お相撲ファンタジー小説

魔法のお相撲さんミンキーネム

番外編 我が部屋紹介八十通部屋


「さて、今日の中入りの時間は“我が部屋紹介”をお送り致します。今日、御 紹介する部屋は八十通部屋です。リポーターは吉岡アナウンサーです。」  吉岡です。今、私が立っているところが八十通部屋の表玄関です。建物は三 子山部屋、八重部屋などと比べると貧弱ですが“八十通部屋”と立派な看板が かかっています。  稽古場では関脇を三場所連続で維持していて、今、大関に最も近い男と言わ れている房亜梨州、先場所幕内付け出しでという異例の番付でデビューしたも のの負け越してしまい、十両に落ちて今場所に再起を賭けており、親方の長男 でもある、眠希眠をはじめとして、10人前後の力士が稽古に汗を流していま す。  今画面に映りましたこの人が北海道出身で元関脇二九の花の八十通親方です。 現在はでっぷりと太っておりますが、現役時代は痩身の二枚目で、女性に圧倒 的な人気がありました。最近は引退後はダイエットをする親方が多いのですが、 八十通親方の場合は引退後太ってしまったという最近では珍しい方です。  この部屋のおかみさんはアッコさんという方で、美人の多いおかみさん連の 中でもひときわ美しさでは抜きん出ているという評判です。現役時代の八十通 親方、元関脇の二九の花関と大恋愛の末、結婚されたことはお相撲ファンの方 なら記憶に新しいところでしょう。  一見すると美しさとしとやかさを兼ね備えた大和撫子の鏡のような方なので すが、一度怒るとその凄まじさは筆舌に尽くし難いという噂もあります。その 辺のところを幕下の古森昔(こもりむかし)さんに聞いてみましょう。 吉岡 「古森昔さんは以前何かいたずらをされておかみさんの逆鱗に触れたこ     とがあるそうですが……。」 古森昔「はい、実は恐れ多くもおかみさんが入浴してるところを覗こうとして     しまいまして……、何せあれだけお美しい方ですからねー。」 吉岡 「ははぁ、なるほど。私もあの方を見ているとそういう気持ちになるの     はよくわかります。で、その時のお怒りは凄まじかったとお聞きした     のですが……。」 古森昔「はい、チラッと見えただけでおかみさんに気付かれてしまいまして、     洗面器が飛んできました。その後のことは……、思い出しただけで身     の毛がよだちます……。」  古森昔さんは話しながらいかにもおそろしげにブルブルと震えていました。 なんでもその後古森昔さんは二〜三場所、休場を余儀なくされたということで す。美しさと猛々しさを合わせ持つ……、まさに軍神アテナを思い起こさせる ような方ですね。  さて最後になりましたが、八十通親方に今後の抱負を聞いてみましょう。 「そうですね。まずは房亜梨州を大関に上げることが目標ですね。私も現役時 代は大関を目指して頑張りましたが結局力が足りませんでした。その分も房亜 梨州には是が非でも頑張って貰いたい。それと眠希眠ですが、先場所、大敗し たことがよい経験になっているようです。相撲の世界の厳しさを思い知らされ たんでしょうね。ま、あのまま全敗でもしていれば、どうなっていたか判りま せんが千秋楽に一つ勝ったことが“やればできる”という自信につながってい るようです。彼にも幕内返り咲きを目指して頑張ってもらいたい、とこの二点 が当面の課題です。それに下の連中にも一日も早く、関取になれるよう頑張っ て欲しいところです。」 と、いうお話でした。今日は元関脇二九の花関の八十通部屋にお邪魔致しまし た。我が部屋紹介を終わります。                            <FIN>   初出 1989年5月6日   PC−VAN 大相撲ぱそ通場所   #3−1肩入れさじき席 #2243   この小説は上記のボードに掲載されたものに、一部修正を加えたもの   です。

あとがき


 この『我が部屋紹介八十通部屋』は、お遊びで書いた番外編です。ボード連 載時、ちょうど第二章の部分が終わったところで、五月場所が始まり、場所中 は休載ということになりましたので、おまけのつもりで書きました。  形としてはおかみさんと、あとあんまり物語中に登場せず、ちょっと影の薄 い八十通親方の紹介って感じの番外編になってます。 ではでは。                       1997/08/30 眠夢

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