『なるこ』第29号 (平成24年5月) 目次

2013.12.1 初掲載


2901 巻頭言                                理事長 白倉 昌夫

2902 ご注意 車の運転にはくれぐれも気をつけましょう        事務局

2903 講演  ナルコレプシーの夜間睡眠の特徴
東京都医学総合研究所 睡眠研究プロジェクト
睡眠総合ケアクリニック代々木
(財)神経研究所附属睡眠医学研究センター
本多 真先生
(筆記 桑原 正孝)

2904 報告  平成24年2月実施 睡眠障害専門病院のアンケート調査結果  桑原 正孝

2905 報告  春の睡眠の日 公開市民講座             河野 通久

2906 報告  PhRMA インフォメーション・セッション
スウェーデンの医療事情とイノベーションを生み出す国の在り方
理事 河野 通久

2907 報告  FIRSTサイエンスフォーラム2を聴講して        河野 通久

2908 報告  NHKの取材とフォーラム「睡眠・覚醒の謎に挑む」  町田 誠

2909 報告  電話相談(その3)                     川岸 聰子

2910 投稿  ナルコ患者の子供を持つ母親から学校への依頼    M

2911 投稿  私が思うリタリン規制                     Y

2912 投稿  総会後の懇親会で出た意見・感想・体験等      木村 紘一

2913 投稿  なることともに人生を語る(最終回)           白倉 昌夫

2914 編集後記


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2901 巻頭言                             理事長 白倉 昌夫

 東日本大震災の地震、津波更には福島原発事故から1年が過ぎました。
春を迎え、夏、秋の季節に復興が急速に進む事を心から祈念申し上げます。
さて、会員の皆様は如何お過ごしでしょうか。早いもので平成24年も5ヶ月を過ぎました。
本年も会の活動に関しては、認定NPO法人に恥じない活動をしていると自負しております。
又、「認定NPO法人なるこ会」発足とともに、多くの製薬会社、専門医の先生方や病院職員の方々から多大なご支援、ご協力を賜っております。
 今後更にいろいろご指導いただけると思います。大変有難いことです。

 なるこ会誌は最近の治療方法など、睡眠学会の情報を掲載し、なるこ会誌の原点である、患者自身の病気の体験談です。 患者しか持ち合わせいない仲間の体験を知り、患者同志が体験情報を交換しあうのは精神的にも有用でありましょう。 そこに専門の先生方からご指導をいただければ質のよいアフタケアができるようにおもいますが、いかがでしょうか。 「なるこ29号」にも体験談が寄せられており、掲載しております。
皆様の治療方法にお役に立つ事を念じております。
会員の皆様方には、これまで以上の体験談の投稿をお願い申し上げます。
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2902 ご注意 ◎車の運転にはくれぐれも気をつけましょう         事務局

 4月22日。朝からTVで京都での痛ましい事故を放映してます。
 集団登校中の小学生の列に18歳の男子が運転する軽乗用車が後ろから突っ込み、最後尾についていた母親(妊娠7ケ月)及び小学生の娘死亡 他6人が重軽傷を負う。運転者は無免許で居眠りと供述とのこと。
最近この種の事故のニュースがやたら目立つように思われます。
  ・同じく京都で軽乗用車がタクシーに追突。そのまま高速で逃げる途中 通行中の歩行者をなぎ倒し、18人の死傷者が出た。
  ・クレーン車が工場を走り出た直後、通学中の子供の列に突っ込み多くの死傷者が出た。運転者は「てんかん」の持病があり云々
等々
 こういった事故のニュースがあると、
   *この運転者は「ナルコレプシーに違いない」とか、
   *なるこ会は、「ナルコ患者にどういう指導をしているのか」
 と言った、電話・メールが入って来ます。 
ナルコレプシーという病名が、「かなり知られて来たか」と思えば嬉しくもあり、「認識違いもええ加減にしてくれ」と思えば腹も立ちます。
 患者と言うからには診断を受け、治療もされている筈です。そして適正な治療を受けているなら、症状は8割程度は抑えられている筈です。
 恐ろしいのは、症状はあるのに診断も治療も受けていないナルコレプシー等の過眠症の患者です。

 とは言っても、我々は患者であり、決して100%健常とは言えません。そのため、車の運転に関しては「特により一層の注意」が必要です。
   ・「ちょっとそこまで」は、健康のためにも歩き、車は使用しない。
   ・規則正しい生活を送る。運転前には「仮眠」をとる。
   ・平素飲んでいる薬より、「覚醒作用の強い薬」を服用する
   ・「薬を飲んでるから大丈夫」と薬に頼り過ぎない。
   ・「もう薬を飲まなくても大丈夫」と薬を馬鹿にしない。
   ・「アブナイと感じたら」あるいは「時間を決めて」小休止をとる。
ご自分なりの工夫で、事故を起こさない様、貰わない様!!!!
                        事務局より
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2903 講演  ナルコレプシーの夜間睡眠の特徴
              東京都医学総合研究所 睡眠研究プロジェクト
              睡眠総合ケアクリニック代々木 (財)神経研究所附属睡眠医学研究センター
                                               本多 真 先生
                                               (筆記 桑原 正孝)

 毎年少し難しい研究の話をしてきた。今回は皆様に協力していただいたアンケートの集計結果について紹介する。これまで思われていたことと違ったことも見えてきた。


1.過眠と過眠症  ナルコレプシーの位置づけ
   日中に眠くなる原因は次の3つに分類される。

(1)量的に不十分な夜間睡眠に伴うもの
  ・睡眠不足症候群
    最も多い症状。日本人の睡眠時間はここ50年で50分位短くなった。昼間活動し夜休息するという動物としての人間の体の仕組みは短期間では変わらないが、夜型社会への変化に伴い睡眠時間が短くなった。
  ・不眠症 日常生活で困るのは、やはり昼眠くなること(疲れること)

(2)夜間睡眠の質的障害に伴うもの
    眠る時間はとれているが質が悪い状態。
  ・睡眠呼吸障害(睡眠時無呼吸症候群、上気道抵抗症候群)
    中年男性では4%以上 年齢と共に増える
  ・周期性四肢運動障害
    睡眠中に脚がピクピクと動いてしまい、眠りが妨げられる。
  ・概日リズム障害
    体が眠ろうとしていない時間に眠ると良い睡眠がとりにくい(日中に体が眠ろうとする時間がくると眠ってしまう)。

(3)睡眠覚醒中枢の機能異常に伴うもの
   睡眠の質・量に無関係に睡眠・覚醒をコントロールしている中枢が正常に機能していない。
 ・中枢性過眠症
   ナルコレプシー、特発性過眠症、反復性過眠症
 ・身体疾患、精神・神経疾患に伴うもの
   パーキンソン病、筋強直性ジストロフィー、気分障害
 ナルコレプシーは(3) に位置づけられる。

以下、同じ中枢性の特発性過眠症と比較し説明する。

1.1 ナルコレプシー(典型例)の症状
 中核症状の症状は下記の通り。
  (1) 日中の過剰な眠気(EDS)
      耐え難い眠気と居眠り
      眠いだけでなく、実際に居眠りをしてしまうのが特徴
      持続は短く(30分以内)で起きた後はサッパリ感を伴うことが多い
  (2) 情動脱力発作(Cataplexy)
      大笑いや気分が高揚したとき、驚きなど陽性的な情動を契機とした突然の筋緊張の喪失
      持続時間は短く、直ちに回復する。この間意識は正常に保持される。
      重症度と脱力が生じる筋肉は様々である。典型的には膝がガクッとする、あごが落ちる、など
 これ以外はあまり調査がされていなかったが次のような症状がある。
  (3) 睡眠麻痺/入眠時幻覚
      入眠時のレム睡眠期に起き、ナルコレプシーの7〜8割に見られる。
  (4) 夜間睡眠の分断化
      ナルコレプシーの半分から3/4に見られる
  (5) 随伴症状
      自律神経症状
      代謝異常
 他の睡眠障害合併も多い

1.2 特発性過眠症(典型例)の症状
(1) 日中の過剰な眠気
    ぼーとする眠気が長時間持続する。頑張ればナルコレプシーのように居眠りはせず、目を開いていられる。
    昼寝をした場合には長時間となり(1時間以上)目覚めた後のさっぱり感がなく、起きるのが困難
    無理に起きているとしばしば自動症をきたす。
   (2) 夜間症状の特徴
    夜間睡眠は延長し、もし起こされなければ10時間以上の長時間となる。中断されない。
    起床が大変困難で睡眠酩酊となることがある。
 (3) 随伴症状
    様々な自律神経症状が多い
    夜型
    肥満は無い 

1.3 中枢性過眠症の症状比較
  特発性過眠症の眠気は我慢すれば耐えられる程度であるが一日中眠い状態が続く。また、居眠りの持続時間は長く1時間以上ときには3〜4時間に及び、起きた後のサッパリ感が無くボンヤリとしている。夜間睡眠は長く中断することはなく良質であるが起こされてもなかなか起きられない。

2.調査の結果
 中枢性過眠症については「過眠」以外の症状や合併症については十分に検討されていない面がある。
 今回の研究は自分で記入するアンケート方式で実施し夜間睡眠症状と合併症を調査し各過眠症の特徴を抽出した。

対象者は、
  ナルコレプシー(情動脱力発作を伴う) 216名
  長時間睡眠を伴う特発性過眠症      31名
  真性過眠症(脱力発作を伴わないナルコレプシーもしくは長時間睡眠を伴わない特発性過眠症)   111名
  健常者(日中眠くならない) 292名
全体で650名(男性327名、女性323名) 平均年齢39.6才である。
 ナルコレプシーでは男性の、特発性過眠症では女性の割合が多く、またナルコレプシーの平均年齢がやや高い。

2.1 夜の寝付き
 夜間布団に入って寝付くまでの時間(夜間入眠潜時)を以下のように分類した。
   10分以内 寝付きが良い
   30分以内 正常
   30分を越える 寝付きが悪い(入眠障害)
 平均で見ると健常者の15分に対し過眠症群は12〜13分で寝付きがよい。
 一方、ナルコレプシーでも寝付きの悪い人が5.7%と健常者と同じくらいいることがわかった。
 これまでナルコレプシーは寝付きが良いと考えられていたが、健常者と同様に不眠症をきたしうることが分かった。ナルコレプシーで寝付きの悪い人の中にはストレスがあったり夕方-夜仮眠をとる人が含まれた。

2.2 夜間の中途覚醒
 一晩に目覚める回数は、ナルコレプシーの場合は約2回であり、正常者や真性過眠症、特発性過眠症の人に比べて2〜3倍も多い。ナルコレプシーでは2割の人が、一晩に3回以上目覚めており、1回以上目が覚める人の割合は半数を超える。
ナルコレプシーの人は治療を受け睡眠薬を処方されているにもかかわらず夜間に目を覚ますことが多いということがよく分かる。
 夜間、目覚めたとき夢を見ていた人はナルコレプシー及び真性過眠症の場合には約45%で、睡眠周期のレム睡眠の時に睡眠状態にとどまることができずに目覚め易いことを表していると考えられる。一方で、ナルコレプシーで全く目を覚まさない人も約17%いることも分かった。
 真性過眠症や特発性過眠症では健常者より夜間目が覚めにくい傾向があった。

2.3 朝の目覚め
 朝、目が覚め起き出してから頭と体がきちんと働くまでどのくらい時間がかかるかについて聞いた。健常者やナルコレプシーでは約10分で頭や体が覚醒モードに切り替わるのに対し、特発性過眠症ではボーとしている時間が30分以上であり努力しても起きられないという人が40%あった。起きるのに大変努力が必要だという人を含めると特発性過眠症の80%が起床困難を訴えていた。一方で特発性過眠症でも約20%の人は容易に目を覚ますことができることが分かった。

2.4 入眠時幻覚
 寝入りばなに、お化けや誰かが入ってくる生々しい夢をみる人の割合はナルコレプシーでは8割、真性過眠症、特発性過眠症では4割で、健常者(7%)より非常に多かった。特発性過眠症の人には入眠時幻覚はないと言われていたが実は4割の人が経験していること、健常者でも7%に経験があることは注目される。一方、ナルコレプシーでも入眠時幻覚を見ない人が2割いる。
入眠時幻覚(夢)の内容は幻視と体感幻覚が中心であるが、体感幻覚のひとつの浮遊感を伴うものも多い。この入眠時幻覚の特徴はナルコレプシーだけに見られるものではなく、頻度は少ないけれど特発性過眠症や健常者でも入眠時幻覚の形をとる場合は同様であることが分かった。

2.5 寝言
 よく寝言を言う人がナルコレプシーでは3割、特発性過眠症では寝言はないと思われていたが2割になる。真性過眠症は約5%で健常者とほぼ同様である。
寝言について治療するか否かは、まわりの人に迷惑がかからなければ放っておいても良いが旅行などで他の人と同じ部屋で寝るような場合には夢(レム睡眠)を抑制する薬がある程度有効である。
寝ているときに暴言や手足が動いて隣の人に乱暴するようであれば別の病気(レム睡眠行動障害)が考えられるので、きちんとした検査・治療が必要。

2.6 寝ぼけ状態での夜間摂食
 朝起きたときにまわりに食べ物かすが散らかっていて、記憶にないが何か食べていたことがあるかどうかについての設問に対しナルコレプシーでは7%おり、意識水準が低下し抑制がきかない状態で食べてしまうことが分かった。真性過眠症及び特発性過眠症では1%超あるが健常者ではほとんどいない。イタリアのグループから「夜間食べてしまう人がナルコレプシーでは半数いた」という報告があったが、しっかり目が醒めている時を含め夜間食べてしまう場合を含めている点が異なっている。今後検討をする。

3.合併する自律神経・身体症状
 ナルコレプシーや特発性過眠症には下記のような自律神経に関わる合併症状がある。
 (1) ナルコレプシーに多い合併症
   ・レム関連症状(睡眠麻痺・入眠時幻覚)
   ・自動症 寝ぼけ状態で行動し、記憶に残らない
   ・体温調節異常(多汗症)
   ・代謝異常(肥満傾向、糖尿病傾向)
   ・ナルコレプトイド性格変化、抑鬱、疲労
 (2) 特発性過眠症に多い合併症
   ・自律神経症状(頭痛、体温調整異常−冷え性、起立性低血圧)
   ・自動症 寝ぼけ状態で行動し、記憶に残らない
   ・夜型傾向、抑鬱、疲労
   ・レム関連症状もあり得る

自律神経症状に関連する症状を具体的に調査した

3.1 血圧調整異常
 健常者は寝ている状態から立ち上がった際に、自律神経の働きで手足の血管を収縮させることで、心臓より高い位置にある脳まで血流を送り維持することができるが、この機能がうまく働かないと立ちくらみが起こる。立ちくらみは健常者で6%、ナルコレプシー・真性過眠症で9%位であるが特発性過眠症では約半数の人が頻繁に立ちくらみを経験している。

3.2 めまい
 めまいは脳内のバランス感覚がうまく機能しないときに生じ、特発性過眠症では約60%の人が時々またはしばしばめまいに襲われると答えている。

3.3 頭痛
 頭痛には、病気に伴って起こるもの、眠気を我慢していておこるもの、薬の副作用によるものが含まれる。特発性過眠症では約半数の人が頭痛を日常経験している。特発性過眠症の人は目を覚ます薬を服用するとさらに痛くなる場合が多い。治療の上で対応が難しい場合がある。

3.4 体温調節異常
 冷え性(症?)の極端な症状の一つであるレイノー症状(指先の血の流れが悪くなって白くなる)が現れる割合が特発性過眠症では1/4に達する。自律神経で体温を一定に保つ機能に障害があるためである。一方、ナルコレプシーの人は汗かきの人が多いが、逆に冷え性(症?)の人も6%居ることが分かった。
 汗かきの原因には過眠症そのものによる場合と薬の副作用による場合とがあり、ナルコレプシーでは過半数の人がいつも汗をかいていることがわかる。真性過眠症や特発性過眠症の人も健常者に比べ汗かきの人が多い。
 活動するためには脳も体も温度が高いことが必要であるが、眠るときには温度を下げる必要があり体内の熱を手足から放出しそれが汗をかくことにつながる。汗をかいた後眠くなる人もいる。

3.5 全身倦怠感
 特発性過眠症では2/3の人がいつもだるさを感じていて特徴的である。ナルコレプシー、真性過眠症では15〜20%の人がいつも疲れを感じており、倦怠感を感じる健常者が約10%であるのと比較して、高い割合である。
 ナルコレプシーの人は少し眠ると元気になるので、眠気と疲労は異なるものと考えていたが、ナルコレプシーでも眠気と倦怠感の両方をもつ人が一定数あることがわかり認識を新たにした。

4.まとめ
 今回の調査により次のようなことが分かった。
  (1) ナルコレプシーでも入眠が困難な人が健常者とおなじくらいいる(5%)。
  (2) ナルコレプシーでは一晩に3回以上夜間に目覚める人が2割もいる。
  (3) 寝起きはナルコレプシーの人は健常者より良い。特発性過眠症は起きることが非常に難しい。
  (4) 入眠時幻覚はナルコレプシーの人は8割の人が経験しており、体感幻覚や幻視が多い。
    健常者では入眠時幻覚を見る人は少ないが、見るときには同じような内容の幻覚をみる。
  (5) 自律神経症状の合併は特発性過眠症に多いがナルコレプシーにもある。

 過眠症は眠気だけでなく、夜間の睡眠障害(覚醒プロセスの障害)や自律神経症状(特に体温調節異常)を伴う。背景に過眠症疾患に特異的な病態の関与が想定され、今後の課題である。

5.質疑応答



Q1.中学生のとき授業中に何か言ったといって先生に怒られ立たされた。立たされても眠っていたので「馬みたいだ」と言われた。自分では眠っていたことも寝言を言ったことも記憶にない。寝言は夜間だけでなく昼でも起こるのか。
A1.本人が覚えていないがあたかも普通に会話しているかのようにはっきり寝言を言う人は多い。自覚のないまま行動することを自動症という。日中であっても眠気が強い時に起きる。

Q2.夕方7時頃、事務服を着た女性が自転車に乗って近づいてきたのを目で追っていて顔も見ているのに声をかけられるまで自分の娘と気がつかなかった。このような症状があるのか。
A2.相手が分からなくなる症状自体が、過眠症に伴う特徴ではない(そのような例は聞いたことがない)。強い眠気や疲れのために意識レベルが低下していた可能性はある。

Q3.真性過眠症だが薬を飲んで普通の人と一緒に仕事ができるのがうれしくてハードな職場で頑張っていて薬を飲み過ぎることも多い。医師から体が疲れると薬が多くなり眠気も強くなると言われ、薬を減らしてみたら訳の分からないことを言っていた。脱力発作は無いが2時間おきに眠気がくるのでつらい。
A3.訳の分からないことを言うのは、寝言と言うより自動症だと思われる。寝不足や疲労が蓄積した状態では、薬の効き目が悪くなる。寝不足の眠気は服薬量を増やしてもあまり効果がないので、きちんと休息をとることが大切。

Q4.脳波検査をしたらリタリンが必要な脳波だと言われた。しかしリタリンは処方されていない。幻聴がひどい。リタリンに代わる薬はあるか。
A4.リタリンが処方されない理由は診断が確定していないか、リタリンの副作用による幻聴悪化を避けているか、医師がリタリン処方の認定を受けていないため。目を覚ます薬を飲むと神経過敏になる場合があり、副作用として幻聴がおきることもある。日本では、目を覚ます薬としてモディオダール、ベタナミン、リタリンが主に用いられおり、これらと幻聴を減らす薬などを工夫して使う。担当医師と相談して欲しい。

Q5.多汗症がひどい。今頃(11月末)のシーズンでもポロシャツ1枚で汗をかく。レストランで鍋物をとるときには冷房の真下でアイスや氷水を用意してタオルで拭きながら食べるのでまわりの人はびっくりする。汗が止まる薬はないか。
A5.過眠症自体に伴う面と、目をさます薬の副作用の面がある。交感神経をブロックする治療により手足(末梢)の発汗を抑える場合もあるが、脳のレベルで体温を下げようとする指令が出ている場合はどこまで有効かわからない。手足に限局する場合は塗り薬もあるが、全身性の発汗だと塗り薬も難しい。精神的ストレスも影響するとされる。漢方薬がどの程度有効かわからない。汗を吸収する物を身につけると軽い場合には役立つ。

Q6.待合室で隣の人と話してみるとナルコレプシーだけではなく睡眠時無呼吸症候群やレストレスレッグス症候群を合併している人が多い。日中の過剰な眠気をもたらす病気の3つのカテゴリーが混在しているのはなぜか。
A6.ナルコレプシーで周期性四肢運動障害を合併している人は多く1〜2割とされる。また睡眠時無呼吸症候群との合併は年齢と共に多くなる。
様々な睡眠障害の合併症により夜間睡眠が障害されることが眠気の原因か、という点に関しては、ナルコレプシーなどの過眠症の眠気は、合併症に伴う夜間睡眠障害の程度では説明できないくらい重度であることで区別できる。複数の睡眠の病気が独立して生じて混じっているのではなく、様々な症状を起こす元の病態は一つと思われる。
個人(本多先生)的な仮説だが、ナルコレプシーは覚醒中枢が働かず目を覚まし続けることができない病気、特発性過眠症は覚醒系は働いているが睡眠が必要を越えて働きつづける病気と考えられる。こうした根本的な問題によって、合併する睡眠障害が生じやすくなることにつながるのかもしれない。

Q7.遺伝子検査でナルコレプシーと診断されたが特発性過眠症の特徴が多く当てはまる。夜の夢が生々しい。夢の中で生活していて目が覚めるとまた生活をするという二重生活をしている。治療できないか。
A7.真性過眠症は、ナルコレプシー典型例と特発性過眠症典型例の中間にあり両方の要素が混在する。MSLTで寝入りばなにレム睡眠が多いかどうかを調べているが、それだけでは分からない。3本立ての映画を見ているように夢の中で日常と同じ夢を見る人は比較的多い。寝入りばなの夢が負担になるようならアナフラニール(レム睡眠を抑制する抗うつ剤)などで減らすことはできる。ただしレム睡眠(夢)は必要があって現れると考えられており、全くなくすことは難しいし、それが良いことであるか分からない。

以上
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2904 報告  平成24年2月実施 睡眠障害専門病院のアンケート調査結果         桑原 正孝 


 当会のホームページでは睡眠障害の専門病院を紹介しており、正確を期すため2年おきにアンケート調査を行っております。昨年は東日本大震災のため延期し今年2月に実施しました。
 平成23年9月時点において日本睡眠学会の認定病院は83(ナルコレプシーを含む全睡眠障害に対応可能なクラスAが70病院、睡眠時無呼吸症候群のみを対象とするクラスBが13病院)、認定医は381名です。
 基本的には日本睡眠学会の認定病院及び認定医のおられる病院並びに睡眠障害の治療が可能と思われる大学附属病院や公立の比較的大きな病院を対象として調査票を送りました。今回は、310機関に対してアンケート調査票を送り117機関から回答をいただきました。

アンケート調査の結果は次のようになりました。(かっこ内は平成21年の調査)
1.回答率 37.7(46.5)%
2.ナルコレプシーの治療・検査について(a〜dを一つ選択)
  a.ナルコレプシーの検査及び治療可   65(61)病院
  b.検査可能(治療は他病院を紹介)    9(8)病院
  c.治療可能(検査は他病院に依頼)   23(24)病院
  d.他の病院を紹介             14(21)病院
   無記入                    6病院
3.ナルコレプシー患者数         約2900(2400)名
4.治療対象の睡眠障害(a〜fから複数選択)
  a.全ての睡眠障害に対応        65(62)病院
  b.特発性過眠症、反復性過眠症     25(25)病院
  c.慨日リズム障害             17(15)病院
  d.睡眠時無呼吸症候群          36(25)病院
  e.むずむず脚症候群           39(28)病院
  f.REM睡眠行動異常症         25(21)病院

 回答の中には、専門医が異動/退職したために「睡眠障害の治療をしていない」病院が8病院あった一方で3病院を追加紹介されました。また、東日本大震災により1病院が閉鎖になっています。
 回答をいただかなかった病院についてはインターネットなどにより再確認し、最終的に176病院について4月7日に当会ホームページの「専門障害専門病院リスト」を更改しました。
 パンフの送付数は、アンケート送付時に同封した分を含め2500部になりました。

 回答いただいた病院で療を受けているナルコレプシー患者は2900名になります。今回は回答いただけなかった病院については前回の調査時のデータを用いて単純に計算すると約3800名が治療を受けていることになります。
 調査票送付先以外の病院で治療を受けている患者数はどのくらいいるのか分かりませんが、20万人いわれるナルコレプシー患者のうち治療を受けている人は数千人(3%)程度ではないかと思われます。

以上


以下余談です。
 アンケートの回答先として返信用封筒を同封した他、FAX返信もしていただけるように依頼文中にFAX番号も記載していたのですが、外部からは電話もFAXもかからない状態(話中)になっていたのです。
 私の家から電話する分には何も問題がなかったため全く気がつかずにいたところ、幹事のAさんから携帯電話に「電話もFAXができない」と連絡が入ってきました。
 急遽 電話/FAX機から別の幹事Bさんに電話をかけFAXを送るよう依頼したら問題なく着信しました。少し安心して一息ついたあと、念のため自分の携帯電話から(自宅に)電話してみると話中状態でした。
 これはまずいと思い177番(気象情報サービス)にかけてみると問題なし。そこでもう一度携帯電話から自宅に電話すると問題なくかかりました。こんなことを繰り返した末やっと次のことが分かりました。
  ア.こちらから電話するのは問題なし
  イ.外から電話すると話中になる
  ウ.ただし、こちらから一旦電話し送受話器を置いた場合には10分以内は正常に受信できる。
結局、電話/FAX機を修理してもらうことになりましたが、携帯電話が無い時代ではこの種の故障はずっと分からなかったことでしょう。

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2905 報告  春の睡眠の日 公開市民講座                      河野 通久

(睡眠健康機構ニューズレター第1号を転載します。)
睡眠健康推進機構の設立と役割についての機構長挨拶
 睡眠健康推進機構は平成23年3月に、財団法人精神・神経科学振興財団(理事長:高橋清久先生)の中に日本睡眠学会の協力を得て組織されました。
睡眠の重要性に関する正しい知識の普及啓発を図り、国民の皆様の心身の健康維持・増進のお役に立ちたいという趣旨から創設されたものです。
普及啓発の有効な手段として「睡眠の日」を制定しました。年に2回、春の睡眠の日(3/18)と秋の睡眠の日(9/3)です。
(3/18は、世界睡眠医学会(WASH)で定めた睡眠の日で、9/3はグッスリの語呂合せで決めた日本の睡眠の日です。)
更に両睡眠の日を挟んでの2週間を睡眠健康週間として、その間に各種イベントを開催することにしました。
平成23年は9月には睡眠の日制定を記念して、品川インターシテイーにおいて市民公開講座を開催しました(当会からは、ポスターとパンフレット「ナルコレプシーはこんな病気」500部を提供しました)。

 今後は年に2回の睡眠健康週間の間に全国各地で市民公開講座を開催していく予定です。
睡眠健康週間の意義は、これを機会に自分の睡眠を中心にした日頃の生活習慣を振り返ってみると言う事です。人間の体には生態リズムと呼ばれるものが備わっていて、それが地球の自転による昼夜のリズムに順応している状態が最も健康的な状態と考えられています。
 しかし、24時間社会になった日本では、人々の生活はこの自然のリズムから大きくずれてしまっています。
学生は受験勉強、企業では超過勤務、夜勤等を初めとして、自然のリズムを乱す要因は数多くあります。病院、警察、消防等では社会の安全や安心のために仕方のない処も有りますが、その中でも出来るだけ生体リズムを大きく乱さない工夫が必要です。そのような面から睡眠健康週間を日頃の生活習慣を点検する機会として頂きたいと考えています。
 「睡眠の日」の呼びかけは、「皆揃ってその日は沢山眠りましょう」と言う意味では有りません。「適切な睡眠を取って日中は元気に明るく前向きに楽しく勉強や仕事が出来ること、言い換えれば、心身ともに豊かな一日を過ごすこと」が目的なのです。睡眠の日、睡眠健康週間が皆様の人生を豊かにすることを願ってやみません。
                                                    完

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2906 報告  PhRMA インフォメーション・セッション  スウェーデンの医療事情とイノベーションを生み出す国の在り方                                      河野 通久

 「PhHMAインフォーメション・セッション」とは、PhRMA(米国研究製薬工業組合協会)の日本支部が行う患者会向けの講演会です。
現在日本で問題になっているテーマなので、3/23当会から会場であるスウェーデン大使館に町田・河野が出席しました。以下報告します。

*講師
 橋本せつ子氏:スウェーデン大使館 科学技術部プログラムマネージャー
                  投資部シニアインベストメントアドバイザー
*スウェ―デンについて
 我々のイメージでは、古代のスウェエーデン・ヴァイキング(ヴァリヤーグ)とノーベル賞と社会福祉についての先進国のイメージが強いのですが。
 公式名称:スウェーデン王国    政体:立憲君主制
 人口:9.30百万人(2009.10)    (日本は128百万人)
 面積:45万平方km          (日本は37.8万平方km)
  (日本より少し広い面積に日本の1/10の人が住んでいる事になる。)
 言語:スウェーデン語
  (スウェーデン語は、隣国のノルウエ―語、デンマーク語と類縁関係<ゲルマン諸語>に有り相互に意思疎通ができるが、現在はアメリカ英語が義務教育化され、殆どアメリカ英語が通用するとのこと。) 
 通貨:スウェーデンクローナ (1SEK=12.5円)
 EU加盟 (但しユーロは使用せず)
 1人当たりのGDP:334,200SEK(2009)(約420万円)
   (日本の1人当たりGDPは世界で3位、スウエーデンは22位であり、スウエーデンの12倍となる。)
 人口に占める外国人の割合:15%
 失業率:10%          消費税:25%

*スウェーデンの医療・社会保障制度
 ・スウェーデンの医療制度は秋となっています。
  +全ての国民は同じ条件で優れた医療を受ける権利を持つ
  +医療費は全て無料(財源は主に地方税)
   −患者は少額の窓口負担  −負担の上限あり(年間1〜2万円)
  +地方分権型の制度
  +ヘルスケアの品質、効率をチェックするピアレビュー体制あり
『スウェーデンの医療制度組織』
    医療及び社会支援サービス 
 中央政府 地方自治体
 社会保険省
20の県
6か所の大学病院
    65か所の県立病院
    100か所のヘルスセンター
保健福祉庁 290の市町村 高齢者・障害者のための住宅
   (スウェーデン地方自治体協会(SKL)が県及び市町村を代表)
   スウェーデン人は総じて「熱が出た」「腹痛がする」と言った程度では
   安易に病院に行くことはないそうです。もし行く場合は、まず地域で決められた病院(ヘルスセンター)に行くこととなって居り、そこで間に合わない場合のみ推薦状を書いて貰い、県立病院なり大学病院に行く。推薦状が無ければ県立なり大学病院では診て貰えないとのことで、日本のように自由に診て貰う事は出来ない不便性?があるとのこと。

  +世界各国の公私医療費(対GDP比:OECDヘルスデータ2010)
    スウェーデン:9.4%(内、公費は8%弱)
    日本:8.1%(内、公費は6%強)
    最も高い国アメリカ;16,0%(但し、私費が50%強を占める)
    最も安い国メキシコ: 5.9%(内、公費は3%弱)
    OECD:9,0%(内、公費は6%強)
   公費(保健医療支出)の対GDP比は、1993年以来右肩上がりに増え続けておりスウェーデンも例外ではないとのこと。
  +現制度への道程
   ・第一次、第二次世界大戦に参戦せず。
   ・70年代までは黄金時代。
   ・80年代経済危機、少子高齢化に問題が顕在化。
         (少子については、女性の出生率が1.,2人まで落ち込んだが、現在は2.0人に近付いている。<夫婦で480日の育児休暇の効果か?>)
    そこで改革を実行 
(特に有名なのはエーデル改革(1992)で次の特徴あり)
+高齢者福祉サービスと高齢者医療サービスの総合化=医療から福祉に誘導
    +地方自治体への権限と財源の分権化
    +入院、施設介護から在宅介護への誘導
    +医療費と高齢者福祉費の財政的節約
    +目標達成度の公表義務化
    +費用対効果の向上努力で、社会的入院等の排除へ

 これら改革に対するスウェーデンの特徴として次が挙げられる。(講師談)
 ● 理想は高く、政策は現実的
 ● 理想の実現に向けて、常に制度を見直し修正する
 ● 政策の柔軟性とバランス
 ● 医療、介護、教育、就労の全てにおいて共通する考え方である。
   また、次々と継続する改革の特徴として次が考えられる。(一部重複)
 ● 持続可能性
     ・税負担の増加(特に消費税現在25%)・市場原理導入
     ・目標達成度公表義務  ・情報公開、透明性強化  ・民営化
     ・地方分権化   ・医療分野に於いての患者負担導入
     ・選択の自由拡大
 ● 前提条件
     ・国民と政治家の間の信頼関係(因みに投票率は80から90%)

*医療記録登録制度
 1998年にリュウマチの新規治療薬としてTNFブロッカー(インフリキシマブ抗体医薬)が使われ始めた際、スタートした登録制度。
リュウマチ性関節炎。炎症性腸疾患等の治療結果を記録(14000人の患者、22000件の治療記録)が登録され、患者、医療従事者、研究者、製薬企業にとって、長期にわたる治療効果、副作用のモニタリングに有効とされた。
医薬経済学的分析でも、医薬品その物は高価だが、患者の健康状態の改善、社会的コストの大幅削減に?がることが示された。

 これを契機に、国民皆番号制を導入し全国民の医療記録制度が発足した。
これにより全国民の医療記録(無駄な治療排除効果)がデータされると共に、現在では医療記録のみならず所得、納税等もデータベース化されている由。

所感:日本では住所、氏名、電話等のみでも個人情報とされ、少しナーバスになり過ぎているような気もしますが、皆さまは如何お考えですか?

*イノベーションを生み出すシステム
  新たな産業の創出のためには、
 「産学官連携」と
   (産=企業家、経営者、投資家、 学=研究機関、大学
    官=立法府、政治家、地方行政)
 「基礎研究から臨床応用まで一貫した支援体制」が必要と考えている。
+競争力(2010〜2011):スイスに次いで2位(アメリカ4位、日本:6位)
+研究開発への投資(対GDP比):イスラエルに次いで2位(3.75%)

*ライフサイエンス産業
 スウェーデンは元々工業国であるが、特にライフサイエンスについては豊冨な実績・歴史を持つ先進国である。
Astra−Zeneca、Pharmaciaと言う2大ビジネスドライバーの他、国際的に活躍する企業が多数有る。独特の知的財産制度、大学のスタッフに特許実施権付与、政府による戦略的研究開発支援も相まって、先進医療の開発・導入に強みを持っている。
                                完
講演終了後、世界の患者会を見て来た桜井なおみ氏{キャンサーソリューション(株)社長兼産業カウンセラー}の司会による[Q&A]がありました。
特に大きな問題になったのは、次の2テーマでした。
 *日本の消費税のアップはどこまで認められるか。
  税収の使用は限定すべきか。 食料品等の日用品も一律で良いのか。
 *日本で国民の医療記録登録制度導入についてどう考えるか。

余りに大きな問題なので、皆戸惑ったような感じで、結論めいたものには集約できませんでしたが、条件と言うか懸念として挙げられたのは
 *「現在のような政治不信の下では考えにくい」及び「現個人情報の扱いはどうするのか」の2つでした。
「このままではあかん」「どげんかせにゃならん」ことは間違いないと思います。
皆さんは如何お考えでしょうか?
今まで人ごとのように思ってましたが、「たまには本気で考えるべきかな」と考えさせられた次第です。
以上 
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2907 報告  FIRSTサイエンスフォーラム2を聴講して                 河野 通久

 FIRST Program(最先端研究開発支援プログラム)と言う言葉をお聞きになった事があるでしょうか? 私は勉強不足で初めて聞く言葉だったので、老婆心ながら概略を下記します。
最先端研究開発支援プログラムとは。
 はるか宇宙を旅した「はやぶさ」、環境にやさしい「電気自動車」、再生医療の大きな期待を担う「ips細胞」等々、日本が誇る最先端科学の例は多くあることはご承知の通りです。
 最先端研究開発支援プログラム(FIRSTプログラム)は、新たな知を創造する基礎研究から、実用化を見据えた研究開発まで、様々の分野(人文・社会科学から自然科学まで全ての分野)や段階を対象とし、およそ5年で世界のトップを目指す先端的な研究開発プログラムです。
(「FIRST」とは、Funding Program for World‐Leading Innovative −R&D on Science and Technology の略です。)
 2009年4月21日にCSTP(総合科学技術会議)に於いて、科学技術担当大臣より「研究者を最優先にした従来にない全く新しい制度の創設」が提示され、同5月に平成21年度補正予算が成立した際、本プログラムを正式に発足しました。
 また,CSTPで検討が重ねられ9月には30件の「中心研究者及び研究課題」が決定され、10月には予算額が1000億円の巨費と決定されました。
 更に、CSTPに於いて運用方針が策定されるとともに翌3月に研究計画が決定し、研究が開始されました。(1件:15億円から30億円)また、本プログラムの特徴は「研究開発を加速・強化し、研究内容を広く公開」と言えます。
    (今までの研究開発制度には「予算の単年度主義により、資金を多年度に渡って自由に執行することが困難」という課題がありました。
本プログラムでは、研究者にとって自由度が高い研究資金となるよう財源を、独立行政法人・日本学術振興会に「先端研究助成基金」として、多年度に渡って使用できる仕組みの導入の他、研究者支援機関を置く等の新しい試みも取り入れているとのこと。)
  詳しく知りたい方は「FIRSTプログラム制度について」を参照下さい。
   (http//www8.cao.go,jp/cstp/sentan/)
ここでは、30件の支援対象プログラム名を全部ご紹介しようか(いずれも良くは分らないが興味を引くため)と考えましたが、勝手ながら医療に関係ありそうなものを選び、そのプログラム名と若干の説明及び中心研究者を下記することとしました。

  @ あなたに知って欲しい免疫研究の意義と可能性
   (今、免疫に対する認識が大きく変わろうとしています。私達が変えようとしています)
   (ヒトが自分の体を守る仕組みを明らかに仕事)
      審良 静雄(大阪大学免疫学フロンテイア研究センター/拠点長)

  A 呼吸などで位置が変るガンを追跡 集中して陽子線を浴びせる技術
   (持続的発展を見据えた「分子追跡放射線治療装置」の開発)
   (新しい陽子線がん治療の実現で、ガン患者を救う)
      白土 博樹(北海道大学大学院医学研究科/教授)
  B 次世代質量分析システムで病気の早期診断・新薬開発の新ステージへ
   (一適の血液から病気の原因を解明し、長寿健康社会を実現する)
   (新しい分野の研究だからこそ促進したい。異分野研究との融合や若手研究科の育成)
      田中 耕一(株式会社島津製作所 田中最先端研究所/所長)

  C 細胞で組織・臓器を作る!日本発世界初の本格的再生医療普及への挑戦
   (世界の患者を治す為に、医学と工学が融合する)
   (細胞シートを用いた治療)
      岡野 光夫(東京女子医科大学先端生命医科学研究所/所長・教授)

  D “いつでもどこでもだれにでも”ナノバイオテクノロジーによる医療革新
   (ナノバイオテクノロジーを活用した新たな診断・治療システムの創生)
   (“いつでもどこでもだれでも”安心して質の高い医療を受けられるよう)
      片岡 一則(東京大学大学院工学系研究科、医学系研究科/教授)

  E「心」を生み出す脳の謎を解き明かす
   (脳研究の新しい時代を切り拓く)(ヒトの心を救う薬を創りたい)
      岡野 榮之(慶応義塾大学医学部/教授)

  F がんや心臓病の問題を解決する医療技術の開発
   (病気の原因に基づいて新しい診断・治療を開発、効率的な医療を提供)
   (治療や予防が不可能な心臓病やがんの原因と仕組みを明らかにし、新たな知朗報を開発する)
      永井 良三(東京大学大学院医学系研究科/教授)

  G ナノバイオ技術が医療費を劇的に削減する
   (ナノサイズのバイオの力で病気の自宅診断や早期発見を可能にする)
   (高速解析で、医療費の削減とオーダーメイド医療の確立を目指す)
      河合 知二(大阪大学産業医科学研究所/特認教授)

  H 睡眠・覚醒の謎に挑む
   (「眠気とは何か」という現代脳神経科学最大のブラックボックスの解明)
   (肥満やメタポリック症候群にも密接に関与する睡眠障害)
      柳沢 正史(筑波大学,テキサス大学サウスウエスタン医療センター/教授)

  I 進行がんを副作用なく治療する薬をコンピューターで設計する
   (進行がんをピンポイントで治療する人工抗体)
   (日本のバイオ医薬品製造技術を世界のトップレベルに)
      児玉 龍彦(東京大学先端科学技術研究センター/教授)

  J ips細胞技術をベッドサイドに!医学研究・創生・再生に活かす
   (医学研究・創生・再生医療に,ips細胞技術はどのように利用されるか)
   (様々なips細胞の作製技術を公平に評価し、世界標準を確立する)
      山中 伸弥(京都大学ips細胞研究所(CiRA)/所長)

 固くて難しい話でお疲れでしょうが、もう少し我慢してお読み下さい。

 これらの助成対象プログラムは、大金を投じるだけに「途中経過(効果・実績・公開)」を含め、色々な実行・報告義務が定められています。 我々に直接関係のあるものを3つご紹介します。
  1.「TOP OF THE TOP!」世界の頂点を目指す研究者30名」展
  2.「各中心先生方による国際シンポジム」開催   
  3.「FIRSTサイエンスフオ−ラム2〜若者よ・トップ科学者と語れ!
科学の未来と日本」開催

1.については、平成23年6月11日〜7月24日、日本科学未来館(東京都江東区)に於いて、助成対象プログラムの中心科学者30名を紹介するイベントが開催され、24,000名以上の方が参加されました。

2.については、我々ナルコレプシー患者に関心の深いHについて
 柳沢先生の呼びかけて、国際シンポジウム「行動神経科学の最前線〜睡眠の謎に挑む」が、平成24年3月19,20日、東京国際フオーラムホールにてFIRST事業の一環として開催されました。
(招待講師国内外14名、参加者200名) 
 事前に確認した処、「専門過ぎて我々には難しい」とのことだったので出席は諦めました。が、同先生のご配慮で「なるこ会紹介小冊子<日英語版>」及び「ナルコレプシーはこんな病気のパンフ」を配布して頂きました。(日英語版小冊子は、昨秋京都で開催された「国際睡眠会議」時に、配布用として作成した物を使用。)

3.については、平成23年12月18日(京都)、24年2月5日(宮城)に次いで、3回目が3月18日に東京丸ビルホールで開催されました。
 これもFIRST事業の一環として開催されるもので、3名の中心講師による研究内容の紹介と、パネルデイスカッション、若者とのインタラクテイブ討論、最後に若者との語り合いとなるもので、参加対象者は主に高校生としています。
 今回(3/18)は、「前記 H Jのテーマ及び中心研究者)」に加え、「最先端ITを駆使して爆発する大量情報から価値の雫を創出する」をテーマとし、喜連川 優(東京大学生産技術研究所/教授)を中心研究者とするものでした。
定員500名の会場は各地から来た高絞生で一杯で熱気が溢れていました。更にNHKによる放映が予定(時期未定)されるため、本格的な取材陣が来ており,司会も同局山本アナで進行されました。
 また、Hのテーマでナルコレプシーが病気として取り上げられる関係上、事前にナルコ患者とのインタビューが欲しいとの依頼があり、当会の町田誠理事が取材に応じそのビデオが講演中に使用されています。
当会からは、理事長以下殆どの理事が出席し、事前に前記パンフレットを送付し配布をして貰いました。

ここでは、Jと喜連川教授分を以下紹介し、Hについては頁を変えて町田理事から報告することとします。
*「最先端ITを駆使して爆発する大量情報から価値の雫を創出する」喜連川 優(東京大学生産技術研究所)/教授  
  (情報は活用しないと意味がない。膨大なデータを高速かつ縦横無尽に解析することにより、新たな社会サービスが誕生する。)
   ・IT(Information Technology情報技術)の発展・普及により、情報量は増大し続けています。
特に2000年から2011年にかけて増大はすさまじく、21世紀は「情報爆発時代の到来」と言われているそうです。
(情報量の単位は、それまではEB<エクサバイト:0が18個も並び漢字では「百京」と表示>)で表わされていたものが、今ではZB<ゼタバイト:0が21個も並び、漢字では十核と表示>と表わされるとのことで、我々には見当もつきません。)

 しかし、情報量が幾ら多くなっても、必要な情報を的確に取り出せねば意味がありません。また、膨大なデータを処理するには従来のデータベースシステムでは時間が多くかかるため、実際の利用に耐えられなくなって来ています。そこで、このプログラムでは「非順序型実行原理」と言う新しい理論に基づき、従来型と比べて圧倒的に速い「最高速データベースエンジン」とソフとウエアを開発し、それを駆使することにより、将来的に必要とされるであろう戦略的社会サービスの実証システムに寄与したいと考えています。 

 (情報エネルギ―を生成基盤:超巨大データベースからの価値創出プラットフオーム)
ITの進展により、我々の実生活もインターネット、センサネットワーク名勿論のこと、電気製品や自動車に組込まれたコンピュータ 等々多くのソフトが組み込んで有り「ものの価値はソフトが決める」という時代になっています。
現在、溢れかえる膨大なデータは、それを精緻かつ徹底的に解析することにより、社会システムの抜本的改革と新しい社会サービスに?がるものと強い期待が寄せられています。
上記最高速データベースエンジンを核とする「情報エネルギー生成基盤」は、超巨大データベースに対する比類なき解析能力を以って、次世代の社会プラットフオームとして中核的な役割をはたすでしょう。
                                以上

  J ips細胞技術をベッドサイドに!医学研究・創生・再生に活かす
    山中 伸弥(京都大学ips細胞研究所(CiRA)/所長)(医学研究・創生・再生医療に,ips細胞技術は どのように利用されるか)ヒトの体はおよそ60兆個の細胞で構成されていますが、元をたどればたった1つの受精卵が増殖と分化を繰り返して生まれたものです。
 幹細胞は、「複数系統の細胞に分化する能力(多分化能)、細胞分裂を経ても多分化能を維持できる能力(自己複製能)を併せ持つ細胞」と定義されています。(発生における細胞系譜の幹になることから命名された。)
また、幹細胞は分化能力により以下に分類されています。
 *分化全能性:1個体を形成する全ての幹細胞へ分化可能 ・受精卵
 *分化万能性:1個体を形成する全ての細胞腫へ分化可能
  ・胚性幹細胞(ES細胞)・胚性腫瘍細胞(EC細胞)
  ・胚性生殖細胞(EG細胞)・核移植ES細胞、体細胞由来ES細胞
  ・人工多能性幹細胞、誘導万能細胞(iPS細胞)      
 *分化多能性:限定された細胞系列で多様な細胞腫へ分化可能
  ・神経幹細胞 ・造血幹細胞 ・肝幹細胞 ・皮膚幹細胞 他
 *分化単一性:一種類に限定された細胞腫に分化可能 ・筋幹細胞 他
2007年、ヒトの皮膚細胞からiPS細胞の培養に成功
2011年、iPS細胞からマウス誕生(iPS細胞から精子を作りだす)

 iPS細胞は、分化万能性を持っているため理論上、体の全ての組織や臓器に分化誘導することが可能であり、ヒトの患者自身から幹細胞を樹立する技術が確立されれば、拒絶反応の無い移植用組織や臓器の作成が期待されている。(現在角膜移植用のiPS細胞が現実化しているとのこと) 
再生医療のみならず、患者自身の細胞からiPS細胞を作り出し、その細胞を特定の細胞へ分化誘導することで、従来は採取が困難であった組織を得ることができ、今まで治療法のなかった難病に対して、その病因や免疫メカニズムを研究したり、患者自身の細胞を用いて薬剤の効果・毒性の評価が可能になること等が期待されています。
 
  (様々なiPS細胞の作製技術を公平に評価し、世界標準を確立する)
  iPS細胞に分化万能性を与える為に必要な遺伝子導入の際に、使用するレトロウイルス等が染色体内のランダムな位置に、発がん遺伝子等を導入するため、元々染色体に有る遺伝子にも差異が起こり、内在性発がん遺伝子を活性化する危険性もあり作成技術の世界水準を確立する必要がある。
                                       以上
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2908 報告  NHKの取材とフォーラム「睡眠・覚醒の謎に挑む」            町田 誠 

 私にとっては、降って湧いたようなNHK取材でした。「Firstサイエンスフォーラム2」で研究課題を発表する研究者の中にナルコレプシーの病因解明を目指して研究をされている筑波大学/テキサス大学サウスウエスタン医学センター教授の柳沢正史(やなぎさわ まさし)先生が『睡眠・覚醒の謎に挑む』と題して今年の3月18日(日〕に発表されるからです。

NHKの取材について、
 その取材の白羽の矢が「なるこ会」メンバーに飛んできましたので、私が出る羽目になりました。取材は、3月7日にNHKエンタープライズ(よく大河ドラマや大自然をテーマにした映像を制作している)のビルで行われました。
高校3年生の女の子もナルコレプシーに悩んでいて、私と一緒に参加しました。
取材内容は、何時発症したのか、もっとも大変なことは何ですか、エピソードにはどんな事例がありますか、柳沢先生の研究にどんなことを期待しますか、というようなことを受け答えする場面を撮影されました。
女の子も大学受験で大変なご苦労をされていたようですが、絵が得意で、それを克服して多摩美大に合格しているとの事でした。ご心配なのでしょう、ご両親も同伴してきました。私もご両親も取材している方も柳沢先生もクリスチャンと分かり、皆様と和気藹々に良い雰囲気で行われました。約1時間半くらいの取材でした。

Firstサイエンスフォーラム2「睡眠・覚醒の謎に挑む」」について

 このフォーラムは、3月18日(日)東京丸ビルで行われました。
このフォーラムには、なるこ会から私を含めて4名のメンバー(白倉理事長、河野副理事長 山崎理事)が出席しました。私達 なるこ会の会員は、故本多裕先生の講演や著書「ナルコレプシーの研究」(悠飛社)の中の記述から"オレキシン"がナルコレプシーの発病に関係していることを知っていました。この本の90〜93ページに、1999年 テキサス大学の柳沢正史教授が、オレキシンとナルコレプシーの密接な関係を発見し発表されたので、「睡眠の遺伝子 日本人が発見」のニュースが、アメリカでは流れたと書いてあります。その柳沢先生に今回初めてお会いし、お話を聞けるのですから興味深々です。
 勿論、柳沢先生の研究が私達ナルコレプシー患者の治療に大変関係することから、NHKの取材が私達のなるこ会に対して生じたことは言うまでもありません。そしてこのフオーラムの放映は、5月19日(土)に決まりました。

柳沢 正史教授(筑波大学・テキサス大学サウスウェスタン医学センター)の「睡眠・覚醒の謎に挑む」の概略を以下報告します。
睡眠は、現代の神経科学最大のブラックボックスの一つです。
*睡眠の機能 なぜ眠らなければならないのか。
睡眠と覚醒がどのように制御されているのかほとんど分かっていない。
1週間眠らないと、生命に危険を招きます。生命維持に必須なわけです。
*睡眠の調節 そもそも眠気とは?
 眠気の本体とは何なのか。どう調節が行われているのか、分かっていない。
*睡眠の障害 生活習慣病のリスクファクター
 認知症、鬱病などの医学的にも眠りというものの障害で、精神疾患、神経疾患の主要な症候として現われている重大なことです。

『眠気とは何か?』
 睡眠/覚醒の障害は現代社会の大きな問題であるだけでなく、生活習慣病のメタボリック症候群や、うつ病、認知症などの精神疾患とも関連が深いと言われています。眠気のしくみは、時差ぼけなどに関係する体内時計による「サーカディアン(概日)制御」と、徹夜明けに眠いと感じるなど最近どのくらい睡眠をとったかという近過去の睡眠経歴に関係する「ホメオスタシス制御」から成り立っています。
 *ホメオスタシス(恒常性)・・生物のもつ重要な性質 のひとつで生体の内部や外部の環境因子の変化にかかわらず生体の状態が一定に保 たれるという性質、あるいはその状態を指す。生物が生物である要件のひとつである。

脳内の覚醒物質「オレキシン」の発見
 柳沢先生は、未知の神経伝達物質を探していたところ、食欲に関する物質を発見し、オレキシン(ギリシャ語で食欲オレキス)と名付けました。
ところが、オレキシンをつくれないマウスを実験していくうちに、ある時不思議な行動を目の当たりにしました。オレキシンの分泌ができないマウスが、突然眠ったように行動を停止し、また突然行動を開始することを繰り返したのです。
これは絶対何かある!と直感しました。そこで、睡眠の脳波にターゲットを絞りこみ、もう一度脳波データを洗い直すと、予想通り行動停止時に睡眠のパターンを発見したのです。覚醒からいきなりレム睡眠に推移するというものでした。
それは、人間の病気でナルコレプシーと同一の症状でしたので、これを契機としてヒトのナルコレプシーでも、脳内オレキシンの欠乏が病気の原因であることが解明されたのです。ナルコレプシー患者の脳ではオレキシン産生細胞が特異的に消失しているのです。


 「オレキシン(睡眠/覚醒制御を担う神経ペプチド)」の発見をきっかけに睡眠学が飛躍的に展開されてきているものの、特にホメオスタシス制御についてほとんど分かっていないのが現状です。ノックアウトマウス作製により遺伝子の機能を解明してゆくというリバース・ジェネティクスを用いた研究が多々行われている中、フォワード・ジェネティクス(表現型から原因遺伝子を探す方法)に立ち戻り、生化学的アプローチで眠い脳/眠くない脳の比較検証を実施したり、自由行動下のマウスの神経活動を観察するなど、これまでにない方法で「眠気」の正体を探っていきたいと考えています。

私たちが目指すのは、「[睡眠と覚醒のメカニズムの解明とそのコントロール]です。
第一のアプローチは、オレキシンの働きをさらに解明し、これに基いて医薬の開発を目指すことです。
第二のアプローチは、睡眠・覚醒の間に神経細胞がどんな活動をしているのかを、特殊な顕微鏡を使ってリアルタイムに観察することです。

 そして、これまでのアプローチとは全く異なる、数千から一万匹に及ぶマウスの観察データから、睡眠・覚醒に関与する遺伝子を観察しようとする第3のアプローチで、毎週百匹のマウスの脳波を2年以上追求しようとする気の遠くなるような実験が行われています。
 全く未知の新たな物質や遺伝子の発見、睡眠・覚醒の根本的なメカニズムを、脳内のペプチドやその他のリガントとその受容体の機能解析から明らかにしていきます。
また得られた知見をもとに、睡眠を含む高次精神活動の制御法の開発および創薬を目指します。
 *ペプチド・・・アミノ酸が 2個から数 10個程度つながった分子の系統群です。
 *リガンド・・・特定の受容体に特異的に結合する物質をいいます。

睡眠障害の新規創薬の探索・・・オレキシン受容体作動薬スクリーニング
多様な小分子量化合物を医薬化学的に合成し、培養細胞にオレキシン受容体を発現させ、投与した化合物がオレキシン受容体を介して細胞を活性化するかどうかを計測する。細胞レベルで効果があった化合物の作用を、マウスなどの個体で評価する。


 肥満やメタボリック症候群にも密接に関与する睡眠障害
オレキシンは、睡眠だけでなく摂食行動においても重要な働きを持っていることが分かってきました。オレキシンは摂食をすすめる作用がありますが、オレキシンが欠損した動物は肥満傾向を示しやすい。
オレキシン受容体に作用する薬の開発は、睡眠障害だけでなく、肥満やメタボリック症候群などをも標的となり、そうした内容も視野に入れた研究を行っています。
以上


※ここで使用した図・写真はFirstサイエンスフォーラムのパンフからとっています。

「私の希望的私見」
 柳沢先生は、このフォーラムに参加した山中伸弥先生(京都大学iPS細胞研究所所長)のIPS細胞技術に大きな期待を持っておられるようでした。
 IPS細胞の研究が進めば、さまざまな病気の治療に必要な細胞や組織を作り出すことも可能と考えられており、これまで治療が困難だった病気を治せるようになると期待されています。創薬・再生医療への応用も目指せるからです。
先生は、山中先生へ是非コラボしましょうと講演会の中で言っておられました。
私達もナルコレプシーの根治療法が確立されればどんなに嬉しいことでしょう。
早くその日が来る事を待ち望む次第です。
                                        以上

追記:てんかんとの差異
 (フォーラムとは関係ありません。故本多裕先生が書いている内容です)
病気が原因で情動脱力発作と似た、突然体がかがみ込んでしまう発作を起こすてんかんがあります。
てんかんの脱力発作とナルコレプシーの情動脱力発作とは、はっきりした違いがあります。てんかんの場合は突然意識がなくなる上に、呼吸筋までが停止して息が止まってしまいます。ナルコレプシーの場合は、力が入らない以外は全く正常です。つまり情動脱力発作を起こしている間も本人の意識がハッキリしていて判断能力もあり、自分が脱力発作を起こしていることも、周りの人が何を言っているかも理解でき、呼吸が停止することもないのです。
両者は全く異質なものです。 
                                        完
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2909 報告  電話相談(その3)           川岸 聰子

 数ヶ月前、私が診察を受けている先生に、電話相談を受けて答えに困る内容について教えて頂きました。
先生は、ナルコレプシーの患者さんは「体質や生活環境」によって一人一人千差万別です、その意味では、「治療はオーダーメイドだよ」と言われました。
確かにナルコの患者は、
  規則正しい生活習慣を守ること、
  夜は質の良い睡眠をとるよう心がけること、
  昼間は15分程度の仮眠を数回とること、
  朝の太陽を浴びること 
  薬は忘れず定期的にきちんと飲むこと等々
と言ったことを守ることが基本的に大切なことには間違いないのですが、個々人については必ずしもそう出来ない場合もあると言うことです。
 例えば、夜勤の仕事の方がむいている方が現実に居られる、また薬についても少量で劇的に効く方もあれば、効き目が感じられない方、効き目は有るが副作用等に苦しむ方が居られる等、千差万別です。
相談者の中には、薬は出来るだけ使わないようにしていると言う患者さんが数多く居られます。
(薬に対するアレルギー感?で、体調を崩される例は少なくありません。)
医師に処方された分量や飲み方を守っていれば、問題は無い筈ですが・・・
 先生のお話では、飲み続けることによって、効き目が悪くなるようなら、休日等に一時飲むことを休んでみる等の工夫は効果的とのことです。

 検査を受けナルコと診断され薬を処方されても、薬が体に合わない、複数の病気を持っている為思いもかけない症状が次々と起きる、また周囲に理解されず孤立してしまい、薬の種類や分量を変えても改善されない等々と言った患者を前にして、苦悩されている先生方の姿が目に見えるようです。
ことほど多様にナルコレプシーと言う病気の治療が、複雑で多様性であることが想像されます。

 だからと言って「諦めて放置しておいた方が良い」と言う訳ではありません。
殆ど多くのナルコの患者さんが、投薬治療により症状が大幅に改善され、普通の生活を送ることが出来るようになっているのは間違いない事実なのですから。
 相談のため何度も電話を下さる方も多く居られます。
病院のこと、仕事のこと、検査費や治療費等の経済的負担が大きいこと、また患者本人の他、家族や学校の先生、職場の上司、更に専門外の医師からのお問い合わせ等、実に様々な方々からお問い合わせが寄せられます。
中でも、ナルコ患者そしてその家族の精神的負担は大きく、その悩みの多くに私のような浅薄な者が対応することは難しいものです。
(充分な対応が出来ず、申し訳なく思うことも度々です。)

 ただ、先日、患者のお母さんから少々パニック状態での電話がありました。子供のために心を尽くし病院を探し、複数の先生方に相談もし、住まいの心配もしてようやく良い方向に向かっていた矢先、一夜にして信じられないようなひどい状態になってしまいました。
その上夫が無関心で私の悩みなど全く理解してくれず、勝手なことばかりしていて、本当にこの場から逃げ出したい気持ちだと言うことでした。
それから1時間ばかりお話を聞いている内に、そのご家族の様子が見えて来て、実はお話の様に悪い状態では決してないことが判って来たのです。
 その内に少し落ち着いて来られたようなので、私がお話しを聞いている内に感じたことを具体的に(ご主人は決して無関心なのではなく、子供さんも一時的に不安定になり大事なことが出来なかっただけで、大筋では貴女の努力が実を結びつつある事実)話をさせて頂いた処、当初の追い詰められたようなお話が和らぎ、少しの間を措いて「気持ちが落ち着きました。有難うございました。」と言って頂きました。

 ナルコ患者ゆえに、精神的なストレスを投げかけて来られる方も少なくありません。精神的な悩みのケアーに対しても、何らかの対応が必要です。

 私は、至らないまでも「電話を下さる方の心に寄り添えるよう」、今後とも努力して参りたいと考えています。
                                                  以上


 患者が、抱えている悩みや苦しみを、正直に遠慮なく相談でき、適切なアドバイスをしてくれ、且つその内容は個人情報として保護される「施設と人材」は現在手掛けている病院は有るものの、未だ一般的ではありません。早く一般化するよう切に期待する次第です。
                                                  事務局
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2910 投稿  ナルコ患者の子供を持つ母親から学校への依頼              M

 私は太郎の母です。太郎は「ナルコレプシー」を発症して6年になりますが、現在中学校3年生になりました。実は先日、新担任の先生に添付の手紙と資料を渡しました。同じ物を全教科の先生、部活の顧問、保健の先生、校長先生に配りました。と言うのは、新学期が始まってすぐ悲しい出来事があったからです。

 太郎は体育祭のブロック長決めの時に、副ブロック長に立候補したのですがあろうことか担任の先生(男性)に「お前、寝るもんね・・」と言われたそうです。他の先生からも「大丈夫かあ?」と言う意見もあったそうです。

 本人はかなりヘコンデいました。おそらく3年になったし頑張ろう!と思って勇気を出して立候補したんだと思います。先生達の不安な気持ちも判りますが、もう少し言い方を変えて貰えれば、例えば(眠くなるかもしれないが、他の人に迷惑をかけない様に頑張れるか?)とか(ブロック長とよく話して協力しながら頑張りなさい。)等々
 私はその時、本当に太郎に「申し訳無い」と思いました。これまで担任の先生が変った場合は、家庭訪問の時に「ナルコレプシーとは?」と言うNetで拾った資料を渡して説明し、「宜しくお願いします」と先生に託したきり、その後のやり取りは殆どしていませんでした。先生達は理解してくれているものとばかり思っていました。ところが今回のことがあり、それが不十分だったと判りました。せめて「中学校に入学した時、こういう形で説明をキチンとしていたら・・」と、とても後悔しました。
 この手紙と資料とを学校に持って行った時、3人の先生方と直接話をしました。
その中には教頭先生も居られ、すぐにその場で読んで貰い、幾つかの質問をされ、私はきちんと答えることが出来ました。
本当は「どうしてあんなことを言ったんですか?」
    「なぜ他の教科の先生方に、きちんと伝えて呉れてなかったのですか?」
(前には体育の先生に居眠り中に蹴られたことがあったので・・)
等々、大声で言いたい気持ちだったのですが、そんな事をしても返って太郎の立場を悪くしてしまうし、私の認識不足も反省しなければいけないし、等々。何よりも「これから太郎のことを切にお願いしなければならない」と思い、極力低姿勢で頭を下げました。
 教頭先生も解って下さり、朝の職員会議でこのことを取り上げ、他の先生方にも話をして頂ける事になりました。

 太郎もこの一件で(今まであまり自覚を持たず、薬を飲むのも面倒くさがっていたのが)病気と取り組む気になりました。
 まだまだ不安な事だらけですが、親として出来る限りの事はしてやらなければと思いました。
太郎と同じ年頃の男の子で、同じ病気を持って苦労されているお母様に少しでもお役に立てればと思い書いてみました。お話し出来ればもっといいなとも思ってますが・・・・・。
              (太郎の母)
 
「先生方への手紙」
 何時もお世話になって居ります。
「ナルコレプシーと言う病気についてもっと詳しく知って貰いたい!理解して貰いたい!」と思い、この手紙を書いております。
 この病気には主に2つの症状があり、1つは「情動脱力発作」です。太郎が夜飲んでいる薬はこの発作を抑える薬です。この発作は嬉しい時、感激した時、大笑いした時等に全身の力が抜けて「ガクッ」となる症状です。重度の人は地面に倒れ込むこともあるそうです。幸い、太郎はそこまでではありませんが、力が抜けてガクッとすることは時々有るようです。
 もう1つの症状は「睡眠発作」です。この発作の事を特に分かって頂きたいのです。
日頃、授業中に眠ってしまいお友達に迷惑をかけたり、先生に不愉快な思いをさせてしまって大変申し訳ございません。でも、こういう病気がある事を知って貰いたいし、太郎がその病気である事を理解して頂きたいと思っています。

 急に睡魔が襲って来て「眠ってはいけない!」と思っていても眠ってしまうのです。そういう時、出来れば10〜20分位経って肩をゆすったり、ポンポンと叩いて起こして頂くと有難いのですが、起きない場合は、さらに10分後位に起こして頂くと助かります。あまり起きない場合はそのままにして頂いて結構です。大変ご迷惑をお掛けして申し訳ありません。
 普通の子が居眠りをする場合と病気の子の居眠りは、全く別種だと言う事をご理解頂きたいのです。
「起きなさい!!」と強い口調で言ったり、頭を叩いたり、耳を引っ張ったりして起こされる事は、本人をとても傷つけることになります。
太郎は小学2年生の冬に、久留米大学病院の睡眠外来で専門の先生に診て貰い「ナルコレプシー」(1万人に16〜18人)と診断され、それ以来毎日薬を服用しています。小学6年生までは5週間に1度病院に通いながら、1日中又は1晩中かかる検査も数回受けて来ました。中学生になって本人はあまり病院には行っていませんが、代わりに私が毎回症状を伝え、先生と相談しながら薬を処方して貰っています。
 治療法としては、薬を服用して眠気を覚醒させるしかありません。今3種類の薬を飲んでいます。薬の量や飲むタイミング(時間)を調整中です。
 本人の自覚がまだ不十分で一日の眠気が来る時間・回数もまちまちで、正確な症状が把握できず、調整がなかなかうまくとれないと言ったところが現状です。
 試験中に寝てしまう事もあり、薬を飲むタイミングや量はとても重要な事だと思っています。
本人ともよく話をして、今後毎日の居眠りの回数・時間を聞き記録してもっと調整に力を入れて行きたいと思っています。

何よりも本人が一番つらいと思います。
「眠ってはいけない!」という気持ちがあっても眠くなってしまう・・・。
「どうせ眠るやん」「ねるな!」と言われる言葉が、一番心を傷つけます。
そのうち「自分は眠くなるから何をやってもダメだ・・・。」
     「何も出来ないダメ人間なんだ。」と思うようになるかも知れません。
こんなに悲しい事はありません。
こんなにつらい事はありません。
どうか出来ることなら、その言葉を言わないで頂ければ幸いです。
どうかお願い致します。

 授業中の居眠りで勉強が遅れる事は心配です。
太郎には、「寝てしまっていたら10分位経って、後ろか横のお友達に、肩や背中を叩いて起こして貰うようお願いしておくよう」に言って居ります。
試験中にもし寝ていたら、先生の方から肩を叩くかゆすったりして起こして頂ければ幸いです。でもそうならない様、薬の調整に努力していく積りです。
マダマダ反抗期で、先生方に反発しご迷惑をお掛けする事もあるかと思いますが、その時は遠慮なく厳しく叱って下さい。 また、何かありましたら何時でもご連絡下さい。
どうか一年間宜しくお願い致します。
 3年○組    太郎の の父母  
                               以上
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2911 投稿  私が思うリタリン規制                        Y

 何時からだろうか? とにかく眠かった。
20歳を過ぎたある日、「ナルコは専門外の医師」から初めてリタリンを貰った。
「やっと自分の人生が始まる」それから人生を変えてみるために多くのことにチャレンジして来た。
引き籠りがち脱出するために実家を出て自衛官になった。
4年で見切りをつけ自衛官を辞めて、次の人生を初めてしばらくして・・・
2007年のリタリン規制・・・  それからが大変だった。
近くの病院からナルコを診て呉れる大学病院へ行くために、平日の昼間に休みを取らねばならなくなった。この他多くの不便が起きた。
こうなったのは何故か?
そもそもマスコミが騒ぐ事がなければこんな事にはならなかった。
冷静に「診断のみを専門病院で行い、日常の投与は裏付けが取れた人のみとする。掛け持ち受診や集客のためのバラマキ投与を取り締まる。」で良かったのではないか?
今は、ガンの人がモルヒネの眠気を止めるためにも使えないそうである。
こんな「全面悪化」は有害なだけだ。ナルコでは無い人で、リタリン・モデオダールが使えないために活動できなくなる人が、世の中には多くいる筈だ。
「ギブアンドテイク」この言葉からすれば、社会から除外された人がこの騒動で多く生まれたことになる。
そして、テンカンのような事故が起きる前にも、今の体制は何とかしなければなりません。
思った事を纏めてみましたが如何でしょうか?     以上


本稿は意味不明の点もあり、掲載すべきかどうか悩みましたが、当会の考えを再度示すチャンスと考え掲載することとしました。
  事務局担当;河野

・薬剤の認可には、効能(病名・症状)の明記が義務付けられています。
 リタリンの効能は「うつ病とナルコレプシーによる眠気を抑える」でした。

・しかし、上記2つの病気とは係りなく、大量摂取による幻覚等を求める人が増加し、それに応える病院・薬局が現れ、社会問題としてマスコミ等で取り上げられた結果、効能から「うつ病」を外し、更に流通面の観点から医師・薬剤師の登録制になったものです。

・「ガン患者云々」は詳細不明ですが、末期がん患者さんの覚醒維持のために使われて来た経緯があり、現場で困ったと聞いた事はあります。
 
・「診断書提示で薬を出せ云々」は、「診断書を持って行けば薬局で直ぐ出せるよう」と言う意味では論外です。あくまでも処方箋は医師が診察した上で書き、それに従い問題無しと判断した薬局が薬を出すのが原則です。
但し、睡眠医療認定機関で検査され、ナルコレプシーの確定診断書が付いた場合、そこから紹介状を貰って通院の便宜が良いリタリン登録医のいる医療機関に通院する事は通常行われています。(この場合も診察を受けて処方箋を書いて貰う必要がある事は前述の通りです。)

・(専門の睡眠医療機関で通院治療を受けていた)ナルコ患者にとっては、実害は殆どなかったと考えています。 
しかし、我々が言う「専門医」即ち「ナルコレプシーを診断・治療出来る認定医療機関はまだ絶対数が少なく、また地域的には都市部の多く地方に少ない実態(通院のために片道5〜6時間かかるケースも珍しくない)」がある事は無視出来ない事実です。
今後。専門の認定医療機関の拡充が、益々必要になると言う事だと思います。
                                              以上
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2912 投稿  総会後の懇親会で出た意見・感想・体験等              木村 紘一 

@Kさん:高校2年生の息子の事で病院に行き、今年1月に検査を受け、2月にナルコレプシーと診断された。その事を学校の先生に話した処、そんな事は無い。他の病院に行ってみろと言われた。 病院で薬を貰い、学校でも眠らない様になった。 ANさん:私は10歳の時に発症。母と一緒になるこ会に入会。病気の事は誰にも話したくなかったが、結婚の時は相手に話さない訳にも行かないので話した。また、妊娠した際先生とも相談して最小限の薬を飲んで無事赤ちゃんも出来、心から皆さまに感謝しております

BSさん:10歳の時に発症して、普通科の高校を出ました。仕事も辞めたりあるいは知り合いの所で仕事をさせて貰ったり、色々と苦労しました。病院でナルコと診断され薬を飲んでも、結果を出せる人は良いですが、結果を出せない人は如何すれば良いのか教えて下さい。

CIさん:50歳の時に発症。60歳で三越を定年で退職。症状は日中眠くなる、金縛りは無い、脱力発作で膝がガクガクして歩けない。 重要な会議で会長、社長、マネージャー等の前でも寝てしまう。 パソコンをしていても駄目、車を運転していて眠くなり事故を起こした。定年後は、マンションの管理人で主な仕事は掃除で体を適当に動かしているのが良いようだ。薬については色々と飲み方を変えて、自分に合うよう工夫している。 

DAさん:色々と仕事を変えて(介護とか看護)、今は相談員のような仕事を会社に勤める時は「自分がナルコレプシーであることを」話して勤めるようにしている。その事で就職が駄目になったことは無い。
自立して生活して行かなければならないのだから、受け入れてくれるかどうか粘り強く頑張るしかない。
ナルコ患者は「几帳面ないしはガンバリ屋さん」が多い。

EKさん:生命保険に入る時は、ナルコレプシーと言わない方が良い。

FYさん:なるこ会に入って40年。症状は日中眠くなる、金縛りは無い、脱力発作あり。薬はリタリン、ベタナミン、モデオダールを飲んでいる。リタリンとモデオダールは喉が渇く。
モデオダールは良く効くが値段が高い。眠気さましにコーヒーをよく飲むが、スターバックス、キリマンジャロが良い。モカは弱い。インスタントはダメ。

GHさん:本多先生に罹って25年。症状は寝入りばなの幻覚が酷い。薬はベタナミン(これは肝臓に悪いと言われた)、寝る時アナフラニールを1.5錠飲んでいる。現在休職中。

HIさん:発症は高校1年。大学を出て兄の紹介で清掃局に勤務し体を動かすので良かったが、事務に変ってからは眠くて困った。

IOさん:昨年の3月に公務員を定年退職して、非常勤として働いている。
    私のモットーは「前向きに取り組む」です。ナルコのため遅れて43歳で結婚。病院通いは健康チェックにもなると割り切っている。

JKさん:36歳の課長代理の頃発症。何処の大病院に行って検査しても異常なしと言う結果で、20年くらい諦めて苦労した。平成13年、新聞に同じような病気の掲載があり、代々木で本多裕先生の診断を受け「ナルコレプシーであり、薬の服用で8割方症状は抑えられる」と言われた時は、先生が神様に見えた。後日、先生からなるこ会の運営手伝いを依頼された時、断り切れなく、受けざるを得なくなった。

K高橋清久先生のご感想
  初めてこの会に出席させて貰って、非常に勉強になりました。
ナルコレプシーは、以前と比べると格段に進歩しており、近い将来には高血圧とか糖尿病とおなじく生活習慣病(自分でコントロール出来る)になると思います。
 脱力発作にアナフラニールが効くとか、オレキシンがナルコに深く関与している事が判明したり、研究は着実に進んでいます。又、先程誰かが話して居られたように、ナルコレプシーはComing Out(好評する、受け入れる)した方が、ストレスも溜まらないと思います。
 但し、未だに知られていない病気のため啓発活動が必要と思います。

L本多真先生からのご回答(個々の事例についての話は省略。)
 ナルコレプシーへの対応は人によって症状が違うため、眠気への対応もそれぞれの人の生活に合わせて工夫することが重要になる。  一般的には長時間いすに座ってパソコンを扱うような事務作業をすると、当然眠くなるので、昼休みなどに計画的に短い昼寝をとると良い。
 又、眠くなる時間帯が決まっていれば、その前にトイレで短時間眠ることも役立つ。
職人さんや畑仕事の様に午前午後と休み時間をとって昼寝が取れる仕事だと大きな問題が生じないことが多い。
職業選択には殆ど制限はないが、長距離の職業運転手、高い所とか水の中など危険な場所での作業、夜勤作業は出来れば避けた方が良い。
 職場の周りの人に理解して貰うことも重要である。
                                              以上

「お詫び」
 本稿は「なるこ28号」に掲載すべきものでしたが、事務局・編集者の手違いで掲載洩れとなりました。
申し訳無くお詫び申し上げます。        編集責任者  河野
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2913 投稿  なることともに人生を語る(最終回)                白倉 昌夫

 今回はナルコレプシーと診断された20歳から現在の年齢68歳の48年間、薬との付き合い方や「眠くなるのは眠くなる病気」が原因である事を知った事からお話します。
20歳の時、診察後に病気だったのかと知り、自分自身嬉しいような、悲しいような気持ちになった事は思い出されます。 そして治療薬を頂き、最初に頂いた薬は寝る前に飲む薬(アナフラニール)と朝起きてから寝るまでの薬(リタリン)でした。
それからは、日々の生活が変わりました。
●寝る前に飲む薬(アナフラニール)
 ナルコレプシーと診断される迄は、笑うと力が抜ける脱力発作がありましたが起きなくなった事。
 同じく睡眠時の幻覚が、少なくなってきた事。
 同じく金縛りからも少しずつ開放され、90%位解放されました。
 ○今は半年に一回位脱力発作がある位で、幻覚や金縛りは起きません。
  薬をきちんと飲めば起きません。時々飲むのを忘たり、夜遊びが多い時に起きます。

●日中の飲む薬(リタリン)
 初期の頃は朝の朝食後にリタリン2錠、昼食後2錠のみました。
 病気であると診断される前と比べたら天地がひっくり返るような、嬉しさでした。
 しかし薬を飲む事によって、100%解消した訳ではありませんが。

●診断されてからは薬で早く直し、ナルコレプシー病から解放されるように日々の生活を変えたりしながらスタートしました。
 最初の頃は薬を上手に使えば徐々に、治るような気がして、薬を少しずつ減らし初めたり研究しながら努力しました。 1〜2年位で完全に治るような思いもしました。
しかし、薬を減らし始めて治ったかと思えば、また最初の状態に戻り、畜生と思いまた挑戦しました。先生に相談すると治るような、治らないようなお話で日々の生活が一番大事ですと抽象的な答えでした。
そんな日々が2年位してから、先生の勧めで、「なるこ会」を紹介され、同じ患者との交流が始まりました。

●なるこ会に入って解った事は、
 ○病気が重くなって入院や手術するような病気でない事。
 ○薬が増えて、薬の副作用で体調が悪なった人はあまりいない事。
 ○薬を飲んでいれば、健常者と同じような生活が95%位できる事。
 ○同じナルコレプシーでも、昼が眠く夜は眠れない人がいる事やチョット違う症状の人達もおりすべて同じでない事も解りました。
 ○患者で働けない患者はいない事。
 ○患者の方は何年も同じ薬で増えもしない、減りもしないで薬治療患者である事。
 ○患者は共通して睡眠は十分取っているのに、朝薬を飲むと眠くなる事。
 ○昼は食事後15分位仮眠する。しないと午後に睡魔が襲ってくる事。
 ○仕事中に眠くなったら我慢しないで、外の空気を吸うなり、トイレで休むなど工夫する、また眠くなって我慢して仕事をするととんでもない失敗する事。
などなどでした。

●患者同士でナルコレプシーの苦労話や患者同士でなければ話せない事、お腹が痛くなる位に笑い語った覚えがあり、なるこ会に参加して半年位で病気に対しての接し方が理解できました。なるこ会には感謝・・・感謝でした。
「なるこ会」に入会してからは更なる諦める事、努力する事などがはっきり見えて、自分なりの薬との付き合い方が変わりました。
 私は、なるこ会に入ってナルコレプシー病は今の医学では一生治らないと判断しました。それからは薬を減らそうとはしません。人前で薬を飲む時は「頭がスッキリするビタミン剤です。」と 堂々と飲んでいます。

●初期の薬の内容で変わったのはリタリンからベタナミンです。
 リタリンは口が乾き食欲がなくなり、薬の効く時間短いので、それを解消するのにベタナミンに変えました。
私の場合はベタナミンが長時間の効果があり、食欲もまあまあで、口の乾くのもなくなり以後、薬は30年位、代わっておりません。
アナフラニールも15年くらい前までは脱力が起きたら飲むような感じでしたが以後は忘れない限り寝る前にビタミン剤と思って毎日飲んでおります。
薬に関してはほとんど変化もありません。
健康診断でも、胃の検査や5臓器にも薬による副作用はありません。
至って健康優良児みたいです。

◎では日々に於いて私なりの薬との付き合い方をお話します。
 アナフラニールは毎日忘れなければ飲んでいます。昼の眠気を抑えるベタナミン50ミリを朝起きたらすぐ1錠飲むようにしております。時々忘れて食後飲む時もあり、朝起きて飲んだか忘れる時もあります。私は一日一回です。 朝食後は眠くなります。これはナルコレプシーの特徴ですね。治りません。でも眠くならない時もあります。わがままの病気ですね?
 最近は長男と車で通勤ですので、車の中ではほとんど30位は寝ております。
自分で運転の時は自分自身を監視するような感じで、眠くなったら途中で休むようにします。自分で運転の場合で時間厳守の場合は、出発時間を30分位早くします。また車で仮眠する時、携帯電話で20分位したら起きられるようにアラームを簡単にセットできるようにしております。 電車通勤や電車で行動する時は目的地の到着時間を計算してアラームセットします。電車の乗り越しは電車の乗る回数を100とすると70%乗り越しですね。
但し、乗り越しても迷惑がかからない時です。

 ナルコレプシー患者に共通して言える事は熱い場所、暗い場所、2〜3時間寝ないでいる事。静かな場所、結婚式、お通や、お葬式、会議は睡魔に襲われます。
このような状況で絶対寝てはいけない場合は朝のベタナミン50ミリを2錠飲むように食事は控えめにしております。

 日々の生活では、昼の食事後は必ず眠くなるので、20歳の頃から昼食は原則的には食べないようにしております。食事して眠くなっても構わない時は食べますが。
 普段会社では眠くなるとたばこ吸うとかで席を外しますとか、トイレに行くとかして眠いから席を立つ事がばれないように行動して気分直しします。

 以上で「なるこ」と共に人生を語る を終了します。
私の家族のナルコレプシー患者は私だけです。

最後のメッセージ  会員の皆様、病気に負けないで頑張りましょう。

            ナルコレプシー患者で悩み、困った時、などなどは・・・なるこ会・・・なるこ会に相談

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2913 編集後記

 本29号発行に当っては、投稿が少なかったせいもあり、ナルコレプシー関連のみならず 「睡眠と睡眠障害に対する国の考え。実効策」「海外も含む医療体制」 「学術会議」 等と  かなり幅広く、且つ難しいものとなりました。
 本誌の読後感なり、会誌についてのご意見をお寄せ下さい。

 また、第1回から第6回まで続いた「関東睡眠懇話会」は、スポンサーが見つからず今年から中断となりました。 当会は、日本ベーリンガー社様のご配慮で初回から「共催者」として名を連ねて来ただけに誠に残念に思っています。又、今まで賜った同社に対し心よりお礼申し上げる次第です。
                                               事務局一同