【土生長穂、9月の一言】



30年前の9・11 −チリのクーデター


 また,9月11日がやってきました。ブッシュ政権は貿易セン
タービルの事件を最大限に利用してイラク攻撃まで行ってしまい
ました。その意味では,9.11事件でもっとも得をしたのはブ
ッシュ政権だったということが出来るかもしれない。もっともイ
ラク攻撃のツケはいまブッシュ政権に回ってきていてだんだんと
ブッシュの再選が危うくなってきているのですが。      
         ×    ×    ×         
 ところで,30年前の9.11を覚えているいる人はいるだら
うか?といってもこれを読んでいる人の多くは30歳以下だろう
から生まれる前の事件を記憶している人はないかもしれないが。
30年前の1973年9月11日南米のチリで軍事クーデターが
勃発して政権が打倒されるという事件が起こりました。ラテンア
メリカ諸国でのクーデターなど珍しくもないと思う人もいるかも
知れませんがこのチリのクーデターは大きな特色を持っていまし
た。チリでは1970年の選挙で社会党のアジェンデが大統領に
当選し人民連合政権が誕生しました。アメリカのニクソン政権は
これを倒すためにキッシンジャー(後に国務長官となった)を責
任者とした委員会を設置して経済制裁をはじめとさまざまな手段
を使いました。チリの経済は攪乱されましたがしかしチリの民衆
のアジェンデ政権にタイする支持は高まっていきました。ニクソ
ンはついにチリ軍部を使ってクーデターを行わせることにしまし
た。そして,30年前の9月11日ニクソンの指令でクーデター
が勃発しました。軍隊が大統領官邸を取り巻く中で亡命すれば命
を助けてやろうという軍部の申し出でを拒否したアジェンデは銃
をとって闘いそして死んでいきました。           
         ×    ×    ×         
 アジェンデ政権は国際的に大きな影響を与えました。チリは銅
の産出国ですが,しかし,アメリカの大企業が銅を支配していま
した。アジェンデ政権はそれに手をつけました。銅鉱山を国有化
して,銅の支配権をアメリカの大企業からチリの手に取り返した
のです。同時にアジェンデ政権は自国の天然資源についてはその
国が支配権を持つことを主張して,天然資源にたいする恒久主権
を国際的に訴えました。ニクソン政権はこの影響が広がることを
恐れてクーデターをかん敢行したのです。しかし,アジェンデ政
権の打倒には成功しましたが,その影響を阻止することは出来ま
せんでした。73年の第四次中東戦争での石油戦略の発動,その
後の非同盟諸国首脳会議での承認をへて第三世界諸国は結集して
天延資源にたいする恒久主権の確立のために奮闘しました。そし
て,国連の場で「新国際経済秩序に関する宣言」,さらには「諸
国家間の経済権利義務憲章」を採択させて,国際的にこれを承認
させたのです。そして,中東を中心とした産油国はそれまでメジ
ャーといわれていた米英の大企業に支配されていた石油資源を国
有化していったのです。その時に先頭に立ったのは米英の傀儡だ
った王制を打倒したイラクのバース党政権,リビアのカダフィ政
権だった。こうして,70年代に米英を中心とした大石油会社が
石油の支配権を失っていったのです。            
         ×    ×    ×         
 1991年の湾岸戦争の後で135年の石油の歴史を追求する
著書「石油の世紀」(邦訳題名)を出版したダニエル・ヤーギン
は日本語版の序文で「湾岸戦争とは何であったのか。・・・・何
にも増してこの戦争は,まさに石油をめぐる戦いであった。」と
述べています。子供のブッシュが起こしたイラク攻撃も父のやり
残した石油をめぐる戦争の仕上げだったのです。そして,それは
30年前に産油国が奪回した石油の支配権を奪い返そうとするも
のなのでした。30年前の1973年はまたアメリカがベトナム
侵略戦争に敗北してパリ協定に調印してベトナムから撤退した年
でもありました。そして,ベトナム戦争での敗北を契機にしてア
メリカでは徴兵制が廃止されアメリカ軍は志願兵で構成されるよ
うになりました。皮肉なことにこのことがアメリカの侵略戦争を
やりやすくすることになりました。政治家や富裕な白人層の子弟
が戦争にかり出されることがなくなったからです。通販生活とい
う雑誌(文字通り通信販売のための雑誌ですが憲法9条を守りた
い人はコスタリカのコーヒーを飲もうなどの宣伝コピーを出した
りしています)の2003年秋号でイラク戦争の裏側という特集
記事を載せています。それにしめされている表ではアメリカ陸軍
兵士の45%はアフリカ系,ヒスパニック,先住民などでしめら
れています。人口の割合は25%ほどですからいかに高い比率を
占めているか分かります。そして,やらせの救出劇で一躍有名に
なった女性兵士は白人ですが大学進学の費用を捻出するために志
願したと報ぜられているように貧しい白人家庭の出身なのです。
だから,自分たちの子弟が戦争へ行って死ぬという心配がないア
メリカの支配層は平気で戦争をやるということになるので徴兵制
を復活したほうが戦争を抑止する力が社会に働くという主張がア
メリカであるとのことです。ところで,日本の自衛隊も志願兵だ
から小泉政権は平気でイラク出兵を決めたのでしょうか?   

At 02:57am 2003/09/11, nhabu@mwa.biglobe.ne.jp wrote: