「真のクソゲーはパッケージからも悪の波動を感じる」
この表現はあながち嘘ではありません。
かの「デスクリムゾン」も「里見の謎」も、周囲に並ぶ無難なゲームジャケットとは何か違う、
一種異様な、まさに悪の波動としか表現できない何かをそのジャケット絵からまんべんなく
発散しており、まさにクソゲーの王者としての風格に満ち満ちています。
エロゲー界における「デスクリムゾン」を「ギルティア」とするなら、ちょうど「大冒険」に相当する
位置にある、と言えるのが本作「PETいんがー」です。
で、先程の格言の通り、絵が命のエロゲーである割に、いや、絵が命のエロゲーとしては
致命的なまでにゲーム中のCGらしきパッケージ絵がしょぼい。
「下手」ではありません。「しょぼい」のです。ユーザーであるはずの私達の方が不安になるほどに。
そして追い討ちをかけるのはこれまたスリル満点なオビ文句。
「性技の戦士[PETいんが〜☆]参上!」
・・・ほんと、読んでいるこっちがハラハラします。
「どうやって流通網に乗ったのだろう」「そもそもなぜこれが店頭に並んでいるのだろう」
「一体誰が何を考えてこのゲームを作ったのだろうか」「これをボツにしなかった理由は何か」
中古棚の前で次々に沸き起こる謎。それを解き明かすべくレジへと走りました。
ついでに「初音のないしょ!」付属品全付きと「To Heart」初版を掴んで。
まあ、
消費税が一時的に10%になって、買ったらおまけに「PETいんがー」が付いてきた、
と考えればそれほど高い気はしませんしね。
ではおもむろにマニュアルを開き、起動条件をチェック。
パッケージから予想されるような突飛な事は何一つ書いてありません。
その代わりにフォントが丸文字です。読みにくいだけでなくむちゃくちゃ不安です。
次に愛機を起動し、早速起動してみます。
・・・懐かしいです。PC8801MK2MRで散々黎明期のエロゲーをやり倒した頃を思い出します。
まさにその頃の絵柄と塗りです。背景が妙に白いのもスリルがあります。
しかも最近ではデフォルトとなったヤバい部分のモザイク処理が為されていません。
そのためCGの総合的なクオリティを劣化させる事無く、いわば「完全な」CGを拝めます、
普通なら大喜びなのですが、この場合CGがCGだけに感慨もへったくれもありません。
主人公(健一)はゲーム開始直後いきなりヒロインらしきねーちゃんから
「あんたほどセックスがヘタな奴はいない」
とコケにされます。
必死に、と言うにはあまりにもやる気の無い言い訳を繰り返す主人公にヒロイン(と思われる絵)は
「ムード作りからしてなっていないのよね」と言い放ちます。
何を思ったか主人公、ムード作りを始めます。こうやって。
「ほらー、ムード出すからさー。
むうぅぅーーーーーーーどおぉぉ、
むうぅぅーーーーーーーどおぉぉ、」
・・・不安です。こんなスリルたっぷりの発言をする主人公に感情移入するには、平均以上の勇気と
「昔は傭兵、今は医者」
とか
「昔は戦闘機乗り、今は娼婦」
くらいの豊富な人生経験が必要なようです。
とにかく主人公は彼女にフラれてラブホテル(と主張する線画)を出る訳ですが、
そこに現れるのは見るからに原画の手間を省いたような・・・
・・・もとい極限までデフォルメされた線のヒゲ親父。
何をどうしてかは知らないまでも主人公のドヘタさ加減を指摘し、テクニック向上のために7日以内に
3人の女をナンパしろとかどうとか言ってきます。
「出来る訳無い」とごねる主人公にヒゲ親父は「ナンパの成功率が高くなる能力」を授けてくれます。
「ぺぇーーーーーっとぉーーーーーー・・・・・」
「いんがあぁ!」
・・・グーで殴られました。
先が見えないジェットコースターエロゲー!スリルたっぷり。
気が付いてみれば主人公は「性技の戦士、PETいんが〜☆」とやらになっています。
一寸先が闇ならばまだしも、過去から未来永劫先が見えないスリルに身が震えますね。
ゲームシステムはごく平凡です。
バイトで稼ぎつつ女の子をナンパし、条件を満たすとホテルで事に及べます。
但し生意気にも・・・もといリアルな事に、女の子はそれぞれが自分のスケジュールで
動いており、いちいちそれを把握しないとナンパすら出来ない始末。
その他、
・手持ちの金が5000円以上だとバイトができない(もちろん金が無いと何も出来ない)
・主人公はいっちょまえにハラも減れば眠くもなり、風呂に入らないと体が臭う
・コンビニにはミンチのマグロに砂糖を入れたおいしい「まぐろジュース」を売っている
・会う女の子全てがセックス(但しペッティングのみ)との交換条件に安っちい物品を要求する
そういったローカルルールが幾つも存在します。
どこまでいってもCGとメッセージとシステムとシナリオがスリルたっぷりなので、正義感・勇気共に
平均以下の人間はやっているうちに不安に耐え兼ねて迷わずウインドウを閉じてしまいますね。
こうなると画像形式を確かめたくなるのが人情ってもんです。
早速ショートカットを叩いてCD-ROMドライブを開き、システムがあると思しきフォルダを開くと・・・
ここでも懐かしい物にお目に掛かりました。
ずらりと並んだ.mag拡張子付きのファイル。クリックすれば関連付けしたビューワーが起動し、
それまで散々見せられてきた絵が表示されました。
まあ、「大冒険」が
「買う事そのものが大冒険」
(「超クソゲー」より)とするならば、
「PETいんがー」は
「売る事からして大冒険」
とでも表現しようがありませんね。
しかし何をトチ狂ったか販売元のPUMPIEは更に同レベルのソフトを2本
(2作目「ぱすてるノート」、3作目「わくわく惑星プリンセス」)も世に出しています。
かように市場原理が通用しないのもエロゲー業界の特徴ではないでしょーか。