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        _/  _/    _/  _/           Japan On the Globe (84)
       _/  _/    _/  _/  _/_/      国際派日本人養成講座
 _/   _/   _/   _/  _/    _/    平成11年4月24日 8,047部発行
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_/_/      Common Sense: 気がつけば不沈空母
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_/_/           ■ 目 次 ■
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_/_/      1.イギリス軍による米軍基地攻撃?
_/_/      2.アメリカの仮想敵国第3位は日本
_/_/      3.気がつけば不沈空母・日本
_/_/      4.日本が支える米国戦略
_/_/      5.真の同盟とは?
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■1.イギリス軍による米軍基地攻撃?■
     イギリスに配備した核兵器を、アメリカがイギリス政府の承
    認なしに使用する動きがみえた場合、イギリス軍はイギリス国
    内にある米軍基地を攻撃する[1,p232]
 83年11月、イギリス国内にあるグリーナム基地にアメリカが巡航
ミサイルを運び込んだ時に、大衆紙サンがスクープした英国防省の
秘密文書に、このような一節があった。
 アメリカの専門家は、英国防省が意図的に秘密文書をリークして、
イギリスはアメリカの従属国ではないというメッセージをソ連に送
ったものと解釈した。これにより、イギリスは独自の対ソ外交を展
開できる。それが結果的にアメリカを助ける場合も多いので、米政
府も渋々黙認していた。
 ドイツも、テロ対策の特殊部隊に、アメリカが核兵器を無断先制
使用しようとした場合、国内の米軍基地に突入させて阻止する極秘
任務を与えている。これは世界の軍事専門家の常識となっている。
 同盟とは、このようにそれぞれの国益を追求する独立国どうしが、
お互いのはらを探りながら、利害の一致する範囲で協力していく事
だ。同盟関係が崩れて対立関係になるかもしれないというシナリオ
をも描きながら、手を打っていくという緊張感を常に伴う。
 以上は、国際政治・軍事アナリストとして著名な小川和久氏の研
究の一端を紹介したものである。氏の事実に即した分析は、我々が
防衛問題の分野でいかに国際常識から離れてしまっているかを気づ
かせてくれる好材料である。今回は氏の研究から、特に同盟とは何
か、について考えてみよう。現在の日米同盟に関する示唆が得られ
るはずである。
■2.アメリカの仮想敵国第3位は日本■
     アメリカには、日本を敵視する軍事戦略を撤回する気はない
    のですか。戦後一貫してアメリカは、日本のことをソ連、中国
    に次ぐ第3位の仮想敵国とみなしてきた。そうしたアメリカの
    対日姿勢が変化しない限り、いくら形式的な日米共同訓練をし
    たところで、有事に日米共同作戦ができると考えるのは幻想で
    はありませんか。[1,p240]
 自衛隊幹部がレーガン政権のアドバイサリー・スタッフの一人と
意見交換した時に発した言葉である。相手はあっさりと認めた。
     国防総省が、そういう目で日本をながめていることは、実に
    不幸な事です。
 日本がもし、ソ連や中国と結んだら、アメリカの勢力圏は太平洋
の西側に押し戻され、第二次大戦前の状況に戻ってしまう。そのよ
うな可能性をも考えて、アメリカは手を打っている。
 86年には、米軍が三沢基地に対戦車地雷を運び込んだ可能性があ
ると知って、陸上自衛隊は衝撃を受けた。三沢基地がソ連の戦車で
攻撃されることは、その限られた輸送能力から見てありえない。
唯一あり得るのは、米ソ戦となった場合、日本が米軍基地に戦車を
突入させて、中立を宣言するというシナリオだ。アメリカはそこま
で考えていたのである。[1,p254]
 さらにアメリカは昭和40年代から、日本全国の重力分布図を毎
年改訂しているという。これは弾道ミサイルを正確に打ち込むため
に不可欠のデータである。万一、日本がソ連に占拠された場合、列
島ともどもソ連軍を殲滅するというシナリオも存在していたのであ
る。[2,p13]
 仮想敵国というと、対立が激化して、戦争がすぐにでも始まりそ
うな国と我々は考えがちだが、そうではない。アメリカは、イギリ
スやカナダとの戦争に備えたシナリオまでも準備しているという。
どんなに親しい国に対しても油断しないというのが、国際政治にお
ける常識なのである。
■3.気がつけば不沈空母・日本■
 同盟国との戦争シナリオまで準備する国際政治の中で、極東有事
への対処すら、憲法上どこまで許されるかという神学論争を続けて
いる我が国は、あまりにも浮き上がった存在である。自国の安全保
障を議論することすら軍国主義の復活と非難され、封じられてきた。
そのために、現代日本人はとんでもない国際政治音痴、軍事音痴に
なってしまっている。
 そして我々が神学論争を続けている間に、アメリカはその世界戦
略から、在日米軍基地を着々と整備してきた。
     西太平洋のすべての米軍基地は、日本に基地を置く広範囲な
    補給ネットワークによって支援されている。日本に置かれた弾
    薬の貯蔵施設は、西太平洋における陸上の弾薬庫の貯蔵能力の
    半分以上にあたり、石油の貯蔵能力の方は、ハワイから西に置
    かれた燃料の80パーセントにものぼっている。[1,p19]
 この「ハワイから西」とは、アフリカの喜望峰までの地球半分を
意味する。90-91年の湾岸戦争では、この補給ネットワークがフル
稼働した。7ヶ月間に日本と中東の間を往復した米軍艦船はのべ 
113隻にのぼり、大部分が石油と弾薬の補給だった。
 補給だけでなく、日本の基地は、アメリカ第7艦隊の旗艦ブルー
リッジや空母インデペンデンスの機動部隊など艦船17隻に母港を
提供している。
 アメリカ海軍の艦艇に母港を提供しているのは日本だけだ。イギ
リスでさえ、母港化を拒否している。しかも、横須賀、佐世保の艦
艇補修能力の高さは、米本土を上回るとされている。[2,p84]
 イラクにトマホーク・ミサイルを打ち込んだイージス巡洋艦バン
カーヒル、駆逐艦ファイフ、最大の艦載機出撃回数を記録した空母
ミッドウェーは、横須賀から出撃している。[3,p97]
     われわれは、日本を守ってやるためにいるのではない。世界
    の平和を維持ために、日本に基地をおいているのです。日本国
    民は、それをまったく理解していない。自分の国の安全は、み
    ずからの手で守らなければならないのです。[2,p78]
    
 在日アメリカ海軍報道部のゲーリー・E・シュラウト大尉の言葉
である。日本はアメリカの世界戦略上、不可欠な「不沈空母」とな
っているのである。
■4.日本が支える米国戦略■
 さらに我が国は、こうした在日米軍基地の経費の70%、625
7億円を負担している(平成7年時点)。その内訳は、提供施設建
設費982億円、日本人基地従業員人件費1427億円、借り上げ
地の地代712億円、基地周辺対策費736億円、提供中の国有地
の推定地代1500億円などである。
 また自衛隊の構成もアメリカの戦力補完をするために、きわめて
いびつになっているという。海上自衛隊は規模的には世界第6位と
されているが、対潜水艦戦能力は世界2位、機雷掃海能力は世界1
位など、突出した能力を持つ。有事の際に資源輸入のシーレーンを
防衛する事を重視しているためだが、これは同時に米軍の補給ルー
トを守ることでもある。[3,p110-114]
 逆に北海道に外国軍が上陸した場合、本州や九州の陸上自衛隊を
送り込むためには、揚陸艦艇を使う必要があるが、その能力はフィ
リピン、台湾よりも貧弱である。
     独立国家の海上防衛力としては、海上自衛隊も航空母艦や原
    子力潜水艦を持つべきだ、という構想があってもおかしくない。
    そして、もし日本がそうした方向に海上自衛隊を整備していけ
    ば、遠からずアメリカと西太平洋の制海権を競う存在になるだ
    ろう。アメリカとしては、日本を有力な同盟国として戦略的に
    使いつつ、同時にアメリカにとっての脅威にならないように、
    軍事的コントロールを行なっている。[1,p282]
■5.真の同盟とは?■
 同盟国との戦争までも考えてシナリオを用意するアメリカと、知
らないうちにアメリカの不沈空母とされてしまった日本と。氏の描
き出した対照はあまりにも鮮烈である。いくら経済大国になっても、
これでは国際社会では一人前の独立国家として扱ってくれない。北
朝鮮にミサイルや工作船の抗議をしても、黙殺されるのはけだし当
然なのである。
 米軍基地や安保条約をどうするか、という議論はさておき、ここ
で提起したい問題は、気がついてみたら不沈空母にされてしまって
いた、という我々の姿勢である。仮に日本が自ら主体的に不沈空母
となる道を選んだとしよう。
 日本がハワイから西、喜望峰までのアメリカの国際戦略に欠かせ
ない不沈空母となっており、なおかつ、その費用の70%をも負担
している事実をもってすれば、アメリカ側の安保ただ乗り論など出
てくるはずもない。湾岸戦争の際にももっと貢献度をアピールでき
たはずである。
 日本が70%の費用負担をしている在日米軍が、韓国や東南アジ
アをも守っているということは、それらの国々の安全保障にも我が
国は大きな貢献をしていることとなる。それなりの評価と感謝は要
求できるはずである。
 さらにアメリカに対しても、日本の国益からある場合にはNOと
言ったり、その世界戦略に対していろいろ注文をつける余地も出て
こよう。アメリカから見ても、そのような独立した意思を持った同
盟国の方がいざという時によほど頼りになるだろう。アメリカが勝
手に核を使うなら、米軍基地の攻撃をも辞さないとほのめかすイギ
リスの方が一目置かれているのが、その証拠である。
 知らずに不沈空母とされても、気づかずにいつまでも神学論争に
ふけっているような状態では、同盟関係というよりは、単に属国と
して利用されているだけだと言える。日米関係を真の同盟とするた
めにも、我が国の独立主権国家としての主体性が不可欠である。
[参考]
1. 「仮想敵国ニッポン」、小川和久、講談社文庫、H3.11
2. 「在日米軍」、小川和久、講談社、S60.3
3. 「ヤマトンチュの大罪」、小川和久、小学館、H8.2
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/★★読者の声★★_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
           ニューメキシコ州在住 ふくもと様より
 日本にいた時は周囲がほとんど日本人で、自分と国籍がとても自
然な空気のようなもので、自覚がなかったのですが、海外に住んで
みると、日本人であることがかなり自分のアイデンティティーを占
めます。専攻分野の必要上、日本でのコミュニケーションや人間づ
きあいのパターンを授業やその他の機会で表現して行くことも多く、
自分が日本の代表で文化を語っているのではないけれども、私の周
囲のアメリカ人が私を通して日本という国や文化を見ているのだな
という感覚は常にあります。
 同じ学校に何人か日本人も勉強していて、「日本」の捉え方・語
り方にかなりの差があります。典型的な日本のステレオタイプを助
長する発言をする日本人も少なくありません。そのたびに、自分の
性格が否定されたように感じ、他の解釈や見方があること主張せず
にいられません。そんな時いかに自分が日本人で、その部分が自分
の中で大切なのか実感します。
 どの文化でも社会・歴史上の理由で思考・行動のパターンに制約
や決まりがあります。良き所は伸ばし、悪いところは「日本文化だ
から」と逃げず、見つめて、日常生活では行動や思考を変えていき、
学校では研究をし、どんどんこちらで発表していきたいです。

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