配しなくても松田聖子さん・中森明菜さん・小泉今日子さんや 早見優さんや石川秀美さんも出てくるかもしれないよ〜。河合奈保子さんと太田裕美さん、松田聖子さんと山口百恵さんについては 絶対語ります。かなり年齢層絞り込まれますけど、よろしくお願いします。 第1回は80年代の幕開け。それまでの歌謡界の時代背景からいきます。

1980年までのアイドルの舞台、メイン媒体は間違いなくTVでした。ファンはTVでそのルックスを見、曲を聴き、イメージを膨らませました。 それは歌謡界全体に言えたことでもあります。歌番組というひとつのプログラムを作り上げる際、見る方が受け入れられるカテゴリの対象も様々ですから、 歌手だって演歌・アイドル・いわゆる歌謡曲等が相応に配置されます。70年代まで、上手い具合に年齢層に沿うようにファン層も形成れている傾向がありました。

そんな中、一人の歌手のキャラクターがそうそう時間の流れに左右されない演歌歌手に比べて、アイドルがアイドルでいられる時間はとても短いです。 重ねてTVでアイドルを見、聴いて来た世代も歳をとります。それに合わせる様に新しいアイドルも出現していくという流れ。その中で大成したのが ピンクレディーでありキャンディーズであり、山口百恵さんだったわけですね。それでも前述の法則が働くように、彼女達の力を持ってしても 吸引力が及ばなくなるのがちょうど80年頃なんです。時を同じくして、人気を博して来た演歌歌手が円熟期に向かいます。カラオケの後押しも受けて。 また、それまではライブ活動中心でテレビには出ないと言ってたニューミュージックの歌手達がTVという媒体に流れ込みました。そうなると当然 アイドルが手にしていた領分が削られることになります。

またこの頃、TBSがザ・ベストテンをスタート、レコード・ラジオ・有線放送という媒体を加味したランキング性を導入。 アイドルもイメージだけでは勝負にならず、当然歌唱力や楽曲という作品が良い評判をとれなければTVへの露出も少なくなり、 売れている=実力ともいうべきランキング性は、売れている歌手は輪を掛けて販売機会、知名度を上げられるという 相乗効果が生まれます。華やかな歌謡界の中で、アイドルだけは主力選手を欠いた状態だったんですね。でもこれは逆を返せば、 誰もが自分のアイドルを求めていた時期とも言えるわけです。男性アイドルは良かったんです。新御三家と括られてはいても元々しっかりした歌唱力を持っていた彼らは それぞれキャラもピンで立って、実力派に移行してましたし、 後を受けて三年B組金八先生からたのきんが出てきましたからね。としちゃんが市場に温かく迎えられるわけですよ。 榊原郁恵さん、石野真子さん、大場久美子さんでさえも、その頃には既にひとつの役目を終えてました。甲斐知枝美さん、井上望さん、 比企理恵さんあたりでは太刀打ち出来ないのも道理。でも心配には及びません。お待たせ致しました。

松田聖子さんの登場です。
名前が出てくる歌手のファンの皆様はどうか気を悪くなさらないようにひとつ
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Vol.2  松田聖子VS山口百恵
03/9/19
アナタの胸の中で旅をする。

アイドル通の俺から言わせて貰えばこれだね。これ最強。
アイドルの定義とはなんぞや? と問われれば、それは色んな角度から導き出すことが出来るし、 その答えも様々でしょう。ですが、如何に見ている者にイメージを伝えられるか? 偶像として認識させるかだと思います。

麻丘めぐみさんが白いソックスと長いストレートの髪で清純なお嬢様のように認識され「めばえ」であの日アナタに遭う事で、 右利きなのに左利きの彼にあわせようと恋に一途なアルプスの少女になったように、アグネスチャンさんが同様なコスチュームながら ひなげしの花のように屈託のない明るい笑顔で涙を隠して草原に佇む天真爛漫な少女をアピールしたように、桜田淳子さんがピンポンパンのような帽子を被り ミニなスカートなのにいやらしさを感じさせず ようこそここへクッククックと清純さを売り物にしたように、如何にイメージを届けるか、それを成功させた者がアイドルと呼ばれたのです。

時代の要望も手伝って、70年代に成功したアイドルのデビューはほぼ清純な女の子でした。アイドル=清純派という図式。 しかし前回も触れたように、彼女たちも歳をとります。 ルックスとメッセージ、雰囲気にギャップが出てくるのも道理で、必ずアイドルとしての第一線から身を引かざるを得ない時がくるのです。 ピンクレディー・山口百恵という大物を始め、挙ってアイドルが引退。空白になった時期が訪れたのが、80年代も間近の頃でした。

空白になった市場でしたが、ファンは満たしてくれるアイドルの出現を待ち続けておりました。そこに颯爽と現れたのが松田聖子さん。 彼女のディスコグラフィーを振り返ってみれば分かることですが、そのスタートは綿密に計算され、そのイメージもしっかと作り上げられたものでした。 1980年一月、デビュー前にニッポン放送で「ザ・パンチ・パンチ・パンチ」にパンチガールとしてレギュラー獲得、 当時アイドル登竜門NHKレッツゴーヤングにサンデーズとしての参加獲得。デビュー曲「裸足の季節」がいきなり当時話題性のあった 化粧品業界のCMソングに選ばれているのもその裏付けてです。

そのイメージは過去のアイドルよろしく清純派。明るく俗な欠片も感じさせない女の子そのもの。納豆なんか食べませんしンコなんかしない。 ちょっと違ってたのはスターの階段を駆け登っても「おか〜さ〜ん」とか言っちゃってお高くとまってない庶民性をアピールすることくらい。 清純というイメージに輪をかける事に貢献します。そして成功。後に出てきたアイドルの殆どが聖子さんに続けとばかりにお手本にされました。 髪型から衣装、振り付けまで定番ができあがったくらい。もっともこれはそれまでイメージされていたアイドルそのままで、 これは大物アイドル、牽引役を失った舞台という 時代が味方した偶然の要素が有った事は否めません。

もちろんこのキャラクターやイメージに違和感を覚える人もいるもので、それが対極的な形で中森明菜さんを開花させたりもしました。 後輩なのに聖子派VS明菜派と並べられたくらいなんですからね。キャラが被ると他のアイドルはつらいもので、No.1が居る以上その路線は独占されます。 また、規則正しく美しいアイドルとは対照的に時代はタケノコ族やTCR横浜銀蠅に代表されるツッパリ、所謂 自由や主義主張をアピールしてもおかしくない時代の風潮もありました。 加えて経験と歳を重ねて行く彼女たち。いつまでも清純派というイメージでいるには実際とのギャップが生まれてしまいます。 小泉今日子さんはKyon2として変貌。それ以外は石川秀美さん、早見優さんなど個性を認知されることでスタンスを築きました。 それぞれの市場規模の大小は仕方がないですけどね。

松田聖子さんはその後、自分の本音で生きていく生き様を見せることで同性に愛される存在になったり、重ねた愛の経験をもとに 説得力のあるラブソングの歌い手として在ったり、時代が変遷しても何かしらイメージを市場に伝え続けました。その点では 正にアイドル中のアイドルと言えるんじゃないでしょうか? 20年間ほぼ第一線に在り続けながら「松田聖子」というイメージを発信し続けているわけですから。

ここで山口百恵さんを引き合いに出してみましょう。百恵さんの軌跡も素晴らしいものです。実はデビュー当初 中三トリオとして活躍した桜田淳子さんにルックスが似ていること、しかも彼女が「私の青い鳥」でブレイクしてしまったが為に どうしても弱い存在であった事実はありました。だから2曲目の「青い果実」から貴男が望むなら私何をされてもいい、 イケナイ娘だと噂されてもいいだとか「ひと夏の経験」で女の子の一番大切なモノをあげる等ときわどい路線に切り替えたんでしょう。 これが清純派アイドルが主流の時代、15.6歳の少女に歌わせることでインパクを与えました。もっともこれだけだと当時のおじさん世代にしかウケなくて、 今のアヤヤみたいなもんだったとは思います。実際はデビュー曲の「としごろ」だって爽やかなメロディーながら ♪アナタに全てを見せるのは、 ちょっぴり怖くて恥ずかしい なんて歌ってるし、流行の為に作品作りのクオリティを下げちゃうような作家陣ではなかったんですけどね。

実は先日百恵さんのベストを聴いていて、どうしてこんな暗い歌、ちょっとえっちぃ内容で大人やPTAから文句言われそうな歌詞を歌ってたのに アイドルとして認められたんだろう? 世代を問わず誰からも悪く言われないスターで在り続けたんだろう と思ったんですよ。 普通、これだけビッグになると嫌う人もいるもんですけど、百恵さんを悪く言う人って殆どいないですよね? まあこれは人気を博した 一連の主演したドラマがあったからだと思うに至ったんですけどね。社会的にもインパクトのある歌によっておじさま世代に認知され、 どんな子かとTVを覗けば凄い涙モノの演技してる(TT) しかも歌の方は一気にブレイクしていったわけではないから、特に文句言われたり 叩かれたりする時期が無かったんでしょうね。きっと百恵さんってリアルですっごいいい人なんですよね。ドラマの関係者や、あと萩本欽一さんとか 周りの人にも愛されていたんでしょう。三浦友和さんも実際すごいいい人ですよ、絶対。

とは言え百恵さんは重ねていく時と歳で苦労する事が無かったアイドルです。それは山口百恵という人が、 年齢から手に入れられるイメージには頼らなかった存在だからということと、活動年月も7年余りで幕を引いた為。 その後の彼女のイメージはファンである僕らが勝手に抱いているイメージ。前回「揺るぎないアイドル」と形容したのはこの為でもあります。

一方の松田聖子さんは、アイドルであるなら普通は苦労するであろう 重ねていく時と歳を味方にしたアイドルです。 自分の捉えて貰いたいイメージを時と共に変化させて、そのどれもが確かに憧憬として受け止められた。 これくらい「アイドルらしいアイドル」はいないかもしれません。わざわざ「清純派アイドル」って言葉があるくらいですが、 逆を返せばアイドルはなにも清純派じゃなきゃいけないって事ではないんですよね。

お二人が僕らに届けてくれたイメージはそれぞれに「山口百恵」であり「松田聖子」だったんだと思います。 そう、松田聖子さんはアナタの中で旅をする存在。いえ、もっと大局にみれば、アイドルとはアナタの中で旅する存在であったわけです。 だからそれぞれの人の中にアイドルは存在していていいし、そうである筈です。だからNumberは河合奈保子さんについて語るのです。 太田裕美さんについて語るのです。  本日は偉大なるお二人のアイドルを中心にお届けしましたシリーズ「アイドルを晒せ!」。 いくぶん涼しくなってまいりました。皆様、お風邪など召しませんよう。 また次回で、お会いしとうございます。

風は秋色。
次回は太田裕美さんだ! やっぱりきっちりとカテゴライズして語ることは難しいので80's の文字を外しました