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LSD


ポリゴンフィールドの中を動きまわってどうこうするタイプのゲームは
基本的に「リアル」である事を売り文句にしています。

 ポリゴンで「リアルな」戦闘シーンを演出してみたり。
 ポリゴンで「リアルな」フィールドを作ってみたり。
 ポリゴンで「リアルな」格闘技をやってみたり。

まあそれはそれで全然構いません。ただ惜しい事に現在の家庭機や
PCの三次元描画能力ではどーしてもポリゴンである事を意識させてしまいます。
現実的であっても現実の忠実な再現にならないのは娯楽であるゲームの性なのでしょうが、
時折ポリゴンを使う意味すら感じさせず、更に造形がむちゃくちゃな代物
(プラネットジョーカーやFistとかやね)
を拝む羽目に陥るとこの空しさはいやがおうにも強くなりますね。

さて「LSD」に話を移します。
いきなりヤバそうなタイトルのせいか健康的なゲーム雑誌には発売日すら掲載されなかった、とか、
一緒に発売された同タイトルのやたらでかくて高い本は攻略本でもなんでもなかった、とか、
まあ初っ端からギュンギュンすっ飛ばしてくれまくりました(が見た所全然売れてません)。
 でこれはジャンルとしては「ゲーム」ではなく「ドリーム・エミュレータ」だそうです。
パッケージにも「変なゲーム」という項目を設けて、
「美少女を口説いたり魔王を倒したりロボットを乗りこなしたい人は買わない方がいいです」
とまで注意書きするほどです。
実際これをただのクソゲーと思ってプレイする事は危険とも言えます。
確かにポリゴンは貧弱で欠けも発生します。キー反応も移動する時は妙にトロい癖に
振り向く時だけやたら早いお間抜けさんです。
ゲームとしてのルールや法則が表面上は存在しない所も名クソゲー「アクアノートの休日」
そっくりです。
もちろんクソゲーらしくメーカーロゴも飛ばせません。
しかしこの「ドリームエミュレータ」の真の恐ろしい所はそういうインターフェイスの部分ではありません。
LSDがその名の通りヤバいのは、非現実さ加減をこれでもかと強調する事で、リアルな夢を
再現した所にあります。

そう、夢。いわゆる希望や期待感に胸を膨らませる奴ではなく、眠っている時に見る、
あの不条理な展開と妙な不安感と孤独感と覚めた頭では到底思い付かない
シチュエーションとビジュアルをこれでもかというリアリティで再現するアレです。
LSDはこの夢を次のような方法で再現しています。

 1:不安感
  プレイ中には「PAUSE」表示を除き、一切の情報が表示されません。
  一応1プレイ終了後に表示される「グラフ」で今の心理状態が表示される
 事はありますが、プレイ中はコンパスも体力も残弾数もタイマーもなし。
   つまりユーザーはひたすら歩くかぼーっとしてるか、その2つの選択肢しか
 与えられていません。しかもゲーム内にタイマーが存在する癖に何も表示されず、
 結果としてゲームをやっていると突然終了します。

 2:孤独感
  フィールド内には多くの物が転がっていたり動いていたりします。
 しかしどれ一つとして「会話が発生する」とか「戦闘になる」とかそういうイベントを伴う物では
 ありません。全てがただ存在しているだけです。
  宙に浮かぶ象であろうと、身長推定5mの舞妓さんであろうと、唯一の敵とも言える黒い服を着た
 謎の人物であろうと、ただそこに存在しているだけです。
  更にそういう物が妙に少ない所もあり、どんなに進んでも草原ばかり、という事も多々存在します。
 足音以外の音は何もなく、動くのは地面ばかり。

 3:不条理
  障害物に接触すると「リンク」が発生してどこかにジャンプします。
  但し一部のオブジェクトを除きどこへジャンプするかは決まっていません。
  更に恐ろしいのはゲーム開始直後にこれまた不安になる夢日記の一節や不安になりまくる
 シュールな映像が出て終わりになる事もある点です。
  「逆光の食卓で音もなくソーセージをむさぼり食う子供」なんて映像をいきなり見せられた時には
 叫びそうになりました。

 4:幻覚
  LSDというタイトルからかは知りませんが、ゲームを進めていくとフィールドがそれまでと異なった
 テクスチャで埋め尽くされていたりします。
  緑の空に浮かぶ赤い太陽。地面は青い草で覆われ、その上を判読不能な文章が
 びっしりと橙色で書かれている。
  向こうを歩くのは地面と同じ色合をしたライオン(らしきポリゴン塊)。
  近づいたらいきなり襲われてそのままゲーム終了・・・
  そうかと思えば窓には全て目玉があって地面には「地」と但し書きがされてたり。
  ただでさえ不安感で一杯の状態でこんな物拝んだら気が狂いそうに怖い。
 しかも発生する兆候は(プレイ中は)決して見る事は出来ないこの恐怖。
  こうなるとちゃちいポリゴン物体もこの凄まじいまでの非現実感を狙って作られたとしか  思えなくなります。

結局LSDの怖さとは「先の見えない理不尽と絶対的な孤独感」にあり、ホラー映画の
演出された恐怖とは別の生理的な恐怖や嫌悪をプレイヤーに感じさせます。
特にテクスチャで。
リンク先やゲームとしてのルールが読めてくると大した事が無くなりますが、
そうすると今度はいきなりプレイが終わったり怖い映像を見させられたりします。
この無意味と理不尽加減を体験したい人は買うのが一番ですが、ここでひと


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