生活のコントロールと薬物療法を根気よくつづける

 患者さんは自分がナルコレプシーであるとは知らない場合は、眠りすぎることが問題なのですから、多くの人は内科を受診します。しかし、内科の医師ですと最初に述べたように「よく眠るのは病気ではない」と診断されてしまうこともあります。
「ナルコレプシーの患者さんの中には、私どものところにくる前に十年間もこの病気で苦しんできたという人もいます。平均すると、発症して数年たってはじめて、病気として適切に扱ってもらえるようです。本当にもっと早くに正しい診断をされていたなら、どんなに苦痛が減っただろうと気の毒に思います。」(菱川氏)

 すでに述べてきましたように、ナルコレプシーは睡眠をコントロールする脳の機能に異常をきたす病気ですから、精神科で治療を受けるのがよいと思います。
「一部に、神経内科の先生も診断をやっておられますが、まだ十分とはいえません。今の日本の状況では、精神科、それも睡眠障害の治療、研究をしている精神科が、ナルコレプシーの患者さんにとっては一番適切な医療機関だと思います。そうした病院に電話をして相談し、患者さんの近くにいる専門医を紹介してもらうのがいいでしょう。」(菱川氏)

<解説>
 他のページに睡眠障害専門病院リストがありますので、そちらをご覧になってください。トップページにリンクがあります。

 現在、なるこ会では厚生省に睡眠科(仮称)の設置を要請しています。

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 ナルコレプシーは根本的な原因が分かっていないため、根治療法はありません。生活を規則正しくして、薬物で眠気をコントロールして、苦しむことなく生活できる程度に症状を軽くすることが治療の基本です。症状が軽い場合には、薬物を用いず生活をコントロールし、適当に昼寝をするだけでよいこともあります。また、くすりによる治療が必要な場合も、生活が規則正しくないとくすりの効果は減少します。
「昼によく寝る反面、夜よく眠れないというのがナルコレプシーのひとつの特徴ですから、夜に早く寝ることです。夜に早めに寝て、十分に睡眠時間をとり、規則ただしい生活をすることが必要です。患者さん自分の睡眠を記録してもらうと、宵っ張りで睡眠不足の生活をしている人が多いのです。」(本多氏)

 本多、菱川両氏がそろってすすめるのが昼休みや学校から帰ってきた夕方など、一〜二回の短時間の昼寝をすること。すっきりして楽になるということですので、ナルコレプシーの患者さんのいる職場などでは、是非そうした便宜を図ってあげて欲しいものです。

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 夜よく眠ることが努力だけでは不可能な人の場合、入眠時幻覚や睡眠麻痺を抑えるくすりと、夜には安定してよく眠れる睡眠誘導剤をもちいます。
「入眠時幻覚や睡眠麻痺をおさえるくすりはクロミプラミン、あるいはイミプラミンと呼ばれる三環系の抗うつ剤で、レム睡眠を抑える働きをします。残念ながらナルコレプシーでは健康保険適用薬ではありませんがよく効きます。夕食後または、寝る前に投与します。レム睡眠を抑えると、昼間の眠気もかなり楽になります。しかし、居眠り傾向はこれだけでは十分にコントロールできませんから、足りない部分には精神賦活(ふかつ)剤をもちいます。」(菱川氏)

「精神賦活剤として、世界的に一番よく使用されているのはメチルフェニデイト(商品名・リタリン)です。この他、外国ではいわゆる覚醒剤が使用されており、日本でも不可能ではないのですが書類などを作成しなければならないため、あまり使用されていません。」(菱川氏)

 精神賦活剤の類は、夜には絶対に服用しないこと!夕方これを飲んで、夜中に勉強しようなどという誤った目的で使うと、かえって夢が刺激されたり、寝不足になったりして、昼間の眠気が強くなります。
「夜の熟睡障害には、ベンゾジアミゼピン系の睡眠誘導剤や、ベゲタミンBなどの長時間作用する睡眠剤を投与します。昼に飲んだ精神賦活剤の血中濃度が高めであると考えられる場合には、クロールプロマジンなどの神経遮断剤を少量、寝る前に投与します。」(本多氏)

 これら三種類のくすりは、患者さんのもっている症状とその強さにあわせて使い分けられます。

<解説>
 平成11年なるこ会は、厚生省に「モダフィニール」の認可を要請しました。その結果、平成12年1月にモダフィニールがオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)として指定されました。現在はまだ処方されませんが、臨床検査中だそうです。

 モダフィニールはフランスのLaboratoire L. Lafon社で、アドラフィニールの後継として開発されました。日中の眠気に対して従来ものより効果があり、アドラフィニールの副作用である肝機能障害を軽減しているといいます。仏、米、英、などではすでに使用されています。

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 もう一つ、治療で大事なことはナルコレプシーという病気をよく理解して、上手につきあうことです。
「発病したての十代は、健康な人でも眠気の強い時期ですから、症状は比較的強く出ます。しかし、年月が経つとだんだんと症状が軽くなる場合が多いのです。といっても一年、二年という単位ではないのですが、五年、十年という単位でみるとあきらかに軽くなっていくケースが目立ちます。十年間治療を続けると、一割くらいの人で眠気が非常に軽くなり、二割ぐらいは情動脱力発作が、約三割は入眠時幻覚が、四割の人に睡眠麻痺が、それぞれくすりがいらない程度になくなります。」(本多氏)

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 それでもやはり五年、十年単位でくすりを飲みつづることになると、副作用が心配になってくるでしょう。
「副作用は個人差があり、使用量によってもちがってきます。夜の睡眠薬は、朝まで眠気が残るハングオーバー、フラフラするなど。三環系抗うつ剤は、性欲低下。精神賦活剤は、食欲抑制、心悸亢進、胃炎、口が渇くなどがあげられています。しかし、副作用を防ぐてだてはありますし、治療量の範囲では、そんなに問題はありません。」(本多氏)

 菱川氏も同意見です。
「精神賦活剤は、長い間使っていると慣れといいますか、依存のはじまりのようなものが生じることがあります。また、睡眠剤や覚醒剤のようなくすりが主なので、使いすぎを心配する人がいます。しかし、医師の治療を受けながら医師の処方に従っている限り、それらの心配はまずありません。」(菱川氏)

別に副作用もないのに怖がって、勝手にくすりを減らしてしまうと、睡眠のリズムを乱します。また逆に、生活を整えることをなおざりにして、くすりに頼りすぎ、眠気を覚ますくすりなどを勝手に増やして飲みすぎると、イライラしたり神経過敏な状態をおこすとのこと。
「くすりのマイナス面や副作用があったら、あきらめたり自分で判断したりせず、医師に相談して生活の質の向上をはかることが大事です。」(本多氏)

完了

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