『なるこ』第31号 (平成26年5月)

2015.1.5 初掲載


3101 巻頭言                                    理事長  白倉 昌夫

3102 講演 ナルコレプシーと自動車運転
東京都医学総合研究所 睡眠研究プロジェクト リー ダ   本多 真
筆 記  桑原 正孝

3103 報告 運転免許に関する緊急アンケート調査 結果報告            桑原 正孝

3104 報告 今年も春の園遊会が開催されました                    町田  誠

3105 報告 千葉県全中学校のアンケート集約                      川岸 聡子

3106 報告 「晴和病院」と「なるこ会」の関係について                   河野 通久

3107 投稿 息子が発症して・・・                                 Y

3108 投稿 ナルコレプシーについて                            K

3109 報告 平成26年度・春の睡眠の日 公開市民講座in東京(H26.3.15)    河野 通久

3110 報告 「道路交通法」と「関連する刑法」改正について              河野 通久

3111 お知らせ                                          事務局



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3101 巻頭言                                    理事長  白倉 昌夫

 最近は円安、株価の上昇、景気回復などで日本中が沸きだっています。更に消費税が8%になり庶民の生活は物価上昇で少なからず生活は良くなっているようには思われません。なるこ会員の治療薬も上昇しております。厳しい経済状況の昨今、会員の皆様は如何お過ごしでしょうか。

 日本ナルコレプシー協会も認定NPO法人を取得し、企業からの寄付金をいただいて、活動をしております。
私はなるこ会の目的として

@会員が交流の場に集まり、患者の皆様が日々どんな生活を送っているのか? 病気は治るものなのか? 薬の使用方法? 結婚は? 出産は? 車の運転は?生命保険? はなど沢山の悩みあると思います。
私はなるこ会に入会し、患者同士の交流の場に参加し、沢山のアドバイスやヒントを頂いて、現在まで健康に生活しております。入会前は薬を徐々に減らし治るような気がしていました。減らすたびにまた脱力、眠気に襲われ、何回も失敗しました。入会後は会員同士の交流の場でナルコレプシーの病気に対する考え方が変わり入会して交流の場に行く事が楽しみになりました。
会員の皆様、一度参加して下さい。普段打ち明けられない病気を持ち、周りに同じ患者もいないので悩んでいる方は年に2回 春の園遊会、暮れの総会に参加し意見交換や、同じ病気の友達を作り、これからの生活に役立てて頂きたいと思っています。

A居眠りをして病気と思わなくて、困っている方に早期発見し、治療を受けるようにテレビに取り上げて頂いたり、新聞の記事やホームページを立ち上げ、学校関係に資料の配布、早期発見に役立つ活動をしております。

 会員の皆様、年会費を納めるだけでなく交流の場に参加ください。



3102 講演 ナルコレプシーと自動車運転
                     東京都医学総合研究所 睡眠研究プロジェクト リー ダ   本多 真
                                                      筆 記  桑原 正孝

 改正道路交通法が2013年6月14日に公布され、2014年6月に施行される。特定の病気にかかる人の運転免許の拒否や保留について変わったので説明する。次に道路交通法が改正されたことに関して運転適正相談窓口の相談員向け講習を7月に行ったのでその内容について話し、またこれまで発表されていなかったアンケート調査結果について説明する。

T.道路交通法改正
 2年前に鹿沼でクレーン車が暴走し登校中の児童6人が死亡した。また、去年の春に京都祇園で軽ワゴン車が暴走し7人が死亡する事件があった。運転者はてんかんで症状を申告せずに運転免許・更新を受けていた。
 事件後、遺族会が現在の病気の自己申告制度は問題があるので、医師が運転が危険な病気の人を通告すること、また正しく自己申告をしなかった者には罰則を強化することを旨に署名運動を行い、国会に請願した。これを受けて公安委員会は有識者会議を設置し改正の内容を諮問した。有識者会議では関係する学会、患者団体などから意見を求め検討を重ねて答申した。なるこ会も意見を提出しており警察庁にも出向いて意見を述べている。

 6月14日に改正道路交通法が公布された。改正事項はいくつかあるが、一定の病気にかかる運転者対策として、該当する者を的確に把握する方策が次のように定められた。

(1)免許を受けようとする者に対し、病状に関する公安委員会の質問制度を整備するとともに、
   虚偽に回答した者に対する罰則の整備 (1年以内に施行)
    罰則:1年以下の懲役または30万以下の罰金
(2)一定の病気に該当する者を診断した医師による任意の届出制度 (1年以内に施行)
(3)事故を起こした一定の病気である疑いのある者を医師の診断までの間、暫定的に3か月の
  範囲で停止する規程の整備  (1年以内に施行)

 一定の病気とは、自動車の安全運転に必要な認知、予測、判断または操作のいずれかに係る能力を欠くおそれがある症状を呈する病気で以下のものが定められている。

   1.統合失調症   2.てんかん   3.再発性失神   4.無自覚性の低血糖症   5.躁うつ病
   6.重度の眠気の症状を呈する睡眠障害   7.認知症   8.アルコール/麻薬/大麻/あへん/覚せい剤の中毒
   9.その他

  道路交通法の改正に当たっては、「地方では運転が出来ないと生活が出来ないし病院にも通いない、人権侵害ではないか」「病名がつく事で不利益になると病気の人が病院に行かなくなりかえって安全が損なわれる」などの意見が関連団体から提出されていることをふまえ次のような付帯決議が付けられた。



 質問票、医師による届け出に関するガイドラインについては、日本睡眠学会に照会がきた。質問票の内容は「過去5年の間に、十分な睡眠時間をとっているにもかかわらず、日中活動している最中に眠り込んでしまうことが週3回以上ある」というもので、これに「はい」と答えると続いて「申請前に運転適性相談を終了している」という質問に「はい」 「いいえ」を答えるようになっている。

U.運転適正相談窓口の相談員に対する説明
 都道府県警察には身体の障害や病気等による運転免許の取得や運転継続に不安を持つ人が相談することが出来る窓口を設置している。
警察庁が企画して運転適正相談窓口の相談員(警察官)を対象とした講習がおこなわれ、そこで説明した内容について話をする。

1.睡眠は現代社会の全体の問題
 眠気はナルコレプシーや睡眠時無呼吸症候群の患者だけの問題だけでない。NHKが行った国民生活時間調査によると、午後11時に布団に入っていた人は1960年では90%であったが、2010年では50%になり12時を過ぎても起きている人が15%もいる。一方、朝7時には8割の人が布団から出ている。就寝する時間は遅くなっているが朝起きる時間は仕事、学校などで制約されており、睡眠時間は50年間で1時間以上(63分)短くなっている。このように国民全体が寝不足の状態にある。

2.眠らないとどうなるか
 動物実験では断眠後10日間で食事量は1.8倍になったが体重は12%減となった。血液中の免疫系を司る白血球の数は増えているが機能は低下して敗血症になり死亡に至っている
睡眠時間を1日4時間に制限した場合と1日12時間とった場合とで6日後の血漿中の総コルチゾールを比較すると、前者が増えている。また、朝食後の血糖値は前者では境界値型糖尿病の値となっている。

3.主な睡眠障害
 睡眠障害は、症状別に次の4タイプに分類される。
   (1)不眠症 国民の2割に慢性的な不眠がある。
   (2)過眠症 労働者の1割に慢性的な過眠がある(男性7.2% 女性13.3%)
   (3)睡眠覚醒リズム障害 4割の企業にシフトワーク有り
   (4)睡眠時随伴症
 ・睡眠障害は現代社会(シフトワークとPC作業への変化)の病気
 ・睡眠と覚醒は表裏の関係
 ・夜間睡眠障害は結果として日中の眠気や疲労に伴う注意力低下を来す。

4.過眠症の分類
 広義の過眠症は、次のように分類できる。

  (1)夜間睡眠の量が不足するもの
     睡眠不足症候群・環境因子に伴う睡眠不足
     概日リズム障害 睡眠と体内時計とが合わない 特に交代制勤務
  (2)夜間の睡眠の質が悪いもの
     睡眠時無呼吸症候群、周期性四肢運動障害
  (3)睡眠覚醒中枢の機能障害によるもの(狭義の過眠症)
     ナルコレプシー、特発性過眠症、反復性過眠症

 重度の眠気の原因は多彩であり、まず原因の調査が必要であり、鑑別診断後原因や重症度に応じた治療を行う。

 ナルコレプシーは脳内の睡眠覚醒中枢の機能障害によるもので、欧米では2000〜5000人に1人であるが日本では600人に1人の有病率である。日本に多い原因は不明である。
ナルコレプシーの基本的障害は次の二つである。
  (1)睡眠覚醒の多相化
     睡眠や覚醒の各モードを持続することが出来ず日中には居眠り、夜間には熟眠障害となる。
  (2)レム睡眠関連症状
     覚醒状態からREM睡眠に容易に移行し、REM睡眠でのみ見られる筋弛緩が覚醒・半覚醒中に生じる。

 特発性過眠症は10万人に5人と言う非常にまれな障害である。眠気は眠り込むほどではなく我慢すれば耐えることが出来る程度であるが、一旦眠るとどんなときにも起きるのが大変である。

5.過眠を呈する病気の識別
 まず他の病気がないか薬を使っていないかを確認し、次に睡眠不足で無いことを確認してから病状により識別する。



6.眠気の評価法
 眠気の評価法としては客観的な評価方法として、反復睡眠潜時(MSLT)、覚醒維持検査(MWT)が、主観的評価法としてESS(エプワース睡眠尺度)、作業能力を測定する方法としてPVT(精神運動ヴィジレンス課題 Psychomotor Vigilance Task)、ドライブシミュレーターがある。

(1)MSLT
 早く寝付く人ほど眠気が強いという概念に基づいており、日中2時間おきに4・5回ベッドで横たわり眠るように指示されて消灯してから寝付くまでの時間を測定する。寝付く時間の平均が8分以内だと過眠症と判定される。また、入眠後15分以内にREM睡眠生じることが、4-5回の検査のうち2回以上出現するとナルコレプシーと診断される。

(2)MWT
 どれくらい覚醒状態を維持できるかを検査する方法である。椅子に座った状態で起きているように指示され、部屋をうす暗く(0.1lux)してから眠りつくまでの時間を計り、日中4回繰り返す。
平均32.6分以上では正常、8分より短いと過眠症と判定される。その中間値については判定基準がまだ確立されていない。
MWTの結果は、一部運転可否の判断の目安となる。

(3)ESS
 生活の中の8つの場面でうとうとする可能性を4段階で点数(0,1,2,3)を付ける。11点以上で過剰な眠気があると判断される。個人の主観で点数が変わる。

(4)PVT(Psychomotor Vigilance Task)
 たとえばモニター画面上に表示されたマークがどの番号のものか答える。どのくらい早くどのくらい正確に答えられるかを判定する。被験者の持っている能力に左右されるので個人の体調による能力の変化は分かるが他人との比較は難しい

(5)ドライブシミュレーター
 実際の運転と同じ状況で運転して不適切な車線変更の回数を調べる。
MSLT、ESS、PVTの結果はドライブシミュレーターの結果と対応しない。マイクロスリープ(30秒間隔を単位とし15秒以下の睡眠)が関係している。MWTである程度予測が可能となる。評価が難しいのでまだ標準化されていない。

 MWTの結果で病的眠気群(19分以下)、中間群(20〜30分)、覚醒群(34分以上)、健常者群(34分以上)の4グループ分けて、ドライブシミュレーターの結果との相関関係を見ると病的眠気群では不適切な車線変更回数が多いが、覚醒群では健常者群とほとんど変わらない。



7.ナルコレプシーの治療
 非薬物療法
  (1)疾病受容 「睡眠の病気」であることを理解し、病気とつきあう心構えをする。
  (2)生活改善 睡眠表をつけ睡眠生活の乱れを自覚し夜間睡眠を十分確保する。
  (3)計画的昼寝の工夫 短時間(10〜20分)の昼寝が非常に有効
  (4)環境調整と継続的治療確保 職場、学校、家族の理解と協力、副作用の正しい知識をもち治療を継続する。

 薬物療法
  (1)刺激剤 半減期を考慮し飲み方を間違いないように
  (2)服薬量は副作用と生活改善を指標として決定
  (3)長期的副作用予防 定期的に精神症状をチェックする。休薬日、減薬日を設け耐性がつかないようにする。

V アンケート結果
 2006年から2007年に本多裕先生が実施された長期予後調査の運転免許に関するデータについて説明する。(対象者954人、回答者373人、有効回答308人)
免許を持っているひとは204人で実際に運転している人は137名であった。
事故の経験についてはないと答えた人は治療前では44%であったが治療後は63%となっている一方、治療後にも人身事故を起こした人が4%あり運転を避けるべき人もいると考えられる。





W.質問
Q1.「医師から運転しても大丈夫だという証明書をもらってこい」と言われた知人がいるが、もし事故を起こしたら医師の責任になると思われる。証明書の発行が出来るのか。

A1.事故を起こした人の運転免許については客観的証拠が求められる。MWTを行って32分以上であれば健常者と同じと言えるので証明ができる。MWTは日本睡眠学会のホームページの認定医療機関に掲載されているところなら検査可能である。MWTは保険適用になっていないので63000円かかる。

Q2.いずれの検査方法も日常からの延長線上にあり薬の効き目により変化するが一つの数字で分かる確認方法はないか。また薬が切れたときにはどうすればよいか。
A2.重症度が分かるのはMWTだけである。たとえばオレキシン量の測定は診断には役立つが運転の可否には結びつかない。また、シミュレータは一般的ではない。
 薬が切れることを経験する場合には、短時間の計画的昼寝をスケジュールにとりいれて調整することが必要である。

Q3.すぐくたびれる。大きな仕事をした後休憩を取っても動けなくなる。高校生の時
10分歩いて帰ると動けなくなった。情動脱力発作なのか。
A3.疲れたときに力が入らないのは典型的な情動脱力発作ではない。しっかり覚醒しているときに力が入らないのが情動脱力発作である。




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3103 報告 運転免許に関する緊急アンケート調査 結果報告            桑原 正孝

 改正道路交通法は、平成25年6月に国会で議決され平成26年6月から施行されることになりました。今回の改正のなかで「一定の病気に該当する者を的確に把握するための整備」が図られ「一定の病気」として「重度の眠気の症状を呈する睡眠障害」が指定されました。
 当会ではこれまで有識者懇談会に対して意見を提出しておりますが、実際にナルコレプシー患者の運転でどのくらい事故が発生しているのか最近のデータがありませんでした。
 そこでナルコレプシー患者の交通事故に関する実態を把握しておくことが必要となり平成25年8月に全会員を対象に緊急アンケート調査を実施しました。以下にその結果を報告します。

T.背景情報
1.アンケートの回答状況
   ◇アンケート配布数  282
   ◇回答数  159(回答率 56%)
   ◇有効回答数 145(ナルコレプシー患者以外を除く)
         ・男性85人 女性60人
         ・免許有り 96名(66%)   免許なし 49人
         ・平均年齢・標準偏差 53.7±20歳

 会員の免許保有率は、平成24年の国民全体の免許保有率64%とほぼ同じです。





 回答者の平均年齢は、53.7歳で60歳以上の方が77名53%でした。
職業については年齢構成からも推定できるように年金生活を含む無職の方が約半数を占めました。





2.発症年齢、初受診年齢
   ◇発症年齢   19.1±9.8歳
   ◇初受診年齢 30.4±13.2歳





 発症年齢は、平均19.1歳で10歳から30歳の間に集中していますが30歳以上で発症された方も8人に1人います。
初めて睡眠専門医を受診した時の平均年齢は30.4歳で、発症してから受診するまで平均11年かかっていることになります。

3.通院状況
   ◇通院している 134名(92%)
   ◇通院していない 7名(5%)
   ◇その他 4名(3% 妊娠中、時々、薬が切れたら)

4.薬の服用状況
 ほぼ毎日飲んでいる人は、眠気を覚ます薬では116名(80%)いますが、情動脱力発作を抑える薬は61%、夜よく眠れる薬は57%と少なくなっています。その理由については今回のアンケートでは分析は出来ませんが過剰な眠気に比し症状自体が少ないためと考えられます。





5.過去1ヶ月間のナルコレプシーの治療効果
   ◇〔最高によい〕+〔とても良い〕+〔良い〕  81%
   ◇〔あまり良くない〕+〔良くない〕+〔全然良くない〕 17%





6.身長と体重
 身長と体重から肥満指数BMI(Body Mass Index 体重kgを身長mの二乗で割った値)を単純に計算すると
   ◇男性 平均体重 69.3kg  平均身長 165cm  BMI 25.6
   ◇女性 平均体重 54.8kg  平均身長 151cm  BMI 24.1
 現在の基準値ではBMIは標準が22で25以上は肥満となります。男性は肥満1度であり女性もやや肥満傾向にあります。(新基準 男性18.5〜27.7 女性16.8〜26.1)

7.服薬の効果
 薬を飲んでいる場合と飲んでいない場合とで症状の出現頻度の変化は下記のようになります。
   ◇居眠り 
     ・〔ない〕+〔週1回以下〕 44⇒16
     ・〔週2・3回〕+〔日に1回〕+〔日に何回も〕 80⇒92
   ◇情動脱力発作
     ・〔ない〕+〔週1回以下〕 77⇒51
     ・〔週2・3回〕+〔日に1回〕+〔日に何回も〕 21⇒44





8.睡眠時間
   ◇平日の夜間睡眠 7±1.3時間
   ◇休日前の睡眠時間 7.5±1.6時間
   ◇昼寝や居眠りを含めた合計睡眠時間 8±1.8時間
     NHK国民生活時間調査によると日本人の2010年における睡眠時間は、日曜日7時間59分(8.0時間)、土曜日7時間37分(7.6時間)、平日7時間14分(7.2時間)であり、ほぼ同程度の睡眠時間を取っていることになります。
昼寝や居眠りを含めた合計睡眠時間で見るとやや長いものの特別に長いとは言えません。

U.運転関係
1.運転目的、運転頻度








2.運転距離、運転年数
         
 治療前治療後
平均運転年数 年12.2±12.115.7±13.7
平均運転距離 km/年 47.439.6
運転免許取得年齢22.4


3.治療前後の運転事故の回数
 「治療前に運転中眠気のために事故を起こしたことがあるか(複数回答可)」という設問に対し自損、物損、人身事故の経験がある人は54名でしたが、治療開始後には39名に減っています。
件数で見ると物損事故は79件から44件に、また人身事故は14件から5件になり、人身事故は治療後は治療前の1/3になっています。
 警察庁の統計データによると、平成24年においては免許保有者8150万人に対し人身事故が66万5千件で1万人あたり81.6件となります。








 物損事故人身事故
診療前件数   件7914
事故率 件/年/1万人445
診療後件数   件445
事故率 件/年/1万人3.040.311
一般の運転免許保有者1万人あたり人身事故81.6件(平成24年度)


ナルコレプシー患者の事故率を一般の人と比較してみると診療前で1/65、診療後では実に1/260で、遙かに少ないと言えます。

4.事故を起こした時の勤務形態 
 事故件数24件の内訳を見ると56%は日勤帯に発生しています。これは睡眠不足や交代制勤務等何らかの事故の起きやすい場合の33%と比較するとかなり大きな確率です。また、日勤帯で睡眠不足という要因が加わると13%増えていることも留意する必要がありそうです。





5.最近1年間の運転中の眠気の経験、眠気による事故等








 「1件の重大事故の背景に29件の軽度事故と、300件のヒヤリハットが存在する」というハインリッヒの法則がありますが、このパターンに類似しています。

6.事故を防ぐ工夫





 事故を防ぐため1つ以上の工夫を取り入れられていました。
その他として
   ・車間距離を十分に取る
   ・冷房を強くする
   ・窓をあけて風を車内に入れる
   ・カラオケで怒鳴る
   ・ガム、タブレット、ラジオを聞く
   ・助手席に誰か乗車してもらう。一人で運転しない
   ・10km以上の時は全て妻が運転
   ・日頃から薬は持ち歩く
などがありました。

7.治療開始後の居眠り運転による処分
   ◇なし 81  免許停止 3   取消 2   その他 2  空白 8

8.治療開始後の免許更新時の診断書の提出を求められたことは
   ◇なし 81  提出した 6   その他 2  空白 7

V 結論
 今回は当会として運転事故に関係する一歩踏みこんだ調査であり、ナルコレプシー患者の事故率は一般の人より多いのか少ないのかという命題への回答が明らかになりました。
 ナルコレプシー患者が起こす事故の確率は、一般のそれよりずっと小さく治療後では1/260となりました。約1割の方がペーパードライバーと言うことを考慮しても十分小さいと言えます。
 今回のアンケート調査で分かったことを再度整理すると
   (1) 発症年齢は10〜20歳にピークがあり発症してから最初の診療まで11年かかっている。
   (2) 眠気を覚ます薬をほぼ毎日飲んでいる人は8割、脱力発作及び夜間睡眠改善用の薬では6割と低い。
   (3) 治療効果が良いという人は8割、悪いという人は2割。
   (4) BMIはやや肥満傾向にある。
   (5) 情動脱力発作では症状がない人が2割いる。
   (6) 睡眠時間は一般の人とほぼ同じ、昼寝・居眠りの時間を加えても特に長くはない。
   (7) 通勤・通学に自動車を使っている人が4割。
   (8) 治療開始後事故は1/2〜1/3になる。
   (9) 事故を防ぐ工夫 ベスト3
      @眠くなったら一眠り
      A運転前に一眠り
      B眠い時は運転しない

 事故発生率はどんなに小さくても一度事故を起こせば重大事故につながることは言うまでもありません。交通事故は被害者になればもちろん加害者になっても生活を破滅に導きます。あらゆる努力と工夫をして交通事故を防ぎましょう。

 最後に事故の様子を詳しく書いていただいた方、切手シート(80円 40枚)を同封していただいた方にお礼申し上げます。

参考資料  「滋賀の交通」滋交企甲発第S0004号 平成25年(2013年)6月7日 滋賀県警察本部
           人口(H24.10.1)       127,515,133
           免許保有者(H24.12.31)   81,487,846
           事故件数(H24)         665,138


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3104 報告 今年も春の園遊会が開催されました                    町田  誠

 昨年に引き続き今年も4月29日(祝日・昭和の日)に「なるこ会の春の園遊会」が新緑の代々木公園で盛大に開催されました。
 心配していました天候もうす曇でしたが、参加した総勢24名の会員の熱気に押されてどこかへ行ってしまいました。
 認定NPOなるこ会の顧問医師 本多 真先生もご多忙中にもかかわらず、都合つけて参加してくださり、先生と私たち患者との楽しい有意義な交流の場となりました。
 先生は、ナルコレプシー専門医で、いつもは「睡眠総合ケアクリニック代々木第2病院」で金曜日に治療していますが、最近は「晴和病院(故本多 裕先生が治療しておられた病院)」でも土曜日に治療するようになりました。

 春の園遊会は、まずは「よろしくジャンケン」で参加者全員の総当りご対面挨拶ジャンケン・あっち向いてホイで、楽しい和やかな雰囲気でスタートしました。準備しました豪華弁当で舌づつみを打ちながら多少のお酒も入って会話も滑らかになります。
 本多先生が中心になって、各自が日頃この病気について持っている疑問や相談事を話し合う良い機会となりました。

 中学一年生の患者をお持ちのご家族や30代のご子息がいるご家族も参加してくださいました。
 20代30代そして中年壮年の方々も参加して、それぞれの立場で持つ悩みや心配事も先生や仲間の意見を聞きながら、これからの治療と生活について考えていけます。
 昼食の後は、色々なゲームをしたりビーチバレーなど身体を動かして汗を流して、すがすがしい気持ちになりました。
 後半は、あらためて参加者の自己紹介をしながら、この園遊会の感想や日頃持っている悩みや希望を話し合いました。

 私たちナルコレプシ患者は、こうして同じ病気の仲間と励ましあい、慰め合い、色々な体験を通した仲間のアドバイスも聞いて、前向きに、この病気を克服して、有意義な人生を築こうではありませんか。
 来年も、更に楽しく有意義な園遊会にしていきたいと願っています。
会員の皆様、次回開催にも奮って参加して下さい。お待ちいたしております。
 


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3105 報告 千葉県全中学校のアンケート集約                      川岸 聡子

 1昨年の神奈川県全中学校に続き、昨年は千葉県内全公私立中学校を対象に啓発活動を実行しました。内容は千葉県内全中学校460校(公立432校。私立28校)の保健担当の先生宛に下記の書類を発送しました。(H25.8,20)
 *「過眠症が疑われる生徒には睡眠障害専門外来のある病院への受診を勧めて下さい」と言う4ページの手紙
 *「ナルコレプシーはこんな病気」のパンフレット10部
 *「過眠症やナルコレプシーと言う病気をご存知ですか」のアンケート
及び切手付の返信用封筒を送付。
 また、全教育委員会(54)に事後承諾をお願いする文書を送付しました。

このアンケートを集約しましたので、生の数字及び内容を報告します。
     送付460校の内、宛先不明3校。受取辞退1校で実質456校
     回収アンケート数 100通(10/17回収分まで)  回収率:21.9%

アンケート結果(不記入及び複数回答の箇所あり)
1.「ナルコレプシーはこんな病気」のパンフレット追加送付は必要ですか?
    イ.必要(部数を記入して下さい) 10校 <送付済8校、宛先不明で送付不能2校> 
      ・全職員に配布したい ・希望する保護者に配布したい
    ロ.不要  90校 
      ・今の処、間に合っている ・職員室で回覧する
2.「今回のお願い」は役に立ちましたか?
    イ.役に立ったか  98校<記入無し2校> 
    ロ.余計なことだ   0
3.「過眠症」についてはご存知でしたか?
    イ.今回初めて知った   38校
    ロ.以前から知っていた  61校
 *それは何からですか?
    ・新聞 16  ・TV 13  ・雑誌 21  ・医学書 2 ・以前疑いのある生徒がいた 2
    他 ・保護者  ・大学の講義 ・忘れた
     ・職業上必要なので勉強した   ・研修会 ・友人知人から ・教員の勉強会 
     ・ネット情報 ・色々なメデイア ・息子が治療中 ・人づてに聞いた
4.「ナルコレプシー」についてはご存知でしたか?
    イ.今回初めて知った    31校 
    ロ.以前から知っていた   69校
 *それは何からですか?
    ・新聞 16  ・TV 20  ・雑誌  19  ・医学書 2
    ・研修会 6  ・以前疑いのある生徒がいた 3  ・大学の講義 6
    他
     ・保健専門誌  ・生徒が診断された ・色々なメデイア ・同僚が検査を受けた 
     ・保護者 ・教員の勉強会 ・小説(ダニエル・キースの「眠り姫」)
     ・何かの記事で読んだ ・職業上必要なので勉強した ・最近息子が判定された
5.「睡眠時無呼吸症候群」についてはご存知でしたか?
    イ.今回初めて知った     0
    ロ.以前から知っていた   100校
 *それは何からですか?
    ・新聞 38 ・TV 51 ・雑誌 38 ・保健専門誌 2 ・研修会 3・大学の講義 5
    他 ・医学書 ・職場にもいる ・職業上 ・同僚が検査中

6.今回のお願いに対し、ご自由にお考えをお書き下さい。(アンケートに書かれたメッセージ)

1.パンフレットも分かり易く勉強になりました。職員にもこのような病気があることを周知させたいと思います。実際にこのような症状を持つ生徒がいた場合、父兄にどどの医療機関に受診を勧めるか、周りの生徒にどう理解させるかが課題だと思います。

2.パンフレット有難うございます。職員に配布させて頂きます。

3.ナルコレプシーについては依然調べた事があり、少しは知っていましたが、今回、詳しく分かりました。疑わしい生徒がいたら専門外来を勧めたいと思います。

4.知識として知っておくことは大事なことだと思うので、詳しい資料を頂き感謝します。今後気にかかる生徒がいた場合の参考にしたいと思います。

5.ナルコレプシーの発症が13〜15歳に多いことを初めて知りました。今回頂いた資料を読み、ナルコレプシーについて学ぶことが出来ました。パンフレットを学級担任に配布し、ナルコレプシーに対する理解を深め、現場で役立てたいと思います。

6.以前出会った生徒がもしかしたら過眠症であったかもしれないと思いました。
色々受診しても「異常なし」と言われましたが、受診を勧めるにしても専門外来でなければナカナカ難しいと分かりとても助かりました。今後の参考にさせて頂きます。

7.丁度、卒業生から睡眠について相談を受け、調べていた処だったのでとても参考になりました。この資料をもとに受診を勧めて見ようと思います。有難うございました。

8.分かり易い資料を有難うございました。早速職員に回覧させて頂きます。未だ思い当たるケースに出会ったことはありませんが、今後の参考にしたいと思います。

9.突然の送付でビックリしましたが、中学生くらいでナルコレプシーの発症が多いことを全く知りませんでした。勉強になりました。授業中に寝てしまう生徒は居ますが、病的なものの見分け方、受診を勧める場合近隣であればどこの病院の何科を勧めるのが良いのか、今まで良く分かりませんでした。パンフレット等にあると良いかも・・・

10.とても分かり易いパンフレットでした。今までナルコレプシーの生徒に出会ったことはありませんが、病気に対する理解を深める事が出来ました。有効活用させて頂きます。有難うございました。

11.有難うございました。以前から気になる生徒がいるので早速パンフレットを保護者に渡そうと思います。

12.歩行中の居眠りなど、明らかに「おかしい」と感じる場合は発見し易いが、症状に微妙に当てはまる場合は、「難しいなア」と思いました。

13.学校に送付する場合は「学校長宛」の方が良いと思います。「校長が知る」のと知らないのでは大分対応が変って来ると思います。学校長宛の手紙に「健担当を初め全職員へのお知らせ」とあれば、校長が目を通した後回って来ると思います。

14.中学生の発送時期についてビックリしました。大人の病気と思っていました。とても内容が充実しており、保険関係の雑誌でも取り上げてない内容でした。 大変勉強になりました。有難うございました。職員の中でも心配な方がいるので、大変役に立つ資料でした。

15.ナルコレプシーの専門病院が分かって、参考になりました。

16.昼間居眠りするのは、無呼吸症候群によるものと思ってましたのでビックリしました。

17.生徒の中にナルコレプシーの方がいるので、担当学年の教師に配布し今後の指導に活かして行きたいと思います。

18.睡眠時無呼吸症候群については知っていましたが、ナルコレプシーは始めて聞きました。

19.「ナルコレプシー」という病名は始めて聞きました。生徒たちを気を付けて見て行こうと思いb ました。

20.ご苦労様です。暑い日が続きますが、皆様ご自愛ください。

21.もしこの病気と疑われる生徒がいた場合、書かれている医療機関やパンフレットを渡すことが出来るため、大変有難い情報でした。学校でもこのような生徒が今後気を付けて行こうと思います。

22.前任の学校で男子生徒はこの病気と診断されました。この生徒の場合はきちんとした診断と治療がされて、学校生活でも支障がなくなりました。この病気を知っているのと知らないのでは対応が違う為、多くの先生方に理解して貰うことは大事なことだと思います。

23.以前職場で「お子さんがナルコレプシーで治療している」という話を聞いたことがあるため、症状などは情報として知ってはいました。が、詳しくは知らなかったので改めてパンうレットを読ませて頂き、症状に該当するような生徒がいれば専門医の受診を勧める必要があること、更に専門の医療機関についても情報を得る事が出来たので有難かったです。

24.職場に資料を配布し感想を聞きました。過眠症、ナルコレプシーなど始めて聞くと言う職員が多く、今回のお願い状を頂いたお陰で、先生が生徒を観察する上で大変役立ちました。有難うございました。

25.生徒理解のために役立つ資料を頂き有難うございました。特別支援や教育相談の先生に配布しました。

26.全校集会中、立ったまま寝てしまう生徒がいて、国府台病院の睡眠外来を勧め受診して貰ったことがありました。幸い病気ではありませんでしたが、専門外来にきちんと診断して貰った事で安心できました。
外来が精神科にあるので保護者の方にはやや抵抗があるようでした。小児科の中に外来があるともっと受信者が増えると思います。

27.今回頂いた資料を活用させて頂きます。

28.「金縛り」と思われていたものが科学的に分かり、とても参考になりました。

29.現在、本校には該当する生徒は居ないと思いますが、発症が中高絞生に多いと言うことも有り、今後役立つと思いました。一般の先生方にもお知らせ出来て良かったと思います。

30.仕事として色々な病気を知っておくことは良いことだと思いますので、わざわざ資料を送って頂き有難く思います。

31.パンフレット等、今後機会を見て役立てたいと思います。

32.私はこの病気について知っていましたが、他に知っているのは職員1人だけでした。
   (以前そういう生徒がいたそうです。)
他の職員は全く知らなかったので、良い機会になりました。

33.以前同じ職場にナルコレプシーの疑いのある職員がいました(20代の女性)。その際、知り合いの方などに睡眠障害の外来がある病院を聞いたりして大変苦労して情報を集めていました。あまり情報が無く困っていたので、今回の内容は参考になりました。

34.情報を得る事が早期対応に繋がると思います。ナルコレプシー症は10代の発症が多く、特に11〜15歳の中学生に多いことを知りました。職員に情報を提供し生徒をよく観察することで早い対応が出来るようにしたいと思います。今の処本校には居ない様ですが。

35.心配な生徒がいるので資料を保護者に渡したいと思います。大変助かりました。

36.知っておくことが必要なのは理解できますが、学校に期待を寄せられる事項が多過ぎて、取り組める状況ではない事をご理解下さい。
37.過眠症という病気があることは判りました。
ただ、生活環境が夜型化していることも事実で、今はまだ何とも考えられません。
(9月4日夜のTVで睡眠について取りあげており、それでこの病気を知った。)

38.本校には今の処該当する生徒は居ないと思われますが、今後注目されて行く病気なのかも知れません。パンフレット等送って頂き有難うございました。

39.睡眠障害専門外来の紹介は役に立ちます。(千葉市内にあり近いので更によいです。)  

40.ナルコレプシーをまとめた冊子は始めて見ましたので参考になります。睡眠時間表を付けると良いと言うことが分かり、睡眠時間表を指導してみたいと思います。本校の場合、授業中よく眠る生徒は良く分からない授業であったり、ゲームをして夜遅くまで起きていたり、メールで睡眠途中に起こされたりすることが多いことが原因のようです。

41.治療を受けられる病院についての情報が得られて良かったです。

42.知り合いでナルコレプシーではないかと言うことで詳しい検査を受けた人が居ましたが、どんな病気かその時は判りませんでしたが、今回良く分かりました。

43.以前勤務した学校でナルコレプシーと疑われる生徒が居ました。当時は近くの専門医を知らず、保護者に強く受診を勧められませんでした。県内の医療機関の一覧表が役立ちました。

  以上

今後の対応について事務局の考え
 東京都内全中学校の先生方に対し実施した啓発活動に続き、一昨年は神奈川県、昨年は千葉県下の全中学校を取り上げ実施しました。(東京都の場合は.WAMの助成時事業として実施しましたが、神奈川県以降は助成の対象に入らず、止むなく自己資金で実施したものです。)
  千葉県の場合、先生方の反応はかなり良く、アンケート(回収率:約20%)を見ても高評価を頂いている先生方も少なからず居られることから、今後埼玉県を対象に、資金と相談しながら実施して行きたいと考えています。

 最近、TVで矢継ぎ早にナルコレプシーを取り上げて貰いましたが、TVは一過性であるだけにそれだけに頼るわけにも行かず、本件のような地道な努力も必要と考えるからです。
(ご参考)TBS:「駆け込みドクター」H25/9/15放映
      TV朝日:「居眠り先生」伊集院静氏の小説のドラマ化 H25/9/15放映
      TBS:「夢の扉」H26/3/2放映
      NHK:「ためしてガッテン」H26/4/30放映

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3106 報告 「晴和病院」と「なるこ会」の関係について                   河野 通久

 最近、会員に皆様それも新しく入会された方から、「何故講演や総会を晴和病院でやるの?」との疑問の声をお聞きしますので、今回はそれについてご紹介します。

 一言で言えば、「なるこ会」は、故・本多 裕先生について廻っているからです。ご高承の通り、当会は、先生が睡眠障害の外来患者を東大病院の地下室で診られるようになってから、待機する患者に「時間があればお互いに体験や苦労を話ってはどうか」と勧められ、有志70名で世界初めてのナルコレプシー患者会(任意団体)として発足しました。(1967(昭和42)のことです。)先生は当会の「生みの親であり育ての親」です。

 当時は事務所も東大の地下室に置き、ピクニックやら懇話会を開催し、年末にはクリスマス会を恒例にし、更に先生のご家族も参加される等、皆楽しみにしていたとのことです。(先生の診られている患者さんばかりなので、余計親しみも湧いたことでしょう。)

 その後、先生が東大病院を辞められ晴和病院院長に就任されると共に、当会の事務所も晴和病院内の一角を与えて頂き、任意団体から特定非営利活動法人(NPO)として全国のナルコレプシー患者を対象にするようになりました。(2007(平成19)年のことです。)
 更に、ご寄付をお願いする為、より格の高い国税庁官の承認する認定NPO法人を目指す際、「事務所が晴和病院にあると言うことは、会員が常駐しておらず、情報開示上問題あり」と指摘され、種々検討の結果、当会理事長白倉氏が経営する(株)陽成社(現マル・ビ)に本部事務所を移転し現在に至っています。(認定NPO資格は平成22年に取得済み)
 事務所を晴和病院から移す際も、先様のご了解も得ている為、同病院との関係は依然として続いている次第です。
特に総会では、少なくとも40〜50名収容の場所が必要となるため、同病院の5階講堂をお借り出来る事は、当会にとって大変有難いことと感謝している次第です。

  以上

以下ご参考です。
 晴和病院は、正確には「財団法人神経研究所附属晴和病院」として昭和26年(1951年)に、東京大学精神科教授・内村祐之先生により創設されました。
 創立目的には精神医学研究の発展はもとより、患者が明るく家庭的な雰囲気の中で療養できる医療の提供(そのため晴和病院を設立)、そして精神衛生思想の普及と実践が含まれていました。
 (注)従来精神科病院は、病室に鉄格子があり且つ施錠される、所謂「閉鎖病棟」と言われものが殆ど、更に設置場所も人里離れた処にあるのが普通とされて来ました。
  晴和病院は、格子や施錠のない開放病棟で、更に山手線の内側にあると言う、今迄に無い画期的な病院と言えます。(筆者)

 その為、発足当時より研究部、診療部、精神衛生部の3部門の構成となって居ました。
研究部は、開設当初は特別の研究費も無く設備も十分とは言えないスタートでしたが、昭和30年頃には禅、ヨーガの脳波研究が行われ、その後東大分院精神科に引き継がれました。    
 昭和31年には臨床脳波室が開設され、翌32年には独立した研究室として、神経病理学研究室、神経生理学研究室が新設され、以降昭和48年後半までには8つの研究室が立ちあげられました。(詳細略)

 近年では、芸術療法関係、睡眠障害の研究が行われ、特に本多裕名誉所長はナルコレプシーの研究者として国際的に注目を集める研究がなされました。
 また、睡眠外来が段々と増えて来たため、1999(平成11)年に「附属睡眠呼吸障害クリック」を、2003(平成15)年に「附属代々木睡眠クリニック」が開設されました。
 また、平成14年に広瀬徹也前理事長によって入院患者の中でも特に多い「うつ病」の臨床研究が展開されました。
現在睡眠学センターと精神薬理センターがあります。(神経研究所HPより)現加藤進昌理事長は、「発達障害」の研究で日本での第一人者です。
 法律改正に基き神経研究所は、平成23年に「公益財団法人」化し。現在に至っています。
 なお、現在は睡眠外来受診希望者が増加しているため、ナルコレプシーを含む睡眠障害の外来診断・治療も復活し受け付けています。
但し、どこの病院でもそうですが、事前に電話予約が必要ですので受診希望の方は必ず電話で予約されますよう念の為申し添えます。

余談 (敬称略)

創立者 内村 祐之(ウチムラ ユウシ)先生について(晴和病院正面玄関の奥に先生の胸像があります) (ウイキペデイアより)
 1897.11.12〜1980.9.17 。
 日本の医学者、精神科医。専攻は臨床精神医学。神経病理学。
 東京大学名誉教授、日本学士院会員。勲一等授与 プロ野球コミッショナー。 

<幼少期>
 1897年(明治30年)11月に、キリスト教思想家・無教会主義の創始者として著名な内村鑑三を父,同氏の4度目の妻静子を母として、東京府に誕生する。(祖父・宣之は高崎藩士)

<学生時代>
  独協中学校から第一高等学校、東京帝国大学に進む。学生野球界では特に一高時代に  早稲田・慶応義塾を久しぶりに撃破するなど名だたる左腕投手として名を馳せた。  1918年には15年ぶりの全国制覇を果たした。
 1919年(大正8年)4月初めの、一高と三高の試合はマスコミに派手に取り上げられた。
 1921年(大正10年)4月7日に東京帝国大学3年生の時に東京ステーション・ホテル  で、父鑑三の愛弟子の久須美美代子と婚約する。
 1923年(大正12年)春に、東京帝国大学を卒業して、精神科を志望して東大医局に入局した。父の鑑三は祐之にワルター・スピルマイヤーの「精神系の組織病理学」を卒業記念に贈った。しかし、約1ヶ月後に、呉教授に申し出て、東京府立松沢病院の医員になった。
 1924年(大正13年)11月29日伊藤一隆の媒介と大島正健の司会の下で、東京ステーションホテルで久須美美代子と結婚式を挙げる。仲人が父鑑三の先輩伊藤一隆であると共に、内村がスター選手だったので、マスコミに取り上げられて波紋を呼んだ。

 その後、北海道大学から招聘があったが、同大学には精神講座の準備が整って居なかったので、1925年(大正14年)から文部省の海外研究員としてドイツのミュンヘンに留学する。カイゼル・ウイルヘルム研究所(マックスプランク研究所)でスピールマイヤーに師事する。その際、クレペリンやクレッチマー等とも交流を持った。

<大学教授・病院長時代>
  1927年(昭和2年)にドイツ留学から帰国し、同年9月に北海道に渡る。
  1928年に北海道帝国大学教授に就任。その直後7月27日に内村鑑三夫妻が札幌に来て、札幌独立教会の牧会を行う。
1930年(昭和5年)3月父の危篤の際、一家で上京し、父に臨終についての詳細な記録を記した。それらは「父に臨終の記」として残されている。

また、3月28日に父内村鑑三が死去すると、内村の希望で東大医学部で「偉業を達成した人物の脳の研究」のため鑑三の解剖を行った。

 戦後は、東京裁判のA級戦犯になった大川周明の精神鑑定と治療を行う。内村は大川を梅毒性精神障害と診断した。また、帝銀事件の平沢貞道や、婦女連続殺人事件の小平義雄等の精神鑑定を行った。
その後、1936年に東京帝国大学医学部教授(1949年まで東京都立松沢病院院長兼任)医学部長も務める。
東大在職中の1951年「財団法人神経研究所」を設立、同附属晴和病院を開設した。
偉業を達成した人物の脳の研究や双生児の研究で多くの業績を残した。
定年退官後は国立精神衛生研究所長などを務めた。

<野球界との関わり>
 一方野球では、混乱の続くプロ野球界で最高委員を務めるなど、野球界にも多大な影響を与えた。いわゆるV9の巨人黄金時代の川上哲司監督に大きな影響を与えたといわれるアル・キャンパニスの「ドジャーズの戦法」を翻訳したのも内村である。

 1962年5月、日米の野球に精通した人物として内村は、日本野球機構第3代コミッショナーに就任。サンフランシスコ・ジャイアンツへ野球留学中にメジャー出場した南海ホークスの村上雅則の保有権を南海とジャイアンツ両球団が争った際には、1965年シーズン終了を以て南海に復帰させるという妥協案を提示して解決された。

 第1期の任期満了間近の1965年4月、内村は札束競争にまみれてプロ野球界に入って来る新人選手を憂い、新人研修制度を行おうと提案したが、オーナー陣の激しい抵抗に遭い、自らコミッショナーの職を降りた。
概ねコミッショナーはオーナー側寄りであると批判されている中、オーナー側と対立してコミッショナー職を辞したのは内村1人である。
 この時、「どんな医者でも完治の見込みがなければ、患者を見放すものだよ」とコメントし、自分を推薦しておきながらその提案を飲まないオーナーを痛烈に批判した。
 後にコミッショナーを務めた下田武三によると、コミッショナーの職を辞して後は一度たりとも球場に足を踏み入れず、存命中は特別表彰による殿堂入りも拒否したと言う。

 このように、コミッショナーとしては思うように手腕を発揮できなかったが、日米の野球に精通した知識人として日本の野球の近代化の貢献した点が評価され、没後3年を経過した1983年、特別表彰として野球殿堂入りした。

  以上


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3107 投稿 息子が発症して・・・                                 Y

はじめまして!
 私は、昨年9月に小学4年生の長男が発病したことを契機に入会しました。これまで特に病気にかかることも無く、元気過ぎるぐらいの子でしたので、生活が一変し、なかなか受け止められないでいる状態です。

 7月の第1週目に担任の先生から電話があったのが、事の始まりでした。「ここ1週間、眠そうに授業を受けていること、配布物を取りに歩いた時、膝から崩れ落ましたが、自宅での様子はどうですか」とのことでした。 
 私には何の心当たりもなく、変な電話を貰ったなと言う印象しかありませんでした。電話のあった日も、本人は自転車で遊びに行っており、普通に帰宅しました。
 本人に聞いてみても、転んだりしないし大丈夫との返事で、しばらく様子を見ることにしました。ちょうどプールの授業も始まっており、疲れてるんだなと思ったのです。
 しかし、しばらくすると、週末には普通に歩けないし、やたら眠そうにするようになり、慌てて医療センターを紹介して貰いました。即入院となり、色々検査を受けましたが何も出ない。 
 歩くとふらつくのはひどくなるばかり。眠そうなのは何もすることが無いからと、本人が言うのであまり気にしませんでした。
 夜も充分寝入っていると思ってましたから、筋ジスやギランバレーではないかと医師も私も疑ってました。そのうち、昼ご飯を食べながら眠りかかったりするようになり、何かおかしいと思いました。
 回診に来られた上司?の先生に言った処、「ナルコレプシーかもしれないから大学病院で受診して下さい」と、退院になりました。

 大学病院での受診に1カ月かかり、その間は脱力発作が頻繁に起こりました。トイレから戻ればこける、冷蔵庫を開ければこける、階段が一人で降りられないと言った毎日でした。
 検査の結果ナルコレプシーと診断され、現在はモデオダールを1.5錠、ロレゼムを0.5錠、アナフラニール25ミリを1錠服用してます。昼休みと夕方に40分の仮眠を取り、夜中は寝たり起きたりをしながら生活してます。脱力はテレビや漫画を見ている時よく起こり、椅子から転げ落ちたり、床に頭から倒れたりしてます。外出先でもいきなり歩けなくなることもあります。

 なるべく騒ぎ立てないで対応していますが、どうすれば良いのか分からなくなります。
 本人が一番ショックを受けてるし、昼休みも帰宅後も外で遊べない、遊ばなくなりました。それでも、「学校に戻れただけ良し」とするしかありません。
 余命を宣告される病気で無かっただけ、薬があるだけ良かったと思うようにしています。
 あとは、診察時に本人があまり話さないので、状態を詳しく伝えるようにしてます。主治医も小学生を診るのは初めてだそうで、難しいなと思います。
 将来的なことだけでなく、学校行事や自転車通学など、この先不安になることは山ほどあります。皆さまの経験談をお聞きし、参考にさせて頂こうと思っていますので、よろしくお願いします。

  以上


事務局より

 小学生の子供さんが発症されたとのことで、親としてのご心配はいかばかりかとお察し致します。 しかし考えようによっては、早く病名が分かったのはラッキーだったとも言えます。
 「適正な服薬と規則正しい生活」により、症状はほぼ抑えることができるのですから。
 問題は適正な服薬です。
 通常ナルコ患者には、就寝前に服用する睡眠進剤又は睡眠剤を、朝服用する日中の眠気を取る覚醒剤、更に脱力防止のアナフラニール(これは決まりか)でしょう。
 ここで問題になるのは、「使用するベストな薬剤は何か及びその量は?」です。同じ症状を持つ成人患者AさんとBさんが居たとします、その場合Aさんにベストな薬の処方(薬剤名と量)があったとしても、Bさんにベストな処方であるとは限りません。何故ならAさんとBさんとは生物学的に違いがあるからです。Bさんにとっては、効き目が無いとか、副作用が激しいと言った現象があり得るからです。
 つまり自分症状及び体質に合ったものが適正な処方であり、これを見つけが出す事が最重要と言うことになります。
これには、医師と患者との協同が不可欠になります。医師は取り合えずこれが良かろうと処方されますが、現実に患者の状態を常時見ている訳ではないので、その効果・副作用等を正確に知ることは出来ません。
 患者が、「服用した結果を詳細に報告する」重要性はここにあります。その報告に基づき、医師は薬の種類及び量を少しづつ変えて行き、ベストな処方を発見して行く。これが適正処方になる訳です。
成人患者の方でも、「出して貰った薬は効かないから服用をやめた」と言う方が居られますが、とんでもないことです。
故・本多裕先生は「ナルコの治療は個々に違うオーダーメイド」と言われていました。自分に合った最適な処方を見つけ出すよう、医師に出来るだけ詳細に報告しましょう。

 子どもさんが患者の場合は、自分で積極的に訴える事は難しいので、親が良く観察し、更に服用後の感触を本人から聞き出し、医師に伝えること特にが重要です。

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3108 投稿 ナルコレプシーについて                            K

 なるこ会の会誌等いつも送って頂き有難うございます。総会等には欠席させて頂いておりますが、会誌等を拝読し様子が分かり大変役に立っております。今回「なるこ31号」用の原稿募集がありましたので、私がナルコレプシーと言う病名を知ることになった経緯をお話し致します。

 私が異常な眠気を感じ始めたのは、会社に入ってから数年経った26才頃だった記憶しております。夜の睡眠は充分取れている筈なのに日中急に眠気が来て、居ても経ってもいられず、水を飲んだり顔を洗ったりして眠気を覚ます対策をしておりました。
 他人には気づかれないよう随分と苦労しておりました。しかし、何か得意になった時に脱力発作が起きたり、夜中に金縛り状態になったりするようになり、何時しか上司や同僚に知れ渡り「よく居眠りをする人だ」と言われるようになりました。
 しかし当時は病気とは思わず、ただ居眠りの対策だけを考えておりました。眠気が来た時はトイレに行き、そこで5〜6分仮眠をして来ます。それで眠気を覚ましておりました。又、昼食後は必ず昼寝を10分間位取るようにして来ました。このような生活を56才になるまでの30年間続けて来たのです。
 転機が訪れたのは平成元年。ある新聞に私と同じ病状のことが掲載されており、もしかして、と思い晴和病院の当時の院長であった「故.本多 裕先生」の検査を受けました。その結果、初めてナルコレプシーと言う病名を知りました。
 長い間苦労して来た居眠りが病気だと知った時は複雑な気持ちでした。 
病名が分かってからは、晴和病院へ月1〜2度通い、診察と投薬を受けて来ました。
その甲斐があってか、現在は脱力発作も金縛り状態も無くなり、普通の人としての生活ができております。
 しかし、完治したわけではないので、今でも薬の服用は続けております。

 私は、ナルコレプシーと言う病名を他人にはあまり知られたくないので、話はしておりません。今、気を付けていることは「飲酒と長時間の運転を控える」ことです。
今後も多少不便な処はありますが、上手く付きあって行く積りです。

  以上

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3109 報告 平成26年度・春の睡眠の日 公開市民講座in東京(H26.3.15)    河野 通久

 「睡眠の日」は年2回あり、3月18日の「春の睡眠の日」、9月13日の「秋の睡眠の日」、その前後1週間を睡眠週間として全国で市民公開講座が開催されていることはご高承の通りです。
今回は3月15日開催の東京会場(定員500名)の他、栃木(宇都宮市)250名、京都(京都市)250名、長崎(長崎市)200名、静岡(浜松市)250名、島根(松江市)200名の5会場で開催されました。牽引役である「睡眠健康推進機構」様のご厚意により、全会場で出席者に配布する資料の中に当会のパンフレット「ナルコレプシーはこんな病気」を入れて頂きました。

 以下、東京会場での講演概要を睡眠推進機構ニューズレターから転載しながらご紹介します。

 今回の東京会場のテーマは、「子どもの睡眠の問題(寝る子は伸びる)」でした。24時間社会になって、幼児期,小児期、思春期の子供の睡眠が年々減少しているという問題があり、睡眠不足は成長期の子供たちにとって大きな問題であることから取り上げられたものです。

 冒頭に「第2回睡眠健康推進機構長賞」の発表・授賞式と記念講演がありました。同賞に、東京医科歯科大学名誉教授の井上昌次郎先生と大阪バイオサイエンス研究所理事長の早石修先生が選ばれました。お二人は「睡眠促進物質の発見とその液性調査に関する研究」と言ったテーマで日本の睡眠科学研究に大きな貢献をされて来られました。

 眠りが足りなくなると、誰でも眠くなって昼間でも眠ってしまいます。このような耐えがたい眠気を感じる時、脳にはどのような変化が起こっているのでしょうか。
 100年ほど前に現在の名古屋大学の前身である愛知県立医学専門学校の生理学教授の石森国臣博士は、長い間眠らせないでいた犬の脳脊髄液から取り出した物質を別の犬の脳内に注射するとその犬が眠ってしまうことを発見しました。この物質は「催眠性物質」と呼ばれましたが、その物質の本態は長い間不明でした。

 今回受賞された井上昌次郎先生は実験の方法を考案し、次々とその物質を決めて来ました。グルタチオンという解毒物質やウリジンという代謝関連物質などがその代表的なものです。
 その後、早行修先生のグループが協力して、最も強力な物質としてプロスタグランジンD2(睡眠ホルモン)を発見しました。動物を眠らせないでいると起きていた時間に比例して脳の中にプロクタグランジンD2が溜まって来たのです。この発見を通してなぜ眠るのか、なぜ眠くなるのかといった   睡眠の謎が次々と判って来ました。この過程でカフエインが眠気を防止したり、抗ヒスタミン剤が眠気を催したりするメカニズムも分かって来ました。
 お二人の研究はまさに世界に先駆けた偉大な睡眠研究です。

 井上昌次郎先生はアジア睡眠学会を設立され、また睡眠についての科学書や易しい解説書を数多く出版されています。また、早石先生と共同で睡眠物質に関する多くの国際会議を開催されました。
 早石修先生は巨額の研究費を得て、日本の多くの睡眠研究者たちと睡眠科学、睡眠医療や睡眠に関する社会的な問題を解決することに貢献されました。

*井上先生の記念講演「脳と睡眠の関係について」

 30分程度、ヒトの脳の発生・発達と睡眠との関係を表・グラフ等を駆使して明快に講演されましたが、録音が上手く行かなかったことと内容に引き込まれたため、概要も上手く報告できません。当日の講演の中でも最高に良かったと思うだけに申し訳ありませんが、ご容赦ください。(筆者)


<忘れられない内容の一部>
 ヒトは受精卵1個から細胞分裂・増殖を繰り返し胎児に成長して行く訳ですが、その過程の中で骨になったり、筋肉になったり、内臓になったり、更に手足になったり、頭になったりする不思議さというか神秘性は驚くばかりです。しかもそれが遺伝子なるものによってコントロールされているとは!!
 講演の中では「脳の組成」について触れられました。ある時期になると背中側にパイプ状のものが出来、その先端が円く膨らんで来る。パイプ状のものは発達して神経が通る脊柱となり、先端部分はどんどん発達して脳になるというくだりは忘れられません。
 ノーベル賞受賞の山中先生発見のIPS細胞は遺伝子を組み込んでいないため、必要な遺伝子を組み込めば必要な部位になるという話と合わせ、忘れられません。
また。長時間の睡眠不足で最も大きなダメージを受けるのは、脳細胞である。脳の重さは体重の1/50であるが、エネルギーの消費量では安静時でも1/5を占めるも、忘れがたい。

*「これだけは知っておきたい子どもの眠りの基礎知識」 東京ベイ浦安市川医療センター   神山 潤

 神山先生は、前記「井上昌次郎先生の講義を何回も聴いて来たが、今日の講演が一番良かった」と笑わせながらご自分の講演に入られました。

・子どもは寝かしつけるもの
 子どもは眠るもの、という考え方をされる方が多いかもしれません。でも、脳の中にある体全体をコントロールする大切な主時計(体内時計)の1日の長さは、地球の1日の長さである24時間よりも大多数の人が若干長いのです。その為大人であっても子どもであっても、夜更かし・朝寝坊の方がしやすいように体は出来ているのです。子供だから寝るもの、とは必ずしも言えないのです。
 但し、体が疲れれば眠たくもなります。そして子どもの方が大人より体力が無い分、疲れやすくて眠りやすいと言うことはあるかもしれません。
 でも、夜遅くまで明るい場所で過ごしていたり、テレビやパソコン、スマートフオン等の画面の光を浴びていると、メラトニンという眠りをもたらす物質が出にくくなって、子どもであっても眠りにくくなるでしょうし、テレビやビデオの内容に興奮して目が冴えてしまうことも大人だけではなく子どもにもでも起きてしまいます。

 子どもは寝るものではなく、子どもは寝かしつけるもの、眠りを子どもさんにプレゼントするには(しつけ)という要素もあるのだ、ということをぜひ知って頂ければと思います。
 このように申し上げると、寝かさなきゃ、と思われる方も多いでしょうが、ちょっと待って頂けますか?

・子どもたちに眠りの気持ちの良さをプレゼント
 ヒトは「寝て食べて出して」初めて脳と身体が充分にその能力を発揮できる昼行性の動物です、と私は良く申し上げていますが、この「寝て食べて出して初めて脳と身体が充分にその能力を発揮できる」には5つの要素が含まれています。
 寝ること、食べること、排泄すること、考えること、体を動かすこと、の5つです。
 そしてこの5つはどれもとても気持ちの良いものです。子もちが良いということは、動物であるヒトにとって、きっととても重要な事柄であるに違いありません。
 でも今の世の中どうでしょう。寝ること、食べること、排泄すること、考えること、体を動かすこと、が義務(=しなければいけないこと)になってしまっているのではないでしょうか?
 寝なきゃいけない、食べなきゃいけない、排泄しなければいけない、考えなければいけない、体を動かさなければいけない、これはつらいですよね。
 だから眠りについて言えば、義務ではなく、楽しいもの、気持ちの良いもの、であることを子どもたちにきちんと伝えて頂ければと思います。
 今夜はどんな夢だろうね、たっぷり寝たら朝は気持ちがいいね、朝ご飯がおいしいね、明日の朝ご飯何にしよう等々。
是非子どもたちに眠りの気持ちよさをプレゼントして頂ければと思います。

・大人も眠りの気持ちの良さを楽しもう
 最後に1つ。子どもたちに気持ちの良居眠りを楽しんでもらうために大切なことをお伝えします。
 それは何よりも大人が眠りの気持ちよさを楽しむことです。是非眠りは義務ではなく、心地良いもの、快として楽しむことです。それができるよう
    1.朝日を浴びる
    2.昼間は活動する
    3.規則正しい食事と排泄を
    4.夜は暗い所で休む
    5.夜は眠りを妨げるカフエインや過剰なメデイア接触を避ける
ようにして頂ければと思います。(1〜5は「快眠の5原則」と言われてます)

 追加 
 先生は、「TVを見たりゲームをすることは、楽しいので止めろとは言わない」とおっしゃいました。(多分、真意は止めろと言えば言うほど隠れてやりたがるものというご認識か?)
 但し、必ず時間を決めてその時間が来たら止めて、次のことに移る事故管理(コントロール)力を養成することが最も重要なことを強調されてました。だらだらと長時間、続けないこと、続けさせないことが重要と理解しました。

 先生の講演は以前もお聞きしたことがありますが、今回も次の点を痛烈に批判されていました。
 睡眠時間を削って勉強しても全く無意味である。何故なら、睡眠時間を削って作業なり勉強なりしてもミスは多くなり、効率が落ち、 無意味であることは、各種の実験で明らかにされている事実である。
 それなのに、日本の親達はそれに気付かず「夜遅くまで勉強しろ」と言うのだろう?
「それよりも就寝時間を早くして、起床時間を早くし朝食をゆっくり取らせる方がより効果がある」と

*「すくすく赤ちゃん、ゆったりお母さんの眠りの秘訣」東京医科大学睡眠学講座    駒川 陽子

 今日は、赤ちゃんがすくすく成長し、お母さんが少しでもゆったりした気持ちになれるよう生活の工夫、眠りの秘訣をお伝えできればと思っています。 

・佐々木さんのおうちに、かわいい赤ちゃんが生まれました!
 生れたばかりの赤ちゃんは、数時間おきに寝たり起きたりを繰り返します。新米ママは張り切って赤ちゃんのお世話を始めたけれど、想像以上にたいへん。
おっぱいは足りているのかしら、赤ちゃんの湿疹は何か原因があるのかしら、泣いているけど何をしたらいいのかしら。
 赤ちゃんが寝ているすきを狙って、インターネットで情報を集めたり、子育てママのプログをチャットしたり、ママは睡眠不足でふらふらです。
 パパはイクメンを目指して、育児もママのサポートも頑張ろうと思ってます。
幸せだけど、なれない育児がスタートしててんやわんやの佐々木さんには、赤ちゃんの眠りの特徴、生れてからのリズムの発達をお伝えしたいと思います。

 赤ちゃんは生後7〜10週間(約2カ月)で、「睡眠時間」「覚醒時間」に分割されて行きます、それまでは常に夢見ごこち(動睡眠)の状態でいます。

・中野さんの赤ちゃんは6カ月でかわいいさかりです。
 周りのお友達は離乳食が始まり、段々まとまって眠るようになったということですが中野さんの赤ちゃんはとにかく寝てくれません。抱っこを続けて、赤ちゃんが眠ったのを見計らって、そーとベッド置くのですが、ベッドに置いたとたんに泣き出してしまいます。ママはほとほと弱っています。

・河合さんの赤ちゃんは、1歳になり、保育園に入園しました。
 ママは毎日保育園からの連絡帳を読むのが楽しみです。保育園では、昼寝も食事もスムーズに行っているようです。ところが家では背中をトントンしても子守歌を歌っても、なかなか寝付けません。保育園で決まった時間に昼寝しているのが魔法のように思えます。

・山崎さんのお子さんは年少さん。楽しく幼稚園に通っています。
 パパは、なるべく早く帰宅するよう仕事を調整して、夜9時には家に帰るようにしています。
お風呂はパパの担当です。
10時には寝かせるようにしてますが、夜中に何度か目を覚ましてしまいます。
何時になったら親は、ぐっすり眠れるのでしょう。
赤ちゃんが夜スムーズに寝つけるように、夜まとまって眠れるように、どんなことに気を付ければいいのでしょう?
 中野さん、河合さん、山崎さんと一緒に考えたいと思います。
眠りは素晴らしい人生の扉です。泣いてばかりいる赤ちゃんのお世話で泣きたい気持ちのお母さんたち、その扉を一緒にそっとたたいてみましょう。

*「眠って、賢く、優しく、美しく、人間力UP」心身の成長を促す睡眠習慣
                                   富山大学人間発達科学部 学部長 神川 康子

・日本の子どもの睡眠――睡眠不足と質の低下
 日本の子ども達は先進国の中でも最も睡眠時間が少なく、睡眠の質も低下していることがしばしば研究報告されています。
ひいては子ども達の学力や体力、更には精神力の低下も懸念されている昨今です。

 これまでに実施されてきたOECD(経済協力開発機構)の学習到達度調査(PISA)や、全国学習状況調査の分析から、日本の子ども達につけたい思考力や創造力、判断力や実践力等は、子どもの発達段階に応じた生活習慣の確立や適切な睡眠、生活体験の確保による。脳の発達とともに達成されます。

 私たちの研究室では20年以上に渡って、乳幼児から大学生までを対象に生活実態を調査・分析し、就寝時刻の遅れや睡眠時間短縮、睡眠不足感が子ども達の日中の疲労感を増大し、集中力や行動レベル等のQOL(生活の質)を低下させ、体温上昇も阻害し、更に夜更かしになる「悪循環」を招くと報告して来ました。

 一方で、子ども達の生活習慣の確率は生まれ育つ環境の中で,関わる大人の影響を受けていることも明らかで、24時間化した社会において、どのように子ども達の睡眠習慣を確立するのか、家庭や学校、地域の関わり方にも課題が見えて来ます。

・子どもの睡眠習慣――家庭や学校、地域の関わり方
 まず、子ども達自身が多忙を極め、疲労感が増すほどに帰宅後はテレビやゲーム、パソコンなどの非活動的で受動的な余暇時間をの過ごし方をする傾向が強くなっています。

 24時間しかない生活時間をどのように自己管理できるかが重要な課題となります。
又、家庭においては子どもに早く眠ることを促す保護者が少なくなり、中には子ども達の生活が大人と同じでも問題が無いと考え、子どもの健康や発達に科学的理解を持たない人たちも増えています。

 例えば「幼児や小学生でも大人と同じ7〜8時間の睡眠時間で良い」「受験期には睡眠時間を削ってでも勉強にあてた方が良い」「勉強や学校に興味がわかないのは根性が足りないから」といった大人の身勝手な本音も見え隠れします。
  
 その結果、子どもの睡眠状況も把握できず、睡眠環境を整えることも無く、朝は起こしても起きないと嘆き、十分な朝食も準備せず、無理やり幼稚園・保育所、学校に送り出すケースも少なくありません。
 未来を担う子ども達が基本的生活習慣を身につけ、心も体も健やかに成長して行くことが、やがては地域の活性化につながり、社会秩序が保たれ、深刻な事件や事故も未然に防いで経済的損失を最小限に抑え、継続の力や体力・耐力のある安定した社会や国家に繋がると言えるのではないでしょうか。
 「すぐに、ぐっすり、すっきり」眠れる子ども達が、やがては「真に賢く、優しく、美しく、人間力を身につけてくれる」ことを日頃から学校や地域に伝え、子育てに自信と安心感を持っていただけるように頑張っています。

  (注)
   ここでも自己管理能力(生活習慣をコントロールする能力)の要請が重要と指摘。
   「早寝、早起き、朝ご飯」の重要性。就寝時刻を早めることの重要性を強調。
   されています。

*「体内時計乱れてないかな?」      国立精神・神経医療研究センター 睡眠障害センター 亀井 雄一

・もし、時計が無くなったら
 私たちは、時計に縛られた生活をしています。朝目覚まし時計で起き、学校が始まる 時間に合わせて家を出て、時計がお昼の時報を告げたらお昼ご飯を食べ、夕方帰宅し、ある程度の時刻になったら眠りにつく。
 私たちが社会生活を送って行くためには、時計がないとなり立ちません。
 時計に縛られない生活にあこがれる人もいるでしょう。
では、時計がなくなったらどうなるでしょうか?
多くの人は、明るくなったら起きて、おなかがすいたらご飯を食べて、暗くなったら眠くなって眠りにつくでしょう。こうしたリズムは、明るい暗いという環境の変化によって生み出されているのでしょうか? 答えはノーです。

・人間の体内にも時計が備わっている
 人間は、時計もTVもラジオもなく、時刻を知ることが出来ない地下壕で過ごしても、約1日のリズムで眠ったり起きたりするのです。これは人間の体内に時計(体内時計)  が備わっていて、体内時計の刻む約1日のリズムによって寝たり起きたりしていることを示しています。その体内時計が刻む約1日のリズムは、ぴったり24時間ではなく、少し24時間より長いことが分かっています。
そのため、体内時計を毎日微調整する必要があります。 その役割を担っているのが、光です。明るい光を浴びた時刻によって、体内時計の針は進んだり遅れたりするのです。
 早朝に明るい光を浴びると体内時計の針が進み、夜に浴びると体内時計の針は遅くなります。体内時計を調節することで、日々の生活や季節の変化も対応しているのです。

・体内時計が乱れるとどうなる?
 体内時計が乱れるとどうなるのでしょうか?
例えば東京からニューヨークに飛行機で旅行した場合を考えてみましょう。
東京とニューヨークの時差は約14時間で、ほとんど昼夜逆転しています。ニューヨークに着いたばかりの時は、体内時計はまだ日本時間のままです。そのため、ニューヨークでは昼なのに体内時計は夜なので眠く、ニューヨークで夜になると体内時計は昼なので眠れなくなるという、時差ボケ(時差症候群)の状態になります。
 眠気や不眠だけではなく、だるさ、集中力の低下、消化器系の症状等もみられます。
時差症候群は、体内時計の時刻と外界の時刻がずれたことによって症状が出て来ますが時差のある地域への旅行などによらず、日常生活の中で時差症候群と同じような症状がみられることがあり、これを慨日リズム睡眠障害と呼びます。
    
・日常生活の時差ぼけー慨日リズム睡眠障害
 夏休みなどの長い休暇で、夜更かして朝寝坊する習慣がついてしまうと、休み明けに学校が始まった時に眼が醒めにくくなることは、誰でも経験があることでしょう。
 通常は、頑張って朝起きて学校に行っているうちに、早く眠れて早く起きられるリズムに戻ってきます。
 慨日リズム睡眠障害のひとつである睡眠相後退型では。夜更かしの朝寝坊のままのリズムが続いてしまい、戻そうと思っても戻せません。
 体内時計が遅くなったままになってしまうからです。夜もなかなか眠れず、朝起きられないため、学校に行くことができません。
この病気の背景には、睡眠や体内時計に関する何らかの体質的な素因が関係してると考えられています。
この病気を治す一番の方法は、朝たっぷりと光を浴びて、体内時計の針を元に戻すことです。
 夜更かしや昼夜逆転の生活が引き金になることが多いため、普段から朝起きて光を浴びる生活をするよう、気をつけたいものです。


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3110 報告 「道路交通法」と「関連する刑法」改正について              河野 通久

 本件は、「会誌なるこ30号」及び「なるこ便り」でご報告していますが、なかなか難しい内容であることから分かり難いとのご感想も頂いております。申し訳ありません。

1.改正道路交通法
 平成25年(2013)3月29日に閣議決定された「道路交通法の一部を改正する法律案」は、国会審議を経て、同年6月14日に略称「改正道交法」として公布されました。
 通常改正法は、公布後1年以内に施行となっており、同法の施行は平成26年(2014)6月施行となりますが、良く調べてみると準備が整い次第施行とされるものがありました。
(施行日とその内容は、「施行令」及び「附則」により決められていますが、「交付日より施行(政令179号)」、「一部を12月1日より施行(政令310号)」がありました。
 従って自転車の逆走禁止について「平成26年2月発行なるこ便り」に書いたのは筆者の*認識不足でしたのでお詫びして訂正します。)

*改正道交法の概要(ポイントは次の4点)
@.一定の病気等に係る運転者への対策・・・平成26年6月1日施行予定
・免許の拒否事由とされている一定の病気等に該当する者を的確に把握するための整備
・一定の病気等に該当する者であることを理由に免許を取り消された場合において、免許再取得に関する負担の軽減

A.悪質・危険な運転者への対策
・無免許運転の罰則の強化・・・平成25年12月1日施行
・取消処分者講習会の受講対象の拡大・・平成26年6月1日施行予定

B.自転車利用者への対策
・危険運転防止のための講習・・・平成27年6月13日迄に施行予定(2年以内)
・ブレーキの効かない自転車の運転停止措置・・・平成25年12月1日施行
・自転車の路即帯通行は、道路の左側に限定・・・平成25年12月1日施行

C.その他
・環状交差点に関する規定の整備・・・平成26年9月1日施行予定
・放置違反金の収納事務の民間への委託・・・平成26年6月1日施行予定

 以上の4つの改正道交法のポイントの内、我々にとって最も重要なものである@の「一定の病気等云々」の箇所についてどうなっているかは次の通りです。

@・免許の拒否事由とされている一定の病気等に該当する者を的確に把握するための整備として予定されているもの。
*公安委員会は、運転免許受験者へ更新者に対して、一定の病気等の症状に関して「質門表」によって質問することが可能になる。・・矢張り申告制になる模様
*この質問に症状があるにも拘らず虚偽の回答をして運転免許の取得又は更新した者には、「1年以下の懲役または30万円以下の罰金」が適用される。
*さらに、一定の病気等に該当する者を診断した医師が、任意でその診断結果を公安委員会に届け出ることができる。刑法の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に属する法律の規定は、この届け出において例外になるよう法的整備がなされる。 
*また、交通事故を起こした運転者が一定の病気等に該当する疑いがある場合、医師の診断を待たずに、暫定的に3カ月を超えない範囲内で期間を定めて免許を停止することができる。
以上が平成26年6月末までに施行予定である。となっています。

 ここで言う「一定の病気云々」は、2.の「自動車運転致死傷行為処罰法」で言うものと全く同じものですので念の為申し添えます。
 現在(平成26年5月)、質問票の具体案は示されていません。

2.自動車運転致死傷行為処罰法改正道路交通法
 平成25年(2013)4月12日に閣議決定された「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」は、国会審議を経て、同年11月20日に可決成立し11月27日に「自動車運転致死傷行為処罰法(新法)」として 公布されました。(同法は平成26年5月26日迄に施行されます。)
 又、同法の中で「自動車の運転に支障を及ぼすお恐れがある病気で云々」として具体的な病名を定めた政令を、平成26年(2014)4月18日の閣議で決定しました。
 「自動車運転致死傷行為処罰法」の内容と問題点は、なるこ30号で書いた通りで変更はないため、ここでは省略します。
 名称が長いのでさらに短くし「自動車運転処罰法」と通称するとも言われています。

*自動車運転致死傷行為処罰法成立の経緯
 これまでは、飲酒運転等、悪質な運転で死傷者事故を起こしても、刑法の「危険運転致死傷罪」の適用が見送られるケースがあり、より事故の発生実態に即した法律の整備が求められて来ました。
 そこで罰則の見直しを求める被害者や遺族等の声を受け、悪質で危険な運転者に対する厳罰化を盛り込んだ新たな法律が制定されたという処が現実でしょう。
*この法律のポイントは次の4点
@「危険運転致死傷罪」に適用対象が追加・新設
 刑法から移行された危険運転致死傷罪に
・一方通行路や高速道路の逆走、歩行者天国への暴走など「通行禁止道路(政令で定める)」を危険な速度で走行が追加され、更に・アルコールや薬物の影響で正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転
・幻覚や発作を伴う病気(政令で定める)の影響で支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転が新設されました。

A「過失運転致死傷アルコール等の影響発覚免脱罪」が新設
 アルコールや薬物の影響で、運転上の必要な注意を怠り死傷事故を起こした場合に、その影響の有無や程度の発覚を免れるために、・更にアルコールや薬物を摂取する・その場を離れて身体に保有するアルコールや薬物の濃度を減少させるなどをすると、12年以下の懲役になります。

B「過失運転致死傷罪」に名称変更
 刑法から自動車運転過失致死傷害罪が移行され、「過失運転致死傷罪」と名称変更されました。

C無免許運転」の場合
 無免許運転で死傷事故を起こすと、法定刑が重くなります。

  以上

*この法律は全部で6条しかありませんので、ここで全文を転載します。興味をお持ちの方は是非目を通して下さい。

 自動車運転致死傷行為処罰法(平成25年法律第86号)本文
(定義)
第一条 この法律における「自動車」「無免許運転」とは何かと言う定義の記載なので省略します。
(危険運転致死傷)
第二条 次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は15年以下の懲役に処し人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処する。(1年以上とは20年以内)
   一 アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
   二 その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
   三 その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
   四 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に侵入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
   五 赤信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
   六 通行禁止道路(道路標識若しくは道路標示により,又はその他法令の規定により自動車の運転が禁止されている道路又はその部分であって、これを通行することが人又は車に交通の危険を生じさせるものとして政令でさだめるものをいう。)を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

第三条 アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を負傷させた者は12年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は15年以下の懲役に処する。
 2.自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、その病気の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた者も、前項と同様とする。

(過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱)
第四条 アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じる      おそれがある状態で自動車を運転した者が、運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた場合において、その運転の時のアルコール又は薬物の影響の有無又は程度が発覚することを免れる目的で、更にアルコール又は薬物を摂取すること、その場を離れて身体に保有するアルコール又は薬物の濃度を減少させることその他その影響の有無又は程度が発覚することを免れるべき行為をしたときは、12年以下の懲役に処する。

(過失運転致死傷) 
第五条 自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。但し、その障害が軽いときは、情状によりその刑を免除することができる。

(無免許運転による加重) 
第六条 第二条(第三号を除く。)の罪を犯した者(人を負傷させた者に限る。)が、その罪を犯した時に無免許運転したものであるときは、6カ月以上の有期懲役に処する。
  2 第三条の罪を犯した者が、その罪を犯した時に無免許運転したものであるときは、人を負傷させた者は
     15年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は6カ月以上の有期懲役に処する。
  3 第四条の罪を犯した者が、その罪を犯した時に無免許運転したものあるときは15年以下の懲役に処する。
  4 前条の罪を犯した者が、その罪を犯した時に無免許運転をしたものであるときは、10年以下の懲役に処する。

 附則抄
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して6カ月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
*平成26年(2,014)4月18日に閣議決定され施行令の一部を転載します。
興味をお持ちの方は是非目を通して下さい。

 自動車運転致死傷行為処罰法(平成25年法律第86号)施行令
  自動車の運転に支障を及ぼす恐れがある病気
ア.自動車の安全な運転に必要な認知、予知、判断又は操作のいずれかに係る能力を欠くこととなるおそれがある症状を呈する統合失調症
イ. 意識障害又は運動障害をもたらす発作が再発する恐れがあるてんかん
ウ.再発性の失神
エ.自動車の安全な運転に必要な認知、予知、判断又は操作のいずれかに係る能力を欠くこととなるおそれがある症状を呈する低血糖症
オ.自動車の安全な運転に必要な認知、予知、判断又は操作のいずれかに係る能力を欠くこととなるおそれがある症状を呈するそう鬱病
カ.重度の眠気の症状を呈する睡眠障害

*法相「病名ではなく症状に着目」
 谷垣法務大臣は閣議に後の記者会見で「特定の病気に対する偏見を助長するという懸念を 患者団体が持っているのは事実であり、今回の政令は特定の病名に着目するのでなく、 運転の危険を招くという症状に着目する規定にした」と述べました。
 また、谷垣大臣は、栃木県鹿沼市の事故からちょうど3年になることについて「改めて 亡くなった方々のご冥福を祈りたい。今後、法律を具体的に適用するにあたり、司法や 取り締まりの現場で色々なことがあると思うが、適用に心して行くことが大事だ」と述べました。
 全くその通りで、現場での取り扱いがそうなって呉れることを期待してます。事務局

参考(Q&A)

Q1.新たな危険運転致死傷罪(第3条)を設けるのはなぜですか?
 A 現在の危険運転致死傷罪と同じとまでは言えないけれども、なお悪質で危険な運転によって人を死傷させた場合に、これまでよりも重く処罰することができるようにするために、この罪を設けるものです。
  具体的には、
○アルコールや薬物、又は病気の影響で正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、そのことを自分でも分ってい居ながら自動車を運転し、
その結果、
○アルコールなどのために正常な運転が困難な状態になり(この状態になったことは、自分で分っているいる必要はありません。)、人を死亡させたり、負傷させたりした
という場合、これまでは、不注意による運転として自動車運転過失致死傷罪(注)が適用されてきましたが、これからは、悪質性や危険性などの実態に応じた処罰ができるようにするため、あらたな危険運転致死傷罪とし、人を死亡させた場合は15年以下の懲役刑、負傷させた場合は12年以下の懲役刑に処することにしました。
   (注)7年以下の懲役刑・禁錮刑か100万円以下の罰金刑に処するとされています。 

Q2.第2条や第3条の危険運転致死傷罪の中で使われている「正常な運転が困難な状態」とはどのようなものですか?
 A 「正常な運転が困難な状態」とは、道路や交通の状況に応じた運転をすることが難しい状態になっていることです。
 例えば、アルコールの場合は、酔いのために、前方をしっかり見て運転することが難しかったり、自分が思ったとおりにハンドルやブレーキなどを操作することが難しかったりする場合です。また、病気の場合は、発作のために意識を失っている場合などです。

Q3.第3条の危険運転致死傷罪の中で使われている「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」とはどんなものですか?
 A 第3条第2項の罪は、
○病気の影響で正常な運転に支障が生じるおそれがある徐黄体で、その状態であることを自分でも分っていながら自動車を運転し、
その結果、
○病気の影響で正常な運転が困難な状態になり、人を死亡させたり、負傷させたりした
という要件が全て満たされたときに成立します。
 ここでいう病気は、「自動車の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある病気」として政令で定められていますが、政令では、病名だけでなく症状にちゃくもくして、そもそも運転免許を受けられないことになっているものを参考にしながら自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある症状の病気に限定しています。

Q4.この罪は、病気に対する偏見や差別を助長するものではないのですか?
 A 第3条第2項の罪は、Q3の通り、病気にかかっているということだけでなく、
○病気の影響で正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、その状態であることを自分でも分っていながら自動車を運転し。
その結果、
○病気の影響で正常な運転が困難な状態になり、人を死亡させたり、負傷させたりしたという要件が全て満たされたときに成立します。
このように、運転するには危険な状態にあるということを自覚していながら、それでもあえて自動車を運転するという悪質、危険な行為を自ら行い、その結果、正常な運転が困難な状態となって人を死傷させたものという要件を定めており、政令で定める病気が一般的に危険であるとか、その病気にかかっている方が悪質であったり危険であるとするものでないのは当然です。

 また、政令で定める病気にかかっている方であっても、自覚症状がなかったり、運転するには危険な状態にあるということを自覚していないなど、病気のために正常な運転に支障が生じるおそれがある状態であることを分っていない、つまりこのことについて故意がなければ、この罪の対象になりません。
但し。故意がなくても不注意があれば、第5条の過失運転致死傷罪に当ることはあります。

  以上ご理解の足しになりましたでしょうか。 

 余談
・道交法改正の内「一定の症状を呈する病気等」に関し、警察庁から意見を求められ、当会から同庁へ出向き意見交換をしたことがありました。(2012/10/5) 今回はもっと重要な問題のため意見が求められるかと、緊急アンケートも取りまとめ、 待ってましたがお呼びはなく、H24.2.26〜3.27と期間を限定し意見募集がありました。

 意見書を提出するかどうか相当悩みましたが、日弁連、てんかん協会等が提出されているし、下手をして「ナルコレプシーの病名が書き込まれてもいやだな」との下種な考えから止めました。
 そのためかどうかは判りませんが、現在ナルコと言う病名は政令にも出ていません。
 理屈は分かっていても、現実を考えると、残念乍ら「病名が記載されて良いこと」はあまり考えられません。

  以上


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3111 お知らせ                                          事務局

*当会の認定資格について
 当会は、会員数・収入金額等で言えば小さな所帯の「特定非営利活動法人(俗称:NPO法人)」ですが、国税庁長官の認定する「認定資格」を取得しています。(有効期間は、 H22.9〜27.9 の5年間)
 特定非営利活動法人の「認定法人」制度は、特定非営利活動法人の内、その運営組織及び事業活動が適正であって公益の増進に資するものにつき一定の基準(パブリック・サポート基準を含む8項目)に適合したものとして国税庁官が認定していました。
 しかし、平成23年の法改正により平成24年4月から所官庁(当会の場合は東京都)が認定することとなりました。従来の国税庁官認定は有効期間が過ぎると自動的に消滅し、東京都に引き継がれることはありません。
 従って、国税の有効期間中に東京都の認定資格を取得する必要があります。
 (この資格は、ご寄付を頂戴する立場の当会として、信用状態が高まること及び寄付する者にとって税制上有利になることから、当然取得すべきと考えるからです。)
東京都の認定資格は、新しく修築することになるため早めに申請しようと3月に提出しましたが、当方の認識不足による諸手続きもあり,再提出を余儀なくされる結果となりました。(国税より細かなことにうるさく、杓子定規な感じあり。)現在、5月の連休明けに全部片づけ再提出する予定です。

*今年の園遊会について  4月29日まずまずのお天気(1週間前の予想では雨)に恵まれ、楽しく開催出来ました。主担当して頂いた町田理事の提供報告をご参照ください。


*自動車の運転には、くれぐれもご注意ください!!
  言わずもがなのことですが、自動車の運転される際は、
  ご自分の体調、道路の状況等に十分気をつけて事故を起こさぬよう
  貰わないよう、お互い気を付けるようにしましょう。

           事務局一同



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