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        _/  _/    _/  _/           Japan On the Globe (19)
       _/  _/    _/  _/  _/_/      国際派日本人養成講座
 _/   _/   _/   _/  _/    _/    平成10年1月10日 1,821部発行
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_/_/       Common Sense: Neck in the sand
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_/_/           ■ 目 次 ■
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_/_/    1.愚かな臆病者
_/_/    2.アメリカは日本を同盟国として期待した
_/_/    3.捨て金一兆円
_/_/    4.湾岸戦争の意味を理解しなかった世界観のなさ
_/_/    5.根性のなさをアメリカのせいにするのはやめよう
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■1.愚かな臆病者■

 ダチョウは怖いものを見ると、砂の中に頭を突っ込むそうだ。敵
の姿が見えなくなると、それがいなくなったと思いこむらしい。

 これにたとえて、湾岸戦争の時にアメリカでは、 "Neck in the 
sand"(砂に首をつっこんだ)という言葉が使われたそうである。 
当時の日本の「愚かな臆病者」ぶりを風刺した言葉である。

 中東の石油に依存しているのは、アメリカよりも日本である。ア
メリカでは、日本の経済的繁栄を守るために、なぜ米国青年が血を
流さねばならないのか、という論調も強かった。正論だけに、当時
アメリカにいた日本人は、針のむしろに座っているようであった。

 日本のマスコミは、こうした米国の世論を紹介せず、あたかもア
メリカとイラクの戦争であるかのように報道した。アメリカ大使館
に戦争反対のデモをかけた主婦達までいたそうである。

 前号で、日本は「温室」であると述べたが、温室の外では、隙あ
らば他人の庭を侵略しても、自らの欲望を満たそうという猛獣も存
在する。外に出て戦っているアメリカは、温室内の日本人をどう見
たか。

 当時、スタンフォード大学フーバー研究所で客員教授として滞在
していた西鋭夫(にしとしお)麗澤大学教授の証言を、その著書
「富国弱民ニッポン」(広池学園出版部)から紹介しよう。
(小見出しは編集部でつけたものです)

■2.アメリカは日本を同盟国として期待した■

  湾岸戦争の折、私はスタンフォード大学のフーバー研究所にいた。 
アメリカでは全国民が戦争だと思って、その準備を着々と進めてい
るさなか、日本では、「ならないでしょう。なってはいけないので
す。戦争は悪です。暴挙です」と空論に明け暮れ、そのうえ、「カ
ネは一銭たりとも出さない」といったセリフを吐いていたのは当時
の日本(海部)政府だった。日本のプライドとか自由主義諸国内で
の道義的責任とかについて、全く論議が交わされていないのが日本
国内の現状だった。

  アメリカは日本の勇気ある言葉を期待していた。「太平洋沿岸の
同盟国」日本の支持が欲しかった。五十万人の男女の兵士を湾岸戦
場に送り込み、血を流して戦ったアメリカは、日本から「日本国民
は国連軍の一員である」という言葉と、それに伴う物質的援助が欲
しいと思い、それが日本から積極的に出されてくるだろうと期待し
たのは当然である。

  日本の経済活動が自由に営める土台となっている世界社会の平和
秩序は、タダではない。だが、湾岸戦争は日本にとってカネとは次
元の違う、もっと深刻な道義上の問題であった。アメリカも、この
戦争をそう見ている。それゆえ、日本が九十億ドル(当時の一兆
円)を支払うから、それで日本の役目は終わったと見るのは、読み
が浅いどころの騒ぎではない。それよりもっと劣悪な「日本の無道
徳・無責任外交」の表れと見るべきだ。湾岸戦争はアメリカの巨大
な武力により、一週間も続かなかった。

■3.捨て金一兆円■

 戦いが終わって、「日本よ、カネを出せ!」とアメリカが言ってき
た。「用心棒代」である。何の手助けもしない日本から、せめて
「カネ」でも巻き上げてやろう、とアメリカがたくらんだのだ。

 日本政府はこのアメリカの威圧にうろたえた。私は、日本がどう
出るかと非常に興味を持ち、結果を待った。

  海部首相が一兆円の大金を持ってサンフランシスコに来た。

 ブッシュ大統領はたまたまロサンゼルスにいたので、その日本か
らの貢ぎ物を受け取りに来た。ワシントンのホワイト・ハウスで盛
大な感謝の儀式をするのかと思ったが、海部首相はサンフランシス
コから成田ヘ帰された。

 アメリカ政府が感謝の念を公に表明したことは聞いていない。ク
ウェートからさえも感謝の一言もない。無残な現状だ。

  日本がすったもんだしたあげく、しぶしぶ出した一兆円は、今や
捨て金、死んだ金なのだ。日本のGNP(国民総生産)は四五〇兆円。 
その中からの一兆円。これで日本経済の将来が保証されたと考える
のは、日本がボケている証拠である。

■4.湾岸戦争の意味を理解しなかった世界観のなさ■

  日本が断固とした態度を表明し、自ら進んで国連軍に加勢をして
いたなら、昨今、日本の貿易政策およびそれに伴う「ジャパン・バ
ッシング」の件、すなわちアメリカが日本に対して持っている根強
い不平不満、不信感は速やかに解消に向かっていったのではないだ
ろうか。アメリカは尊敬の念を持って日本に対応していただろう。 
実にまたとない絶好のチャンスを、日本は逃したのだ。

  このチャンスを逃す日本政府の読みの浅さたるや、全く信じがた
い。日本独自の世界観がないため、この湾岸戦争の世界的意味が理
解しえなかったのだ。日本の無策ぶりは、日本の将来をよりいっそ
う暗くしていく。

■5.根性のなさをアメリカのせいにするのはやめよう■

  日本はなぜ、このような根性もなく世界観もない国になっていっ
たのだろうか。その原因はアメリカの五十年前の対日占領政策〈一
九四五ー五二年〉のせいだ、と日本は言う。アメリカが組織的に日
本を植民地化し、骨抜きにしたと日本は泣く。確かにそのとおりだ
が、もういい加減にそんな情けない泣き言はやめようではないか。 
日本は国の経済、技術向上には自負しているくせに、日本の情けな
い「根性」とか「魂」の不在とかの話になると、アメリカのせいに
する。日本人の私でさえ、もう聞き飽きた。日本の現状は日本の責
任だ。

[参考]
1.「富国弱民ニッポン」、西鋭夫、広池学園出版部、平成8年

■ おたより: 北澤秀一郎さんより

 一昨年ヨーロッパを一人旅していたとき「自分は愚かな日本人の
一人」と痛感した出来事がありました。スペインのバルセロナから
パリまでの夜行列車のコンパートメント(4人部屋)に日本人(
僕)、アメリカ人(米国陸軍の弁護士)、スペイン人(医 者)、
ベルギー人(ビジネスマン)が乗り合わせたのでしたが、そこでア
メリカ人が「なぜ他国の石油のためにアメリカが犠牲を払わねばな
らないのか」と切り出したのです。

 「他の国は何もしてないじゃないか?」「日本には戦争を禁じる
憲法があってしょうがないが、お金を出したからまだいい」

スペイン人:「でもスペインにはあまり関係ないから…」

アメリカ人:「本当に関係ないと思っているのか? 中東の問題を
きちんとしておかなければ地中海の国にも問題は広がるんだよ!
本来ならヨーロッパ がカタをつければいい問題じゃないか!」

ベルギー人:「何を言ってるんだ、アメリカが勝手に始めたくせし
て…アメリカはいつも勝手だ!」

アメリカ人:「知っているか?フランス製やベルギー製の武器がフ
セイン側に行ってるんだぞ。関係あるじゃないか!」などと大論争
になってしまいました。

 結局そのアメリカ人の言いたかったことは「アメリカだけが
犠牲になるのはおかしい、みんなで悪に立ち向かうべきだ!」
ということのようでした。彼は法律家らしく日本の事情も理解
していてくれましたが。日本人がアメリカの事情をまったく
知らないと言うこと、そして無知により(英語がまだ不自由と
言うこともあったが)その論争に何も意見出来なかったことが
とても悔しかったです。

■編集長より
 このアメリカ人の言い分には、それなりに筋が通っていますね。
ちょっと押しつけがましい感じもしますが。しかし、アメリカに賛
成ならそれなりの協力をすべきだし、反対なら、ではどういう代替
案があるのかを示すべきなのでしょう。


■ おたより  Sae Sakakibaraさんより   

 やはり現在の日本人には、「日本を考える」ことが欠けているよ
うに思います。実際のところ、学生の頃にはそういう話題はよくあ
りましたが、社会人になって「日本を考える」なんて話、職場です
ることは皆無です。「一体どうしちゃったの?」と思われるだけだ
ろうと、そんな話題にはふれません。

 しかし、そういう態度は、外人と会話をする時に、
「日本人は自分の行動についての説明さえできないし、意見もない。
へらへらしているだけで何を考えているか分からない。無気味だ。」
と思われてしまいます。(日本人は理論じゃなくて、空気で動くんですよね?)
外国人の方が日本に詳しいことはよくあるし...。

 日本社会で生き残っていくには、「見ざる、聞かざる、言わざ
る」で、にこにこしてるのが大事でも、国際社会では、それは通用
しないことを、もっと認識しないといけない気はします。

■ 編集者より 
 賛成、反対は別にして、「常に自分はこう考える、あなたは?」、
という対話の姿勢が大切だと思います。いくら英語ができても、自
分の意見がなければ、コミュニケーションにはなりませんね。


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